特殊個体が多いという感想もいただきました。マガイマガドを止めるために転生者が増える→逆に転生者喰われて強くなったので抑止力で何とかする→転生者を調子づかせないために特殊個体が増える、と自浄作用が働いている形となっております。
今回はまだ書いてないサンブレイク編に当たる時系列の話になります。ミクマリ回が過去編で今回は本編の後日談みたいな。楽しんでいただければ幸いです。
俺の名はエルヴァス。結構大きな港町を牛耳る貴族一家出身のG級ハンターだ。子供の頃からハンターに憧れ、金に物を言わせて現役ハンターから手ほどきを受けたり装備を整えて、ロマンが詰まっているという理由だけでチャージアックスを使いソロでG級まで上り詰めた俺だが、本当の才能というものに出くわして衝撃を受けた。
型にはまらない太刀筋の太刀使いのミクマリと、前例がない武器である小太刀を扱うその妹のセツオリの姉妹。先生に教えられたとおりの定石で動く俺には輝いて見えた。感銘を受けた俺は初めて金を頼らずに仲間になりたいと申し出て、通りすがりのG級なり立てだった大剣使いのキョウジも巻き込んでチームになることに成功した。俺にとって絶対に忘れられないチーム、ノットアポリアの誕生だ。遠距離武器が一切いなかったが、圧倒的な戦闘力で名だたるモンスターたちをねじ伏せた。古龍ですら倒した。二人の美しさと剣技に惚れていた。絶対に守り抜こうと誓っていた。
しかし程無くして、セツオリが死んだ。俺もキョウジも、ミクマリも。奮闘したが、モンスターの群れというごく単純な脅威を前に助けることができなかった。ミクマリも重傷を負って入院した。才能があってもこうなるのか、と現実を味わった気がした。一時期、ハンターをやめようとも思った。だけど気持ちが沈んでしまったミクマリを放っておけなくて、キョウジと一緒に説得して復帰させた。…今思えばここで止まっていればああはならなかったかもしれない。
元専属受付嬢のマキアナが新たに加入して、俺達は仲間を失わないように守りを重視にするようになった。メインの盾役は俺だ。これまでは怖くて使いこなせなかったカウンターフルチャージが一番の得意技になり、ミクマリを守ることもできるようになった。それは自信となり油断していた。本当の理不尽の前に、俺はなにもできなかった。
「ミクマリ、怪我の具合はどうだ?」
「火傷の跡が引いてきた。これなら復帰もできそうだ」
憎み血塗られしマガイマガドとも呼ばれていた淵虎竜マガイマガド。G級八人も集まって太刀打ちできずキョウジも殺されてしまった理不尽の権化を撃退するために重傷を負ったミクマリは、奴が倒されたあともカムラの里で療養していた。マガイマガドから受けた火傷はバレットたちが奴を倒すと共に症状が良くなり、ゼンチと言う名の医者アイルーが全力で治療してくれたおかげか自由に歩けるようになるまで回復していた。それでも包帯が痛々しいが。彼の医院の病室にて。マキアナがお茶を淹れに行っている間に、言おう言おうとしていたことを意を決して言ってみることにした。
「…なあ、本当に復帰するのか?」
「セツオリの分も戦い続けると私は誓った。お前も以前、説得してくれただろう」
「それとこれとは別だ。淵虎竜の様なバケモノが他にもいないとは限らない。…俺は、お前にだけは死なれたくないんだ」
淵虎竜との最後の対決の時、ヌシモンスターを抑えることに精一杯で滅雷刃ジンオウガに乗って行ってしまったミクマリを止めれなかった。重症の想い人を行かせてしまったと気付いたときには血の気が引いたものだ。
「私を守ってくれるんじゃなかったのか?私はハンターを続けるぞ」
「っ…ああ、誓った。だけど俺じゃあ、守りきれない」
「そう言うな。お前は死ぬ気で戦えば私達チームの誰よりも強い。そんなお前を私は信用してるんだ。事実、憎み血塗れしマガイマガドを相手にしたときも、お前は守ってくれたじゃないか」
「惚れた奴を重症にさせて置いて守れたとは言えねえよ…」
「……そういうことをさらっと言うのはやめないか?」
色恋沙汰が苦手なミクマリが顔を赤らめている姿に、何も言えないでいると。扉を開けてマキアナが入ってきた。
「お茶を淹れて来ました……こら、エルヴァス!抜け駆けは許しませんよ!」
「なんの抜け駆けだ!?」
