虎杖の頬から目を出し、キョロキョロと辺りを見回す。
聖地巡礼である。後、対外的には宿儺と呼ぶように言い含めた。
(雫、直接見るのは感慨深い?)
(まあね。この世界ばっかり見てたからね)
「とりあえず、悠仁は学長と面談ね」
「なー。先生。先生って神様の声とか聞けたりするの? 神様ってどんな? ずっと仕事の為に転生を繰り返すってどんな感じ? 人間を愛したこと、後悔してない? 宿儺とかワンパン? 人間兵器であるってどんな感じ?」
(ちょちょちょ、ちょっと待ってよ! 一体何を言い出すのよ)
「は?」
五条先生は立ち止まった。
(えっ だって先生、神の尖兵なんだろ。宿儺ってすげー強いみたいだし、勇者ってくらいだから凄いんだろうけど、今回の敵は2回取り逃してるって事は無敵じゃないんだろうし、相手強いんだろうし、それにプラス宿儺だろ? 実際どうなんだろうと思って。俺、お前からしか話聞いてないし)
(私に聞きなさいよ! 私に!! 人間達がそこら辺、知ってるわけがないでしょ!)
(だって宿儺、人間界の事、呪力のことはよく知らないって言ってたじゃん)
(そうだけど!! いい、地獄の存在は秘匿されるべきなの、あんた世界間戦争引き起こしたいわけ!?)
「それは嫌。ごめんって。あ」
「何それ? 何言ってるか全然わからないから、詳しく話して」
「俺もよくわからない。宿儺がほんとのこと話してるかもわからないし」
「呪いは容易く人を騙すから、あんまり信じちゃダメだよ。それはそうとして、宿儺が僕の何を知ってるの」
「んー。そうなんだよな……。自分で自分のこと邪悪な存在って言ってるしな……」
(縛りは破らないわよ! 破れないし!)
「縛りは破れないってほんと?」
「本当だよ。何か約束した?」
「手伝う代わりに、俺がやめてって言ったら人への攻撃をやめるって言った。呪詛師もいるから、ずっと人を傷つけないとかの約束は無理だって」
「手伝うって何を? 縛りの期限は? やっぱり手伝わないとか無理だよ?」
(あっ やば期限決めてなかった)
「そういえば決めてなかったな。宿儺もやばいって」
「ウケるww で、手伝うって何」
マジトーンだな。これは引き下がらなそう。
(宿儺、言っていい?)
(いいわよ、ここまできたら仕方ない)
「宿儺の新しい体を作る手伝い」
「作れるわけ? 君乗っ取った方が早くない?」
五条先生は少し考え込む様子を見せた。
「んー。俺はなんか特別性の器で最高傑作らしいから……。指一気飲みさせても一時的に乗っ取るのがせいぜいらしい。それでも致命的ではあるけど。宿儺じゃなければ、逆に呪物の自我を消して呪力だけ取り込んでたって」
「えっ どんだけすごいの? 君。ちょっとまって最高傑作って何」
「宿儺は消せなかったからすごくない。早く行こうぜ。学長まってるんだろ」
「宿儺の話聞いたら行くよ。宿儺は僕の何を知ってるのかな。君は何?」
「んー。先生は神様の設置した駒で、俺は悪い人の設置した駒だって。他にも色々言ってたけど、眠くてよく聞いてない。でも、俺、先生と宿儺に付くから!」
「宿儺と僕は敵対してるよ???」
「そうだけど。宿儺が本当に悪い子だったら、体手に入れて分離したら、先生やっつけてくれるでしょ?」
「おまっ そう言うこというか!」
とんでもないな、虎杖悠仁!
「そしたら俺、呪力だけもらえるじゃん。だから、まず宿儺に手を貸して、その後先生のお手伝いして、ご褒美に宿儺の呪力をまるっともらう。俺だって上司にするなら悪い人より、宿儺がベタ褒めする五条先生がいい。誰だってそうする。俺だってそうする」
「貴様、馬鹿だ馬鹿だと思っていたが意外に頭が良いな!?」
「宿儺だって、どっちにつくって言われたら五条先生につくでしょ?」
「それはそう」
悩む余地もない事を聞くな。
「は? なんで僕? どっちって、僕と誰?」
「だから俺を設置した悪い人。先生、えと、六眼が何度も逃してる人」
「ええい五月蝿いわ、どうせ貴様は目の前にきたのを倒すの以外仕様適用外だろう。無理な事は無理なのだから深い事は考えず束の間の平和を噛み締めているが良い。こっちも都合悪いから多少は手伝ってやるからもう黙れ」
「……文献当たってみよ」
それから、学長の面談を受けた。
「何しにここへ来た」
「んー。いろんな思惑があって、誰も彼もが好き勝手言って。俺が選べる道は少なくて、でも」
虎杖はぎゅっと手を握りしめる。
「でも、それならやってやるよ。俺なりに、俺の望む選択をして、俺の望む未来を引き寄せる」
「望む未来とはなんだ」
「宿儺を俺から消して、呪力総取りして、五条先生の元で呪術師として働く。呪いを祓う!」
「待て。そんな事ができるのか?」
「宿儺の体を作って魂をそこに移せばいいんだって」
「悟か?」
「いや、宿儺本人の提案のようです。乗っ取れないから体作るの手伝えと。後で報告書を上げます」
「……遅刻も無駄ではないと言うことか。いいだろう、合格だ。待て、なぜ悟の元? そんなに仲良くなったのか」
「だって宿儺が神の尖兵とか勇者とか格好いい事言ってるし。神の尖兵の部下ってなんか凄そうじゃん」
「悟」
「……宿儺は六眼の事を言ってるようです。こっちも初耳なので、文献当たってみます」
その夜。私は虎杖を叩き起こした。
(こんな夜更けにキッチンで何すんの、雫)
(人間界で何ができるか確かめる。このままでは宿儺かメロンパンに殺される)
(大事だな。俺、どうすればいい?)
(今から言う材料を用意してね。まずは錬金術から試す)
「おお! なんか凄そう!」
(人間界ではろくな材料手に入らないけどね。けどまあ召喚術もあるし、私は凄いのでどうにかする)
それから2時間後。
伏黒が来た。
「何やってんだ、お前」
「伏黒!」
「いやまじ何やってんだお前。ねばねばする青色のスープって鍋でスライムでも作ったのか」
「えっと。そう」
「ひっ なんか動いたぞ」
「だってスライムだし」
「疲れているのだ、伏黒恵。大丈夫だから寝ろ」
「そんな訳あるか! 五条先生!」
「あっ 先生に告げ口する!? ひでー伏黒!」
「当然だろ!」
その後、虎杖は夜蛾先生と五条先生からしこたま怒られてキッチン接近禁止令が出された。
「嘘でしょ。六眼で見えない」
「明らかに生きているのにか」
「なんなんだ虎杖、この青い液体状の生き物」
「だって俺、宿儺の体作る手伝いする約束したし、その第一歩的な……」
「可愛かろう?」
その後、虎杖は夜蛾先生と五条先生からしこたま怒られて(2回目)キッチン接近禁止令に加えて監視されることが義務付けられたのだった。カワイソ。