厨二病の男が勘違いされる話   作:D.D.D_Official

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プロローグ3 復讐に燃える少女

 

締まらない感じで事件は終息した。厄災の獣は謎の死神によって殺され、モルガンは俺のことをボコボコにして去っていった。

 

俺は今、その報告をしたところだ。

 

「………そうですか。モルガンが…。わかりました、ご苦労。もう下がって良いですよ」

 

「はっ」

 

荘厳な宮廷内を歩いていると、暗がりに少女を見つけた。

 

「ッ!?」

 

その表情を見て、俺は柄にもなくゾッとした。少女から脅威を感じたわけでも、殺意を感じたわけでもない。ただ、その少女は何処までも暗く、全てを呪い、憎んでいる顔をしていた。

 

幽鬼のように爛々と青い目を光らせ、痩せこけていて最早面影は薄らとしかないが元々は美人であったろう顔を能面のようにしていた。

 

「…君、どこから来たんだ。何故人を、世界を呪う?」

 

「…………………し」

 

「何?すまないが聞こえなかった。もう一度言ってくれるか?」

 

「ブリテン滅ぶべし!ブリテン滅ぶべし!ブリテン滅ぶべし!ブリテン滅ぶべし!ブリテン滅ぶべし!」

 

「なっ!?何だこいつッ!妙だ、こんな奴がなぜ宮廷内に!?」

 

少女は懐から短剣を取り出すと俺に向かって飛び出してくる。慌てて俺は少女を蹴り上げてしまう。

 

「死ぃーーがふっ!?」

 

「ああっ、すまない!待ってろ、今治癒してやる!」

 

まずい、元々ただの高校生とは言え今は訓練を積んで強くなった騎士だ。そんな奴の全力の蹴りは恐らく内臓をめちゃくちゃにしてしまっだろう。俺はヴィヴィアンを呼んで少女を治癒させる。

 

「な、なぜ……!円卓の、癖に…!ゴミ虫の癖に!」

 

「教えてくれ、君は何故こんなことを?」

 

「うるさいっ!わたしの故郷を滅ぼしたブリテンなんか知るか!死ね死ね死ねぇっ!」

 

故郷?どういう事だ。ブリテンは今確かに戦争中だが、海外まで進出出来ていない筈…それに、アーサー王の方針で占領した所は滅ぼさず有効活用するとなっていた筈だ。ランスロットから聞いたんだ、間違いない。

 

「とりあえず、王の御前に引き出してマーリンとかに尋問してもらうか」

 

「この人殺し!悪魔!冷血動物!」

 

俺が少女の扱いに困っていると、どこからかハープの音色が聞こえてきた。この特徴的なハープ…誰だ?

 

「はぁ……私は悲しい。英雄殿が少女に手をかけるとは」

 

やって来たのはトリスタン卿だった。美しい赤毛の持ち主で、竪琴型の弓を使うらしい。

 

「おぉ、トリスタン卿か。いやなに、この少女が俺を殺そうとして来たのでな、その対応中だ。何やらブリテンに強い恨みを抱えているらしい」

 

そう言って俺は暴れている少女の首根っこを掴みトリスタン卿に見せる。すると、トリスタン卿は目を見開き驚いていた。

 

「な……!?まさか、こんな事があろうとは…!グレン卿、その子の恨みは正しい。我々は裁きを受ける必要があります」

 

「何だって!?とすると、まさか貴卿らがこの少女の故郷を?」

 

「王の元へ連れていくのでしょう?その時にお話ししましょう……行きますよ」

 

そして、トリスタン卿から明かされたのは衝撃的な内容だった。

 

俺がまだ円卓の騎士団に入っていなかった頃、サクセン人やピクト人の侵攻は激しく、兵站が持たない状態にあったという。そしてブリテン島自体も年々貧しくなっていき、しまいには草の根しか生えないような寒村を枯らしてでも戦っていたという。少女は、枯らした寒村の内の一つにいた気立ての良い美人だったそうだ。

 

「私はね、グレン卿。貴方に感謝をしているんです。貴方がエディンバラの奇跡を起こしてからというもの、土地は最盛期とは言わずとも良くなっているのです」

 

『当然よ!ブリテン島の神秘は私が管理してるんだから!………と言っても、一時的に充填されているだけでいずれ衰退する運命は変わらないわ』

 