「…この光景がまた見れてよかったよ」
ギャーギャー騒ぐマキアナにツッコんでいると、ミクマリが笑っていた。それを見て俺とマキアナは顔を見合わせ、頷く。この笑顔は守らねばなるまいと。
私はマキアナ。元受付嬢で恩義あるミクマリさんに尽くしているメイド兼ハンターだ。里守さんたちの手当てもしていて忙しい医院の方に代わって、ミクマリさんの身の回りの世話をしている今現在、本懐を遂げている現状に私はちょっと満足していた。キョウジくんとかが死んでなければもっとよかったのですが。ミクマリさんが元気になってよかった。
「エルヴァス殿、マキアナ殿はいらっしゃるでしょうか?」
ミクマリさんに何やら告白したっぽい雰囲気のエルヴァスに文句を言っていると、扉が開いて双子の受付嬢の片割れ…髪飾りから見てミノトさんだろうか?が顔を出して私達がいることに安堵すると続けた。
「どうしたのですか?」
「実は大社跡に厄介なモンスターが出現したとの報告が入りまして。エルガドに向かったマシロさんたちはもとより村のハンターは出払っていて、貴方達しか頼れるハンターがいないのです…」
「厄介なモンスター?」
「アケノシルム亜種、と断定された豪雪を操る雪傘鳥です。瞬く間に大社跡を雪で埋めてテリトリーを広げていて、このままでは生態系が滅茶苦茶に…」
アケノシルム。巨大な鶏冠を持った鳥竜種のモンスターですね。戦ったことがありますがその亜種ですか。エルヴァスと顔を見合わせ頷き合うと武器を手に取るべく部屋を出ようとして。
「待て、私も行く」
話を聞くなり不安げなミクマリさんが声をかけてきた。ミクマリさんは全てのモンスターを熟知しているかの如く、滅多なことでは狼狽えない。狼狽えることがあるとすれば、稲妻旋風の様な…一部の「亜種」や「特殊個体」に出くわした時だけだ。この反応は自分の知らないモンスターだから私達が心配、だろうか。心配性ですね。
「それには及びません。ミクマリさんは休養を続けてください」
「俺はミクマリも守る、と誓った狩人だ。負けねえさ。油断もしねえ」
こういうときのエルヴァスは頼りになる。なにやらあったのか、覚悟が決まってる。
「だ、だが…」
「では行ってまいります」
「大人しく寝とけよ!」
止めようとしてくるミクマリさんを振り払ってエルヴァスと共に武器と装備を置いてある、集会所の自分たちの客室に向かう。これ以上悲しませないためにも、負けられない。
憎み血塗られしマガイマガドと戦った以来の大社跡は様変わりしていた。滝や川は凍り、一面雪だらけで漂白されている。さすがに奥地はそうなってないが、河原は真っ白だ。その中で優雅に舞う鳥竜種がいた。本来は赤い部分が緑色の、優雅に舞い翼を振るうと共に螺旋状に雪が発生して広がって行く。体内で冷気を生み出してそれを翼に乗せて放出している形か。これは確かに亜種だ。
「行きますよエルヴァス」
「援護は任せたぞマキアナ」
愛用している王牙砲【山雷】に機関竜弾セット。キャンプベースのある高台から凍り付いた河原に飛び降りて、先手必勝とばかりに連続で炸裂させる。あの憎み血塗られしマガイマガドすら牽制した特殊弾だ。さすがに効いたようで視線がこちらに向き、口から雪の砲弾を発射してきた。それをシールドで受け止めて反撃で弾丸を撃ち込んでいると、横から回り込んでいたエルヴァスが背後からチャージアックスの剣撃を叩き込んだ。
「クエーッ!」
悲鳴を上げ、クルクルと空に舞い上がって翼を羽ばたかせ、翼から吹雪を発生させてエルヴァスに叩きつけるアケノシルム亜種。瞬く間に雪の山に埋もれてしまうが、アックスモードにしたチャージアックスを振り回して雪山を吹き飛ばした。
「アックスホッパー!」
そのまま鉄蟲糸技を利用して飛び上がり、高速回転する盾の斬撃を叩き込むエルヴァス。アケノシルム亜種は打ち落とされて雪の積もった地面に叩きつけられ雪煙が舞った。…通常のアケノシルムは炎を操るだけあって強かったが、殺傷能力の低い雪を操るだけのこの個体はむしろ弱くなっている、と思うのは気のせいだろうか。
「クエーッ!」
すると地上でバサバサと羽ばたき、雪煙を広げるアケノシルム亜種。雪煙の波がこっちまで来て、完全に姿が見えなくなる。くっ、やみくもに撃っても当たりませんか…!
