厨二病の男が勘違いされる話   作:D.D.D_Official

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獣狩りの男グレン

 

「皆様、到着致しました。ここが聖杯王の都、サラス市で御座います。皆様どうか、不肖の兄と聖杯をお願いします」

 

どうやらディンドランはここで別れるようだ。何の強さも感じないディンドランは確かにここで別れておかないと、いざ戦いになった時に危険に晒されてしまう。それだけは回避しないとな。

 

「うむ、俺たちに任せろ。其方はここで船の番をしていてくれるか?」

 

「勿論でございます。では、お気をつけて」

 

そうしてディンドランと別れた俺たちは、早速聖杯王とやらに謁見してみる事にした。

 

「俺はブリテンからやって来た円卓の騎士、グレン・ヴァン・インフェルノである。聖杯王アルカディアス殿に面会を求めるが、返答は如何に?」

 

「貴様らが来るのは予見されていた。来い」

 

案外すんなり入れたな。罠だったりしないよな?何というか、兵士達の気がどことなく張り詰めているように感じる。

一応、パーシヴァルとギャラハッドに目配せをして警戒を促しておく。

 

暫く歩いた先に居たのは、全身を真鍮の鎧で武装した、立派な髭を蓄えた王だった。ほう、中々に威厳があるな。

 

「ワシは聖杯王ウーノス・ヴァン・アルカディアスである。我が城お抱えの魔術師達の祈祷によって、貴公らが来ることは知っていた。して、要件を申すが良い」

 

パーシヴァルが前に出て話し始める。

 

「私たちは、我らが故郷ブリテンを救う為に聖杯を探しに来ました。ブリテンは今、困窮状態にあります。土地は枯れ、野生動物も中々獲れないと言った事態なのです。ですのでどうか、聖杯をお譲りください」

 

「それは出来ない」

 

「──────何故」

 

パーシヴァルの頼みを一刀の元切り捨てたアルカディアス王は、暗い顔をしながら語り始めた。

 

「聖杯は今、ロンギヌスの怪物に奪われている。そしてその怪物は我が城の地下にいる。それから取り返したのなら、聖杯を貸し与えよう。無論、客人である貴公らを易々と死なせる訳には行かぬでな」

 

なるほど、怪物が居るから渡せない。と。だが、俺なら行けるんじゃないか?俺は半分精霊だし、それにクリムゾンやバンシーもある。怪物程度今更なんだって言うんだ。

 

それに俺には、引けない理由があるからな。

俺はグレン・ヴァン・インフェルノだ。インフェルノ皇家の男子たる者、ここで引いてはいけない。

 

「────俺が行こう」

 

「なっ!?グレン卿、正気ですか!?ロンギヌスの槍と言えば、必殺必中の槍ではありませぬか!」

 

「そんなもの、とうに慣れている。怖気付いたのならディンドランの元へ戻ると良い。彼女はきっと歓迎してくれるだろうさ」

 

そう言うと、騎士としてのプライドが傷つけられたのか二人が立ち上がり俺に合流する。

 

「本当に、良いのですかな?ワシの予言眼によると貴方達の誰かが死にますよ」

 

「それでブリテンが救えるならば本望だ。案内してくれるか?」

 

「………素晴らしい忠誠心だ、褒めて遣わそう。では、こちらへ…」

 

俺たちは玉座裏の隠し通路を通り、地下へと潜る。階段を一段一段下がるたびに、凄まじい重圧を感じる。

 

『なに、ここ…?気分が悪くなりそう…』

 

15分程階段を下った時、突然歌が聞こえ始めた。どこか物悲しく、何かに懺悔するような歌だ。歌詞が聞き取りづらい、もっと近づかなければ聞こえないだろう。

 

「どうしたのですか、グレン卿?何かご様子が変ですが…」

 

「歌が、聞こえないか?」

 

「は?急に何を…?っ!グレン卿、顔色が…!やはり危険です!ここは一旦、態勢を立て直しましょう!」

 

わからないかな、この歌が…

 

