衛生室
軍医「しっかりするんじゃ!いけん……目が混濁しとる !…洗面器に毛布!」
キヨコの治療は夜通し行われた
8月15日朝
ヒロ子「………」
ミチコはそっとヒロ子に寄り添い
小声で言った
ミチコ「…藤井さん…キヨコさん………助てあげれんかった…」
ヒロ子「……………」
ミチコ「最後に会いたいなら 衛生室に居るから…」
ヒロ子「……(キヨコ先生が…そんな)…恵ちゃん 恵ちゃん…」
恵「んっ…?」
衛生室
衛生室に入ると顔に面布を被されたキヨコが横になってた
ヒロ子・恵「……」
ミチコ「顔見る? 」
ヒロ子は黙って頷いた
ヒロ子「……」
ミチコはそっと面布をめくった
キヨコの顔が現れた
数時間前までは普通に会話していた
キヨコは既に冷たくなり顔は青ざめていた
恵「キヨコ先生…ホンマにキヨコ先生なん…?…ほんの少し前まで 話しとったのに…」
ヒロ子「…………キヨコ先生」
ヒロ子は呆然とキヨコを見つめていた
看護婦「ミチコ 佐々木さんも亡くなったよ…ちぃっと手伝って」
ミチコ「わかった」
ヒロ子「…看護婦さん キヨコ先生はどうなんるですか?」
ミチコ「…トラックに乗せて近くの敷地で火葬じゃね あっ場所教えてあげるね」
ミチコはヒロ子に火葬場を書いた紙を渡した
ヒロ子「ありがとうございます…」
恵「…キヨコ先生」
ヒロ子達が衛生室を後にしてしばらくすると 警防団の男性2人がキヨコを担架に乗せ
外へ運んで行った
ヒロ子はその光景を見た途端 涙した
ヒロ子「…あぁ…ん…キヨコ先生…はぁ……うう…」
恵「ヒロ子ちゃん…ホンマにキヨコ先生死んでしもうたんじゃね…」
ヒロ子「…うん…」
警防団「仏様はこんだけかー?」
警防団「後、2人居るー」
恵「ヒロ子ちゃん …校庭行こ」
校庭
校庭にはキヨコの他に3人の遺体があった
1人の警防団員が検分していた
警防団「…横山キヨコ 佐々木弘一…」
しばらくすると2台の陸軍のトラックが入って来た
兵士「お疲れ様です 仏さんは3人ですか?」
警防団「はい」
トラックには既に遺体が満載だった
兵士「3人か…乗るかのぅ 中本上等兵殿1回行きますか?」
兵士「3人なら乗るじゃろ 停め方変えてこい」
兵士「はい!」
恵「ヒロ子ちゃん あんなに死んどるんじゃね」
ヒロ子「……そうだね…私もあの中に行くのかな…」
恵「…ヒロ子ちゃん
ヒロ子ちゃんダメじゃ!勝くん探すんじゃろ?!死んだらいけんよ!!ヒロ子ちゃん死んだらウチ、許さんから!」
ヒロ子「恵ちゃん…」
恵「……具合はどうなん?」
ヒロ子「少しはいいかな…」
兵士「よし!載せろ…」
兵士「1…2…3!」
兵士「奥の方に詰めろ」
兵士「…ピカで死ぬ人はみんな軽いのぅ…」
兵士「ホンマじゃ…」
兵士「あと、2人行くぞ おじさんと子供じゃ」
1人の兵士がヒロ子達に話しかけてきた
兵士「君たちて
今積んどる仏さんの遺族?」
ヒロ子「遺族…というか知り合いです」
兵士「ほうか 火葬場まで行くんじゃったら もう1台のトラックに乗るとええよ」
ヒロ子「ありがとうございます 恵ちゃん
行こ」
恵「うん」
数分後 トラックは遺体を積んで出発した
続いて遺族らを乗せたトラックも出発する
ヒロ子「…恵ちゃん」
恵「ん?」
ヒロ子「あんなに遺体があるのに このトラックに乗ってるのは6人しかいないよ…」
恵「…ほうじゃね」
ヒロ子「切ないよね…」
数十分後
トラックは火葬場に着いた
着くなり兵士達は遺体を 穴蔵に放り投げた
ヒロ子は立ち上がり荷台から
穴蔵を見た
穴蔵には老若男女の遺体が何重にも重なってた
恵「あんなにおるんじゃね…」
隣にはもうひとつの穴があり
そこには引き取り手がない骨を埋葬していた
ヒロ子「恵ちゃん…傍まで行こ」
恵「うん…」
ヒロ子達はトラックから降り傍に向かった
恵「うっ…すごい臭い…」
トラックからは続々と遺体が投げ捨てられ
キヨコも投げられ積まれた
ヒロ子「あぁ キヨコ先生…!」
恵「ちぃっと 兵隊さん 仏さんを投げるなんて酷いよ!」
兵士「…嬢ちゃんもやってみれば分かる
