あの日から   作:tuzimoto

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第五章「チンチン電車」

8月9日

 

廣島に原爆が投下され3日経った

遺体や瓦礫撤去の作業は遅々として進まなかったがそんな中 廣島に1つの希望が復活しつつあった

 

しかし…新たな悲劇も起きようとしてた

 

 

 

早朝 中央國民學校 校庭

 

バチバチと音を鳴らし 英子が入った棺が燃えてる

それを呆然とヒロ子が見つめる

 

ヒロ子「………」

 

恵「……」

 

ヒロ子「……エッちゃんね」

 

恵「…?」

 

ヒロ子「転入してきた時に最初に声をかけてくれたんだ……廣島に来て初めて出来た友達………征矢野先生から聞いたんだけど……あたし以外 級友のみんな…死んじゃったんだって……あの日の朝…

建物疎開行く為にみんな校庭に出て準備してたら…ピカで丸焦げに……」

 

恵「……ヒロ子ちゃん…ウチも親友亡くしとるんよ……」

 

ヒロ子「……」

 

ヒロ子は恵の方を振り向く

 

恵「……7月の呉空襲で………め……目の前で……目の前で……ヨッちゃん…さっちゃん……が…」

 

恵からは溢れんばかりの涙が流れ

表情は怒りと悲しみに満ちてた

ヒロ子はその表情を見て恵は恐ろしく残酷な体験をしたんだと思った

 

ヒロ子「……恵ちゃん」

 

 

恵「…ほ…ほいでも……今はヒロ子ちゃんが居るし…辛くないんよ…」

 

ヒロ子「恵ちゃん……あたしも恵ちゃんが居るから寂しくも辛くも ないよ」

 

恵「ヒロ子ちゃん…」

 

ヒロ子「ありがとうね 恵ちゃん」

 

恵「……うん…」

 

ヒロ子「…エッちゃん……安らかに眠ってね…今までありがとう……」

 

 

教室

 

ヒロ子「……しょっ」

 

ヒロ子は英子の骨箱は自分のカバン横に添えた

 

 

恵「…あっ ネ、ヒロ子ちゃん 今日はどの辺探しに行くん?」

 

ヒロ子「……うーん 己斐の辺り行こうかな」

 

 

恵「己斐ね …あっほうじゃ…」

 

ヒロ子「?…カレンダー?」

 

恵は教室にあるカレンダーを捲った

 

恵「よし! 誰も捲らんけえウチが捲っとるんよ」

 

ヒロ子「そうなんだ ………もう3日経つんだね」

 

恵「…ほうじゃね」

 

 

 

ヒロ子「よし…」

 

恵「準備ええよー」

 

ヒロ子「じゃあ 行こっか恵ちゃん…あっ」

 

 

ミチコ「…あら、藤井さん」

 

ヒロ子「看護婦さん」

 

ミチコ「元気そうでえかったわ

でも、無理だけはせんといてね」

 

ヒロ子「はい!」

 

 

看護婦「あの子大丈夫なん?

あげな火傷しとるのに」

 

ミチコ「うん…ほいじゃけど、止めたところであの子は探しに行くじゃろうし……気持ちもよう分かるけぇ…」

 

看護婦「弟さん……残念じゃったね」

 

ミチコ「見つかっただけでも ええんよ

ウチは……たっちゃん」

 

 

相生橋

 

恵「……もう、アメ公居らんね」

 

ヒロ子「…そうだね…あっ」

 

恵「どうしたん?」

 

ヒロ子「あそこなんか並んでる」

 

恵「…ありゃ、ほんまじゃね…配給じゃろうか?」

 

 

廣島電鐵 西天満町驛

 

ヒロ子「あの 何並んでるんですか?」

 

男「ん? ああ 廣電が復旧したんじゃと、ほいで電車に乗ろうとしとる列じゃ」

 

ヒロ子「えっ?!廣電が!」

 

恵「えっ?!おじさん げに?!」

 

男「ほうじゃ と言っても西天満町と己斐の区間だけじゃが」

 

恵「ほいじゃあヒロ子ちゃんチンチン電車乗って行こうよ!」

 

ヒロ子「そうだね! なら、お金と…」

 

 

ガタン ガタン…チン ガタン

 

男「おっ来たぞ!」

 

