今回は久々に転生モンスターサイドの話となります。以前のスレにも出てきたゴシャハギとフルフル、「この世界」の寒冷群島に棲む二体のお話です。楽しんでいただければ幸いです。
雪鬼獣ゴシャハギ。寒冷群島といった寒冷地域に生息する、獲物を求めて雪原を徘徊する牙獣種のモンスター。カムラの里に一番近い寒冷地域である寒冷群島に生息するモンスターの中では轟竜ティガレックスと並んで最強と謳われるモンスターであり、人間の様に氷の刃や槌を武器にする様はさながらハンターの様である。
そんなゴシャハギに転生した女がいた。神により与えられた理不尽に憤怒の産声を上げた。最初は人間と仲良くなろうと試みたがその人相の悪さと通常と異なり紫色をした肉体は不気味さを醸し出してから悉く逃げられ、孤独に苛まれた彼女はモンハンモンスターいう人知を遥かに超えた肉体、さらに性別の異なる雄に転生した影響もあって精神も引っ張られて一人称は「俺」の男口調となりさらには人間を見下し、見かけるたびに目障りに思い惨殺して捕食していくようになった。
特にハンターを相手にするときは転生特典「剛力無双」で地盤を引っくり返すわ身の丈以上の氷塊を振り回すわ、一歩踏み出すだけで地震を発生させるわで一蹴。女であった影響か他の個体と異なり頭部の髪に当たる雪色の毛を長く伸ばしているため、その姿は【雪夜叉】と恐れられ、寒冷群島の頂点にして守護者として生息しているモンスターたちに崇められている。ギルドでも要警戒モンスターとしてG級専用クエストがあるほどの、転生モンスターでは断トツの猛者である。
「暇だ…あいつとチェスでもしにいくか…」
のしのしと寒冷群島を我がもの顔で闊歩し、氷漬けにしたポポの肉を貪りながら洞窟を目指す(便宜上)彼女。しかし時折きょろきょろと見渡す姿は何かを恐れている様にも見える。
「あれ以来、奴は姿は見せないが大社跡で激闘があったと逃げてきたヨツミワドウから聞いたな…警戒しておいて損はないか」
それは、以前の掲示板でも話題に出した、自身が目撃した文字通りの怪物。極稀に寒冷群島を訪れ、自身と互角の激闘を繰り広げる古龍、鋼龍クシャルダオラと、天彗龍バルファルクの変異体である奇しき赫耀のバルファルク。寒冷群島を好き放題荒す彼らを撃退するのも彼女の仕事だったが、ここのところご無沙汰だ。それもそのはず。嵐を巻き起こすクシャルダオラを一方的に叩きのめし、奇しき赫耀のバルファルクに至っては絶命させて捕食してしまった怪物がいた。クシャルダオラこそ逃走したが鋼皮をズタズタに引き裂かれているので当分は姿を見せないだろう。人間世界では「憎み血塗られしマガイマガド」と呼ばれ、掲示板では「血塗れ幽鬼」と呼ばれている怨虎竜マガイマガドこそ、彼女が唯一恐れる存在だった。
「兄貴ー」
「なにしにいくんで?」
「兄貴言うな。暇つぶしだ」
ウルクススやイソネミクニといった舎弟(?)をシッシッと追い払いながら水辺を歩く。すると空から「覚悟ぉおおお!」とか言いながらなにかが舞い降りてきたので、雪夜叉は慣れた動きでパンチで迎撃。
「ぐっ…なぜ勝てない…」
人間たちに「迅速の騎士」や「零下の白騎士」の異名で呼ばれる氷牙竜、ベリオロスは殴られた顔を前足で擦りながら雪夜叉を睨みつけると、雪夜叉は溜め息を吐きながら一本指を立てる。
「勝ちたいなら不意打ちにしろ。あんな叫ばれたら嫌でも気付く」
「いやだが正々堂々打ち勝ってこそ我がこの寒冷群島の覇者であると…」