丁寧にやってやれる時間なんてないんじゃ……ずっとやってればのぅ……人と思えなくなるんじゃ」
恵「……」
兵士「あの包帯の女性……担任の先生なんか?」
ヒロ子「担任の先生じゃありませんが…大事な……先生…です……」
兵士「ほうか……」
兵士「よし!…ガソリン掛けろ!」
山積みになった遺体にはガソリンが掛けられた
兵士「火をつけろ!」
松明に火がつけられ遺体に投げられる
火は一瞬に燃え上がり遺体達が燃え始めた
それと一緒に肉体が焼ける臭いもしてきた
ヒロ子「キヨコ先生が…………」
恵「……………」
ヒロ子達は涙しながら手を合わせた
2人は遺体が骨に変わるまで呆然と見つめ続けた
兵士「お嬢ちゃん達 あまり見んほうがええよ」
ヒロ子「……最期まで看取りたいんです…」
兵士「…………」
火葬が終わるまで兵士達は次の遺体回収や
煙草を吸い始めた
2時間後 火葬が終わった
遺体はほぼ白骨化していた
兵士「よし、骨箱を用意しろ」
兵士「これじゃな……お嬢ちゃん達…
横山…キヨコ……これでええか?」
兵士が骨箱を渡す
ヒロ子「ありがとうございます……?……ん?」
恵「どうしたん?」
骨壺を開けてみるとキヨコの骨はほんの少ししか無かった
ヒロ子「………これだけですか?」
恵「えっ……」
兵士「あぁ これだけじゃ
ピカを受けると骨はみんなのうなってしまうんじゃ 骨全部は残らんよ……ピカは惨いのぅ……」
ヒロ子「……そんな」
恵「これがキヨコ先生……お姉ちゃんの骨も……こがいな感じじゃったね…軽かった…」
ヒロ子「………(ピカは骨まで無くすんなんて…なんて最悪の爆弾なの…)」
恵「……」
2人は再び学校に向かい始めた
ヒロ子「キヨコ先生…昨日まで…一緒に話してたのに……」
恵「ほうじゃね……ん?」
ヒロ子「…どうしたの?」
ラジオ前に人が集まってた
ヒロ子「なんの集まりだろ?」
恵「……なんじゃろねぇ?」
女「 ……今、天皇陛下の放送してるんよ 」
ヒロ子「えっ?!」
恵「天皇陛下の?!…
そういや 正午に大事な放送があるって言っとったねぇ」
ラジオ「《…堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス……》
(現文・耐え難いことにも耐え、我慢ならないことも我慢して、未来のために平和を実現するため、道を開いていきたい)」
ヒロ子・恵「???」
男「……?」
ラジオ「《……総力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ国体ノ精華ヲ発揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ体セヨ》」
(現文・総ての力を将来の建設に傾け、道義心を大切にし、志を固く守り、国の真価を発揮し、世界の流れから遅れないよう努力しなければならない。あなた方臣民は、これが私の意志だとよく理解して行動してほしい)
ラジオ「慎みて、天皇陛下の玉音放送を終わります。畏くも天皇陛下におかせられましては……」
一同「???」
老婆「あああ…ああ」
老婆は遺影を2つ持ち涙を浮かべてた
ヒロ子「…おばあさん?」
男「?……どういう事じゃ? 分かるか?」
男「わからん」
恵「なんて言ったんじゃろうね?……日本が勝ったてことかねぇ?途中から聴いたからわからんね」
ヒロ子「うーん……」
男「……日本が…日本が戦争に負けたんじゃ……」
ヒロ子 恵「えっ……?」
男「負けた……日本が…負けた……」
男「……負けた…」
女「…廣島に長崎にもピカドン落とされたし……ソ連も参戦したしねぇ……無理もないよ」
男「嘘じゃ…我が大日本帝國が…負ける
筈がない!ほうじゃ!日本は神が作った国じゃけえ負けんのじゃ!神國日本は負けたりせん!」
男「ほいじゃが……陛下が負けたて言うたなら……日本は負けて事じゃ」
男「……」
男「負けたんか……日本は……」
恵「…な…なんでなん……」
ヒロ子「…恵ちゃん?」
男「……?」
恵「なんで日本は負けたんじゃぁぁぁ!!
