我が名はミクマリ。数少ないG級に数えられるハンターの一人でチーム・ノットアポリアのリーダーをさせてもらっている。一応転生者だ。今はハモン殿の作成したカラクリを用いて誘き寄せる憎み血塗られしマガイマガドを討伐するクエストをギルド本部から受注してチームバトルクライの面々と共闘することになった。
古龍すら餌にする超級古龍級生物、ここが…妹を死なせた私の命の張りどころかもしれない。ギルドからの依頼を受けて守りきれずに死んでいった妹…ギルドを恨むこともあった。だが、最期まで誰かのために命を張ることで償おうと決意した。そんな矢先の今回のクエストは鴨が葱を背負ってきたようなものだ。
「ここが私の死に場所か…」
「おいおい。縁起でもないこと言うなよリーダー」
「そうですわ、わたくしたちが揃えば無敵です」
「死なせませんよリーダー!熱血で力を合わせましょう!」
「オーオー、熱いねノットアポリアの人達は」
「なに、心配するでない。若い頃マガイマガドをソロ討伐した老獪の力を見せてやろう」
「お爺ちゃんほんとに大丈夫ー?」
「このメンバーなら古龍が相手だろうと討伐もできると思うけどねえ」
上から私、エルヴァス、マキアナ、キョウジ、アンテム殿、ケイマ殿、エスラ殿、レエム殿だ。大社跡に到着するなり一番戦いやすい河原の広場が見える崖の上や草むら、岩陰に陣取った我々は青空を注視。そして私は、爆発を何度も起こして空を舞う隕石に見紛う巨体を見た。
「来たぞ!マキアナ!ケイマ殿!」
「王牙砲【山雷】に機関竜弾セット!行けますわ!」
「往くぞ、禍ツ弓ノ幽鬼キューヌよ」
遠距離担当であるヘビィボウガン使いのマキアナと弓使いのケイマ殿に伝えると崖の上に陣取った二人がそれぞれ機関竜弾を装填、竜の一矢を引き絞る。そして天高く舞った空の王者リオレウスすら撃墜した一矢がついに放たれた。ギュンギュンと凄まじい音を立てて天を駆けた矢は隕石に激突。爆発した。
「命中したぞ!」
目のいいエルヴァスが高らかに声を上げる。自分が最強だと自負するだけあってその目は本物だ。そしてケイマ殿の弓、通称マガド弓の禍ツ弓ノ幽鬼キューヌは貫通力と爆発効果が持ち味。憎み血塗られしマガイマガドの強固な皮膚を貫いて傷を与えたはずだ。
「グオアァアアアアアアアッ!!」
闇夜に劈く憎み血塗られしマガイマガドの咆哮と共に、隕石の一部が爆発して方向転換。こちらに向けて急速に降りてきたのを、マキアナのヘビィボウガンの機関竜弾が次々に炸裂し爆ぜて行く。兜角が折れ、鎧の様な装甲もひしゃげて行くのが見えた。
「エルヴァス!キョウジ!アンテム殿!」
「防御は任せろ!」
「アンテムさん、合わせます!」
「いいや、俺が合わせる!」
「いざ参る!」
チャージアックス…金剛盾斧イカズチの盾を構えてマキアナを庇うように立つエルヴァス。機関竜弾を撃っていて無防備なマキアナを最低限守れるはずだ。そして、その前に陣取るのは愛用の太刀、夜刀【月影】を納刀した私と、大剣ゴシャガズバアを構えたキョウジ、轟槌【虎丸】を携えたアンテム殿。私は特殊納刀して構え、キョウジとアンテム殿はぐるんぐるんとその場で回転し己の得物を振り回して遠心力を加えて行く。
「カウンターフルチャージッ!」
「納刀。居合抜刀気刃斬り!」
「心を燃やせ!大回転!激昂斬!」
「大旋風!水面打ち!」
