あの日から   作:tuzimoto

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第九章「救いたい命」

8月11日 朝

 

恵「今日の配給は胡瓜と乾パン…妙な組み合わせじゃね…」

 

タツ「おはよう!恵」

 

恵「あっ…おはよう タツ

早いねー」

 

タツ「勝君探しに行くんじゃろ 」

 

教室

 

恵「タツは朝ご飯食べたん?」

 

タツ「おう、食ってきた」

 

恵「…ヒロ子ちゃん ご飯じゃよ…ありゃ?」

 

タツ「おはよう 姉ちゃん!キヨコ先生!…? 姉ちゃんは?」

 

キヨコ「おはよう タツくん…ヒロ子さんなら お便所に行ったよ」

 

恵「ほう…ん?…あっヒロ子ちゃん」

 

タツ「 あっ おはよう姉ちゃん!」

 

ヒロ子「……おはよう タツくん」

 

恵「…ヒロ子ちゃん 大丈夫?」

 

タツ「姉ちゃん…顔色悪いのぅ…」

 

ヒロ子「ちょっと…下痢が止まらなくてね…」

 

タツ「大丈夫か 姉ちゃん?」

 

ヒロ子「……うん、今は収まったみたいだから」

 

恵「……(ヒロ子ちゃん 日に日にやつれとる…)」

 

ヒロ子「はぁ…はぁ…」

 

タツ「姉ちゃん しっかりするんじゃ」

 

タツがヒロ子に駆け寄り付き添う

 

ヒロ子「ありがとう タツくん…」

 

タツはヒロ子を寝床まで付き添った

 

タツ「ほれ、姉ちゃん休んで」

 

キヨコ「大丈夫 ヒロ子さん」

 

ヒロ子「ええ、大丈夫です…」

 

恵「ヒロ子ちゃん ご飯食べれる?

胡瓜と乾パンなんじゃけど」

 

ヒロ子「後で頂くね…」

 

恵「…ここに置いとくね」

 

ヒロ子「ありがとう 恵ちゃん

……食べて元気出さないとね…早く勝探しに行かないと…」

 

キヨコ「ほいでも、無理しちゃいけんよ

ヒロ子さん 今は休まんと…」

 

タツ「ほうじゃ!姉ちゃんは休んでて

勝君はわしと恵が探すけぇ」

 

恵「ほうよ ヒロ子ちゃん」

 

ヒロ子「…ありがとう」

 

恵「ほいじゃけぇ ご飯食べたらタツと探しに行って来るね」

 

ヒロ子「うん…」

 

恵とタツは朝食後 勝を探しに出掛けた

 

 

恵「今日も暑いね…」

 

タツ「ほんまじゃ…」

 

恵「……えっと……まずは 教えてもった……建物を」

 

タツ「確か あっちの方じゃったのぅ」

 

恵「ほうじゃね…この道をこのまま真っ直ぐ行って…よし!タツ行くよ」

 

タツ「あいよ 恵! 」

 

 

教室

 

ヒロ子「……んっ……ん……」

 

ヒロ子はゆっくりとしゃぶりつつ胡瓜をかじってた

 

キヨコ「……大丈夫?」

 

ヒロ子「……大丈夫ですよ

……早く元気になって勝を探さないと…」

 

キヨコ「ヒロ子さんはほんまに勝くんの事を大事に思っとるんじゃね

自分がそがな状態なのに…」

 

 

ヒロ子「……勝は…あたしを…助けてくれたんです……だから今度は……あたしが勝を助けないと」

 

キヨコ「…助けた?」

 

ヒロ子「空襲の時に……」

 

 

 

1945年(昭和20年)5月29日 横濱(横浜)

 

9時16分

 

U~UUU~~(空襲警報)

 

藤井家

 

ラジオ「《敵、爆撃梯団約500は横濱方面に向かいつつあり》」

 

勝「500?!…なんて数…母ちゃん!B公こっちに来るって!」

 

母・キクノ「勝ー早く準備しなさい!」

 

ヒロ子「ただいま 回覧板届けてきたよー もう、朝からなんで空襲来るかな」

 