アッパにオッパにオンニもみんな日本の為に戦い 死んだのに……なんで負けたんじゃ!!…あああっあああ……返してよ……返してよ …ウチの家族を返してよ…」
ヒロ子「……恵ちゃん」
男「お嬢ちゃん……」
恵「…アメ公め!来たら殺したるけぇ!
殺したるやるけぇ!殺したやるぅぅ!
徹底抗戦じゃぁ!最後の一兵になろうとも戦ってやるんじゃぁぁぁ!
一億総玉砕じゃ!…うぅぅあああ!!……あああ……!!」
ヒロ子は恵を抱きしめた
ヒロ子「恵ちゃん もういいの!いいの戦わなくて!戦争は終わったの……日本は負けたの……だから、もう戦うなんてやめて……恵ちゃん」
恵「ひ…ヒロ子ちゃん……」
ヒロ子「もう……戦争は終わったの
誰も死ななくていいの……」
恵「……っ!日本は不滅じゃ……不滅なんじゃ……ううぅ……あぁ…なんでじゃ…………なんでじゃ…ヒロ子ちゃんは…悔しくないの…?」
ヒロ子「…………………………」
恵「ヒロ子ちゃん?!」
ヒロ子「あたしだって悔しいよ!
軍人の娘だから悔しいに決まってるじゃん!!…あたしだって…御国の為に頑張って来たんだよ!!お父さんも戦死して家も焼かれて ピカドンに何もかも壊されて
大事な人達も奪われて……!
悔しい訳無いでしょ!!?」
恵「…………」
ヒロ子「…でもね、もし…あれだけの犠牲を払って戦争に勝っても……あたしは嬉しく無い…戦争に勝っても大事な人達は帰って来ないんだから!!勝っても負けても帰って来ないんだから…………来ないんだから…」
女「…ほいでも…戦争は終わったんよ…終わったよ…もう、誰も死なんで怖くて辛い思いせんでええんよ……ええんよ……」
1945年 (昭和20年) 8月15日
大東亜聖戦(太平洋戦争)は大日本帝國の無条件降伏で幕を閉じた
満州事変も入れれば、14年も続いた長い長い戦争だった…
しかし、15日以降も満州に侵攻したソ連軍との戦闘は翌月の9月5日まで依然続けられ また、日本本土でも飛来した米軍機に対して一部の航空隊が応戦
太平洋の諸島でも米軍等と戦闘は続けられてた
ヒロ子「今日…戦争が…終わった……
…」
ヒロ子はキヨコの骨箱を見つめた
恵「あっ……あぁ…あぁあぁ…負けた……日本が負けたぁ…あぁあぁ…」
ヒロ子「……っ!(戦争が終わったのに……キヨコ先生)……うっ……ゴホッ…ゴホッ」
恵「ヒロ子ちゃん?! 大丈夫?!」
ヒロ子「う……ん……大丈夫…」
恵「早う…學校行かんと……ヒロ子ちゃん …」
學校
校庭には玉音放送を聴き泣き崩れた人々がいた
恵「……(負けたんじゃね…日本は……ホンマに……)……看護婦さん!」
ミチコ「大丈夫?!藤井さん」
ヒロ子「は…はい……」
教室
タツ「……あっ!姉ちゃん!!」
ヒロ子「タツくん…」
タツ「大丈夫か姉ちゃん…」
ヒロ子「ありがとう…タツくん」
タツ「ほうじゃ…キヨコ先生は? 」
ヒロ子「……えっあっ」
恵「……」
タツ「キヨコ先生は?めぐ……っ
その箱…」
恵「………」
恵は下に俯いた
ヒロ子「……昨日の夜…キヨコ先生は突然倒れて…………」
