あの日から   作:tuzimoto

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第三章 「探し人」

廣島赤十字病院

 

病院は患者でごった返して

あちらこちらで呻き声や 水を求める声が聞こえる

 

二人「……」

 

恵「ウチは弟さんと姉ちゃん探してくるけぇ」

 

ヒロ子「ありがとう 恵ちゃん」

 

 

 

 

ヒロ子「あっ……あの」

 

看護婦「はい?」

 

ヒロ子「五年生ぐらいの男の子運ばれてきてませんか?…弟で」

 

看護婦「五年生ぐらいの……あこいらを探してみちゃったらええ、あそこは子供の患者ばっかりじゃけえ、もしらしたら見つかるかも知れんよ」

 

ヒロ子「ありがとうございます!」

 

 

恵「…あ、ウチは勝くんの姿を知らんのじゃった…ほいでも、

荷札や身許票をみりゃなんとか…!」

 

院内は原爆患者でごった返してた

大火傷した者 ガラス片が身体に突き刺さった者 手や足が無い者 その光景は凄惨だった

 

女性「看護婦さん ウチの包帯変えてください…ウジ虫が……」

 

男性「看護婦さん 塗り薬を…傷口が痒いんじゃ……」

 

恵「惨いのう…あん人らが何をしたと言うんじゃ……アメ公め…」

 

看護婦「あっ 恵ちゃん!」

 

恵「高橋さん!」

 

看護婦 高橋「恵子ちゃん見つかったん?」

 

恵「ううん 見つからんのよ…」

 

看護婦「ほうか……見つかるとええね」

 

恵「やっぱり……姉ちゃんはピカで……」

 

看護婦「だ…大丈夫よ…きっと見つかるよ」

 

恵「ほうじゃったらええけど…あっ、ほうじゃ!國民学校5年生の男の子を探しとるんじゃけど、知りません?」

 

看護婦「…五年生ぐらいの男の子か…女の子ならあそこに居ってじゃ、男の子は見とらんのよ…」

 

 

 

 

ヒロ子「勝ー 勝ー……あの看護婦さん

五年生ぐらいの男の子見てませんか?」

 

看護婦「うーん 見とらんねー……のぅ

あきちゃん」

 

看護婦「なんねぇ?」

 

看護婦「 五年生ぐらいの男の子見とらん?」

 

看護婦「… 五年生 あっ!ちょっと前に火葬場の方に1人運んで行きよったよ」

 

ヒロ子「えっ!! 名前は藤井でしたか?!」

 

看護婦「身許票は………」

 

ヒロ子「…… かっ 火葬場はどこですか?!」

 

看護婦「病院の裏よ」

 

 

 

陸軍兵士「5人ばかり来たぞー」

 

陸軍兵士「おう、その辺に寝かせとけ」

 

陸軍兵士「……酷いな」

 

陸軍兵士「こげな男の子まで…可哀想にのう……」

 

陸軍兵士「よし 燃やすぞ! ガソリンかけろ!」

 

兵士達は遺体を山積みにしそこにガソリンをかけ火をつけた

 

遺体は燃え始めた

 

陸軍兵士「……成仏してくれ…阿弥陀…うぅぅ……」

 

ヒロ子「待ってぇぇぇ!!」

 

陸軍兵士「…?」

 

ヒロ子は勢いよく火の中に飛び込んだ

 

ヒロ子「勝ぅぅぅぅぅ!!!!」

 

陸軍兵士「?!」

 

陸軍兵士「おい!姉ちゃん!!!何しとるんじゃぁぁぁぁ!!」

 

ヒロ子「勝ぅぅぅぅ勝ぅぅぅぅぅ!!」

 

陸軍兵士「やめるんじゃ!!」

 

ヒロ子「勝が!勝が!!」

 

陸軍兵士「姉ちゃん!!離れるんじゃ!!」

 

ヒロ子「弟が!弟が!!」

 

陸軍兵士「なんじゃっと?!早う水かけろ!!!」

 

陸軍兵士「はい!」

 

ヒロ子は遺体かき分け始めた

 

ヒロ子「勝! 勝!」

 

陸軍兵士「弟はどがいな感じじゃ?!」

 

ヒロ子「國民學校五年生ぐらいです!」

 

陸軍兵士「なら、最後に運んだのか姉ちゃん こっちじゃ!」

 

兵士は遺体をかき分け運んできた

 

陸軍兵士「姉ちゃん この子か?」

 

運んできた遺体は全身大火傷で顔が分からないぐらいの姿だった

 

陸軍兵士「姉ちゃん ほうか……?」

 

ヒロ子「……ん……ん?……違う 勝じゃない」

 

陸軍兵士「…ほうか 違うか」

 

ヒロ子「他に男の子は?」

 

陸軍兵士「居らん思うが…今日はこの子らだけじゃ、ちょうどこれが今日初めての火葬じゃけえのう」

 

ヒロ子「そうですか……」

 

陸軍兵士「病院の方は見たんか?」

 

ヒロ子「はい でも居なくて」

 

陸軍兵士「ほうか……救護所は?

