厨二病の男が勘違いされる話 作:D.D.D_Official
夜。
俺たち三人と一精霊はキャンプの火を囲んで眠っていた。もっとも、精霊であるヴィヴィアンと同化した俺はあまり眠らなくても良い。だから俺はヴィヴィアンと二人で起きて火の世話をしていた。
「しかし…本当にパーシヴァルが馬を失うとは。歴史の修正力、と言う奴か?だとすればパーシヴァルやギャラハッドは聖杯によって天に召されてしまう事になる……」
俺は二人との絆を思い出す。何度か一緒に訓練し、同じ飯を食い、同じ酒を飲んだ。気づけば俺の友達とも呼べる存在になっていた。
「こんなの、ランスロット以来の感情だ……絶対に、裏切らせたくない。死なせたくない。俺が、運命を覆してみせる……」
『グレン、何か考え事?相談事なら私に言ってよね。力になるから!』
そうだ。俺は一人じゃない。頼もしい剣と、妻がいる。それにいざとなればグランツにも協力を仰ごう。カムランの戦いなんて、起こさせてたまるか。
「ヴィヴィアン、お前だけは最期まで俺と共に居てくれるか?」
『当たり前じゃない!私は貴方、貴方は私。離れる事なんて絶対に出来ないわ!』
それを聞いて俺は安心する。良かった、やはり俺は一人じゃない。そう考えるとやる気がモリモリ湧いてくるな。
「しかし…馬か。乗りながら会話というのが出来ないのは痛いな…」
『霊馬を取りに行く時間があれば良いのだけれど。生憎、影の国に置いてきちゃったのよね。あのスカサハがそう簡単に通すとも思えないし』
「だよなぁ……はぁ、儘ならないものだな」
俺がそう愚痴ると、何やら近づいてくる気配を感じた。ヴィヴィアンに隠れるように指示すると俺は神経を張り巡らせ来訪者を待つ。
「もし……そこなお方。馬に困ってはおりませぬか?」
そこに立っていたのは、俺が見たこともないような美人だった。あり得ない、こんな神の作ったかのような人形じみた造形。それに、肉感的な瑞々しい肢体は男を虜にして止まないだろう。
「…………………」
気づけば俺は、言葉を失ってしまっていた。それ程までに美しい。ヴィヴィアンやエレイン、それにスカサハやモルガンで美人は見慣れていると思ったが、一線を画している。
「あの、困っているようでしたのでお声がけをいたしましたが…何かご無礼を働いてしまいましたか?」
「…っ!いや、何でもない。それよりも、こんな夜半に男所帯の野営地に来るなんて用心が足りないぞ。君は美しいのだから、もっと警戒するべきだ」
すると、美人は顔を朱に染めて俯いてしまう。なんと奥ゆかしい事だ。外人が日本人を見た時はこんな気持ちになるんだろうか?
「そんな、私が美しいだなんて…恥ずかしいですわ。こんな醜女にお世辞なんて」
「いいや違うっ!君は美しい。少なくとも、俺が見てきた中では最も美しいと言っても過言ではないだろう」
そこまで言って、俺は彼女の頭に生える二本の山羊の角を見た。成る程、これが彼女を自虐させる原因か。
「そんな二本の角が何だと言うんだ?君の美しさに傷をつけるものではない。寧ろ、神秘性を感じる角だ。だから安心してくれ。君は美しい」
二本の角と言った所で彼女はその表情に警戒を顕にした。やはり、コンプレックスになっているのだろうか。
「貴方様は…私の角が、見えるのですか?」
「当然だ。隠している雰囲気はあったが、俺には無駄な話だ。何故だか知らんが、俺には幻術や呪術の類が一切効かないからな……あっ」
そこまで言って何となく状況が読めてきた。
この女、悪魔だ。
パーシヴァルを誘惑し、殺しかけたと言う奴だ。成る程、悪魔なら美しくて然りだろう。以前任務中に出会った悪魔も中々に美しい貌をしていたからな。
「ど、どうなされたんですか…?騎士様…私が、何か……?」
「フフ…クハハ……!よもや俺を騙し得るとはな。ハーッハッハッハ!!!確かに、お前は堕落の悪魔だとも!しかし、俺に狙いを定めたのが間違いだったな!」
「ちいっ!バレてしまっては仕方ない!ここで死んでもらう!喰らえ【暗黒衝動h『待てカスコラ』……ふぇ?」
俺の背後から地獄から響くような恐ろしい声を聞いた。恐る恐る振り返ると、そこには怒れる精霊がいた。
『よくも、私のグレンを…誘惑してくれたなぁ?血祭りに上げてやる。精霊の伴侶に手を出した罪、贖うがいい!』
「ちょっ!待っ、しら、知らなかったんですぅううう!」
『問答無用!【グランドクロス】ッ!!』
超高速で光の十字架が悪魔に突き刺さる。悪魔は声も上げられず消滅した。怖、浮気なんて考えたことも無いが、絶対にするまい。
『グレン?』
「はいっ!」
『私の事、どう思ってる?』
「俺が世界で一番愛している半身です!」
『かわいい?』
「はいっ!宇宙一かわいいです!」
『ふぅん、そう。なら良いわ、今度、デートね』
「はいっ!」
酷く情けない。途中から起きていたギャラハッドに「鬼嫁」と言われたのは流石に肝が冷えた。暫くはヴィヴィアンとイチャイチャしながら走る事になりそうだ。
許せ、ヴィヴィアン…だからもう『10000回好きって言って?』はやめてくれ。俺の喉が、俺の喉が死んでしまう。帝国一の美声を誇る俺の麗しの喉が。
まぁ、元はと言えば俺が悪いのだ。甘んじて罰を受けよう。
さて、次回予告だ。
悪魔を退けたグレンは、再び厄災に見舞われる。氾濫する川、突然の転移、そして仲間達に迫る魔の手に少年は熱い心を見る。
次回「死へと誘う罠」…君は生き残る事が出来るか?
グレンの初登場時の特異点/異聞帯
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特異点F(冬木)
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特異点4(ロンドン)
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特異点5(ケルトアメリカ)
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特異点6(キャメロット)
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イベント特異点(影の国)
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第六異聞帯(妖精國ブリテン)