バハリ登場。奴との遭遇。楽しんでいただければ幸いです。
王域三公と正体不明の存在もとい大地母蜘蛛の痕跡を追って水没林に向かったのにまったく無関係のモンスターに遭遇し追われてるらしいバハリという研究員を救出してくれという緊急クエストを受けた俺達。しかしフィオレーネ曰く好奇心を人の形にしたような、研究にのめり込むと周りが見えなくなる変わり者らしく、アンジャナフから逃げながら痕跡を捜している異様な光景に出くわした。
「ひっひー!?ああクソッ、光蟲使った即席の閃光玉の効果すぐ切れやがるな!お?お?なんだまたハズレかよ、クソッ!」
「……なにあの人」
「変わり者とは聞いていたけど…」
「大型モンスターが傍にいるのに別の事に気を取られるとはな」
「とりあえず助けるぞ」
とりあえず拡散弾を撃って気を引くとアンジャナフはこちらを向いて咆哮する。すると同時に俺達に気付いたバハリと思われる男が手を振った。
「ん?キミら、もしかして…おっ?おおお?」
「うわっ、危ない!?」
マシロを押しのけるようにして俺達の背後に歩いて行くバハリ。アンジャナフがそれを見て追いかけてきたのでとりあえず殴りつけて怯ませるとヒビキとナギも続く。マシロはバハリがなにを気にしているのか気になった様で構えながらもそっちを向いていた。
「どうしたんですか?」
「ほぉ!これは興味深い!どうしたって、わからないのかい!?ここ!これ!」
そういうバハリの足元にはでかくて重そうな引き摺った様な足跡があった。…なんかのモンスターの足だということぐらいしかわからない。
「わかるだろう!?」
「わかりません。ここは危ないのでとりあえず安全な場所に…」
「強烈な力で地面を抉り…なにかを引き摺った跡もある…結構広いな」
「危ない!?ここは危ないんですって!?」
アンジャナフの放った火炎放射からバハリの手を引いて回避させるマシロ。
「おおっと、助かったよ。君達ひょっとしてカムラの里から来た助っ人のハンターさんたち?そう、あの淵虎竜を討伐した?確か名前は…そう、猛き炎だ!そうだろ?」
「そうですけどバハリさんあなた状況わかってます!?」
マシロが度肝を抜かれている。なんてマイペースなやつだ。するとバハリは楽しげに頷くとアンジャナフそっちのけで足跡を観察し始めた。
「やーっぱり、そうだろう?知ってるかもしれないが俺はバハリ。モンスターの調査とモノ作りのエキスパートだ。よろしく」
「私はマシロです!でもよろしく言ってる場合じゃないんですって!?」
バハリに飛びかかろうとするアンジャナフをナギがデュエルヴァインで引っ張り、そこにヒビキが顎をかち上げたところに貫通弾を叩き込む。もうバハリはマシロに任せて俺達はこっちに集中しよう。
「さて、この跡だが…間違いない、ガランゴルムだ。この辺りに現れたんだ」
「ガランゴルム…?それって確か」
「王域三公の一体、剛纏獣だ。とはいえ、あまり縄張りを離れないと言われているガランゴルムがこんなところに現れるって言うのは…なにかが起きている、かもしくは」
「もしくは?」
「なにかを追いかけて来たかってことだ。こりゃあ調べて置かない手はない」
そう言ってバハリがこりずに跡を調べようとしゃがんだ時だった。
「危ない!」
それに気付いたのはふと背後に振り返ったマシロだった。ブオンッと風を切って吹っ飛んできた巨体から、バハリを掴んで翔蟲を使ってその場を飛び退く。ドゴシャアッと地面に激突してなお勢いは殺せず滑走しアンジャナフに横から激突してダウンさせたそれを見たバハリが驚いた顔をした。
「なにかと思えばガランゴルム、だって…!?」
「なに!?」
緑色のゴツゴツとした苔むしたかの様な甲殻で覆われた猿やゴリラのような重厚かつ強靭な身体が特徴的な巨体で、右腕に溶岩のように溶けた岩石を、左腕にみずみずしい苔を纏わせている牙獣種であろうモンスターが立ち上がって自分が吹っ飛んできた方向を睨みつける。見てみるがそこにはなにも……いや、このデジャヴは…!