キクノ「ありがとうー」

 

勝「あれ、姉ちゃん工場は?」

 

ヒロ子「今日は夜勤だから夕方に出勤する予定だけど… 勝は?」

 

勝「空襲が来るから下校してきた……

それより姉ちゃん B公500だって!」

 

ヒロ子「えっ500も?!」

 

キクノ「ヒロ子ーちょっと手伝って」

 

ヒロ子「はーい」

 

キクノ「これと これカバンに入れて

貴重品は庭に埋めたから」

 

BAM BAM

 

勝「…野毛山公園の暁部隊の高射砲が撃ち始めた!」

 

キクノ「勝ー!準備出来たの?!早くしないと爆弾落ちてくるわよ!」

 

勝「出来てるよ!……あっ父ちゃんの写真!」

 

ヒロ子「これも入れるの?……あっ」

 

外から不気味なエンジン音が近づいてきた

 

勝「母ちゃん 姉ちゃん早く!!」

 

キクノ「さぁ、行くよヒロ子!勝ー!行くよ」

 

勝「準備完了!」

 

キクノは戸を開けた

開けると不気味なエンジンが鳴り響いてた

 

Vooo…!!

 

勝「デカい……」

 

ヒロ子「キラキラしてる…」

 

キクノ「こら!2人とも見とれてないの

公共防空家まで行くよ!2人とも絶対に 離れちゃダメよ!はぐれたら学校に行くのよ!」

 

ヒロ子・勝「うん!」

 

しばらくすると黒煙が段々と立ち込めた来た

 

勝「…姉ちゃん!防空頭巾!」

 

ヒロ子「うん!」

 

勝「俺も鉄帽被ろ…ん?…あっ…!」

 

更に後続の爆撃梯団が来襲した

 

ヒロ子「……大編隊…」

 

勝「あっ…姉ちゃん!アメ公と目合った!」

 

ヒロ子「え?」

 

爆撃戦法は街を囲うようにし爆撃し

後続が真ん中を爆撃し逃げ場を無くす絨毯爆撃戦法が執られた

 

キクノ「2人とも…行くよ!!」

 

住民「母ちゃん…母ちゃんどこー?」

 

住民「Bが来たぞ!」

 

住民「きゃぁぁぁ!!」

 

住民「逃げろぉ!!」

 

キクノは2人の手を繋ぎ近くにある學校の公共防空壕へ向かった

 

街には逃げ惑う人々か溢れかえってた

その上に焼夷弾が降り注ぐ

 

Vooo……

 

Huuuuuu……

 

住民「うわぁぁぁ!!」

 

住民「助けてくれぇ!!」

 

住民「敵さん大編隊か!?」

 

住民「もうどこに逃げても無駄よ…」

 

住民「とりあえず荷物は捨てろ!邪魔になる!」

 

住民「踏まないでよ!痛い 痛い!」

 

逃げる人々は転んだ人の上でも平然と踏み乗り越えで行く

それで更に転ぶ人が続出し大混乱が生じる

その上に焼夷弾がザーと雨のような音を鳴らし落下してくる

 

女の子「…きゃっ」

 

ヒロ子の後ろの女の子が転んだ

 

 

ヒロ子「…あっ!」

 

 

ヒロ子は引き返し女の子の所へ向かった

 

キクノ「ヒロ子?!」

 

ヒロ子「先に行ってて!」

 

勝「姉ちゃん?!」

 

 

女の子「あぁん~痛いよぉ……」

 

ヒロ子「大丈夫?!」

 

女の子「痛いよぉ~お母さん…お母さん」

 

ヒロ子「大丈夫 お姉ちゃんが一緒にいるかね」

 

女の子「…うん」

 

ヒロ子「立てる?」

 

女の子「うん」

 

ヒロ子「じゃ行く…」

 

ヒロ子は女の子の手を掴み走ろうとした時隣の民家の二階の戸が燃え落ちガラス共に

ヒロ子達の上に降り注いだ

 

ヒロ子「きゃっ!!……あっ」

 

