23才フリーターの前にドラえもんが現れる話   作:やゆゆゆゆ

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よろしくお願いします。


フリーターがハローワークに行く話

 もうほとんど覚えていないけれど、ずいぶん前に2チャンネルで人生に関してのスレを見たことがある。そのスレいわく人生とは素晴らしく良ゲーだということらしかった。グラフィックはどのゲームよりも何倍も素晴らしく、選択肢は無限大、あらゆるジャンルで遊ぶことができていくらだってミニゲームがある。どんなギャルゲーよりも女の子は可愛くて、どんなRPGよりもストーリーは奥深い。当時の俺はそのスレを見て何か胸のどこかに高鳴りみたいなものがこみ上げてきて、喜びのあまり打ち震えたものだけど今考えてみればその時とはまるっきり変わった結論が出る気がした。

 人生はクソゲーだ。

 確かにグラフィックは無限大だし選択肢だって無限大だけど、そのスレに合わせた言い方をすれば初期ステータスによって決められることが多すぎるのだ。そしてその初期ステータスによって大概のことは、おおまかな人生の路線は決まってしまう。

 金持ちの家に生まれたなら、いい親に恵まれていい教育を受けさせてもらえて塾にだって入らせてもらえるかもしれない。そのままの路線でいけば、いい会社に入ってきっと綺麗な奥さんと付き合って素晴らしい人生を過ごすことになるのだろう。しかし、それと比べて金がないどさくさで生まれてしまったような子供はどうだろうか。

 はっきりと言える、金持ちの家に生まれた子供と比べて世界観が違う。親は子供のことなんか気にかけないし、勉強なんてほとんどやったことがない。だから子供に勉強をやるようになんて言わないし、そもそも自らの子供を家族とも思わない。

 母親とは違う女の所に父親は逃げてしまって、母親も別の男と帰ってくることが多いのだ。子供はそれを横目で眺めながら、お情けとばかりに与えられたコンビニ弁当をほそぼそと食べているのだ。そして満足な教育を受けられなかった子供もいずれ大人になる。大学に行く学力も学費もないから誰にでもできる苦しい仕事しかやることがなくて、そしてそんな男に恋してくれる相手なんかいないから一人狭いアパートのベッドとバイト先を往復して人生を終える。

 ソースは俺。佐藤直哉23歳、彼女なしで親とはもう何年もずっと音信不通、いやあいつらなんてもう親とすら思っていない。俺が中学を卒業したあたりから俺のことを見てくれていたのは二年前に死んだじいちゃんとばあちゃんだけだった。交通事故で死んだじいちゃんとばあちゃんだけだったのだ。

 現在は収入は月十五万円ほど、いや15万円ほどだったが正しいかもしれない。先月、バイト先のコンビニに自動レジができてから店長に首を宣告されて現在は仕事がないのだ。これまで細々とためてきた貯金とじいちゃんたちが残してくれたお金を少しずつ切り崩しながら生活をしている。しかし、いくらじいちゃんたちがある程度のお金を残してくれたといっても、それを好き勝手に使ってしまうのは違うだろうという気がしてこれまでは自分でためた分の貯金から生活費をひねり出してきたのだが、その貯えももうあと少しというところまで来ていてあと十日もすればどうしようともじいちゃんたちの残してくれたお金に手を付けなければいけなくなってしまう。

 だからこそ、今日は近くのハローワークにでも行って仕事を探そうと考えていた。これまではバイトくらいしかしたことがなかったからきっと正社員というのは難しいかもしれないけれど、今度は前のバイトと違っていくらかの職歴(数年間のバイト勤務)もあるからいくらかいい条件のバイトも紹介してもらえるかもしれない。

 そんなこんなの事情があって、俺はずいぶん前に買った少しすすけたスーツを押し入れから引っ張り出した。ハローワークに行くのだといっても少しはまともな服をしていれば、よりいい仕事を見繕ってもらえるかもしれないと考えたのだ。そして歯磨きやらなんやらをいつもよりも手間をかけて終わらせて、慣れないヘアセットなんかまでしちゃって玄関の扉を開いた。

 外はからりと晴れていたが十一月の風がよれたカットシャツの襟から入ってきて身震いがした。

 一瞬、部屋からマフラーでも取りに帰ろうかと思ったが、しかしまぁハローワークはここからそれほど遠くない場所にあることだしそこまでは必要がないだろう。それに、ここ何日か部屋から出ていなかったからか分からないけれど久しぶりのこの外の空気も別に嫌いではないのだ。

 そこまで考えて俺は自分がこの新生活を、この新しいスタートを少し楽しんでいるのかもしれないなと思い至った。もしかしたら新しい出会いがあるのかもしれないし、予期せぬ発見があるのかもしれない。これまでの鬱々とするような出会いが吹き飛んでしまうような発見が俺を待っているのかもしれない。そう考えると胸がときめくような心地があるのだ。

 スーツの襟を正して俺は歩き出した。

 きっとこの先に俺の世界がある。俺の人生はここから変わるのだ。

 




亀更新ですが、見守ってくださるとうれしいです。
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