「マキアナ!気を付けろ!」
「わかっています!」
呼びかけあっていると、「ぐあっ」とエルヴァスの短い悲鳴が聞こえた。声を出した瞬間狙われた。こちらの声で居場所を察知しているのか、頭はいいな。ならば、とヘビィボウガンを振りかぶる。すると雪煙が異様に動いて、そこから変な体勢で翼を振りかぶって滑るように接近してきたアケノシルム亜種が見えた。これにエルヴァスはやられたのか。だが、わかっていれば!
「オラアッ!」
「グエッ!?」
男勝りな声を出して思いっきりヘビィボウガンでぶん殴る。悲鳴を上げてダウンするアケノシルム亜種に近寄り、顔面に何度も何度もヘビィボウガンを叩きつける。すると嘴が罅割れて部位破壊できた。
「やはりこちらのが性にあってますね!」
「クエーッ!」
羽ばたきで私を吹き飛ばし、飛んで逃げようとするアケノシルム亜種。羽ばたきで雪煙が吹き飛ばされていく。まずい、趣味にかまけて次弾を装填していなかった。逃げられる…!
「逃がすかあ!」
すると金剛盾斧イカズチの盾をぶん投げるエルヴァスの姿があった。クルクルと回転して投擲された盾がアケノシルム亜種の足に激突。バランスを崩して落下させ、凍り付いた川に激突して痛そうに呻いた。
「殴ることにかまけて次弾装填してなかったんだろ!」
「う、うるさいです!」
「なんでもいいから決めるぞ、逃がしたら厄介だ!」
「わかってます!」
チャージショットを撃ち込んで逃げるのを止めながら走って接近。普通ヘビィボウガン使いは構えながら走れないらしいですが私には関係ない。そのままぶん殴ってスタン。そこに駆け寄ったエルヴァスが剣で斬撃を叩き込む。
「クエーッ!」
「っ…!?」
すると怒ったのか口から吐き出した雪の玉が氷の玉となって私に向かってきた。死にはしないだろうが顔面直撃だろうと考えて諦めて目を瞑る。しかし、何時まで経っても衝撃は来ない。
「…なに諦めてるんだ馬鹿メイド。俺がいるだろうがよ」
「……ふふっ、さすがは我がチームが誇る盾ですね」
目を開けると、口の端から血を垂らしたエルヴァスが立ち塞がって強がっていて。その胸部で衝撃まるごと引き受けたのだと察して指摘せずに礼を言う。これを最高の仲間と言わずになんという。
「クエーッ!」
「させません!」
激怒して嘴を叩きつけようとしてくるアケノシルム亜種。さすがにあれを喰らったらエルヴァスでも死ぬと確信した私は足元に落ちていた盾を蹴り飛ばして迎撃、エルヴァスが宙を舞った盾を回収して合体、回転する斬撃を叩き込み、私もとっておきを装填して引き金を引いた。
「高圧廻填斬りィ!」
「竜撃弾!」
頭部の冠をめちゃくちゃにされたところに、とどめに竜撃弾を叩き込み大爆発。アケノシルム亜種は沈黙した。
「…憎み血塗られしマガイマガドに比べると、あれですね」
「あれと同等クラスがそんなにいてたまるかよ」
「これからもミクマリさんのために一緒に戦いましょう」
「…当たり前だっ」
アケノシルム亜種が沈黙したからか暖気が帰ってきて雪が解け始めた河原で拳を掲げてみると、そっぽを向きながらもエルヴァスは拳を合わせてくれた。
盾をぶん投げたり、ヘビィボウガン構えながら走ったり、彼らもやっぱりG級でした。ボウガンで殴るの気持ちいよね(オールラウンダーの感想)
・雪傘鳥アケノシルム亜種
赤い部分が緑色で冷気を操る特殊個体ではなく亜種(サンブレイクに出てこなかったので亜種にした)。炎の代わりに雪を吐き、羽ばたきで吹雪を発生させて大社跡を寒冷群島の如く漂白しようと目論んでた。マガイマガドがいなくなったため姿を現した狡猾な個体。なお炎を使う方が普通に強いので亜種と言っても火力は弱体化してるが、目暗まししたり雪で足を取ったり小手先を使うのが得意。怒ると口から吐く雪玉が氷塊になって危険。
次回はサンブレイク編。今回の少し前の話になるかな?
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
G級生き残り組の話いる?
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いらないからサンブレイク編はよ