トレセン学園は実家の跡取りを探す場所ではない
北海道のとある田舎道を1人のウマ娘が1人の男性と共に歩いている。
彼女の名はスペシャルウィーク。
北海道から日本一のウマ娘になるという夢と共に上京し、日本の総大将とまで言われるに至ったウマ娘である。
一緒にいる男性…というか俺は彼女のトレーナーだ。
年数だけならまだまだ新人と言って差し支えない。
だけど自分で言うのもアレだが既にG1勝利ウマ娘を輩出する有能トレーナーとして顔が広まりつつある。
近いうちに新しくチームを持つと言う話も上がっている。ありがたい話である。
そんな俺たちが北海道にいるのはひとえにスペシャルウィークの帰省である。
彼女曰く2人の母へ夢を叶えた報告に行きたい、トレーナーさんを紹介したいという話であった。
俺はこれを二つ返事で了承した。
家庭訪問みたいなものなのだから別に気負うこともないと考えていたのだ。
そんなこんなで彼女の実家を訪れると育ての母が迎えてくれた。
話には聞いていたが実家は牧場を営んでおり、スペが家を出るまでは2人と従業員という名の近所の人で運営しているらしい。
娘の久々の帰省に喜びつつ大変良くしていただき、彼女の幼い頃の話を聞いたり家庭事情などを聞かされ気がつけば日が落ちようとしていた。
家族団欒を邪魔するわけにもいかないと思いお暇しようとすると2人して「えっ」みたいな顔をしている。
「泊まっていかないんですか?」
「一番近い宿でも車で2時間はありますよ?気にせず泊まっていってくださいな」
さすがに女性しかいない家に泊まるのは何かあっても困りますし、宿を先んじて取っていなかった自分にも非があるので遠慮すると言ったのだが母親の方が中々譲らなかった。
スペの勝負強さはこういうところから来ているのかもしれない。
仕方がなく了承した後夕食をご馳走になった。
その後母親が電話がきたとかで席を外した。
「いいお母さんだな」
「はい!自慢のお母ちゃんです!」
明日は生みの母の方の墓参りにいくと言う話をしていると育ての母が戻ってきて開口一番、
「ごめんスペ急で悪いんだけど町内会の用事で出なければいけなくなった(棒読み)」
「えーっ!?何時ごろ帰ってこれるの?(棒読み)」
「分からないけどもしかしたら日を跨ぐかもしれないね(棒読み)」
年頃の娘が男と2人きりなどよくない。そう言いたい気持ちがあったがそうは言わせまいとする雰囲気に飲まれ気がつけばスペと2人きりになっていた。
それから少し時間が経ち日がすっかり落ちた頃…
「トレーナーさんはお風呂入っちゃってください!遠慮なんてしないでさあさあ!」と言ってきた。
妙に押しの強いスペに言われるがまま風呂を堪能し、その後客間に敷かれた少し大きめの布団で横になっていた。
静けさと窓から差し込む月の光が何処か神秘的ですぐに眠るには惜しいと感じていた。
そんな折、ふと襖が開く音がした。
振り返るとそこには寝間着姿のスペがいた。
「なんだか眠れなくて…隣、いいですか?」
そういう彼女を部屋に招き入れ月明かりの中で二人で今までのことなどの思い出話に花を咲かせた。
ふと会話が途切れた。
何方からという訳ではないが顔を合わせた瞬間不意にドキリとしてしまった。
目の前にいる一人の少女は自分の知るスペシャルウィークと違い何処か大人びており…そんな彼女に女性味を感じてしまった。
そんな動揺を感じ取ったのか軽い笑みを浮かべるとふわりと身体をしなだれてきた。
そのまま布団に押し倒される形となり…
…その後色々あった後もトレーナーを続けている。
トレーナー引退後は多分彼女の実家の牧場暮らしだろうなとは思っている。