その瞬間 ヒロ子は女の子から手を離してしまった

女の子の頭上に燃えた落ちた戸が覆いかぶさり女の子が下敷きになった

炎は一瞬に女の子に燃え移った

 

女の子「あああああ…あああぁぁぁ!!熱い!熱いよ! 熱いよ!」

 

ヒロ子「あぁ…!」

 

ヒロ子は慌てて近くの防火水槽の水をバケツに汲み 女の子に掛けたが炎は消えることなく女の子を燃やし続けた

 

ヒロ子「…なんで消えないの?!」

 

女の子「ああああ……あぁ……あぁ…あ…」

 

Vooo……

 

ヒロ子「……あぁ…あぁ………?!」

 

Huuuuuu……

 

ヒロ子の頭上に焼夷弾が降り注いだ

 

ヒロ子「……きゃっ!!」

 

1本の焼夷弾がヒロ子の頭部に命中し

ヒロ子はその場に倒れ気を失った

 

ヒロ子「…………」

 

落下した焼夷弾は次々と炸裂し 一帯を火の海にし始めた

 

ヒロ子「………………(あたし…死ぬんだ……熱い……熱いよ……お母さん…勝……熱いよ…………)」

 

Vooo……

 

 

勝「姉ちゃん?…姉ちゃん?!姉ちゃん?!」

 

ヒロ子「…………」

 

勝「……っ!」

 

勝は防火水槽の水をバケツに汲み自分の身体に掛け ヒロ子の元へ向かった

 

勝「姉ちゃん?!姉ちゃん?!…ゴホッゴホッ……姉ちゃんしっかり!!」

 

ヒロ子「……」

 

勝「姉ちゃん!!起きて!!姉ちゃん!!…アチっ 防空頭巾…姉ちゃんの髪が………姉ちゃん!!」

 

勝はヒロ子を抱き抱えた

 

ヒロ子「………」

 

勝「…ゴホッゴホッ…姉ちゃん……しっかりして…」

 

勝はヒロ子に自分の鉄帽を被ららせ腕を肩に乗せ引きずり運び始めた

 

勝「姉ちゃん…重っ…はぁ…ゴホッゴホッ…姉ちゃん…死んだら駄目だよ!…姉ちゃん…」

 

ヒロ子「……ん……(……勝…?)」

 

勝「姉ちゃん…死なないで…死なないでよ…頼むから…神様…お願いします…姉ちゃんを助けてください…ゴホッゴホッ…姉ちゃん……死なないで……」

 

ヒロ子「………(勝……)」

 

勝「姉ちゃんの大福黙って食べた事…ごめんなさい…ごめんなさい……姉ちゃん…あぁ…ゴホッゴホッ…だから……姉ちゃんを助けてください……神様……」

 

ヒロ子「……(勝…)」

 

勝「姉ちゃん…あぁ………死なないで…お願い…死なないで……」

 

勝の目からは涙が溢れてた

 

勝「姉ちゃん…姉ちゃん」

 

ヒロ子「………うっ…」

 

勝「……?!…姉ちゃん…?!」

 

ヒロ子「……はぁ…はぁ……ま…勝……ありがとう…」

 

勝「姉ちゃん!!死なないで!!しっかりして!!」

 

警防団「お前ら大丈夫か?!」

 

勝「あっ……警防団のおじさん!姉ちゃんを!!」

 

警防団「お嬢ちゃん しっかり!

君、こっちに!」

 

勝 ヒロ子は近くの防空壕に避難した

 

住民「早く敵さん去らないかね?」

 

住民「大編隊だったからな」

 

警防団「…よし……傷は浅いな 包帯を巻いて…と」

 

ヒロ子「…ありがとうございます」

 

警防団「……よし 」

 

勝「姉ちゃん…」

 

ヒロ子「…ま……勝……お姉ちゃんは大丈夫だから…」

 

勝「…姉ちゃん」

 

ヒロ子「…勝…ありがとう…本当にありがとうね」

 

ヒロ子は勝を抱きしめた

 

勝「姉ちゃん…」

 