キィィィ……

 

車掌「西天満町 西天満町」

 

乗客「いや~チンチン電車復活してえかったねぇ~ありがたや」

 

乗客「ほうじゃねぇ~」

 

ヒロ子「お願いします」

 

車掌「あっ今日は運賃は頂きません そのままどうぞ」

 

 

ヒロ子「えっ あっはい」

 

恵「へぇ タダなんじゃねえ 廣電気前ええね」

 

ヒロ子「うん………」

 

恵「…?どうしたん? 車掌さん見て」

 

ヒロ子「 あたしと同い歳なのに車掌とか電車運転して凄いな~て」

 

恵「ほうじゃね …ウチにも運転出来るかねぇ」

 

ヒロ子「運転してみたいの?」

 

恵「えぇ まぁね/////」

 

廣島電鐵家政女学校生徒 運転士

雨田豊子「運転はむずかいしよ」

 

恵「あっ やっぱりむずかいしですよね」

 

豊子「ほいでも運転してみたかったら運転士にならない?」

 

恵「へ?」

 

豊子「今、ピカのせいでみんな死んじゃってウチぐらいしか運転士がおらんくてねぇ

じゃけぇ 運転士 絶賛募集中

まぁ考えといて」

 

恵「…運転士…ウチが運転士…ええかも/////」

 

ヒロ子「ふふっ」

 

車掌「 発車 大丈夫ですー!」

 

豊子「はーい …己斐行き出発します!」

 

ギギギ…ガン! チン ガタンガタン…

 

恵「あっ……カッコイイ」

 

豊子「ふふっ/////」

 

 

 

 

長崎上空

 

第一目標の小倉は上空に煙があり

投下を断念 一方長崎は好天だったが雲が

覆いつつあり燃料も僅かで作戦失敗に思えたが……

 

VOOOOOOO……

 

B-29 ボックスカー 機長

チャールズ・スウィーニー少佐

 

「ナガサキも曇ってるな…」

 

オルベリ副機長「どうします 少佐……燃料僅かですよ!」

 

アッシュワース海軍中佐「少佐 こうなったらレーダーで爆撃をやるぞ!いいな?!」

 

スウィーニー少佐「中佐 …それは…命令違反ですよ!」

 

アッシュワース海軍中佐

「そんなこと分かってる!!だが早く投下しないと燃料が無くなるぞ! レーダー爆撃するからな!」

 

スウィーニー少佐「……」

 

爆撃手 ビーバン大尉「……ん?あっ…

街が見える!!Tally ho!(攻撃目標視認!)」

 

スウィーニー少佐「…本当だ!自動操縦に切り替える!大尉頼んだ!」

 

※目視による投下をしたと言われてるが

実際はレーダー爆撃をしたとも言われてる

 

 

 

 

 

 

ガタン ガタン

 

ヒロ子「チンチン電車乗るの久しぶり…

ねぇ……恵ちゃん」

 

恵「ん?どうしたん?」

 

ヒロ子「街…また元通りに戻るかな」

 

恵「大丈夫じゃ、チンチン電車が復活したんじゃけえ…すぐには無理かも知れんけど、、またいつか、あの廣島が戻ってくるハズじゃ」

 

ヒロ子「うん…」

 

 

廣島電鐵 己斐驛

 

 

車掌「己斐 己斐~ご乗車ありがとうございました」

 

 

ヒロ子「さてと……わぁっ 恵ちゃん!窓」

 

恵「ん?わぁ……」

 

ヒロ子「凄い行列だね…」

 

恵「みんなチンチン電車の復活待っとったんじゃね」

 

 

豊子「…ふふっ///// 今日は休めそうにないね‪w …頑張らないと!」

 

車掌「ほうね‪/////」

 

恵「頑張ってください! 」

 

豊子「ありがとう///// 運転士の件考えといてね」

 

恵「えっ///// あっはい」

 

車掌「さてと頑張りますか 」

 

 

ヒロ子「恵ちゃんが電車運転したいとはね~‪w」

 

恵「なんか見よったらやりとうなってきたw」

 

ヒロ子「真面目に運転士になるの?」

 

恵「ほうじゃね …てどうやってなるんじゃろ?」

 

ヒロ子「確か あの運転士達は廣電の家政女学校の生徒さんだったかな」

 

