今回は再び現れた奇しき赫耀のバルファルク戦。再びと言っても前のはマガイマガドに喰われた個体のことですけど。楽しんでいただければ幸いです。
俺達は砂原に来ていた。モンスターハンターライズの裏ボス、古龍バルファルクの特殊個体である奇しき赫耀のバルファルクを狩猟しにきたのだ。二刀流ばかりの俺達の中で武器一つだけを用いるヒビキだったが、二つあれば単純に二倍強くなるんじゃねと言うことで現状最高クラスの攻撃性能を誇る「龍天笛ホルマゼンタ」を作るべく、ちょうど姿を現したらしい「大地を災厄に陥れん」と古文書に記される絶望の凶星を叩き落としてくれというフゲン殿からの要請を受けて、各地を飛び回っている奴を追ってここまで来たわけだ。
「古龍かあ。ナルハタタヒメ以来だね!」
「規格外な強さを持つらしいから要警戒だな」
「…バレット、地図はどう?」
「ああ、元気に飛び回ってるよ。まるでワープだな」
ナギがこそこそと話しかけてきたことにそっと答える。視界端のマップ画面では「?」がすごい勢いでマップを縦横無尽に凄まじい速度で移動していた。奇しき赫耀のバルファルクはエスピナスの時も語った通り、とんでもない強さ、なにより速さを誇る古龍だ。通常個体はモンスターハンターダブルクロスにメインモンスターの一体として登場、その際もまるでジェット機と言わんばかりのフォルムと飛行速度を見せて人気も高い。
最大の特徴は変幻自在の翼脚。音速で飛ぶための翼としても凄まじい勢いで伸びる槍としても活用できる変形機構を有している。そして胸部に空気を吸い込んで生成する「龍気」と呼ばれるエネルギーを用いることも忘れてはならない。特に一度空に飛び立ち、超高速で落ちてくる「彗星」攻撃はとてつもない威力を誇る。
奇しき赫耀のバルファルクは龍気に飲み込まれて暴走状態のバルファルク、だったはずだ。本来超高空域にしか姿を現さず地上に現れるのは千年周期らしいのだが、暴走状態となったことで目に映るものを手当たり次第に攻撃するほどに凶暴化。固定砲台となって放つ極太ビームは度肝を抜いた記憶がある。
「あ、オロミドロだ。砂原にもいるんだね」
砂原では貴重な水源に来ると水浴びしているオロミドロを見つけてそんなことを言うマシロ。そうだな、と頷こうとすると見慣れない文字が視界右に浮かび上がった。「襲撃」…?まさか!耳を澄ませば聞こえてくる、あの特徴的な飛行音。
「みんな、飛び退け!」
「「「え?」」」
咄嗟に呆けて動けてなかったマシロを抱えて跳躍。ナギとヒビキも同時に跳躍した瞬間、一瞬で空から急降下して現れた赤い燐光に包まれた漆黒の鋭利なフォルムの古龍がとんでもない衝撃波と共にオロミドロを叩き潰していた。こちらを向いて咆哮を上げ、臨戦態勢を取る、目に入った物全てを叩き潰すその凶暴性は間違いなく、奇しき赫耀のバルファルク…!実物を見れた感動も凄いがそんなことを言ってる場合じゃない。
「油断するな!」
「こいつがバルファルク…かっこいいけど、なんか怖い…」
「淵虎竜の大技と似ていたな…」
「多分真似てるのは淵虎竜の方だと思うな!」
キュイーン!という何かを溜める音と共に、ジェット噴射で突撃してきたバルファルクの突撃をランスに取り付けたシールドで防いで吹き飛ばされるナギ。着地したところにマシロが大剣を尻尾に振り下ろすが、瞬時に変形した翼を一回転することでぶつけられて転がり、振打を叩き込もうと振りかぶっていたヒビキに目ざとく翼を叩きつけてダウンさせるバルファルク。一瞬のうちに三人が蹴散らされた…!?
「この!」
狙撃竜弾を放つが、空に舞い上がられることで回避され、龍気が放たれそれは赤い稲妻と共に爆発。シールドで防ぐも、バルファルク自身の突撃を受けて無様に転がる。つ、強い…だが!