そして、落ちてきた憎み血塗られしマガイマガドに、急降下の衝撃を受けたエルヴァスのチャージアックスの回転斬撃、私の渾身の抜刀、キョウジとアンテム殿のタイミングを合わせた強烈な一撃が炸裂。憎み血塗られしマガイマガドの巨体を大きく吹き飛ばして河原に叩き落すことに成功した。
「エスラ殿、レエム殿!」
「待ってたにゃ!鬼人化【獣】!鬼人空舞!」
「派手に行くよ!圧縮解放フィニッシュ!」
さらに落下中の憎み血塗られしマガイマガドに跳び上がったエスラ殿のレイジネイルーによる連続斬撃が背に沿うように放たれ、地面に激突すると同時にレエム殿の横に構えたグランドカオスの回転斬りが炸裂。憎み血塗られしマガイマガドは大きくダウンした。
「今だ、たたみかけろ!」
「飛翔竜剣…!」
レエム殿が翔蟲で舞い上がり急降下の突進を叩き込み、それを皮切りに憎み血塗られしマガイマガドに怒涛の猛攻撃を加える私達。しかし妙なことが起きた。確かに与えた深手が、次々と燃えたかと思えば最初から傷が無かったように再生する光景を見た。見てしまった。
「まさか…!?体力回復させないために百竜夜行から引き剥がしたってのに…!?」
「どういうことだ、リーダー!?」
「おかしいです、確かにさっき折ったはずの兜角が…!?」
「たった今斬ったはずの前足の刃も…!?」
「おいおい、どうなってやがる!?」
「異常な再生速度じゃ…!」
「斬っても斬ってもきりがない…!」
「攻撃は効いている、だがなかったことに…!?」
全員が気付くほどの異常な再生能力。再生能力があるとすればおかしい。奴は足を引き摺っている。その傷は何故治らない?…いや、足の腱が切れた状態で「固定」されている…?まさかこれは、転生者の…!?いや、だが以前戦ったG級チームの報告ではここまで異様な再生能力は聞いてないぞ。最近会得した?どうやって?………いや待て、バルファルクの様に飛行し、テオ・テスカトルの様に爆発を操る…?まさか、喰らったものの力を会得する能力でも…?
「全員、離れろ!」
私が警告の声を上げると、咄嗟に全員動いて大きく後退する。同時に、エリア一つ巻き込む大爆発が発生。何とか逃れることに成功する。このとき私は知らなかった。50年前にこのマガイマガドを倒して英雄になろうとちょっかいをかけ、無惨にも喰い殺された転生者が……よりにもよって「コピー能力」を持っていたことを。
「キョウジ!防げ!」
「くっ…!?」
憎み血塗られしマガイマガドの口の中に溢れる炎が光線状に放射され、その射線上にいたキョウジがゴシャガズバアを盾に防ぐも、ゴシャガズバアがあまりの熱量に融解して溶け落ち無防備となったキョウジに憎み血塗られしマガイマガドが襲いかかる。
「そん、な…」
「キョウジ!?」
頭部を噛み付かれ、体を前足で押さえつけられて上半身を引きちぎられるキョウジ。バリボリと骨まで貪る咀嚼音が聞こえ、残る七人の血の気が引く。…また、私は……身内を死なせてしまったのか。一番の若手でありみんなの弟分で、何事も熱血に根性で乗り越えて行ったキョウジの笑顔が浮かぶ。
「よくも…よくもキョウジを!」
「お、おい!リーダー!」
エルヴァスの制止の声も聞かずに駆け抜ける。目前には、敵前だと言うのに残った下半身を悠長に貪る憎み血塗られしマガイマガド。跳躍と同時に夜刀【月影】を引き抜いて顔に向けて一閃。しかしそれは、眼前まで伸びた槍尻尾で防がれる。ニマッと憎み血塗られしマガイマガドが嗤った気がした。
「うおおぉおおおっ!