恵「じゃけぇ家政女学校に行けばええんかね?」

 

ヒロ子「また、乗る時に聞いてみれば 」

 

恵「ほうじゃね!」

 

 

 

長崎 松山町

 

 

征矢野先生「やっと着いた」

 

征矢野先生母「お疲れ様」

 

征矢野先生「はぁ…疲れた」

 

ガラガラ

 

征矢野先生母「あんた 芳子が帰って来たばい

あれ、おらん 竹やり訓練でも行ったとやろうか」

 

征矢野先生「…ん? あっ晴れてきた」

 

 

10時58分

2発目の原子爆弾 「ファットマン」が投下された

 

4分後の11時2分 炸裂

 

長崎の街は閃光と強烈な爆風により

阿鼻叫喚の地獄絵図と化した

 

 

 

ヒロ子「…!…」

 

恵「…? ヒロ子ちゃんどうしたん?」

 

ヒロ子「あっ…うん……なんか…なんだろ……なにか感じたんだ」

 

恵「なにか感じた? 」

 

ヒロ子「…なんだろ…うーん…恐ろしい事が起きた気がするの……」

 

 

恵「恐ろしい事?…」

 

ヒロ子「うん……」

 

恵「ウチはなんも感じんかったけど…」

 

 

 

救護所

 

衛生兵「國民學校五年生ぐらいの男の子?」

 

ヒロ子「はい、弟なんです」

 

衛生兵「…うーん見とらんなぁ のう!五年生ぐらい男の子見たかぁ?」

 

衛生兵「男の子かぁ…あ…あそこは」

 

ヒロ子「……」

 

衛生兵が指さしたところは遺体置き場だった

 

恵「……ヒロ子ちゃん」

 

ヒロ子「……見てみる」

 

ヒロ子は子供のぽい遺体に掛けてある筵を捲った

 

ヒロ子「……!!」

 

恵「…!!……ど…どう?」

 

ヒロ子「…わ…分からない」

 

恵「身許票にウジ虫が溜まって分からんよ…」

 

衛生兵「それか浮浪児になってどこかで彷徨っとるんかも知れん…己斐驛前にでも行ってみたらどうじゃ?」

 

ヒロ子「浮浪児…」

 

恵「ほうじゃね! 驛前行ってみよ!」

 

國鉄己斐驛前

 

己斐驛は大部分が倒壊してた

 

ヒロ子「驛が…」

 

恵「惨いね…」

 

驛前には負傷者 浮浪児 遺体が大勢居た

 

ヒロ子「……」

 

恵「ヒロ子ちゃん 勝くん…探そっか」

 

ヒロ子「う……うん」

 

國鉄職員「…可哀想にのぅ……こげな子供まで」

 

國鉄職員「おい こっちも死んどる!」

 

 

國鉄職員「……五年生ぐらいかのう?」

 

ヒロ子「!!……すみません!」

 

國鉄職員「?」

 

國鉄職員「お嬢ちゃんの知り合いか?」

 

ヒロ子「…あっ いえ、人違いでした」

 

恵「勝くんだった?」

 

ヒロ子「ううん」

 

 

 

ミーンミンミンミン……

 

恵「……今日も暑いね…汗でベトベト……あっ手ぬぐい 手ぬぐいと」

 

ガシャ…

 

恵のカバンからドロップ缶が転がり落ちた

 

恵「あっドロップが……溶けとるかな…

…えっ?」

 

恵が拾い上げようとした時 女の子が一瞬にしてドロップ缶拾い立ち去った

 

ヒロ子「あっ ドロップ」

 

恵「あっちょっと!」

 

恵が後を追う

 

恵「ちょっと ちょっとってば!……あれ?どこ行ったん?」

 

ヒロ子「…あっ 恵ちゃん あそこ」

 

そこにはさっきの女の子と5歳ぐらいの男の子がいた

 

女の子「進司!ドロップだよ」

 

弟「え?ドロップ?! ねえちゃん ちょうだい ちょうだい」

 

女の子「はい 口開けて」

 

弟「うん 美味しい~/////」

 

恵「……」

 

女の子「…えかった/////………ん?!…これはウチのドロップ!」

 

弟「ねえちゃん?」

 

