厨二病の男が勘違いされる話 作:D.D.D_Official
幕間「姦しい噂」
その日、謹慎中のモードレッドは暇を持て余していた。任務が無い上に、弟子のグレンもいない。そんな彼女は街の散策をすることにした。
「しっかし、相変わらず平和そのものだな。エディンバラで負けてたら、こうも行かなかっただろうしな」
そう独りごちるモードレッド。その頭には弟子の顔が浮かんでいた。
「そうだ、いい事を思いついたぞ。街中でグレンの噂を聞いてやろう。案外恥ずかしい噂があるかも知れねえしな」
ウシシと笑い、モードレッドは行動を開始する。
彼女が初めに訪れたのはエレインの所だ。
「よぉ、エレイン。突然ですまねえが、グレンについてどう思う?」
「え、どうしたんですかモードレッド卿。どうして突然そんな事を?」
「いやそれがな?暇なんだよ。だからこうして、グレンの噂を集めてるってわけさ。だからエレイン、何か知らねえか?アイツの噂とか、誰も知らねえような事とかよ」
「噂ですか……そういえば、グレンが街の女の子達に遠巻きにされてるのは知ってるんですけど…」
「あぁ?アイツ嫌われてんのか?」
「いえ、違いますよ。ほら、グレンって顔が良いでしょう?それに騎士になってからどんどん逞しくなって。それで女の子達から黄色い目線で見られているんですよ」
女心の理解が薄いモードレッドは首を傾げる。
「だったら何で言い寄らねぇんだ?」
残念ながら、モードレッドの思考回路は完全に粗野な男の物であった。恋する乙女の心など粉微塵も理解出来るはずもなかった。
「あはは…そこまで大胆な子は、中々居ませんよ。モードレッド卿は男性だから理解しづらいでしょくけれどね。グレンの事を好きな女の子達の間で抜け駆け禁止の協定が結ばれているそうですよ?」
「んだそりゃ…?下らねえ、さっさと押し倒しちまえば話は早えだろうに」
釈然としない面持ちでモードレッドはその場を去る。これ以上の問答は意味がないと分かったからだ。
次にモードレッドが向かったのは、ガレスの所だった。マーリンの魔術で男として見られているガレスだが、モードレッドからは「手が女みてぇだな!」と言われ女の子扱いされている。
「でよ、ガレス。お前グレンの事どう思ってるワケ?」
「何で私に聞くんですか!?!?!?」
「たはは、お前女みてえだからな。あんまり変わんねえだろ」
この女、その辺の男よりもデリカシーが無かった。だが、モードレッドは歴戦の騎士。ガレスが逆らえるはずも無かった。
「うーん、そうですね。グレン卿には、罪悪感を感じます。私が彼を死地に追いやってしまったのですから…」
「ほーん、そりゃ結構な事だ。で?アイツに恋焦がれたりはしてねえワケ?ほら、巷の婦女子の間で話題になってる…衆道?だっけか」
途端にガレスの顔は朱に染まり、煙が噴き出す。
「ばっ!ばばばばば、馬鹿じゃないですかぁっ!?わ、私が、あんなのと……!あんなのと…!」
「ダァーッハッハッハッハ!!!生娘みてえな反応しやがって!」
「うぅ〜っ!そう言うモードレッド卿はどうなんですか!?随分と親しいみたいですけれど!?」
涙目になりながら反撃するガレス。しかし、相手は女子力も女心もゼロのモードレッドだ。相手が悪かった。
「あぁ?オレが?ありえねぇな。アイツはなんつーか…出来の悪ぃ弟みてえな存在だな。ちょっと目ェ離したら死んでそうで怖えな」
鎧に隠されていてわからないが、ガレスはモードレッドの声音から親愛の情を感じた。
ガレスが若干の不公平さを感じていると、モードレッドは立ち上がりどこかへ行ってしまっと。
次なる獲物を探しモードレッドが城内を彷徨いていると、庭園の一角で食事を取っているアーサー王を見つけた。偶然周りには誰も居なかった為、モードレッドは意を決して聞いてみることにした。
「父う…いえ、王よ。少し聞きたいことがあるのですが」
もきゅもきゅと飯を食らっていたアーサー王は若干ギョッとした表情をしながらモードレッドに応対する。
「……ごくん。何でしょうか?モードレッド卿。私に質問とは珍しいですね」
「はい、それがですね」
モードレッドは多少の誤魔化しを入れながら質問の趣旨を説明する。
「グレン卿の評価……ですか。それも彼の人格面の。ふむ、何故そのような事を?」
「グレン卿は私自身が礼節を教えた弟子です。弟子の評判について知りたいと願うのは師匠として間違っているでしょうか?」
「いいえ、間違ってはいませんね。それにしても、グレン卿ですか…」
アーサー王は暫く考える素振りを見せると、口を開く。
「そうですね、グレン卿の評価としては『忠義に厚く、確かな実力と礼節を持った騎士』というのが一番ですね。それに、あの瞳には何故だか親近感を覚えます。彼は元々、王子であったのでしょう?それに礼節を教えられるとは、私は少々モードレッド卿を侮っていたのかもしれません」
思わぬところで褒められたモードレッドは少し有頂天になりながら一礼する。
「ありがとうございます。不肖の弟子ながら、グレン卿は良くやっています。彼に伝えれば、きっと喜びに咽び泣くでしょう」
そう伝え、モードレッドは立ち去る。
暫くモードレッドが歩いていると、何やら泣き声が聞こえた。騎士の礼節に則り慰めに行くと衝撃の事実がモードレッドを襲った。
「ぐすっ、わた、私…グレン卿に愛の告白をしたんです…!」
「なん…だと……!?結果は!?」
「それが…『その気持ち、嬉しく思う。だが冗談はやめておきたまえ。要らぬ誤解を生む。恐らく君は何らかの罰で俺に愛を囁いているのだろう?もっと君の気持ちに真摯になりたまえ』と言われてしまって…!私のこの気持ちは、本物だと言うのに…!ぐすっ、ううっ」
それを聞いて、モードレッドの中で一つの仮説が湧いた。
(もしかしてグレンの野郎、自身に向けられる好意に疎いんじゃねえ?)
当たりである。残念な事に、グレンは長年女子に避けられてきた経験から、よっぽど直球で、尚且つ逃げられない状況でないと好意を好意だと認識できないのだ。
女に告白された時のグレンの心境は、
(あぁ、この子罰ゲームで告白させられてるんだ。可哀想に。俺みたいな奴に告白するなんて嫌だろう。俺なんかを好きになってくれる異性はヴィヴィアンだけかよ…ていうかヴィヴィアンは俺だから実際いないし。そういえばエレインが居たな。いや、アレは妹のような存在だしな…)
これである。思考回路が非モテ拗らせた男そのものである。実際、拗らせてはいるのだが。
そしてこの情報は、面白いと思ったモードレッドにより拡散される事になる。
後日、「グレンは朴念仁」という噂が各地で流れグレンは陰で少し泣いた。いくら厨二キッズでもそこまでされる謂れは無いというのに。
グレンの初登場時の特異点/異聞帯
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特異点F(冬木)
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特異点4(ロンドン)
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特異点5(ケルトアメリカ)
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特異点6(キャメロット)
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イベント特異点(影の国)
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第六異聞帯(妖精國ブリテン)