「いや、俺は大丈夫だ。それに、俺は元から顔色は良い方ではない。気にするな、行くぞ」

 

それから30分程降りたところで、階段は終わった。歌声は近い。いや、これは歌ではない…恨みだ。負の感情だ。

 

「聖血よ、聖血よ、何故お前は私を苦しめるのか。聖杯よ、聖杯よ、お前は私が憎いのか。我ら処刑の民はお前達の望むままに救世主を殺したぞ、何故我らを呪うのだ。ああ、聖血よ…何故私を蝕むのか…?」

 

その言葉は、俺が最も慣れ親しんだ言語だった。

 

「何を言っているのだ、あの獣は…!?」

 

「さぁ…?わかりませんが、恐らくあれがロンギヌスの怪物でしょう!警戒を!」

 

俺の魂に訴えかけてくる。「何故?」と。そんな筈はない。俺はお前を知らない筈だ。そうだ、そうに決まっている。だが、俺は奴の名前を識っている。そう、あいつは──────

 

 

「ロン、ギヌス…?お前、ロンギヌスなのか…?」

 

『知っているの?グレン』

 

「知らない…だが、識っている。誰だ、コイツは…俺の記憶の中に、入ってくるな…!」

 

俺の脳内に、存在しない記憶が溢れ出す。ロンギヌス、盲目の男。()()()()()()()()()()使()()()()()男だ。キリストの血を浴び、祝福と呪いをその身に受けた哀れな処刑の民。

 

「お、お…!グレニア、我が、旧き友…炎の導きよ…!こんな奇跡があろうとは…!憶えて、いるか。私だ、ロンギヌス…だ!」

 

ロンギヌスの怪物は振り向き、その醜悪な顔を喜色で染めながら爛れ、腐った足で此方へ向かってくる。

 

「どうしたのですかグレン卿!奴が来ます、武器を抜いて下さい!」

 

『待ってて!今グレンの魂の様子を…………嘘。酷い、こんなのって…こんなのって……』

 

俺の中の"何か"が旧い友との再会に歓喜している。

 

『目を覚ましてグレン!貴方はグレニア・ゴッドヴェルムでは無いわ!グレン・ヴァン・インフェルノでしょう!?』

 

ヴィヴィアンのその声で、目が覚めた。そうだ、俺はグレンだ。誇り高きインフェルノ王家第三皇子、"漆黒"のグレンだ。断じて、グレニア・ゴッドヴェルムなどと言う神人などではない。

 

「そうだ、俺はグレンだ!おい、化け物。お前が俺に何をしたか知らんが、お前は俺に敵対した!即ち、万死に値するッ!」

 

「グレニア…?怒っているのか?私が、永く便りを出さなかったから、か?すまな、い…やむを得ぬ、事情が…あったものだったから…」

 

「黙れ!貴様なんか知ったことか!俺はもう、グレンなんだ!俺の魂に溶け込んだ異物は、既に俺の自我に喰われて死んだぞ!」

 

俺が武器を構え、双剣の構えを取る。

 

「あ、ア…!アアアアアアアアアアアアッ!!!!████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████」

 

怪物は狂乱し、俺たちに襲いかかってくる。戦いの火蓋は切られた。フッ、あとは勝つだけだな!




item:-ロンギヌスの槍-
処刑の民、ロンギヌスが救世主を貫いた時に用いられた槍。
その全身は聖血で真っ赤に染まっており、持つ物に神殺しの力を与える。
かつて、ロンギヌスは賢者グレニアに導きを求めた。そして、ロンギヌスはグレニアと「転生の誓い」を結び、この槍に刻印した。
グレニアの魂無き今、その約束が守られるはずは無いのだけれど。

グレンの初登場時の特異点/異聞帯

  • 特異点F(冬木)
  • 特異点4(ロンドン)
  • 特異点5(ケルトアメリカ)
  • 特異点6(キャメロット)
  • イベント特異点(影の国)
  • 第六異聞帯(妖精國ブリテン)
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