厨二病の男が勘違いされる話 作:D.D.D_Official
「俺は帰ってきたぞ!!!」
アレイスターとか言うどちゃくそカッコいい経歴を持つ奴から体の主導権を奪い返し、俺は高らかに帰還を宣言する。
『グレンっ!良かった、心配したのよ!あ、傷は…!?』
「む、傷か?そういえば何か痛むな。ヴィヴィアン、頼む」
見ると、俺の鎧はボロボロだった。赤と黒のイカしたデザインの鎧は最早見る影もなく、ビリビリに破れたインナーが張り付いているだけだった。下半身は鎧で隠されているが、もう壊れそうだ。
『グレン、また逞しくなって…!えいっ!治れ治れ〜!半分が私だから、傷を治すのもお茶の子さいさい!』
あっという間に傷が癒えていく。やっぱりヴィヴィアンは凄いな。流石はイギリス代表の精霊だ。
「グレン卿!もう大丈夫なのか!?マーリン殿、彼は本物のグレン卿か!?」
「うん、本物さ。だってなーんにも見えないんだもん。私は少し目を休めているからね、必要になれば呼んでくれ」
そう言うとマーリンは何らかの術を唱え隅っこに行ってしまった。余りにも堂々としているな、隠れる気があるのか?
「さて…目の前の敵をどうするかだが……」
『何か策はあるの?アレイスターとか言う奴の攻撃で多少は手傷を負ったようだけれど。正直、私達じゃ無理よ。アレは"獣"の成り損ないではあるけれど、それでも獣の霊基を持っているわ。ギリギリ神霊の私やグレンじゃ太刀打ちすら出来ない。それこそ冠位の守護者がいないと…』
冠位?獣?それに守護者だと?何を……そうか、ヴィヴィアンもついに"目覚め"てくれたのか。これで存分に〈黙示録〉を語り合える。だが、そんな事をしている暇はない。
「ヴィヴィアン、お前の目覚めは嬉しい限りだが…今はそんな場合ではない。目の前の敵を何とかしなれば」
『大真面目よ!うぅ、アラヤは何をしているの!?ここに獣が湧いてるわよ!早く守護者送ってきなさいよ!』
ヴィヴィアンがそう天に叫ぶ。すると、その叫びに呼応されたのか地面に赤い召喚陣のようなものが出現する。そこから出てきたのは、死だった。
襤褸のローブを身に纏い、髑髏の面をつけている。蒼く爛々と輝く目からは殺気が溢れ出しており、まるで視界に入ったモノを全て殺すかのような威圧感を放っていた。
「………聞くが良い。晩鐘は汝の名を指し示した。告死の羽、首を断つかッ!【死告天使】ッ!」
死神が目にも止まらぬ速さで剣を振ると、気づけば獣の首から上は消滅していた。
『さ、流石は冠位…!一瞬でケリをつけちゃったわ…!』
「いや…違う、あれは……もっと、悍ましい…何だ、あれは。俺の中の何かが、激しく警鐘を鳴らしている。どうなってるんだ!?」
あの技を見た途端から、身体の震えが止まらない。頭の中で「逃げろ」という声が鳴り響く。誰の声だ、知っているようで知らない声だ。
「貴様……」
死神が俺の方を見た。まずい、殺される。何故だか俺にはそう思えて仕方がなかった。何でだ?