「エルガドで作った装備のおかげか割と耐えられてるな…!」
「うん、軽傷!」
「吹っ飛ばされてぶつけた頭が痛いけど!」
「生きてるなら俺達の勝ちだ!」
「キュアアアアアッ!」
「させない!」
翼を前方に変形させて固定砲台となり、エネルギーを溜めて極太ビームを放ってくるバルファルクに、シールドタックルで真正面から龍気を受け止めながら突撃するナギ。そのままガンランスを頭部に突き刺して竜杭砲。頭部で爆発した杭に怯んだバルファルクが空気を胸部に取り込み始め、太刀も抜いて二刀流になったマシロがグルングルンと太刀と大剣を手に大回転して連続で斬撃を叩き込んだ。
「ひっさーつ!金剛大車輪斬り!」
すると胸部の龍気が暴発。大きく怯んで転倒するバルファルク。マシロとナギは尻尾を部位破壊しようと重点的に攻撃。俺は突進しながらヘビィボウガンに貫通弾Lv.3をセット。鉄蟲糸を前方に伸ばして引き寄せられ滑走しながらヘビィボウガンを、奴の身体が一番長くなるポイント…鼻面に叩き込んで右腕で引き金を引く。
「貫通ヘビィナックルファイア!」
「キュアァアアアッ!?」
貫通弾がまっすぐ全身を突き抜けて行き、さらにヘビィナックルを真面に受けたことでスタンするバルファルク。
「新技…!」
すると狩猟笛に括りつけた鉄蟲糸を付けた翔蟲を飛ばして動けないバルファルクを雁字搦めにするヒビキが狩猟笛を立てて演奏。バフを発生させながら溜めて行った衝撃を、最後に纏めて鉄蟲糸に叩き込み、衝撃が伝った鉄蟲糸は斬撃属性のダメージを発生させてバルファルクの全身を切り刻み、同時に尻尾も斬り落とした。
「キュアアアアアンッ!?」
「音撃斬・共鳴!」
「うわ、えぐっ」
音の振動を利用した斬撃だから古龍の皮膚すら貫くのはやべえ。技づくりの天才かヒビキ、俺にもなんか考えてくれ。
「キュアァアアアッ!」
ボロボロのバルファルクは何とか立ち上がり、回転して変形した翼で俺達を薙ぎ払う。そして全身を紅く滾らせたかと思えば衝撃波と共に一瞬で飛び立っていった。
「逃げた…!?」
「いや、これは…バレット!」
「ああ、ナギ。「襲撃」だ…気を付けろ!」
「なるほど、マガイマガドのアレと同じか。ならば擬似・特殊納刀…!」
「「「え?」」」
慌てて高台に退避しようとする俺達三人を余所に、一人だけ残り居合の構えをするヒビキ。淵虎竜との決戦がフラッシュバックする。だけど、抑止力はもう…!手を伸ばした時、空で大きく弧を描いた紅き彗星は落ちてきた。
「
クルクルクル!と気炎の旋律を奏でるようにしながら居合の如く高速で振り抜き、振り抜いた勢いでまた居合の構えを取り振り抜き、を五回連続高速で繰り返してバルヴァルクと激突。五回目の振り抜きでバルファルクを殴り飛ばし、地面に叩き付けた。
「一回で足りなきゃ足せばいい。今だ!」
「新技ァ!大!回!転!真!溜め!斬りィ!」
グルングルンと大剣を振り回して独楽のように回転したマシロが肉薄。ギャリギャリギャリと斬撃を浴びせながら遠心力を溜めて一撃を叩き込み、翼を部位破壊するマシロ。
「バレット、掴まって!ブラストダッシュ!」
「うおおっ、合体技か…!」
ランスをしまったナギがガンランスを片手に持って俺に鎧を掴み、ぶっ放して空を舞う。飛ばされながら狙撃竜弾を装填した俺は、ナギに叩きつけられる形でバルファルクの顔面に上から叩きつける。
「ブラストヘビィナックル!」
「キュアアアン!?」
バルファルクは殴り飛ばされ、さらに炸裂していた狙撃竜弾が爆発。エネルギーが霧散していき、バルファルクは崩れ落ちたのだった。
「古龍、敗れたり」
「さすがヒビキ!」
「…抑止力戻ってなくてこれかあ」
「さすがヒビキとしか言いようがないね」
言いながら死骸から素材を剥いでいく。ここには塵魔帝もいるんだ、出くわす前に取れるだけとって帰ってあとは回収班に任せよう。取れるだけ取り終えて一息ついていた時だった。
「?」
一瞬、風景が動いた気がした。特に違和感のなかった風景がそのまま、移動して違和感のない風景に切り替わったのだ。なんとなしにじっと見ていたから気付けた違和感。それが、近づいてくると共に音が聞こえてくる。一瞬だけ違和感ある風景のシルエットはとてつもなく巨大で山が動いている様だった。
「…みんな、ここから離れた方がよさそうだ…」
「なんで?」
「塵魔帝の痕跡でも見つけた?」
「いや、この足音は…まさか、バレット!」
「そのまさかだ…正体不明の巨大なナニカって奴だ…!」
それはまっすぐとこちらまで歩いて来たらしい。ズシンズシンと言う足音を響かせ、のっそりと動く風景。一瞬だけ歪んだところがまるでなにもなかったかのように修正するのを繰り返す。細長い足をいくつも動かして歩くその巨体のシルエットは、近づけばはっきりとわかる。巨大な、蜘蛛。サイズは淵虎竜に近い。
「っ!?」
突如、虚空から煌めく何かが伸びてきて俺を拘束する。それは良く見れば鋼色の糸。光沢が風景を鏡のように映している。これを使って姿を隠した巨体で各地を回っていたってことか…!