数十分後 爆撃梯団は去った

 

爆撃梯団は約1時間で2570トンの焼夷弾を横濱にバラ撒いて行った

 

「空襲警報解除~空襲警報解除~」

 

住民「はぁ…やっと行ったか」

 

住民「あらら……派手にやられたね…」

 

住民「伊勢佐木町は無事かね……」

 

勝「…姉ちゃん大丈夫? 」

 

ヒロ子「…うん」

 

勝「……あぁ!……街が……」

 

横濱の街は火の海で街を燃やし続けてた

空を見上げると上空には真っ黒なかなとこ雲が出来 空から煤や灰が降り注いだ

 

ヒロ子「……何も……なくなちゃったね……」

 

勝「……うん」

 

ヒロ子 勝は呆然と燃える街を見つめた

 

ヒロ子「…お母さん……無事かな…」

 

勝「…姉ちゃん 學校行こ…」

 

ヒロ子 勝は學校へ向かった

向かう最中はあちらこちらに焼死体や遺体が道端に転がってた

 

ヒロ子「………」

 

勝「…あっ…姉ちゃん……怪我大丈夫?

あと髪も…」

 

ヒロ子「あっ……うん大丈夫……髪…あとで切らないと…」

 

 

學校

 

男性「重傷者は1階の衛生室へー!」

 

女性「あぁ……スミちゃん…スミちゃん……あぁ……ごめんね……ごめんね…」

 

男性「奥さん…」

 

キクノ「………あの子達大丈夫かしら」

 

女學生「ひろこちゃん!しっかりして」

 

女學生「ひろこちゃん!」

 

キクノ「…えっ?!ヒロ子?!」

 

キクノは駆け寄る

 

キクノ「ヒロ子!!」

 

ひろこちゃん「……ひゅ…ひゅ……」

 

ひろこちゃんは誰かわからない程

全身大火傷を負ってた

 

キクノ「……ヒロ子…?」

 

女學生「おばさん 知り合いですか?」

 

キクノ「……ヒロ子なの?……」

 

男性「軍需工場で大火傷負った 女學生の子は?」

 

女學生「はい!この子です」

 

キクノ「軍需工場…?…あなた藤井ヒロ子?」

 

女學生「え?いや…この子は早川ひろこちゃんですけど……」

 

キクノ「……あっ ごめんなさい 人違いだったわ……娘が同じヒロ子て言うのよ」

 

男性「…さっ 衛生室へ」

 

女學生「ムツ子ちゃん ひろこちゃんのお尻隠してあげて」

 

女學生「うん……酷いねアメリカの奴ら…」

 

 

キクノ「……ヒロ子……勝……お願い生きてて……」

 

 

マキ子 ヒロ子の親友「おばさん……?」

 

キクノ「…マキ子ちゃん」

 

後ろを振り向くと 包帯を左手足に巻いたヒロ子の親友のマキ子が居た

 

マキ子「……ヒロ子はいますか?」

 

キクノ「……」

 

キクノは首を横に振る

 

マキ子「……」

 

キクノ「……転んだ女の子を助けに戻って……勝もヒロ子を助けに行って」

 

マキ子「…ヒロ子」

 

キクノ「マキ子ちゃんは大丈夫?」

 

マキ子「はい、軽い火傷ですから大丈夫です……おばさん…ヒロ子は生きてますよ……必ず…」

 

キクノ「…ありがとうね…マキ子ちゃん」

 

マキ子「私、近くを見てきます」

 

キクノ「マキ子ちゃん……」

 

キクノは昇降口 横に座り込んだ

 

キクノ「ヒロ子…勝…」

 

 

……

 

 

 

ヒロ子「お母さん」

 

勝「母ちゃん」

 

キクノ「……!…ヒロ子……勝!」

 

キクノは2人に駆け寄り強く抱きしめた

 

キクノ「良かった……良かった……良かった…あんた達…無事で良かった……良かった」

 

キクノは抱きしめると号泣した

 

ヒロ子「お母さん……ごめんなさい」

 

勝「……俺も」

 

