百竜夜行を食い止める翡葉の砦。ヌシモンスターの群れが押し寄せるそこは今、ハンターと里守のみならず、転生者と外天種モンスターまで入り混じるカオスとなっていた。ミクマリとナギとエスラにより味方だと知らされた外天種モンスターの暴れっぷりは圧巻だった。
「バインド!」
「シャアァアアッ!」
名無しの魔導師がバインドの魔法で動きを止めたヌシ・ディアブロスに飛来し、角による攻撃を巧みに避けて両翼を両翼爪で押さえつけることで拘束、馬乗りになると口づけして猛毒の唾液を体内にめぐらせて融解させる毒牢姫リオレイア。
「やらせません!」
「ガアァアアアッ!」
ヌシ・タマミツネの鬼火入り泡を名無しのゼクトルーパー改めザビーが針を飛ばしてひとつ残らず相殺させていき、氷の槌を手にしてヌシ・タマミツネをボコボコに叩きのめす雪夜叉ゴシャハギ。
《ぃよぉーっ!ドン!ドン!ドン!ドンブラコ!ロボタロウ~!ドン!ブラボ~!ドン!ブラボ~!》
「アバターチェンジ!ロボタロウ!」
《ドン!ロボキンタロウ~!よっ!ゴールデン!!》
「ええ!?と、とりあえず斬る!」
突進してくるヌシ・アオアシラに対し、名無しのドンキンタロウが手にしたドンブラスターにドンロボタロウギアを装填して撃つことでメカ装甲に包まれ赤い尖ったサングラスをかけた黄金の熊のロボの様な姿「ドンロボキンタロウ」になるとまるで相撲を取るようにヌシ・アオアシラと力比べを始め、その隙をついて「戦国パワードスーツ鬼姫」を身に纏った名無しの日向家次女が手にした日本刀型ビームサーベルでヌシ・アオアシラに一閃、退ける。
「狙い撃つぜ!」
「ウォオオオオオン!!」
ヌシ・リオレイアが尻尾を振るって毒棘を振りまこうとするが、名無しのRSが全て撃ち落とし、その隙をついて咆哮を上げて斬撃の雷を落としてヌシ・リオレイアの両翼と尻尾を斬り落として撃墜、斬撃の雷で胴体を貫いて沈黙させる滅雷刃ジンオウガ。
「清姫、宝具だ!竜種なんかに負けるな!」
「それでは御覧ください、わたくしの一世一代の晴れ姿!」
「グオアァアアアアッ!!」
ヌシ・リオレウスが特大火球を放とうとするも、名無しの49人目のマスターの指示で清姫が炎の蛇となって巻き付いて阻止、飛び退いたそこに咆哮と共に砂嵐がヌシ・リオレウスを包み込むように発生し、切り刻みながら包み込み砂像にして叩き落とす塵魔帝ディアブロス。
「月島流富嶽山嵐!」
「ゴアァアアアアアッ!」
突進してきたヌシ・ジンオウガに対し、名無しの鬼殺隊は刀を下から斜め上に切り上げることで竜巻のように衝撃波を発生させて打ち上げ、そこに限界まで下げた頭部の口から火炎放射を放ち、高速で炎を纏った翼を叩きつけてヌシ・ジンオウガを叩き落とす灼翼王リオレウス。
そんな圧倒的な光景にハンターたちも負けじとツーマンセルを取って連携でヌシモンスターたちを蹴散らし、里守たちもそれに続いていく。しかしそれでも互角。何時まで経ってもヒビキとバレットの増援に行けない。そこに声が響いた。
「王国騎士フィオレーネ及び王国騎士部隊!此度のカムラの里の未曽有の危機に、エルガドより盟勇として助太刀に参った!」
参戦と同時に滅・昇竜撃でヌシ・ディアブロスをかち上げるフィオレーネと名乗った女性を皮切りに、ハンターが数人加勢する。里で待機していたロンディーネが姉に救援を送った結果だった。こうして戦況はこちらに有利へと傾いていく。そしてヌシモンスターを扇動する張本人がいる獄泉郷では…