か
タツ「…………こ……これがキヨコ先生なんか…嘘じゃ…………嘘じゃ…………」
タツ「戦争が終わったのに……キヨコ先生…」
夕方
三人は意気消沈していた
患者「日本はこの先 どうなるんかね…アメ公来るんじゃろうか」
患者「ほうじゃな…」
ミチコ「…あちらです」
男性「どうも」
左脚がなく松葉杖を付き
陸軍空中勤務者章と
航空胸章を付けた三式軍衣を着きた
陸軍少尉の男性が三人の方に近づいてきた
恵「…?」
男性「藤井ヒロ子さんですか?」
ヒロ子「う…うん?……はい」
タツ「陸軍の飛行将校さんじゃ…」
恵「あんちゃんと同じ服……」
男性「わしはキヨコの兄です」
ヒロ子「お兄さん…」
男性「姉をありがとうございました…」
ヒロ子は立ち上がりキヨコの骨箱を渡した
男性「キヨコ……こがな姿になってしもうて…うっ……やっと会えたのに…キヨコ……キヨコ……うっうう……
キヨコはいつ?」
ヒロ子「昨日の夜です…」
男性「……昨日…………畜生…!早く来ていれば!!…っ!」
ヒロ子「………」
男性「藤井さん……ホンマに姉ありがとうございました
死んでしもうたが……親達と違って骨があるのがせめてもの救いじゃ…ホンマにありがとうございました」
ヒロ子「……いいえ」
男性「では、わしはこれで失礼します…」
タツ「少尉殿!」
男性「…ん?」
ヒロ子「タツくん?」
タツ「いままで戦ってくれてありがとうございました!」
キヨコ兄「………わしは…なんも出来んかった……日本もわしもこのザマじゃ…Bの奴に左脚持ってかれちまった… 回天隊の名が泣くな……ほいじゃが…こがな様じゃが……これからは日本を立て直したる………君たちも頑張って…坊ちゃん
礼……ありがとうな」
タツ「…少尉殿」
ザッ
タツは敬礼した キヨコの兄も返礼をした
キヨコ兄「……ほいでも、礼を言うのはこがな死に損ないのわしじゃのうて…散ってった戦友達じゃ……彼等を忘れんでくれ……」
3人「…………」
8月16日 朝
恵「おはよう ヒロ子ちゃん
今日もええ天気じゃね 」
ヒロ子「おはよう……ねぇ……恵ちゃん」
恵「…?」
ヒロ子「…お家帰らなくていいの?」
恵「………ヒロ子ちゃんを置いて家に帰られんよ それにヒロ子ちゃんは神奈川に帰るん?」
ヒロ子「……あたしはまだ……勝を探したい
でも…直に學校も再開するだろし……家も無くなちゃったから…やっぱり一旦 神奈川帰るしかないのかな……
それに勝だってもう……」
恵「ヒロ子ちゃん………ネ ヒロ子ちゃん
ウチに提案があるんじゃけど」
ヒロ子「……提案?」
恵「ヒロ子ちゃんがえかったら…ウチの家に来ない?」
ヒロ子「……え?…恵ちゃん家に?
確か……呉だっけ」
恵「うん」
ヒロ子「で……でも」
恵「ええんよ 遠慮しないで
お母ちゃんに最近
話したじゃけど おいでじゃって
ほいじゃったら 勝くん探すのも続けられるでしょ」
ヒロ子「恵ちゃん……ありがとう……本当にありがとうね」
恵「ほいじゃあ決まりじゃね!」
ミチコ「あの窓側よ」
享子「ありがとうございます!