恵「ええんよ あげる」

 

女の子「……えっ ええの?!」

 

恵「うん」

 

女の子「ありがとう お姉ちゃん………そしてごめんなさい」

 

恵「ええよ …弟くんの為じゃもんね、君たち親御さん達は?」

 

女の子「……お父さんもお母さんも死んでしもうた」

 

恵「………二人ともドロップ食べて 頑張りんさいよ」

 

恵は2人の頭を優しく撫でた

 

女の子「…えへへ/////ありがとうお姉ちゃん/////」

 

弟「おねえちゃん/////」

 

 

 

恵「ドロップ あん子らにあげてしもうた」

 

ヒロ子「ふふっ 優しいね 恵ちゃん」

 

恵「/////…えっ?! お姉ちゃん!!!」

 

ヒロ子「?」

 

恵「お姉ちゃん!!」

 

女性「…? お姉ちゃん?」

 

恵「…あっ すみません……人違いでした」

 

女性「?」

 

 

恵「はぁ……お姉ちゃん どこ行ってしもうたんじゃろ……」

 

ヒロ子「…」

 

衛生兵「あっ あんたらはさっきの」

 

ヒロ子「あっ兵隊さん」

 

衛生兵「弟君見つかったか?」

 

ヒロ子「ううん」

 

衛生兵「ほうか……」

 

ヒロ子「兵隊さんは どうしてここに?」

 

衛生兵「あぁ 驛前の遺体処理じゃ

 

お嬢ちゃん あそこの救護所の他にこの付近は何件か救護所があるけぇ そっちも見てきんさい」

 

ヒロ子「ありがとうございます!」

 

衛生兵「お嬢ちゃんて 廣島の人と違うじゃろ?どっから来んさった?」

 

ヒロ子「神奈川からです 疎開で」

 

衛生兵「…はあ…ほうか、疎開者か…まあ、えろう遠くから来たのう…」

 

ヒロ子「5月の空襲で家焼けちゃって」

 

衛生兵「せっかく廣島まで来たいうのに、今度はピカで焼け出されたとはのう…あぁ、ほうじゃ、似島には行ったか?」

 

ヒロ子「似島?」

 

衛生兵「おお、ほうじゃ、第2検疫所にでも行ってきたらええ…そこにゃあピカで火傷をした人やらがえっと(沢山)居るけえ、そこに弟さんが居るかも知れん」

 

ヒロ子「分かりました! ありがとうございます兵隊さん」

 

 

衛生兵「似島へ行くには大発に乗るけえ

ワシらが居った救護所から、似島行きのトラックが出とるけえそれに乗るとええ」

 

ヒロ子「…大発?」

 

衛生兵「上陸用舟艇…小舟じゃ」

 

ヒロ子「ありがとうございます 兵隊さん!」

 

衛生兵「見つかるとええな弟さん 頑張れよー!」

 

 

 

恵「あっヒロ子ちゃん」

 

ヒロ子「恵ちゃん 似島へ行くよ」

 

恵「似島?」

 

ヒロ子「その前に 何ヶ所か救護所周るけどね」

 

ヒロ子達は何ヶ所か救護所回った後

陸軍のトラックに載せてもらい 大発の乗り場まで来た

 

そこには負傷者や遺体がごった返してた

 

ヒロ子・恵「……」

 

 

兵隊「しっかりしんさいやおじさん」

 

おじさん「うぅぅ……痛い……痛い」

 

兵隊「似島まで我慢するんじゃ 頑張るんじゃよおじさん」

 

兵隊「なぁ 遺体回収用の大発まだか?」

 

兵隊「あと…15分ぐらい掛かるんと違うんか?」

 

兵隊「早く来んと これ以上は遺体山積みに出来んぞ」

 

恵「……はぁ…暑い……ヒロ子ちゃん?」

 

ヒロ子は山積みになった遺体に近づいた

 

兵隊「どうした お嬢ちゃん?」

 

ヒロ子「遺体……確認させてください」

 

兵隊「お…おう わかった」

 

ヒロ子「……」

 

ヒロ子は確認を始めた

 

兵隊「……なぁ お嬢ちゃん 誰を探しとるんじゃ?」

 

ヒロ子「弟です 五年生の」

 

兵隊「そうか 弟か… 俺も一緒に探してやる」

 