決戦の高台に戻ってみれば、爆発はノーダメージですんだのか、未だに鬩ぎ合っているヒビキがいた。あの威力と鬩ぎ合うって…いや、それと鬩ぎ合っている淵虎竜がおかしいのか。
「くっ…!?」
「ゴアッ…!」
バキンッ!という音と共に双方飛び退く。そして絶望的な光景が目に入ってきた。ヒビキの得物、禍ツ琵琶ノ幽鬼ウラザの弦が切れて壊れてしまっていた。相棒の損傷にそちらに気が取られてしまうヒビキ。
「しまっ…」
「させるか!閃光玉!タマ!ダンガン!」
襲いくる淵虎竜の巨大な爪に、俺は咄嗟に閃光玉を投げつけ強烈な閃光に淵虎竜の狙いが逸れる。そこにオトモアイルーのタマが大タル爆弾を投げつけて怯ませ、オトモガルクのダンガンが反対方向で吠えてタゲを逸らしている間に、なにやら地面に仕掛けたヒビキのオトモのビワマルとエレキマルがヒビキを(比較的)安全圏であるこちらまで避難させる。
「大丈夫か、ヒビキ!」
「俺は大丈夫だ、だが相棒が…修理したい。時間稼ぎを頼めるか?」
「死ななきゃいいんだろ?それは誰よりも得意だ。行って来い!」
「頼んだ、恩に着る!」
そう言ってモドリ玉を使いオトモと共にキャンプベースに戻るヒビキを見送り、さてとと向き直る。ヒビキはハモンさんに師事した武器づくりのライセンスを持っている、そう時間はかからないだろう。タマとダンガンが時間稼ぎをしてくれているが、閃光玉の効果が切れれば人間が憎いアイツは俺を最優先で狙うだろう。どうしたものかな。
「…そういや」
さっきヒビキが大暴れしてた時、なんか違和感を感じたんだけどなんだったかな……俺だけが分かる違和感。それは特典のゲーム画面……装弾数や体力やスタミナ、地図にダメージまで全部がゲームの様に映る視界…………待てよ?この目は通常のゲーム画面と違って他人が出したダメージまでわかる。違和感は、ヒビキが当てた時のダメージだ。思い出した。何故か、全ての攻撃が三桁…100以上のダメージ、爆発属性のダメージを叩き出していた。そんなこと、まずありえない。爆発属性ってのは蓄積して大ダメージを与える属性攻撃だ。あんな毎回出せるもんじゃない。
「…まさか」
ある可能性に行きついた俺は王牙弩【野雷】に貫通電撃弾を装填。閃光弾から解放されてこちらに向いた淵虎竜に撃ってみる。なんかめちゃくちゃダメージ出て大きく怯んだ。……今まで脳死で拡散弾ばかり撃ってて気づかなかったけど、そういうことか!
「お前、喰らったモンスターの属性値までコピーしてるだろ!?プラスにもなってるが多く喰いすぎたせいでプラマイゼロじゃなくてマイナスになってるんだ。だから爆発属性が一瞬で溜まり爆発する。全部の属性攻撃に凄まじく弱いな、お前!」
つまりこいつのコピー能力は、長所だけじゃなくて弱点までコピーしてしまうんだ。ただ問題が一つ。俺のライトボウガン、王牙弩【野雷】は貫通電撃弾だけ、ネコ獣砲ニャノンに至っては毒弾ぐらいしかない。なにせ斬裂弾死ぬほど連射マンと拡散弾をまっすぐ叩き込むマンだ。属性専門じゃない。結局ヒビキが来るまで耐えるしかないわけだ。
「グゴアァアアアアアッ!」
「まあキレるよね。ん?」
咆哮を上げて踏込んで槍尻尾を突き出してくるのを横にスライディングで避けつつ王牙弩【野雷】で斬裂弾を叩き込む。薙ぎ払いを咄嗟にしゃがんで回避、ネコ獣砲ニャノンで毒弾を叩き込む。連続お手攻撃を鉄蟲糸技を駆使して回避していく。息吐く暇もないが、ある事に気付く。そうか、こいつはヌシでも古龍でもないんだ…なら!