……ヒロ子ちゃん!」
ヒロ子「……きょ……享子ちゃん?」
享子「ヒロ子ちゃん 勝くん見つかったかも!」
ヒロ子・恵「…えっ?」
仮設救護所
恵「享子さん ホンマに勝くんなん?」
享子「…顔全体に包帯しとるから…勝くんかはわからんけど…勝 勝てつい最近まで隣におった中学生の男の子が そう言っとたんらしいんよ…その男の子は12日に死んでしもうたけど……この子よ」
男の子は顔・上半身に包帯
虫の息のように呼吸をし寝てた
男の子「はぁ……はぁ……」
ヒロ子「勝……?」
享子「勝くん…なん?」
恵「勝くん?」
ヒロ子「分からないけど…服が似てる……」
男の子「はぁ……はぁ……」
ヒロ子「勝 勝なの…?お姉ちゃんよ……勝……」
男の子「はぁ……はぁ……」
医師「気道をやられとるけぇ…喋れんよ……弟さんか?」
ヒロ子「分かりません……でも似てます…」
看護婦「先生!」
医師「分かった !…すまんのぅ行ってくるけぇ」
恵「身許標があればええんけどね……」
ヒロ子「勝……あっ…そうだ……勝なら左脚の膝にホクロがあるはず…」
ヒロ子は左脚の膝を確認した
享子「どう?……勝くん?」
ヒロ子「……な…無い」
恵「じゃったら勝くんじゃない?!」
ヒロ子「はぁ……よかった………んっ」
享子「あっ手が」
男の子はヒロ子の手に触れた
男の子「はぁ……はぁ…」
ヒロ子は男の子の手を握りしめた
男の子「あ…あっ……あっ……」
享子「なんか言おうとしとるね……」
ヒロ子「……大丈夫だよ 大丈夫」
男の子「あっ……あっ………っ……………」
ヒロ子「…………あ……」
ヒロ子は男の子の左胸を触った
恵「ヒロ子ちゃん……」
ヒロ子「先生………呼んで……」
医師「……ほうか 弟さんじゃ無かったか」
ヒロ子「はい…」
享子「ごめんね ヒロ子ちゃん 人違いじゃった…」
ヒロ子「いいよ 享子ちゃん
あたしは探してくれただけで嬉しいから」
享子「ヒロ子ちゃん……」
國民學校
ヒロ子「……ねぇ…恵ちゃん…本当にいいの?恵ちゃん家に……」
恵「ええんよ」
ヒロ子「迷惑かけるよ…それでもいいの?」
恵「……ウチはヒロ子ちゃんを助けたいんよ…どんがな形でも…ウチはお医者さんじゃないけぇ………こがいな事しか出来んけど…」
ヒロ子「恵ちゃん……」
恵「お母ちゃんもヒロ子ちゃん待っとるよ ほいじゃけぇ安心して」
ヒロ子「恵ちゃん…ありがとう…ありがとう…!」
恵「ヒロ子ちゃん…」
翌 17日
タツ「姉ちゃん!恵 向こうでも元気でな!」
ヒロ子「ありがとう タツくん」
恵「タツもね」
ミチコ「えかったね 藤井さん」
ヒロ子「はい!…今までお世話になりました」
タツ「姉ちゃん!俺は勝くん探し続けるから!」
ヒロ子「ありがとう タツくん」
ヒロ子はタツの頭を撫でた
タツ「姉ちゃん……えへへ」
恵「タツ…元気でね」
タツ「わしはいつだって元気じゃ!」
恵「ふふっ……ほいじゃあ ヒロ子ちゃん行こっか」
ヒロ子「うん」
タツ「…あっ!姉ちゃん……! これ!」
タツはカンカン帽(麦わら帽子)をヒロ子に差し出した
ヒロ子「帽子………ありがとうタツくん」
ヒロ子は早速、陸軍士官略帽からカンカン帽に被り直した
ヒロ子「…どうかな?」
タツ「……おぉ!似合っとるよ!」
恵「似合っとるよヒロ子ちゃん」
ミチコ「似合っとるよ~」
ヒロ子「えへへ……ありがとうタツくん
大事に使わせてもらうね」
タツ「…えかった…姉ちゃん……じゃあのう」
ヒロ子「うん……」
廣島駅
恵「切符、なんとか取れてえかったね…でも、人混みが凄いねぇ…」
ヒロ子「うん…ぎゅうぎゅうだね」
國鐡職員「呉行き まもなく発車しますー!」
ジリリ!!
発車ベルが鳴ると
汽車は警笛を上げ ゆっくりと動き始めた
ガシュ…ガシュ……ガシュ…!
ヒロ子は車窓から廣島の街を見つめた…
ヒロ子「……(呉か…)」
第十二章へ