キクノ「何言ってるの 2人とも……謝らなくていいから ヒロ子は女の子助けに 勝はヒロ子を助けに行ったんだから……

あたしは……2人が無事ならそれでいいから……」

 

ヒロ子「……でも………女の子は……助けてあげれなかった……」

 

キクノ「……そっか…それは辛いわね」

 

ヒロ子「あたしも…その子と一緒に死ぬのかなて思ってたら…勝が…勝が助けに来てくれたの……あの時は凄く嬉しかった

勝はあたしの命の恩人よ……ありがとう勝」

 

勝「…姉ちゃん/////」

 

キクノ「…本当に無事で良かった……

2人とも 真っ黒ね…ヒロ子……髪が…」

 

ヒロ子「あっ…うん……ちょっと燃えちゃった…」

 

キクノ「ヒロ子 後で綺麗に切りそろえてあげるね…2人とも、顔綺麗に拭いてあげる……ヒロ子 包帯どうしたの?」

 

ヒロ子「焼夷弾が当たちゃって…」

 

キクノ「…えっ 大丈夫?!」

 

ヒロ子「うん、大丈夫」

 

キクノ「……まぁ……無事で何よりね」

 

勝「でも、もう少しで姉ちゃん丸焦げになるところだったよ」

 

ヒロ子「でも、勝が助けてくれたでしょ?……ありがとう勝」

 

ヒロ子は勝を抱きしめた

 

勝「姉ちゃん…/////」

 

ヒロ子「…嬉しかったな…勝……大好き/////」

 

勝「…う……うん…」

 

ヒロ子「…あと、大福 勝が食べたんだね」

 

勝「…あっー…それも聞いてたの」

 

キクノ「…あっ……お母さん 乾パン貰って来るね」

 

 

キクノのと入れ違いにマキ子が駆け寄って来た

 

マキ子「ヒロ子!」

 

ヒロ子「マキちゃん」

 

勝「あっマキ姉ちゃん」

 

マキ子「…無事で良かったわ…本当に……ヒロ子」

 

マキ子をヒロ子を抱きしめた

 

ヒロ子「…マキちゃん」

 

マキ子「……髪…私と同じになちゃったのね…後で切りそろえてあげる」

 

ヒロ子「うん……でも、勝が助けてくれたから 髪ぐらい平気」

 

マキ子「マサちゃん…凄い」

 

勝「へへっ」

 

マキ子「マサちゃんが居ればヒロ子は大丈夫ね」

 

勝「姉ちゃんは俺が絶対に守るよ!」

 

ヒロ子「勝……あっ…マキちゃん…火傷大丈夫なの?」

 

マキ子「えっ……うん、大丈夫よ…このくらい」

 

……

 

ヒロ子「ありがとう マキちゃん」

 

マキ子「…こんな感じね……よし」

 

勝「上手いねーマキ姉ちゃん」

 

マキ子「おばあちゃんが元 散髪屋さんだったの はい、鏡」

 

ヒロ子「ありがとうー…あっ……短くなちゃった」

 

勝「でも、似合うよ 姉ちゃん」

 

マキ子「ええ 似合うわよ」

 

ヒロ子「そうかな……/////」

 

キクノ「あら、ヒロ子 髪切り揃えてもらったの? 似合ってるわよ

ありがとうね マキ子ちゃん」

 

マキ子「いえ」

 

勝「…母ちゃん……家…燃えちゃったかな…」

 

キクノ「……」

 

キクノ達マキ子と別れ家に向かった

 

辺りは一面焼け野原で火が燻ってた

 

3人「……」

 

キクノ「…燃えちゃったわね……」

 

ヒロ子「……」

 

勝「……」

 

3人は呆然と燃え尽きた我が家のなりの果てを見つめた

 

勝「あぁ……あぁ……」

 

ヒロ子「勝?」

 

勝「家が…家が……俺ん家が……ぅぅぅぅ……あぁ……」

 

勝はダムが決壊したかのように涙を流し始めた…

 

キクノ「……勝…」

 

勝「アメ公の馬鹿野郎…馬鹿野郎……」

 