そこに居るかも知れんけえな」

 

ヒロ子「分かりました」

 

陸軍兵士「姉ちゃん 弟さん見つかるとええな」

 

ヒロ子「……」

 

 

 

恵「あっヒロ子ちゃん 勝くん居った?」

 

ヒロ子「ううん」

 

恵「ほうか…ん? ヒロ子ちゃん 左手火傷しとるよ」

 

ヒロ子「あっ……さっきの…大丈夫 平気よ」

 

恵「じゃけど…焼けただれとるよ

手当してもらった方がええよ」

 

ヒロ子「…だ…大丈夫だよ

それに…手当するにも薬ないと思うし」

 

男性「看護婦さん…薬を…」

 

看護婦「すまんせん……もう、薬ないんです……すみません……」

 

軍医「手当するのは助かりそうなヤツだけにしろ!!薬も包帯もどこにもないんじゃ!」

 

看護婦「は、はい!」

 

恵「…ほいでも、火傷跡が残ったら大変じゃろ?水で冷やさんと…ほれ、防火用水があるけえ…」

 

ヒロ子「…うん」

 

 

 

 

恵「あった あった……?! あっ…」

 

ヒロ子「…?どうしたの?恵ちゃん

………」

 

防火水槽の中には幼い男の子と女の子を抱き抱えたままで亡くなった親子の炭化した遺体が入った

 

恵 ヒロ子「……」

 

2人は手を合わせ その場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

恵「……ちぃっと休もうかねぇ ヒロ子ちゃん 」

 

ヒロ子「そうだね」

 

 

恵「よいしょっ……ドロップまだあったかな」

 

ヒロ子「……」

 

ヒロ子は手提げカバン漁り 勝のボロボロになった鞄を出した

 

恵「…?」

 

鞄を膝に載せ見つめた

 

ヒロ子「……勝」

 

恵「……勝くん どこいったんじゃろうね」

 

ヒロ子「うん……勝……」

 

 

恵「…あっヒロ子ちゃん 鞄落ちそうよ」

 

ヒロ子「えっ」

 

ドサッ!ガ コロっ……

 

落ちた拍子におばあちゃんと文子の頭蓋骨が転がり出た

 

恵「!!……」

 

ヒロ子「あっ!……ごめんね …おばあちゃん 文子姉ちゃん」

 

恵「……」

 

恵も一緒に頭蓋骨を拾った

 

恵「はい、ヒロ子ちゃん」

 

ヒロ子「ありがとう ……どうしてこんな事になったんだろうね……」

 

ヒロ子は廃墟と化した廣島の街を見つめながら言った

 

恵「ほうじゃね……どうしてこぎゃな事にになったんやろうね……」

 

 

ヒロ子「……日本は戦争に勝つのかな?」

 

恵「……大丈夫じゃけぇ! 今に日本は

アメ公なんてやつけてくれるけぇ!」

 

ヒロ子「……だったらいいね」

 

恵「大丈夫……日本は勝つんじゃ…アメ公を蹴散らしてくれるじゃ…」

 

ヒロ子「恵ちゃん……」

 

恵「アッパ(父) オッパ(兄) 死んだんじゃけ!! 勝たんと……許さんからぁ!!

日本は勝つんじゃ!

……じゃないと…死んでも浮かばれんわ…」

 

ヒロ子「……そうだよね……勝たないと浮かばれないよね…………お父さん……」

 

恵「…ほうじゃね……ヒロ子ちゃんのお父さん………あっ!ドロップ食べよ」

 

ヒロ子「うん……!つ…あっ…」

 

恵「何味が出るかね~…どうしたん?!」

 

ヒロ子「…また、お腹の調子が…痛っ…」

 

恵「ちょっと大丈夫?」

 

ヒロ子「……ちょっと…してくるね…」

 

恵「えっ あっうん…あっちり紙!」

 

 

 

 

ヒロ子「……痛っ…!…また、赤痢…」

 

恵「ヒロ子ちゃん大丈夫ー?」

 

 

ヒロ子「……うん…なんとか……」

 

 

 

恵「あっ ……大丈夫?ヒロ子ちゃん」

 

ヒロ子「えっ?…うん……はぁ…はぁ…寒い… 寒い……」

 

恵「えっ?!…ちょっヒロ子ちゃん」

 

ヒロ子「………」

 

ドサッ

 

ヒロ子はその場に倒れた

 

恵「ヒロ子ちゃん?! ヒロ子ちゃん!ちょっと!ヒロ子ちゃん!ど…どうしよ…病院に戻るとしても距離があるし…どこかに臨時の救護所かなんかは…」

 

ヒロ子「…ちゅ…中央國民學校…に…近くにあるから…」

 

恵「中央國民學校…わかったわ!」

 

 

中央國民學校

 

恵「ヒロ子ちゃんしっかり! 學校着いたで」

 

ヒロ子「……」

 

恵「ヒロ子ちゃん!」

 

 

征矢野芳子(ヒロ子の担任)

「…ふ…藤井さん?藤井さん!」

 

恵「えっ?」

 

征矢野先生「この子の担任です!看護婦さん!」

 

ミチコ「…はい! あっ藤井さん!藤井さんしっかり!」

 

恵「ヒロ子ちゃん寒がって倒れて!」

 

ミチコ「寒がって…先生! 先生ー!」

 

軍医「どうしたじゃ!」

 

ミチコ「藤井さんが寒がって倒れて!」

 

軍医「…赤痢か吐血はしとったか?」

 

恵「いいえ…あっでも倒れる前は下痢しよったみたいで…」

 

征矢野先生「…えっ藤井さん?」

 

ミチコ「先生!赤痢が!」

 

ヒロ子のモンペ後ろが赤く染まってた

 

軍医「こりゃいけんな…」

 

恵「ヒロ子ちゃんの顔が青ざめとる…

先生!ヒロ子ちゃんは?! ヒロ子ちゃんは助かるんですか?!」

 

軍医「…わからん」

 

征矢野「…先生」

 

軍医「とりあえず暖かくして安静にじゃな…黛さん 毛布を!」

 

ミチコ「はい!」

 

恵「…ピカめ…ヒロ子ちゃんが死んだら承知せんけえ!…」

 

征矢野先生「……」

 

 

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