「俺に呪力があればいいんだろ!」
その言葉と共に体の支配権が戻り、私は爪で呪霊をサクッと倒した。
「ようやく外に出られたか! 鏖殺だ!!」
すまんが宿儺様のセリフはこれしか覚えてない。ざっと五百年以上も前だ。仕方ない。
ヘロヘロヘロー。私は雫とでも呼んでもらおうか。両面宿儺の成り代わりである。
憑依しているとか、体をぶん取られたという説もあるかも知れない。
原作通りに進めて悠仁が眠った後。
私は生得領域になんとか悠仁を引き摺り込んだ。
「ここ、どこだ……? えっ 宿儺って女だったのか!?」
動揺する悠仁に、私は首を振った。
「もちろん違うわよ」
「じゃあ女装?」
「ぶっ殺すわよ?」
そういって杖を喉元に突きつける。
「私がそもそも宿儺じゃないのよ。失敗して、宿儺と体が入れ替わっちゃったの。体と言っても指だけど」
「は?」
「私の名は雫。すごーくわかりやすくいうと、地獄の魔女」
「地獄の魔女?」
「そ。人間界を面白おかしく見学しようとしたら、呪いの王に体を取られた間抜けよ」
「えっ ってことは、お姉さんの体、宿儺が使ってるの!?」
「私が凹むくらい、めちゃくちゃ地獄に馴染んでるわよ」
いや、本当に凹む。元々私は人間からの転生者で、全然馴染めていなかったのだけれど。本格的にいらない子と言うのが確定した。
「そ、そっか。地獄だもんな」
「とにかく、私は出来るだけ地獄の存在を秘匿しつつ誤魔化しつつ地獄に戻りたいの」
こっちで生きてくのも考えたけど、こっちはこっちで生きるの大変なのよね。悩むわ。でもそれは後で考えればいい。問題は今を乗り切る方法だ。
「宿儺はどうすんだよ」
「もう体については諦めるわよ。あいつ地獄で成り上がりの真っ最中だもの、私が戻ったって下克上の未来しか見えないわよ。新しい体を作るわ。まー人間界的には呪いの王が消えて万々歳なんじゃない? まー、あいつが里心出して戻ってくる可能性もあるから、念の為ぶっ殺す準備はしないとだけど」
「そ、それならいいの……か?」
「協力してよ、人間。あんたにも利になるはずよ。宿儺も私もいなくなって、呪力だけもらえるわよ。うまくいけばね」
「五条先生に話すのはダメなの?」
「地獄の存在を秘匿っつったでしょ。特にあいつはダメ。神の尖兵、勇者、運命、生きる兵器、天秤、悪魔や魔女とは相性悪いのよ」
「あんた悪い存在なの?」
「いい存在なわけないでしょ?」
「協力する代わりに、人を傷つけないって誓える?」
「その誓いはざっくりしすぎててだめね。呪詛師とかいるんだし。攻撃はするけど、あんたがダメって言うならやめるのでいい?」
「いいぜ」
「【私はあんたがやめろって言ったら人への攻撃を止める】」
「【俺はあんたが新しい体を作るのを手伝う】」
「契約成立。じゃあ、早速だけど、指を取り込む時はタイミングを合わせてね。指の一つ一つに宿儺の魂が篭ってるから、ちゃんと処置して魂を私の体に飛ばさないと、この体にいるのが3人になっちゃうのよ。呪力はぶんどるから安心してちょうだい」
「んー。あいつ、やばそうだもんな。わかった」
「契約成立ね」
私達は握手する。
「じゃあ、ひとまず説明させてもらうわね。貴方、監視されてるわ」
「眠そうだね、悠仁」
「ああ、昨晩雫とずっと話してて……」
「友達?」
「そー」
そして悠仁は指を飲む。
魔女が指を地獄に送る瞬間、宿儺が見えた。
すごく楽しそうに化け物と殺し合う魔女(中身宿儺)が。
「うーん地獄」
「あはは、そうだね。楽しい地獄になりそうだ」