「ならもう少し力を鍛えるんだな」
「ぐぬぬ…」
去って行くベリオロスを見送る。いつもの日常。いつもの光景。ただ騒ぎを聞きつけて出てくるはずの親友が姿を見せないことに訝しみ、寝ているのかと納得した雪夜叉は歩を進めた。その時点で何か嫌な予感がしていた。
「フルフルのー。チェスしようぜー」
寒冷群島北にある大洞窟。友であり同じ転生者であるフルフルが住まうそこにやってきた雪夜叉。氷で作りだしたチェス盤を置きながら寝ているであろう親友に話しかける。しかしそこにあったのは、想像だにしなかったもの。洞窟の暗闇に浮かぶ紅き鬼火だった。
「フルフルの!?」
「…食事中に五月蠅いぞ」
目を凝らして見れば、そこにいたのは件の血塗れ幽鬼。見れば兜角が折れ、体のあちこちから血が流れているが、友である奇怪竜フルフルだったものを貪るたびに紅蓮の炎に包まれて再生していく。再生に消費するエネルギーをフルフルを喰らうことで補充したらしいことに気付くと、紫色の肉体が怒りにより赤黒く染まり、両腕に冷気の息吹を噴きかけて殺意むき出しの三枚刃の鉈の爪と棘鉄槌を作り出して構える。
「傷も癒えた…腹ごなしに付き合ってくれると言うのか?」
「貴様は俺を怒らせた」
恐怖などいざ知らず。大地を踏みしめることで地震を起こしながら突進。地震により鍾乳石を落下させてダメージを与えながら肉薄し、強固な氷の棘鉄槌を顔面に叩きつけると大きく吹き飛ばされる血塗れ幽鬼。しかし折れた牙をペッと吐き出した怪物は嘲笑する。
「古の龍でもあるまいにこの力…貴様も“外れた”獣か。面白い、先の人間どもより愉しめそうだ…!」
「っ!」
血塗れ幽鬼の口内が赤熱し、熱線が放たれて雪夜叉は咄嗟に横に回避して突進。三枚刃の鉈爪で血塗れ幽鬼の脇腹に突き刺してそのまま洞窟の壁に叩きつけるも腹部を槍尻尾で穿たれて痛み分け。だと思った矢先に槍尻尾に紅蓮の炎が灯り、爆発。雪夜叉は大きく吹き飛ばされ、受け身を取る。
「まるで人間の様な動きだな?」
「人間らしくて悪かったな?お前こそ人間みたいな悪知恵だ」
「我が人間みたいだと?笑止!」
咆哮と共に全身に紅蓮の炎を纏い、爆発。爆発。また爆発。体当たりをもろに受け、天井に開いた穴から天空へと舞い上がった血塗れ幽鬼に連れられ、天高く投げ出される雪夜叉。咄嗟に両腕の三枚刃の鉈爪と棘鉄槌を遠心力で外して投擲するも、自由自在に空を駆る血塗れ幽鬼には当たらず。その動きに、奇しき赫耀のバルファルクが重なった。
「人間がこうまで自在に飛べるものか!」
空中で大爆発。とんでもない速度で急降下してきた血塗れ幽鬼は落下するしかない雪夜叉の腹部に体当たりをかまして共に落下。勢いよく雪夜叉を雪原に叩き付け、さらに紅蓮の炎を纏った右前足を雪夜叉の顔に押し付け爆破。雪夜叉の頭部が雪に埋まり、血塗れ幽鬼は勝ち誇る。
「お前を喰らえば我が火照った肉体も冷めるかもしれぬな…」
そう、はらわたに喰らい付こうとして。己が唯一の弱点だと自負している熱を溜めこむ肉体を補強せんとした、その時だった。
「ぬぐあっ!?」
横からの拳に思いっきり殴り飛ばされた。完全な不意打ちに血塗れ幽鬼はキリモミ回転するも、爆発を起こして姿勢を整えて空に立つ。そして、頭を振りながらのっそりと起き上がる雪夜叉を見据えた。
「喧嘩は不意打ち上等だ。ルールもへったくれもない自然界の喧嘩なら猶更なあ!本気で行くぞ!」