「鐘の音が聞こえるか?」
「……は?いや、聞こえないが……」
「そうか…」
そう言うと死神はどこかへ消えて行こうとする。
「ま、待ってくれ!貴公の名を、貴公の名を教えてほしい!不躾な質問ですまないが、どうしても知りたいのだ!」
気づけば俺は死神に頭を下げていた。俺は死神を恐れるより前に、彼の技巧に、その洗練された動きに魅了されてしまったのだ。厳かで、神聖で、それでいて必中必殺の技に惚れてしまったのだ。あれは、俺が今まで見てきた技の中で最も美しく、強く、カッコよかった。
「……言えぬ。だが、お前は我が死に魅入られてはならぬ。我が技は死の技。それが堕落せし時、我はお前を斬らねばならぬ。晩鐘が聞こえぬのなら、生を謳歌せよ。それを主は望まれる」
そう言うと死神は光の粒子となって消えてしまった。
「おーい、グレン!無事かぁ!?」
「……む、グランツか。あぁ、俺は無事だ。だが、まだ油断はするなよ。まぁ、俺が言えたことでは無いが」
「あぁ?それはどう言う…….っ!?」
最大の脅威である獣は倒したが、それを生み出したモルガンは未だ健在だ。眼光で人を殺せそうなほどこちらを睨みつけている。
「グレン………!お前には、心があるのか!?」
「あぁ、俺は言ったな。『この身が一つの剣であれば良かった』と。俺は気づいた。いや、気付かされてしまった。この身は空虚などでは無い、例え借り物でも、作り物でも、今生きる俺は無数の愛の上に立っているのだから。お前が言う通り、俺が空虚な存在であるならば、お前が俺を満たしてくれないか?」
「なっ……!?そ、そんな事…くぅっ…!」
モルガンは赤面して、若干俯いている。そうか、そんなに俺と友達になりたいのか。そうだもんな、俺たちは同志だ。
「俺の、大切な友人として共に生きよう」
「「『「…………は?」』」」
何故だか、その場にいる俺以外の全員の声が一致した。
「はぁ!?おまっ、お前!何考えてんだこの朴念仁!」
「グレン卿……君、今のは流石にどうかと思う」
『グレンってもしかして天然なの?あれじゃモルガンと言えど可哀想よ』
「あーっはっはっは!!!グレン君、君は…!ブフォッ!!」
全員から罵られる俺。何故だ、みんな友達になりたいんじゃ無いのか!?
「ま、待て待て!俺は何か変な事を言ったか!?仲良くなりたいと、そう願っただけなのにか!?」
「言い方が問題なのだよ……グレン卿、女性と交際した事は?」
「いや、無いが……だが俺は既婚者だぞ?ヴィヴィアンの夫…というか半分ヴィヴィアンだ」
すると、ランスロットは頭を抱えた。
「そうか……それ以前の女性との付き合いは?」
「無い」
「そうか…………そうかぁ…なら、仕方のない事か」
何やら一人で納得しているランスロットを尻目に、今度はグランツやヴィヴィアンが詰ってくる。
「なぁグレンよぉ、お前って女心本当に分かんねえのな。エレインの時もそうだし、今だってそうだ」
『グレンって戦いとかの勘は良いのに人の心には疎いのね。さっきのアレ、口説いてるようにしか見えなかったわよ』
は?口説いてないんだが?俺はただ友達になりたかっただけだ。そこまで言われる筋合いはない。
「エレインだって?アレはその、妹…みたいなモンだと思ってたんだが。それに、俺にはヴィヴィアンがいる。不貞を働くわけにはいかんだろう」
「つーかよ、グレン。お前そのナリで女経験ほぼ無いってマジかよ?お前はその、女ウケのいい顔してるからてっきり百戦錬磨だと思ってたぜ」
「俺を何だと思ってるんだ!?俺は昔から女子に避けられ、遠巻きにヒソヒソ陰口を言われていたんだぞ!?そんな男が女ウケするわけないだろう!」
そうして口論していると、モルガンが口を開いた。
「…………最低」
半泣きになりながら俺に一番効く事を言ってきた。そしてそのままモルガンはどこかへ消えてしまった。
その後、なぜか袋叩きにされたのはご愛嬌だ。
俺だ、グレンだ!!!!
あの死神は一体誰だったのだろうな!?
気になって夜しか寝れんわ!フハハハハハ!!!!
さて、これで一旦この章は終わりだ!
次に俺を待ち受ける冒険や如何に!
さぁ、お前の次回予告を数えろ。
聖杯とは、凡ゆる願いを叶える願望器だ。そしてそれを手にした者は、永遠の命と、無限の財を手にすると言う。王命により聖杯探索が今、始まる。
次回「グレイル・オーダー」
グレンの初登場時の特異点/異聞帯
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特異点F(冬木)
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特異点4(ロンドン)
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特異点5(ケルトアメリカ)
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特異点6(キャメロット)
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イベント特異点(影の国)
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第六異聞帯(妖精國ブリテン)