「ナギ、ヒビキ、マシロ、バハリ!隠れるんだ!」
そう言うなり瞬時に木々や岩陰に隠れる俺達。バハリは離れたくなさそうだったがマシロが無理やり横になってる丸太の陰に引きずり込んだ。そして、それはズシンズシンという足音と共に何もない木々の間に足跡を付けながら、擬態を解いて姿を現した。
「大地母蜘蛛…」
息を呑み全力で隠れる。大地母蜘蛛は鋏角と呼ばれる顎をカチカチと鳴らして周囲を見渡し、己に突進してきたガランゴルムを文字通り一蹴するとアンジャナフを見つけて歩み寄った。折りたたんでいる首を伸ばしてダウンしているアンジャナフをじろじろと観察する大地母蜘蛛はなにかを確かめるように大きな節足でつんつんとつついた。
「グオアァアアっ!」
その衝撃によりアンジャナフはダウンから立ち直るなり、口から炎を溢れさせて大地母蜘蛛の顔に向けて放射するも、銀色の糸には燃え移らないどころか焦げ跡すら付かず、大地母蜘蛛が頭上まで振り上げて振り下ろした節足に喉仏を貫かれてあっさりと絶命。糸に巻かれてグルグル巻きにされてしまう。
「あのアンジャナフを一撃で…」
あまりにも一方的な攻防に戦々恐々していると、引っくり返っていたガランゴルムが立ち上がり右腕の溶岩を爆発させて跳躍。大地母蜘蛛の首に馬乗りになるとその頭部に水を纏った左腕の拳を叩きつけてから連続でタコ殴りにする。
「ガランゴルムはあいつに縄張りを荒されてここまで追いかけて来たのか…」
バハリがそんなことを言っているのが聞こえる。しかし猛攻を与えるガランゴルムだが、糸で頭部を覆っている大地母蜘蛛は全く意に介しておらず、煩わしいと言わんばかりに首を伸ばして頭突きを頭部に浴びせて怯ませるとカチカチと顎を鳴らし、腹部からわらわらとヤツカダキがたくさん登場。
「「「キシャアアアッ!」」」
ガランゴルムに数体がかりで飛びかかって引っ付き噛み付こうとするが硬い皮膚には歯が立たず、ならばと火炎を放出して火達磨にすると、引き摺り下ろす様にしてガランゴルムを地上に叩き落した。そのまま水没林に着地し、眺めながらカチカチと音を鳴らす大地母蜘蛛に従うようにガランゴルムを壁際に追い詰めたヤツカダキ五体は一斉に糸を放出してガランゴルムを拘束。引っ張って土下座させるように地面に頭から叩きつける。
「キシャア!」
すると大地母蜘蛛が折りたたんでいた首を伸ばしてその牙をガランゴルムの首筋に突き刺す。すると紅い光が胴体の一部で小さく輝いたかと思えば表面から糸を伝うようにして頭部に移動、ガランゴルムになにかが注入される。なにをしてるんだ…?
「ウガァアアアアッ!」
するとガランゴルムは悶え苦しんだかと思えば糸の拘束を引きちぎり咆哮。その圧にヤツカダキたちは大地母蜘蛛の胴体に戻って行き、ガランゴルムは理性があった先程までとは異なるように獰猛に光らせた瞳で大地母蜘蛛を睨みつけると再び右腕を爆発させて跳躍。首を伸ばして振り回してチェーンアレイの様に頭突きを繰り出した大地母蜘蛛の一撃と左拳を空中で激突。弾かれると何かに堪えるように四つん這いでその場を去って行ってしまった。
「…何だったんだ今の」
思い出すのは塵魔帝ニキの言っていたこと。糸の一部が紅く輝いていたって今の奴か?すると大地母蜘蛛は改めて糸を口から伸ばすとアンジャナフの簀巻きに括りつけて引っ張り上げ、遠心力で胴体にくっ付けると気がすんだのか再び周囲の風景に擬態し、足音を鳴らしながら去って行った。十分離れた所で五人全員で顔を見合わせ集まる。
「…九死に一生を得たな」
「まさかヤツカダキが生息しない水没林にまで出てくるなんて…」
「でもガランゴルムが暴れてる原因っぽいのは見れたな」
「バハリさん、ひやひやしましたよ…なにしてるんです?」
マシロが尋ねたので見てみると、バハリは先程豹変したガランゴルムに引きちぎられた糸の欠片を回収して大事そうにケースにしまいながら笑って見せる。
「…今回の異変なんだがな。さっきのあれを見てピーンときた。こいつを持ち帰って研究すればなにかわかるかもだぜ」
…やっぱり優秀だな?こいつ。
ガランゴルムもこういう感じにルナガロン見たく顔見せしてから戦えばあんな影が薄くならないんじゃないかなって。
前回のとあるシーンが「ここすき」されてて気付いていた人もいたんだなって。色々見えてきた大地母蜘蛛の生態。この時点でこいつがどういう存在なのか気付いた人もいることでしょう。ティアマトがモチーフなだけあってケイオスタイドを思わせる要素もあります。
バハリは多分アンジャナフに襲われながらも研究を優先すると思うんだ。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。