 

恵「ヒロ子ちゃん…すんませーん!國民學校五年生くらいの男の子は居りませんか〜?藤井勝くんは居りませんか〜?」

 

 

兵隊「居たか?お嬢ちゃん……お嬢ちゃん?大丈夫か?顔色悪いぞ」

 

ヒロ子「……うっ! …」

 

兵隊「お嬢ちゃん?」

 

 

ヒロ子「うっ…おっぇぇぇぇ!!…はぁはぁ…うっおえぇぇ!!!……はぁ…はぁ」

 

 

兵隊「大丈夫か お嬢ちゃん ……

スッキリしたか?」

 

ヒロ子「はぁ…はぁ…」

 

兵隊「無理もないな あんな酷い姿見たら…俺も最初はよう吐いたわ」

 

ヒロ子「…はぁ…はぁ…すみません」

 

 

 

兵隊「おーい!大発来たぞ!」

 

ダン…ダン…ダン

 

恵「大丈夫?ヒロ子ちゃん」

 

ヒロ子「う…うん」

 

恵「見てきたけど、勝くんらしい人は居ってんなかったよ…」

 

ヒロ子「ありがとう 恵ちゃん」

 

恵「…あっ ヒロ子ちゃん!手に蛆虫付いとるよ!」

 

ヒロ子「えっ?あああっ!」

 

恵は手に付いた蛆虫を払い除けた

 

ヒロ子「ありがとう 恵ちゃん」

 

恵「……ブチ蛆虫湧いとるね」

 

ヒロ子「うん…酷いね」

 

兵隊「乗船を開始しますー なるべく詰めてお願いします!」

 

負傷者が大発に続々乗り込む

 

子供「痛いよー 痒いよー母ちゃん」

 

母「しっかりするんよ あともう少しの我慢じゃけぇ」

 

男「ハル しっかりするんじゃ!」

 

娘「父ちゃん…痛いよ……」

 

子供「水飲みたいよ」

 

 

兵隊「お嬢ちゃん達 大発出発するぞ」

 

ヒロ子「あっはい」

 

 

兵隊「よし出発!」

 

 

ダン…ダン……ダン…

 

 

ヒロ子「ん……あっ…」

 

 

ヒロ子がふと周りを見渡すと

 

もう1艇の大発は遺体を積み込んでた

 

遺体はどれも人間とは言えない姿ばかりだった……

 

ヒロ子・恵「……」

 

ヒロ子「酷いね……」

 

 

似島

 

似島は廣島市から4キロ離れた瀬戸内海内にある小島 陸軍の検疫所がありそこには1万人以上の負傷者が後送されてた

 

恵「あっ…ヒロ子ちゃん…」

 

ヒロ子「凄い人……」

 

救護所は外まで人がごった返してた

 

恵「これじゃ…手当できんねぇ…」

 

男「うう…早う…ガラスを取ってくれえ…娘に…サヨコに会いたい…」

 

女「ごめんなさい、なんの手当も出来んで…暑うないですか?榮一郎さん…」

 

男「寒いけえやめてくれ…ワシは寒いんじゃ…」

 

女「榮一郎さん…こがいに暑いのに…」

 

ヒロ子「……」

 

恵「あ〜ほうじゃ、ネ、ヒロ子ちゃん、勝くんの写真は無いんかねえ?」

 

ヒロ子「えっ?写真?えっーとね

…はい」

 

ヒロ子は手提げカバンの中から 生徒手帳を取り出しそこから1枚の写真を恵に渡した

 

恵「ありがとうね」

 

渡された写真には呉鎮守府の門前で仲良さそうに記念撮影した藤井一家の姿があった

 

恵「仲良さそうじゃね ヒロ子ちゃんの家族…昭和二十年三月二十五日…」

 

ヒロ子「うん それ、お父さんの部下の人が出撃前に撮ってくれた写真なんだ」

 

恵「ほうね…出撃前の」

 

ヒロ子「これが勝ね」

 

恵「お父さんに似て 男前じゃね〜」

 

ヒロ子「そうかな~/////」

 

恵「ほうよ ……さて探してくるね!」

 

ヒロ子「…ありがとうね恵ちゃん

よし!あたしも!」

 

第六章に続く

 

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