厨二病の男が勘違いされる話   作:D.D.D_Official

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命の価値

 

あの後、俺は全員を起こした。

今思えばアレはマーリンの仕業だったのだろう。

 

次見たらぶっ飛ばしてやるぞ。マーリン覚悟しろ。

 

因みに、俺は今回全員を起こした功績を称えられ下級騎士長になった。こんな事で昇格するのは間違いだから俺は辞退したのだが、アーサー王にどうしてもと言われ仕方なくその立場を拝領した。

 

「なぁグレン、いや…グレン隊長殿?少し良いか?」

 

「何だグランツ、お前らしくない。俺には敬語を使うなよ。寂しいだろう?」

 

「ははっ!それもそうか!これからもよろしくなぁグレン!」

 

「それで?話って何だ。下らないことでも良いが、話してみろよ」

 

「おう、それがな?オレらの大隊長殿であるガレス卿いるだろ?そのガレス卿がよ、ランスロット卿との御前試合で良い勝負をした影響で前線勤務が決まったみたいなんだ」

 

「前線、だと?」

 

「そうだぜ。オレらってほら、新兵だろ?だから急な前線勤務っつーのはやべーんじゃねえかって思ってな」

 

「ふむ、王は何をお考えなのか……?」

 

「それが解りゃ苦労しねえよ」

 

「ははっ、それもそうか」

 

それにしても、本当にアーサー王は何を考えているんだろうか?俺が先日ランスロットやマーリンと喧嘩……いや、言い争いをしたからか?

 

しかし彼らはそんなに器量の無い人物だったか?確かにランスロットは勘違いしてガウェインの弟達を殺すぐらいには手をつけられないが。

 

少なくともマーリンはもっと大らかな奴じゃなかったか?それにアイツは悪魔の子だ。悪魔ともあろう者がそんな器量のはずが無い。だとしたらなぜ…

 

「あっ、グレン卿!探しましたよ!」

 

「っ、ああ…ガレス卿か。俺に何の用だ?」

 

「えっへん!私の隊の名誉ある異動が決まったのです!どうです?これで私でもやれるって事を証明出来たでしょう!」

 

「………ガレス卿。何故、俺たちは前線勤務なのだ?言っては悪いが、俺たちは新兵だ。碌に戦闘経験も無く、訓練も足りない。そんな連中に前線を任せる?不可能だ。

不可能を可能にするのは英雄の役割だが、俺たちは英雄じゃない。無論、俺はかつて魔龍ヤルダバオトを討伐した大英雄の血を引く者ではあるがな」

 

「大丈夫ですっ!心配なら、私が英雄になります!それに、これは私が望んだ事ですから!」

 

「何だと?」

 

「え?だから、英雄になるって…」

 

「そうではない!その後だ!貴卿まさか、貴卿が前線を望んだのか!」

 

「そ、そうですけど…そんなに怒鳴らなくても…」

 

「この、大馬鹿者がぁっ!思い上がるなよ小娘がっ!人が誰にも英雄になれると思うな!俺や貴様は兎も角、グランツ達のような普通の騎士はどうなる!?貴様の独り善がりで死ぬ事になるんだぞ!本当に貴様円卓の騎士か!?」

 

巫山戯るな。英雄になるなんて軽い理由で命を危険に晒す?言語道断だ。そんな事で命を落とした者はどうなる?結果が伴ったとして、その死に何の意味がある?

 

武勇、名誉。そんな物に騙されて死ぬなんて、そんな哀しい事してはいけない。自分が選んだ死に場所なら喜んで送り出そう。だがな、他人に選ばされた死に場所など無意味なんだよ。

 

「なっ、私だって…歴とした騎士なんですよ!?確かに、ドジは多いですが!それでもサクソン人くらいは殺せます!殺して見せますっ!」

 

「そうじゃない、そうではないんだ…!いいか?ガレス、貴様は一人だ。貴様がどれほど強かろうと、一人なのだ。60人近くいる騎士達を守る事など出来ない。今からでも遅くない、前線を辞退しろ」

 

「…………嫌です。そんなに言うなら、あなたが守ったらどうですか?あなたは英雄の末裔なんでしょう?ならやって見せて下さいよ。私は、変える事はしませんから」

 

「待っ…!」

 

「ではまた、戦場で会いましょう」

 

行ってしまった。くそ、どうする?俺は弱い。明らかに弱い。力だけなら細身のグランツよりも弱い。たかが数週間訓練した程度の俺が、仲間達を守りながら戦うなんて不可能だ。

 

モードレッドを探して特訓を付けてもらうか?いや、それともチームワークを鍛えていつでも撤退出来る様にするか?

 

 

そうして、三週間後。俺たちの戦場が決まった。

そこが後に「エディンバラの奇跡」と呼ばれる場所だとは、俺たちの誰もが知らなかった。

 

 

○○○○○○○

 

 

「とうとう本当の戦争か……」

 

小高い丘の上から敵陣を見据える。

敵兵約4万。内、騎兵3000。攻城兵器は無し。

 

「しかし壮観だな。こうまで敵が多いと、蟲の大群に見えてくるのだから」

 

「なぁ、グレン。オレら勝てるのか?」

 

「勝つしか無いんだよ。ここで負けたら、ブリテンも俺らも終わりだ」

 

「そうだよな!うしっ、気合い入れなきゃなぁ!」

 

敵4万に対し、我が軍僅か120人。内40が後方支援専門。はっきり言って、勝ち目は無い。今回の戦いで、恐らく俺たちの何人かは…或いは殆どが死ぬだろう。

 

速馬で王に救援を求めているが、恐らく来れないだろう。王の所は10万の敵が居る。救援は絶望的だ。

 

「それでも、俺はやるしか無いんだ……」

 

エレインから貰ったお守りの真紅のマントを手で弄びながら戦端が開かれるのを待つ。

 

「██████████ッ!!!!!」

 

「戦闘開始ッ!全軍進めえええええ!!!!」

 

「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」

 

とうとう始まったか。行くか。

 

「死に晒せええええ!!!!」

 

だが、この時俺は知らなかった。

己が死ぬという運命を。

グレンの初登場時の特異点/異聞帯

  • 特異点F(冬木)
  • 特異点4(ロンドン)
  • 特異点5(ケルトアメリカ)
  • 特異点6(キャメロット)
  • イベント特異点(影の国)
  • 第六異聞帯(妖精國ブリテン)
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