ヒロ子「……あぁ…ん……ぅ………っ」

 

ヒロ子も涙をこぼした

 

キクノ「2人とも……大丈夫…家なんてまた作ればいいのよ ね!だから2人とも元気出して 壊れたらまた作り直せばいいのよ この焼け野原になった街だっていつかは元通りになるわ きっと

だから、私達も負けずに生きよ アメ公なんかに負けないで」

 

ヒロ子「お母さん…」

 

勝「母ちゃん……」

 

 

 

その後、ヒロ子達はキクノの祖母が居る厚木へ疎開し身を寄せた

しかし、厚木には占領した硫黄島から米軍機P-51が頻繁に飛来し海軍航空隊の厚木飛行場を空襲

その為安全では無かった

 

2人は厚木飛行場の近くの農道を歩いていた

 

ヒロ子「今日は學校終わるの早いんだね」

 

勝「空襲がまたあるみたいだからね、こんなんじゃ全く授業進まないよ…姉ちゃんも同じ?」

 

ヒロ子「うん」

 

勝「にしてもアメ公の奴らひっきりなしに来るよな~ヤダヤダ」

 

ヒロ子「本当よ 全く……ん?」

 

ヒロ子は後ろを振り向いた

 

Vooo……!!

 

ヒロ子「……あ!!」

 

ヒロ子達の斜め頭上にキラキラと翼光らし急旋回し近づくP-51の姿があった

 

Vooo!!

 

BARRRRRRRRR……!!!

 

勝「…姉ちゃん!!」

 

ヒロ子「…わっ」

 

勝はヒロ子の手を繋ぎ近くの用水路に転がり伏せさせた

 

ZipZipZipZipZipZipZip!!

 

勝「…っ!」

 

VoooOOO……!!!!

 

2人の上をP-51が通過する

 

ヒロ子「…勝…」

 

勝「…姉ちゃん大丈夫?」

 

ヒロ子「…うん……また、助けてもらったね勝…」

 

勝「…P公のヤツ行ったかな?…姉ちゃん立てる?」

 

ヒロ子「…うん」

 

勝「……痛!」

 

ヒロ子「勝?」

 

勝「…足くじいちゃった…いたた…」

 

ヒロ子「…大丈夫?」

 

ヒロ子は勝の手を掴み起こし

用水路が出ようとした時 もう1機のP-51が旋回し低空飛行で機銃掃射して来た

 

Vooo……BARRRRRRRRR!!

 

ヒロ子「…?! …勝!」

 

勝「え」

 

ヒロ子は勝の押し倒し覆い被さり強く抱きしめた

 

ZipZipZipZipZipZipZip!!!

 

ヒロ子「…ッ!」

 

勝「!!」

 

VoooOoooo…………!!!!

 

数秒後遅れた空襲警報が発令される

 

勝「…姉ちゃん」

 

ヒロ子の荒い息遣いと鼓動が勝に感じ聞こえる

 

ヒロ子「はぁ…はぁ……大丈夫 勝?」

 

勝「…うん 大丈夫

姉ちゃんが庇ってくれたから」

 

ヒロ子「…良かった

今度はあたしが勝を助けることが出来たね…」

 

勝「…うん……ありがとう姉ちゃん」

 

ヒロ子と勝はお互いをしばらく見つめあった

 

ヒロ子「…勝…しばらく抱きしめていい?」

 

勝「え?……う……うん」

 

ヒロ子「……勝…っはあ…怖かった……怖かったよ……はぁあぁ……ん……っ……怖かったよぉ…怖かった…」

 

ヒロ子は勝に抱きしめながら泣いた

ヒロ子の身体は荒い息をしブルブルと震えてた

 

勝「……姉ちゃん…もう大丈夫だよ

大丈夫」

 

ヒロ子は勝を抱きしめ続けた

 

ヒロ子「…ありがとうね勝…痛っ」

 

ヒロ子は起き上がった時 腰元に痛みを感じた

 

勝「姉ちゃん……?」

 

腰元を見ると もんぺの布地が切れ 黒く焦げ跡があった

 