そう言って近くの木を軽々と片手で引っこ抜く雪夜叉。その先端に冷気を浴びせると棘氷球のついた簡易的な大槌ができあがった。
「ハンマー使わせたら俺の右に出るやつなぞ、いねえ!」
「笑わせるな!獣の分際で人間の様な武器を使う軟弱物が!」
爆発。紅蓮の炎を纏って突撃する血塗れ幽鬼だったが、雪夜叉がその場で四股を踏むと地盤がひっくり返って頭から激突。地盤を粉砕して雪夜叉に槍尻尾を突き出すが、そこに雪夜叉はおらず。
「どこに…?」
「右だ」
「ぐああ!?」
右で雪夜叉が振り被った氷槌が脇腹に突き刺さり、怯んだところに頭に勢いよく振り下ろされ雪原に埋まる血塗れ幽鬼。しかしエリア一つ分を飲み込む大爆発を起こして雪を溶かしながら立ち上がると、やはり雪夜叉の姿は見えず。
「飛べるからって上がおろそかになっているな!」
「ぬう!?」
「剛力無双」による怪力で天高く跳躍して逃れていた雪夜叉は急降下と同時に氷槌を振り下ろし、血塗れ幽鬼は咄嗟に槍尻尾で受け止め鍔迫り合いとなる。
「ただの獣ではないと思っていたがこれほどとは…我の喰らってきた中で最も強いぞ、お前は」
「それは光栄、だ!」
槍尻尾を押し付けられるのと合わせて後退。氷槌を手にして回転させ、振りかぶってゴルフの様にスイングすると氷塊が発射され、さらに手にした木の先端に氷の棘氷球を形成すると回転させて次々と氷塊をミサイルの如く発射。次々と飛んでくる氷塊を紅蓮の炎を纏って対処しようとする血塗れ幽鬼だったが、溶けきる前に紅蓮の炎を突破して次々と炸裂。その衝撃に負けて後退していく。
「なんの…!?」
「地に降りれば俺には勝てん」
そのまま両前足と左後ろ足で踏み込んで突撃しようとしたが、再びの四股で地震を起こして体勢を崩させ、勢いが死んでよろよろと近づいてきたところに強烈な氷槌のアッパーを叩き込んで吹き飛ばした。
「お前が怖かったが…親友を殺されてそんなもん吹き飛んだ。完膚なきまでに叩き潰してやる…!」
「叩き潰すか、大きく出た物だ…我も己の力のみを使うのはやめようか」
「なに…!?」
バチバチと口の中で稲妻が走ったかと思えば三つに分かれる巨大な電気のブレスが放たれる。それは雪夜叉の親友のそれと全く同じもので、困惑した雪夜叉にクリーンヒット。大放電が起きて崩れ落ちて木を杖代わりになんとか立ち上がる。
「(…くっそ、両手が痺れて得物が持てない…ならば!)」
再び両腕に冷気の吐息を吹きかけて再び三枚刃の鉈爪を両手に武装、さらに両足に冷気の吐息を吹きかけて棘鉄槌を靴の様に形成、さらに右掌に振りかけて氷の鬼の仮面を形成して頭部に被り、完全武装。血塗れ幽鬼が立てた尻尾からドーナツ状の電撃を放ってきたのを両腕を交差して防御。
「その凍てつく冷気…欲しい、欲しい、欲しいぞぉ!」
紅蓮の炎と電気を纏った槍尻尾を振り回し、螺旋状の稲妻を纏った炎の渦を放つ血塗れ幽鬼。雪夜叉は両腕を交差して防御しながら突進、天高く跳躍して急降下。棘鉄槌を身に着けた足による飛び蹴りを叩き込む。血塗れ幽鬼は大きく飛び退いて槍尻尾に紅蓮の炎を灯して融解させ鎌状にするとグルングルングルンと回転して連続斬りを叩き込む。
「この動きはオサイズチ…!?」
「隙ありだぞ」
ビシュテンゴの様にグルンと回転して尻尾を勢いよく叩きつけて雪夜叉を薙ぎ倒す。さらに地面を槍尻尾をひっかけて泥状にするとオロミドロの如く津波にして雪夜叉は防戦一方となる。