「それが効くよなあ!」
「グゴアアァアアア!?」
俺の放った貫通電撃弾を嫌がって大きく飛び退いた淵虎竜の足がさっきまでヒビキがいた場所に接触。仕掛けられていたシビレ罠を踏んで全身に電撃が駆け巡って苦悶の声を上げる淵虎竜。そういえばヒビキが言っていた。何度もこいつと出くわしたけど、閃光玉やこやし玉といったアイテム、シビレ罠に落とし穴やシビレ生肉に眠り生肉といった罠の類、クグツチグモにボムガスガエルやシビレガスガエルにネムリガスガエルに子泣キジとマキムシに閃光羽虫といった環境生物等を使って逃げに徹したそうだ。
―――――「最終的に生きた奴が勝ちだ」
そうよく言っていた。ヒビキが生き残ったのは運もある。子供の頃に見逃されなければヒビキは生きていない。だけどその幸運があったからこそ命の大事さを実感し、奴に対する恐怖を感じ続けたからこそ、プライドも外聞もなく生き続け、いつか倒すべく鍛え続けて新技を編み出し続けて、あのやべーやつがそこにいる。
【急募】狩猟笛の正しい使い方
そんな題名で掲示板始めたけど、正しい使い方なんてないよな。あれは奴が編み出した「正しい使い方」だ。憎み血塗られしマガイマガド、いや禍依之淵源・淵虎竜マガイマガド。奴を倒すために磨き続けてきた技術の結晶を否定などできようはずもない。奴を倒すためには必要だ。俺にできる事、それは。
「逃げるんだよぉおおおお!」
ライトボウガンとヘビィボウガン二つで撃って興味を引きながら狭いエリアを逃げ続ける。奴の巨体の陰に隠れるように、鉄蟲糸技で高速で滑走しながら奴の攻撃を避け続ける。爆発が発生する踏み潰し、上空に向かって放たれ落下してくる氷塊の雨、奴を中心に発生するドーナツ型の電撃に岩を巻き上げる竜巻、一回転しながらの火炎放射、とにかく攻撃の当たらない場所を一瞬で見極めて逃げに徹する。弾に限りある俺には絶対に勝てない。できるのは、ヒビキが来るまで逃げ続けて時間を稼ぐことぐらいだ。
「ギルドでは危険には絶対手を出さないことで定評あったんだけどな!友や里のために命かけることになるとは!第二の人生どうなるかわかったもんじゃねえ!」
「グオアァアアアッ!?」
今度はヒビキの仕掛けていた落とし穴に淵虎竜の右前足を突っ込ませて、その隙に斬裂弾を撃ち込む。頭はいいんだろうが、所詮は獣。特に俺はゲーム画面で罠の位置とかも把握できるんだ。小細工じゃ負けないぞこの野郎。
「っ、やばいっ!?」
しかし淵虎竜は隙を潰す様に巨体を赤熱させて大爆発。体勢が崩れてたから全方向とまではいかなかったが、余波で水辺を転がり滝の流れる石壁に叩きつけられびしょ濡れになる。タマとダンガンは…隅っこで落ちそうになってるが生きてる、か。
「あ、熱かった…水に突っ込まなかったら不味かったな…」
爆発で燃えた装備を水で鎮火させ、立ち上がると目の前には落とし穴から出て俺を見下ろす淵虎竜の姿。逃げ場は、ない。すると淵虎竜の背後から希望の声が聞こえた。
「待たせたな…!」
大翔蟲に掴まったヒビキが空中に飛び上がり、そのまま演奏しながら急降下と共に狩猟笛を勢いよく叩きつける。俺に火炎放射を浴びせようとしていた淵虎竜は顎から地面に叩きつけられ、口からボフンと黒煙を漏らして折れた角が地面に突き刺さると同時に着地したヒビキを睨みつける。
「生きれば勝ちだ。よく生き残ったバレット。さすがは俺が見込んだ男だ」
「そりゃどうも。…お前に助けられた借りぐらいは返せたかな?」
「馬鹿野郎。あんなのは借りにも入るかよ。…そんな理由なんかで来てくれたわけじゃないだろ?」
「…お前には絶対敵わないな。アイツは属性攻撃に弱い。とにかく殴れ。怪我ぐらいは気にするな、俺が治してやる」
「そりゃ俺好みの作戦だ!」