ヒロ子「えっ」

 

勝「姉ちゃん 撃たれてる!!」

 

勝はヒロ子の腰元を見る

見るともんぺ下のズロースを切り裂き

弾丸が皮膚を焦げ掠った跡があった

 

ヒロ子「勝…」

 

勝「……良かったかすり傷みたい

他に撃たれてない?」

 

ヒロ子「他は大丈夫かな」

 

勝は鞄から手ぬぐいを出し水に付けヒロ子の傷口に当てた

 

ヒロ子「いいよ 勝 自分でやるよ」

 

勝「いいから…染みる?」

 

ヒロ子「…まぁ…ね」

 

勝「……姉ちゃん…ごめんね…」

 

ヒロ子「…えっ…このくらい大丈夫よ

かすり傷だし」

 

勝「でも…俺を庇ったから」

 

ヒロ子「大丈夫よ 勝…お姉ちゃんは勝が無事ならそれでいいから

こんな傷 唾でも付けとけば治るから」

 

勝「でも…でも…」

 

ヒロ子「…ありがとう 勝

それより勝は足くじいたけど 大丈夫?」

 

勝「こんなの平気だよ ほら 立っても……痛っ!」

 

ヒロ子「…そっちが重傷みたいね

とりあえず 用水路から上がろ お姉ちゃん服がびちゃびちゃ」

 

勝「あっ ちょっと待って…」

 

勝は手ぬぐいをヒロ子の腰元に巻いた

 

ヒロ子「……ありがとう/////」

 

2人は用水路から起き上がった

地面には夥しい数の弾痕があった

 

ヒロ子「…めちゃくちゃ撃たれたね ……あたし達」

 

勝は弾痕から弾丸を掘り起こした

 

勝「…うん……わっ……デカい弾丸

こんなの命中したら一溜りもないよ

…アチッ!……あぁ…俺の鉄帽が……穴…ん?」

 

ヒロ子「勝 おんぶしてあげる」

 

勝「えっ?!…い……いいよおんぶなんて!/////」

 

ヒロ子「駄目!勝は怪我人なんだから」

 

勝「大丈夫だって!姉ちゃんも怪我人だろ!」

 

ヒロ子「あたしのは大丈夫

いいから お姉ちゃん命令よ

軍隊では上官の命令は絶対でしょ?

勝一等兵」

 

勝「俺は一等兵曹(陸軍では軍曹)だい!

てか、姉ちゃん軍人じゃないじゃん」

 

ヒロ子「はいはい 勝一等兵曹 ヒロ子少尉の命令よ ほら」

 

勝「うっ…少尉殿か……わかったよ姉ちゃん」

 

ヒロ子「それでよろしい!…さっ帰ろうか勝」

 

勝「うん……重くない?」

 

ヒロ子「平気 平気 お姉ちゃんこう見てえても力あるんだから★

毎日、軍需工場で働いてるのよ~

今日は學校だったけどね」

 

その後ヒロ子と勝はこの機銃掃射を機に

父方の祖母が居る廣島へと疎開する事になる

 

 

 

 

ヒロ子「それで…しばらく何事も無く廣島で過ごしてたら……ピカで……」

 

キヨコ「……ほうか…勝くん…ほんまええ弟さんじゃね…」

 

ヒロ子「だから……勝を…見つけ出したい…あたしの大事な 大事な……弟を……

なのに…あたしの身体は…身体は…ううぅ……いつ死ぬか分からない…あぁ……

勝…勝…会いたいよ……勝ぅ…」

 

キヨコ「……(本来ならここで大丈夫 とか声を掛ければええんじゃろうけど……そがななんも保証出来ん安い言葉を言えん…)」

 

ヒロ子は毎日寝たきりの生活になった

背中の傷は若いということもあり、1週間あまりで痛みも徐々に引き治りつつもあったが

原爆による放射能はヒロ子の身体をどんどん蝕んで行った

8月12日には火傷を負った負傷者は大半が亡くなったと言われてる

また、キヨコの状態もどんどん悪化しつつあった…

 

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