「おらあ!」
マシロが糸を断ち切ってくれて解放されると、巨大なナニカは足を振り下ろしてきて、それはナギが盾で防御。ヒビキが跳躍してそれの顔と思われる部分を殴りつけるとそれの全身に巻き付いた糸がほどけて行き、姿を現した。
「こいつは…!?」
「ヤツカダキ…!?」
「いや、それにしては…」
「でかい…!?」
姿を現したのは鋏角種の大型モンスター、俺が今使っている妃蜘蛛派生のヘビィボウガン「ルスタ・ド・フィネラ」の素材元である妃蜘蛛ヤツカダキそのものだった。だがサイズが桁違いで、蒼い体色で銀色の鋼の様な糸で花嫁装束の様に覆っており、折りたたんでいる首を持ち上げて俺をじっと睨んでいる。…もしかして、このヘビィボウガンのせいか?
「キシャアアアアアアアッ!」
咆哮を上げた巨大ヤツカダキが土がこびりついている糸に覆われた腹部を震わせる。するととんでもないことが起きた。本来なら幼体のツケヒバキがいるはずのそこから、通常サイズのヤツカダキがわらわらと大量に出てきたのだ。ざっと数えて10体以上いる。
「なあ!?」
「きもちわるっ!?」
「ヤツカダキのマザーってことか…!?」
「さすがにこの数は…!?」
ヤツカダキに取り囲まれ、背中合わせに構えて迎撃する俺達。マシロが大剣で触覚を弾き、ナギが火炎放射を防ぎつつ突き刺し、ヒビキが殴り飛ばし、俺はひたすらに撃つ。無理だ、こんな大量の大型モンスターを同時に相手できるわけがない…!すると巨大ヤツカダキは俺達をヤツカダキたちに任せると、バルファルクの死骸に首を伸ばすと糸を伸ばしてグルグル巻きにすると引っ張り上げ、自分の腹部にくっ付けた。ああやって餌を集めるために各地を回ってるってことか。いやそんなこと考えている場合じゃない。
「くそっ、くそっ、くそっ!」
ヤツカダキたちに一斉に糸に巻かれて四人纏めて拘束されてしまいじりじりと追い詰められる。こんなところで終わるのか、こんなところで…!するとマップからバルファルクが消えたのと入れ替わりに出てきたアイコンがあった。というか地図、ヤツカダキのアイコンだらけで気持ち悪いな!?
「グオアァアアアアッ!!」
咆哮と共に突如発生した砂嵐が吹き荒れる。それは刃の様に俺達を拘束している糸を切り刻んでヤツカダキたちを切り刻み、慌てて巨大ヤツカダキの腹部に戻って行く。そして砂嵐の向こうから現れたのは、金色の巨体に銀色の角を持つ角竜。塵魔帝ディアブロス…!?砂原を支配する外天種…!
「グオアァアアアッ!!」
「キシャアアアアッ!!」
咆哮を上げ、威嚇し合う両者。ヤツカダキの方がはるかにデカいがディアブロスも迫力は負けてない。これをチャンスと見て俺達は無言で頷き合い、向こうが見えない砂嵐の中をゲーム画面の地図を頼りにかき分けて逃亡。「縄張り争い」という文字を見ながら背後で激突する音を聞こえてきて、思わず振り向けば塵魔帝の全身に取りついて牙を突き立てる大量のヤツカダキが見えて。それを眺める巨大ヤツカダキと視線が合ってしまい、恐ろしくなって必死になって逃げた。
命からがら逃げかえったエルガドで提督に伝えると神妙な顔で頷いた。
「…報告ご苦労。恐らくそのヤツカダキが各地でモンスターを攫う正体不明の存在で確定だろう。正体がわかったのはでかい。我々は特殊個体と定め、
大地母蜘蛛ヤツカダキ。ヒビキにとっての淵虎竜の様な感覚がある。ああ、認めよう。俺に再び仲間を失うのかと絶望を与えたあいつは………俺の、天敵だ。
※塵魔帝はこっぴどくやられたけどなんとか生き延びました
諸君。私は蟲が好きだ。愛してる。だからこの愛を以て証明する。蟲はかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと(by別作品の主人公
蟲好き(現実のはあんまり好きじゃないけどメカニズムが大好き)なのにこいつをメインにしないわけがないよね。
・大地母蜘蛛ヤツカダキ
超巨大な鋏角種でヤツカダキが突然変異した特殊個体。今回のメインモンスターにしてバレットの宿敵。蒼い体色で銀色の鋼の様な糸を操る。最大の特徴は腹部に通常のヤツカダキを巣食わせていて、配下としている。普段は全身を覆う糸に鏡の様に風景を映して擬態することも可能。巨体を隠しつつ各地を巡り餌を集めている。大穴と関連があるらしく、深淵の悪魔と思われているが…?種族の繁栄を第一としており、ヤツカダキで作ったヘビィボウガンを有しているバレットは敵だと認識している。
ライズ編がヒビキ編ならサンブレイク編はバレット編って感じかな。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。