憎み血塗られしマガイマガドの槍尻尾の乱打を、太刀で舞うようにして全て捌いて行く。相手の動きに合わせて変異する技だ。それでも防ぎ切れず、掠った傷が全身にできて血が流れて行くが気にしない。すると憎み血塗られしマガイマガドの四肢に燃え上がった紅蓮の炎が爆発し、高速で周囲の空中を駆け回り始めた。
「ならば、水神乱舞!」
鞘と太刀を片手ずつで構え、急な水の流れに合わせるかのごとく、体当たりを逸らして弾いて行く。直撃をもらえば終わりだ。どうにか隙を見つける…!すると大きく弧を描いて突撃して槍尻尾を突き出してくる憎み血塗られしマガイマガド。その瞬間、前世で読んだことがある小説に出てきた剣技がフラッシュバック。私は納刀した鞘を握って構える。
「はああああ!」
「ミクマリ!?しくじったか!?」
間合いに入っていないというのに抜刀し振り切った私に驚くアンテム殿。ガキン、と。何かが突き刺す瞬間だった槍尻尾の先端を押し上げて憎み血塗られしマガイマガドを受け止める。それは槍尻尾の下面に挿し込まれた鞘であり、続けて振り抜かれていた太刀の柄が上面から炸裂し、上下から槍尻尾を挟み込む。
「――――“御盆返し”ッッッッ!!」
相手の必殺の一撃の威力を、運動エネルギーごと己が刀に乗せて吸収し力に換える。あたかも飲み物を限界まで載せたお盆をひっくり返すが如く、後の先の攻防一体の極致が炸裂。槍尻尾を叩き折ることに成功する。よし、奴の攻撃の手を一つ封じた!これならば…!
「待て、ミクマリ!ここは退避だ!敵の能力が未知数すぎる!ケイマの爺さん!エスラ!レエムの姉御!」
「心得ておる!」
「落ち着いてミクマリさん!」
「少しでも気を引くよ!
このままたたみかけようとすると、アンテム殿に手を掴まれて止められる。同時にケイマ殿の矢が放たれて右目を潰し、憎み血塗られしマガイマガドの足元をちょこまか走り回るエスラ殿が搖動し、さらに飛びかかったレエム殿が突き刺したグランドカオスがパンパンパンパンと脇腹で火を噴く光景を見て、正気に戻る。そうだ、私は冷静じゃなかった。エルヴァスとマキアナもキョウジの死で動揺している。作戦を続けられる精神状態じゃない。撤退するしか、ない。そんなことにも気づかないとは……。
「奴の炎に当てられると正気じゃなくなるらしい。キョウジも正常な判断ができなくなっていた。二の舞になるわけにはいかない、ぞ!」
グランドカオスとレエム殿が脇腹に突き刺さり、右目から矢が取れて再生しながらエスラ殿を蹴散らしてこちらに突進してきた憎み血塗られしマガイマガドの顎を轟槌【虎丸】でかち上げるアンテム殿。しかし憎み血塗られしマガイマガドはかち上げられた状態で四肢の紅蓮の炎を爆発させて上空に舞い上がり、急降下の構えを取る。手負いなのにあんなに動けるだと…!?
「アンテム!ミクマリ殿たちを連れて逃げろ!ここはわしが…!」
「爺さん!駄目だ!」
「往け!あれはわしの知るマガイマガドではない……別の何かだ!」
「くっ…!エスラ!」
矢を何度も上空に向けて乱射し、全身を燃やさせて爆発の向きを変えさせるケイマ殿の光景を見ながら、気絶したエスラ殿を左手で抱えたアンテム殿に右腕で俵持ちに抱えられて遠ざかって行く。見ればエルヴァスとマキアナも撤退を始めていた。
「これ以上、失わせるものかぁああああああ!」
レエム殿が意地でも離れず零距離属性解放フィニッシュを何度も叩き込んでいる。なんて根性だ。元は船乗りで仲間をモンスターに殺されてハンターになったらしいが、仲間を失いたくないという思いがあそこまでさせるのか。ケイマ殿の矢がレエム殿を避けて何発も炸裂し、憎み血塗られしマガイマガドの余裕が消える。…ん?自分の全身が紅蓮の炎に包まれるのを嫌がっている…?まさか、自らの炎で我が身も焼いているというのか…?