「なんと、そうだったのですか。はぁ、これからの事を考えると少し憂鬱ですね…私は悲しい…」

 

喋っている内に、玉座の間に着いた。ひとまずこの少女の事を報告し、問題の対応に当たらなくてはな。一つの失敗には幾つもの問題が隠れているものだからな。

 

「王よ、城内にて不審者を捕らえました!どうやら不審者はかつての負の遺産であるようです。貴重なお時間を割いてしまい申し訳ないのですが、どうかご対応を!」

 

逆光が差す玉座に座すアーサー王の前に少女を突き出す。

 

俺たちの周りにはいつの間にか騎士達が集まって来ていた。当然ランスロットやグランツも居る。

 

「グレン卿、負の遺産とは?私は間違った事は"何一つとして"してはいないのですが…」

 

頭上から王の威厳ある声が響く。

 

「私から説明しましょう。この少女は、我々が枯らしたリコル村の生き残りです」

 

トリスタン卿がそう言った瞬間、騎士達が騒めいた。皆一様に苦い顔をしていた。全員何か後ろめたい事があるようだ。

俺の同期たちは皆驚いた顔をしていたが。

 

「アーサー王よ、国土に潤いが戻って来ている内に負の遺産を清算しましょう。俺たちは……」

 

そう俺が言葉を続けようとした時、アーサー王が静止させた。

 

「その必要はありません。何故なら、私の治世は間違ってはいないからです。全てはブリテンのため、枯らした寒村の民もブリテンに尽くせて光栄でしょう」

 

俺は、アーサー王に対してこの時初めて恐れを抱いた。だが、それと同時に圧倒的に王と凡人の格を知った。時に冷酷で、合理的だが常に己が最も正しく在る姿に俺は心焦がれたのだ。

 

「…………王は人の心がわからない」

 

誰が言ったか、この台詞は真理である。初めからアーサー王は人間などではなかった。"王"という一つの生き物であったのだ。

 

だが、そうは言ってられない。このような境遇は本来あるべきでは無いし、改善されて然るべきだ。どうすれば……?

 

『そうだ、貴方達聖杯探したらどう?』

 

俺がウンウン唸っていると突然ヴィヴィアンが口を出して来た。

 

「聖杯…?そうか、その手があったか!アーサー王よ!聖杯探索を行いましょう!そして聖杯にブリテンの豊穣を願うのです!さすれば寒村すら生まれないでしょう!」

 

再び場が騒めく。しかし、先程のような動揺は無く、そこには希望に満ち溢れた声で犇めいていた。

 

「聖杯…ですか、マーリン。聖杯の位置は把握していますか?」

 

「勿論だとも。でも、良いのかい?恐らくグレン君一人では成功しない。いや、殆どの確率で死んでしまうだろう。たとえ湖の貴婦人が一緒でもね」

 

「では、パーシヴァル卿とギャラハッド卿を。出発は一年後に。近くに控えた戦に勝利しない事には聖杯を探す余裕は生まれません。マーリンの予測では三ヶ月後に大きな戦いがあります。それまでに総員備えるように」

 

そこからは早かった。騎士達全員が聖杯探索を行うため死ぬ気で訓練を積んだ。具体的には、ランスロットとの組手だ。ランスロットは強く、そして忠義に厚い男だ。

 

 

 

しかし、俺は過信していたのだろう。

ランスロットの忠義を。アーサー王の覚悟を。

それがあんな悲劇を生むなんて、俺は知らなかった。




ファーハハハハハ!!!!!俺だ、グレンだ!
王国の闇を垣間見てしまったが、我が内に秘めたる闇の方が重い!ククク…ハーッハッハッハ!!!!!!ドワァーッハッハッハ!!!!

さて、次回予告だ。
王に忠義を誓った少年は、戦場の前に地獄を見る。
これが俺の求めていた騎士道なのか。
自問自答する少年の瞳には何が映るか。
次回「正義」

グレンの初登場時の特異点/異聞帯

  • 特異点F(冬木)
  • 特異点4(ロンドン)
  • 特異点5(ケルトアメリカ)
  • 特異点6(キャメロット)
  • イベント特異点(影の国)
  • 第六異聞帯(妖精國ブリテン)
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