厨二病の男が勘違いされる話   作:D.D.D_Official

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取引

 

終わった。これで聖杯は俺たちの物だ。

 

「終わったぞ、さぁ…聖杯を。」

 

「え、ええ……グレン卿、ご無事ですか?」

 

何を言っているんだ?俺は大丈夫に決まっているだろう。だって俺は元から英雄なんだからな。

 

 

いや待て。俺は元々高校生だったはずだ。英雄?違う、俺は英雄グレンじゃない!やはり、力を使い過ぎると頭がどうにかしてしまうのか!?

 

『グレン君、グレン君』

 

「ヴィヴィアンか……何だ?」

 

『あのさ?運命って信じるかな?信じるよね?』

 

何だ、いきなり…?というか、ヴィヴィアンはこんな軽薄な口調だったか?そうか、俺の頭がおかしくなってるからヴィヴィアンもその影響を…!

 

「いいや、俺は運命など信じない。運命とは、自分の手で切り拓いていく物だからだ。それにしても、ヴィヴィアン。様子が変だな?どうした?」

 

『ううん、何でもない。でもそっか、信じないんだ、運命。ならさ、ワタシと賭けをしようよ』

 

「賭け、だと?」

 

『そう、賭け。ワタシがこのブリテンの運命を早めてあげる。来たる破滅の運命に君は抗えるかな?ふふっ、楽しみだね?』

 

ヴィヴィアン?は蠱惑的な笑みを浮かべ、最悪な賭けを持ち出して来る。

 

「──────俺が運命に負けたら、どうするつもりだ?」

 

それを聞かない事には賭けなど成立しない。あまり乗りたくはないが、乗らなければこのヴィヴィアン?は何をするかわからない。そんな恐ろしさがある。

 

『へぇ?それを聞くってことは乗ってくれるんだ?そうだなぁ、じゃあ…君が勝ったら、君を勇者として昇華してあげるよ。その代わり、君が負けたら…君という存在全てはワタシの物だ、まぁ元からそうなんだけれどもね?』

 

何だ?ちっとも理解できん。勇者に昇華?元からヴィヴィアンの所有物?何を言っているんだ。勇者というのは勇気ある者の事だ。誰かに決められる物ではない。それに、俺は俺の物だ。誰の物でもない。

 

『じゃあ早速、事件を起こそうか。場所はキャメロットだ。フフ、急いだ方が良いよ?一刻も早く帰らないと君の大切な人が死んじゃうかも…♡じゃ、この身体は返すよ。精々足掻くんだね!』

 

そう言うと、ヴィヴィアン?から光る靄が抜け出て天へ昇っていった。奴の言うコトを信じたくはないが、信じる他は無いだろう。

 

『ぅ……わ、私…何を……?』

 

「お目覚めか。早速で悪いがキャメロットまで走るぞ。ギャラハッド卿、パーシヴァル卿、俺が抱えるが良いな?」

 

「お、お待ちくださいグレン卿!聖杯はどうするのですか!?アレがなければ、我々の旅路は無駄になります!」

 

「なら、私が持ちましょう!」

 

ギャラハッドが聖杯に駆け寄り、聖杯に触れる。その瞬間、ギャラハッドが消滅した。

 

は?意味がわからん。どうしてギャラハッドは消えたんだ!?何が、

 

「────────────皆さん」

 

「ッ!?ギャラハッド卿!いつの間に後ろに!?」

 

いつのまにかギャラハッドが背後にいた。それも、特大の強者のオーラを纏わせながらの登場だ。この一瞬でギャラハッドに何があった!?聖杯も消え失せてるし!

 

「あぁ、私の事は…そうですね、亡霊とでも思ってください。聖杯に触れた瞬間、神と出会いました。そしてその時、サーヴァントとしての力を得ました」

 

「英霊、だと?」

 

「はい。私はこれから世界を救う為にとある施設に召喚される事になるらしいのですが、その前にご挨拶をばと思ってですね」

 

さっきから怒涛の展開すぎて、俺の脳が理解を拒んでいる。いや待て、この話どこかで聞いたような…?

 

「それはもしかして、カルデアという所じゃないか?」

 

「おや、どこでそれを?もしや、貴卿も神に見えたのですか?」

 

ギャラハッドは物凄く穏やかな顔をしている。俺の見慣れた幼げながらも必死に成長しようとする男の顔では無い。

これは、達観した老人の顔だ。

 

「いいや、俺はとある男から聞いた。だが、教えてやらん。死人に話すべきことはない。行くならばさっさと行ってしまえ。お前が俺の友である内にな」

 

「………そうですか。とても、残念です。ではいずれ、何処かで」

 

そう言うとギャラハッドは光の粒子となって消えてしまった。さらばギャラハッド。お前の事は忘れない。

 

「さぁ…走るか!パーシヴァル卿、待たせてすまなかったな」

 

「──────申し訳、ありません。私はここに置いていってください」

 

「何?」

 

俺が振り返ると、パーシヴァルは俯きながら苦しそうにそう言った。良く見ると、視線の先には血がある。そうか、負傷したのか。なら治療が必要だな!

 

「見せてみろ、どれほど……っ!?」

 

「はは、見られてしまいましたね。ええ、目が、潰れてしまったのです。奇跡でも起こらない限り、私は光を見る事は無いでしょう。先程から私は神に祈りを捧げているのですが…あまり芳しくないですね…」

 

「馬鹿野郎!くそ、どうにか…そうだ!」

 

ロンギヌスの槍、あれは確かロンギヌス自身の目をも治療したという!なら同じことをすれば良いワケだ!そうと決まれば話は早い。俺は地面に突き刺さった槍を引き抜き、パーシヴァルに握らせる。

 

「グ、グレン卿…?これは一体?」

 

「ロンギヌスの槍だ。これにはな、盲目の者を癒す効果があると言う伝説があるんだ。どうだ、治っている感覚はあるか?」

 

「いえ、全く…私の事はいいですから、行ってください…」

 

「なら次だ!聖人の血が無いから治癒しなかったんだな?なら、聖人に血を流してもらう他あるまい!ヴィヴィアン、心当たりはあるか?」

 

嫌だ。

 

『えっ…?あるには、あるけど…』

 

失うのは嫌だ。

 

「教えてくれ。誰だ?」

 

『それは……』

 

 

 

もう、誰も失いたくない。

 

『貴方よ、グレン』

グレンの初登場時の特異点/異聞帯

  • 特異点F(冬木)
  • 特異点4(ロンドン)
  • 特異点5(ケルトアメリカ)
  • 特異点6(キャメロット)
  • イベント特異点(影の国)
  • 第六異聞帯(妖精國ブリテン)
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