厨二病の男が勘違いされる話   作:D.D.D_Official

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英雄グレン・ヴァン・インフェルノ

 

「俺が…聖人、だと…!?」

 

『ええ、貴方は精霊と人間の間の存在。そして今、貴方の魂は精霊のものに近づいてきている。でも、人間はどこまで行っても人間。つまり、貴方は精霊の一つ格下である聖人に至っているのよ』

 

「──────そうか、なら話は早いな!よし、早速これを俺に突き刺して…」

 

『ダメよ。それをしたら貴方は死ぬわ。貴方は聖人、そしてロンギヌスの槍は聖人殺し。解るでしょう?もし、それをすると言うのなら私は…そこの騎士を殺すわ』

 

「何だと?」

 

それはダメだ。ヴィヴィアンに騎士殺しになって欲しくないのもそうだが、何よりもパーシヴァルを失いたくない。

だが、ヴィヴィアンは俺を思って言ってくれているんだろう。ここで死んでパーシヴァルを助けるか、ここでパーシヴァルを見捨てて帰るか。

 

考えろ。俺は誰だ?

 

 

俺は────────────

 

 

「俺は…グレン。グレン・ヴァン・インフェルノだ。高潔な騎士であり王の器を持つこの俺は、決して友を見捨てることは出来ない。すまないな、ヴィヴィアン。俺はお前の思いに応えてやる事が出来ない」

 

「い、いけませんグレン卿!私なぞ…!手負いの騎士よりも聖人である貴方が生きるべきだ!」

 

「すまないな、パーシヴァル卿。俺は俺の信じた道を進むだけだ。まぁ、そうだな……俺が死んだ後は『火焔騎士グレン卿は神殺しを討ち滅ぼし、友の騎士としての命を救った英雄である』とでも言っておいてくれるか?」

 

「しかし──────」

 

『良いから聞きなさいよ。私はグレンについていくだけだもの。貴方、ちゃんとグレンが凄いって宣伝するのよ?』

 

どうやら、ヴィヴィアンも納得してくれたようだ。俺はロンギヌスの槍を片手に持ち、心臓へと向ける。どうせ死ぬんだ、ならばせめて散りざまはカッコよくな。

 

槍が震えている。そうだろうな、久しぶりの聖人の血だ。しっかり味わえよ。

 

「──────ああそうだ。パーシヴァル卿、目が治り次第キャメロットに行け。何かが起こるらしいからな。まぁ、恐らくはランスロットだろうが……話せば解るだろう。頼んだぞ」

 

「……っ、いずれまた、神の国で…!」

 

「おう、Amen…ッ!!!」

 

 

槍が心臓に突き刺さる。

血は槍を伝いパーシヴァルへ流れ込む。

 

 

「ほう、これが……晩鐘、か…」

 

 

なかなかどうして、悪くない。

ヴィヴィアンの微笑む顔を見て、安心した。

これであの世も寂しくはないな。

 

思えば俺は理想の自分になり切れただろうか。

グレン・ヴァン・インフェルノになれたのだろうか。

 

 

《なれたさ。》

 

 

お前、は──────

 

 

《お前は俺だ。完璧に、な》

 

 

そうか、よかっ……た…………。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

パーシヴァル帰還の知らせに、キャメロットが湧いた。その片手には聖杯を、もう片方の手には聖槍ロンギヌスを。その姿は正しく、救世の英雄そのものだった。

 

歓喜に沸き立つ民衆達の中から、一人の少女が躍り出て、パーシヴァルに「私の恋人は何処に?」と問うた。それを聞くと、パーシヴァルは顔を伏せてただ一言「英雄として死んだ」と応えた。

途端、少女は崩れ落ちた。しかし、それを民衆は気にも留めなかった。絶望に打ちひしがれた少女を歓喜の声が包む。

 

パーシヴァルはそんな少女の様子を哀れに思い、腰の二本の剣を引き抜き赤い月のような片目で少女を見やると、剣を少女に渡した。

 

「それは、私の最も尊敬する騎士の剣だ。」

 

パーシヴァルの言葉に、少女は訊ねた。

 

「彼は何故死んだのですか」と。

 

それに応えて言うには、

 

「騎士グレン卿は己の名と誇りと友のために英雄として死んだのだ」と。少女は今度こそ泣き出しながら大観衆の中から離れてしまった。

 

パーシヴァルが王に謁見し、聖杯を渡した。

王は頷き、パーシヴァルと共に旅立った二人の騎士の死を悼んだ。そして、王は言った。

 

「この世で最も高潔な二人の騎士達を忘れぬように」

 

多くの民達は喜んだ。英雄の誕生と、ブリテンの救済が同時に起こったのだから。しかし、それを憎む者達が居た。

 

 

名を、ランスロット。そしてグランツ。

 

二人は死した英雄の友であった。

彼らは愛のために、友と王妃への愛のためにブリテンに反旗を翻した。だが、挙兵したのはたったの二人だけであった。

 

数的不利による劣勢。苦戦に苦戦を重ねる中、ついにグランツが捕まり処刑されてしまった。そしてまた、それに憤る者が居た。

 

名をモードレッドという。

 

彼女は正当な怒りを燃やしたグランツに対して同情と憐憫の念を抱いていた。しかし、その想いは自身が慕っていた王によって亡き者にされてしまった。

 

このような悪逆、許してなるものか。

 

モードレッドはアーサー王がローマに遠征に出かけたタイミングで挙兵。大反乱を起こした。しかし、パーシヴァルの活躍により叛逆した騎士達の半数が壊滅。

その後、戻ってきたアーサー王によりモードレッドの討伐に成功した。だが、実の息子を殺して見せたアーサー王に対し、パーシヴァルは深い悲しみと共に叛逆。その手の聖槍とアーサー王の持つ聖槍が激突し、激しい死闘の末に両者は死んだ。

 

ただ一人残されたランスロットは、王妃ギネヴィアと共にフランスで暮らしていたが、アーサー王死亡の報せを受け、報せを聞いた翌年首を吊って自害した。

 

 

 

 

   ──────『アーサー王物語』より抜粋

 

 

 

○○○○○○○○

 

 

「来たれ、天秤の守り手よ──────!」

 

 

その日アインツベルン城にて、サーヴァント召喚が行われた。燃える炎のような光が辺りを照らす。

 

「──────問おう。貴様が俺のマスターか?」

 

 

 

第四次聖杯戦争の始まりの鐘の音が鳴った。




生前編は終わりです。
これからは第四次聖杯戦争編です。

グレンの初登場時の特異点/異聞帯

  • 特異点F(冬木)
  • 特異点4(ロンドン)
  • 特異点5(ケルトアメリカ)
  • 特異点6(キャメロット)
  • イベント特異点(影の国)
  • 第六異聞帯(妖精國ブリテン)
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