跳躍、同時に淵虎竜も右前足を振り上げ、振り下ろしたのとヒビキの振り上げた狩猟笛が激突。大きく弾き飛ばしてその反動で飛び上がったヒビキはまるで操虫棍の如く、演奏しながらクルクルと回して連続で打撃をその巨体に叩き込んでいき、背後まで回り込むと操虫棍の「降竜」の如く急降下。腰に強烈な打撃を叩き込んで強制的にダウンさせる。この怪獣並みの巨体をダウンさせるなんてすごいな。
「ならさらに火力を上げてみるか!」
そのとき弾けた電撃でダメージを受けた様なので、回復弾と一緒に鬼人弾、硬化弾を撃ち込むと、ヒビキはダウンしている淵虎竜の上で何度も何度も狩猟笛を叩きつけて振り回し、演奏。今宵限りのライブに、オトモ達もやんややんやと盛り上がり、バフのかかった武器を振り回して淵虎竜にダメージを与えて行く。俺も貫通電撃弾でそれに続いた。
「ナイスだバレット!さあ淵虎竜よ!俺の曲を!聞きやがれえ!」
さらに勢いを増していく演奏。ついに淵虎竜は立ち上がり、体を震わせてヒビキを叩き落とすと全身の装甲刃を展開、電気を帯びてドーム状に電撃のバリアを展開。俺とヒビキ、オトモ達は慌てて避ける。
「旦那さん!奴は疲弊してるにゃ!」
「一気に叩くチャンスだにゃ!」
モンスターの体力を見極めることができるオトモアイルーたちの台詞が響くが、俺は知っている。モンスターは怒ると、形態変化することを。そしてそれはすぐに来た。
「グゴアァアアアアアッ!」
電気と冷気を帯びた大爆発を、咄嗟に猟犬具の護り番傘を展開してオトモガルク達が防御してくれてやりすごすと、奴の姿が一変した。全身の刃が電撃を纏って逆立ってまるで剣山…というよりは針山地獄の様で、全身を覆うようにして紅蓮の鬼火を纏った風が渦巻いている。口からは溢れんばかりの紅蓮の炎を燃え滾らせ、目がギラギラと輝き殺意に染まる。これがこいつの鬼火纏…なんて悍ましいんだ。
「グオアッ!」
一声吠えたかと思うと、飛び上がって尻尾が一薙ぎされて、オトモ四匹が薙ぎ倒され転がって行く。そして着地したかと思えば間髪入れず突進して来て、咄嗟にヒビキがタイミングを合わせて打ち上げるも空中で体勢を立て直され、鬼火を纏った竜巻を二つ飛ばしてきて咄嗟に鉄蟲糸技で回避。今の今までいた場所が爆発と竜巻で抉れたことで冷や汗が流れる。
「…さすがにきついか?」
「だよなあ」
ヒビキの弱音に頷くしかない。これは、やばい。
フィオレーネ参戦。逃げるバレット。タイトル回収。本気を出す淵虎竜。
転生者と外天種でヌシの群れを圧倒しているところですが、逆に言えば外天種と転生者が力を合わせてようやく渡り合えてる感じです。外天種だけじゃ圧倒できても数の差で押し負ける、それを補ってるのが転生者です。ギルドのハンター呼べば…ともなりますが、カムラの里はギルド本部からしても辺境で、ヌシの百竜夜行は通常と違い凄まじい速さで接近していたので増援を頼む暇もなかったので、転生者と外天種の両勢力が参戦しないと全滅必至でした。フィオレーネの場合はロンディーネという連絡員がいたから遅れて参戦できた形。
弱点がついに判明。「長所だけじゃなく弱点までコピーしてしまう」故の「異常な属性値」となっております。無属性にはめっぽう強いけど属性攻撃にクッソ弱い。だから弱点属性を持ってたキョウジを真っ先に狙ったし、ケイマの矢で撃ち落とされていたわけです。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
サンブレイク編はいる?
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いる
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いらない
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ライズ編を続けてほしい