「グオアアアアアアアッ!」
「「!?」」
瞬間、信じられないことが起きた。憎み血塗られしマガイマガドが尻尾を天高く上げたかと思うと放電し、ドーナツ状の電気の環を発生させたのだ。あれはまさか、前世で見たモンハンライズのラスボス、雷神龍ナルハタタヒメの…!?マガイマガドでは絶対にありえない光景に、レエム殿がグランドカオスを引き抜いて退避。ケイマ殿も視界を塞がれてたまったものではないのか翔蟲で垂直に飛び上がり矢を放つが手ごたえというか当たった音が聞こえず……爆発音が聞こえて右を向くと、高速で突進してくる奴がいた。
「ケイマ殿!右だ!」
「な、に…!?」
警告の声は遅く。胴体の大部分を鋭い前足の腕刀で抉られ、血を噴いて倒れ伏すケイマ殿。間髪入れず咀嚼し始める憎み血塗られしマガイマガドの姿を見て、ごろごろ転がっていたレエム殿は激昂し翔蟲で垂直に飛び上がった。
「き、さまぁああああ!飛翔竜剣…!」
「駄目だレエム殿!」
急降下突進を繰り出すレエム殿だったが、分かっていたかのようにその勢いを利用されていつの間にか再生していた槍尻尾がその胸を刺し穿つ。
「がっ、は……生きてくれ、アンテム…エスラ……」
貫かれたレエム殿はグランドカオスを手放して力なく手を伸ばし、そのまま力尽きると無造作に投げ捨てられる。二人の死体を眺めた憎み血塗られしマガイマガドはこちらを見てにんまりと嘲笑した様に見えたかと思えば空に舞い上がり、空中を駆って追いかけてきた。人間を殺すことがそんなに愉しいというのか。
「アンテム殿、下ろしてくれ!迎撃しなければ…!」
「くっ、仕方がないか…!」
「ちいっ、やるしかないか!」
「一人でも多く!」
気絶したエスラ殿を守るべく、私とアンテム殿、エルヴァスとマキアナが並び立つ。しかし憎み血塗られしマガイマガドは地上すれすれに飛来して全員を吹き飛ばし、体勢を崩した上で隕石の如く落下してこようとしていた。
「鉄蟲糸技、水月の構え…!」
私は何とか立ち上がり、所持している翔蟲二匹を使い、鉄蟲糸の網を張り迎え撃つ。そして、落下してきた憎み血塗られしマガイマガドに振り上げ斬りを叩き込み、弾き飛ばす。だがしかし。
「ぐあぁああああああ!?」
至近距離で爆発を浴びて大きく吹き飛ばされ、痛み分けとなりその場に転がる。全身に焼けるような激痛が走る。くっそ…化け物過ぎないか憎み血塗られしマガイマガド……。
「インパクト…クレーター!」
「高圧廻填斬りィ!」
「竜撃弾!」
同じく怯んで転んでいた憎み血塗られしマガイマガドに、アンテム殿、エルヴァス、マキアナの一斉攻撃が炸裂。燃えてる箇所が小爆発を起こした憎み血塗られしマガイマガドは口惜しそうに一声吠えると爆発で天に舞い上がり、青空を飛び去って行った。
「…なんてことだ」
力なく拳を地面に打ち付けるアンテム殿。ギルド本部が勝利を確信していた作戦は、G級ハンター三名死亡、そして私が重傷を負うと言う大敗北で幕を下ろしたのだった。
まさかの三人死亡。一気にキャラが増えたのは実質そんなに増えないからです。
ミクマリが使った「お盆返し」及び「
そしてコピー能力持ちのマガイマガド。その弱点は…?
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。