「こいつ、他のモンスターの能力を…怪物じゃないか」
「奴から得たのは再生能力だけではないぞ…!」
爆発と同時に跳躍してグルグルと回転しながらローリングアタック。ついに四肢の氷装備が砕け散って吹き飛んだところに、がっしりと両前足を踏みしめた血塗れ百鬼の口から電撃の光線が放たれて咄嗟に受けた右半身が黒焦げで痺れてたまらず蹲る。重症だ。なにかを喰って治癒に時間をかけなければいけない傷だ。
「ぐっ、あっ…」
「雷の獣の力は獲物を狩るのに便利で好きだ…お前の力ももらうとしよう」
「…ここまでか」
一目で勝てるはずも無いことはわかっていたはずなのに。親友を殺されたことで頭に血が上ってしまったことを恥じる雪夜叉は最期を幻視して目を瞑る。しかし最期の時は訪れなかった。
「なん、だ…これは…」
どこからともなく漂ってきた霧状の物が血塗れ幽鬼に纏わりついて睡魔に誘い。動きが鈍ったところに腹ばいに滑走してきたそれが真横から激突、大きく仰け反らせると空から巨体が飛来。血塗れ幽鬼に急降下体当たりを仕掛けてダウンさせると。雪夜叉の前に三体のモンスターが陣取る。舎弟を名乗るウルクススとイソネミクニ、そして自分の地位を狙っているはずのベリオロスだった。
「兄貴はやらせねえ!」
「怖くないぞお前なんか!」
「奴を倒し寒冷群島の覇者となるのは我だ。お前なんぞに殺されてたまるか」
「お前ら…やめろ、そいつには勝てない…」
「有象無象共が…!」
ウルクススが腹ばいに体当たりし、イソネミクニが首を絞めるように巻き付て睡魔を誘うブレスを零距離で吹き付け、ベリオロスが血塗れ幽鬼の両前足とがっつり組み合う。
「今だ、逃げてくれ兄貴!」
「兄貴ならこいつに勝てるはずだ!」
「今は傷を癒せ我がライバル!なあに、倒してしまっても構わんのだろう?」
「…ぐっ、ここは、任せた……」
重症の体に鞭打ってその場から足を引きずりながらねぐらへと歩を進める雪夜叉。背後で友人たちの悲鳴と怒号が轟くが、その思いを無駄にはできず逃げることに全力を向ける。そして逃げ延び、安全なねぐらで涙を流すしかなかった。
「グオアァアアアアアアッ!!」
そして、寒冷群島の新たな覇者の咆哮が上がる。血塗れ幽鬼、憎み血塗られしマガイマガドは新たに熱への耐性を手に入れた。
モンスター掲示板では血塗れ幽鬼と呼ばれてる血塗れマガマガ。ベリオロスを喰らって熱をすぐさま冷められるようになって無敵なのかと思いきや…?
・雪夜叉ゴシャハギ
元女現雄の転生者で寒冷群島の支配者。「剛力無双」の特典と類まれな戦闘センスにより古龍とも渡り合える、転生モンスターの中でもトップクラスの戦闘力を誇る。氷のハンマーを操ったり、四肢に武装したりと通常のゴシャハギとは大違い。血塗れ幽鬼を追い詰めるも、喰らってきたモンスターの能力を前に敗れた。一応生存はしている。
・転生者フルフル
ゴシャハギの次くらいに強かった転生者の奇怪竜。通常より硬い鋼の様な皮膚を持つ。
・ウルクスス&イソネミクニ
雪夜叉の舎弟。命を懸けられるぐらいに慕っているが敗れた。
・ベリオロス
寒冷群島の覇者になろうと努力していた氷牙竜。正々堂々が信条だったが血塗れ幽鬼の前に不意打ちで攻撃を喰らわせた。ウルクススとイソネミクニの援護もあり何とか渡り合うもやむなく敗れた。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。