今回はマシロVS極断刀。楽しんでいただければ幸いです。
溶岩洞にやってきた私はすぐ側に溶岩が流れる地表を調べていた。あの巨体で歩くなら少なくとも地下の水脈洞窟には入れないと思ってのことだ。
「足跡らしきものはあるからここにも来てるんだなあ」
そんなことをぼやきながら大翔蟲で溶岩を挟んだ反対側のエリアに飛んでいく。水が溢れる地下洞穴の真上だ。糸の残骸があるかもと辺りを見渡していると、地面がボコッと盛り上がりアイルーとガルクが飛び出してきた。どちらも真っ白な体色が特徴だ。
「ご主人、一通り走って来たけどやっぱり地下洞穴には痕跡らしきものはなにもなかったにゃ」
「ワウッ!」
「うん、お疲れ。ユキ、ヴァイス」
私のオトモアイルーのユキとオトモガルクのヴァイス。チームで戦う時は基本お留守番だがソロでやる時は頼りになるオトモだ。私が上部を探っている間に念のために地下を探らせていたのだ。ちょうどいいのでヴァイスの背にユキと共に乗って西側上部を駆け抜ける。
「…うーん、糸の痕跡は全然見つからないなあ」
「ここら辺は大型モンスターもあまり来ないから、あるとしたらもう少し広い場所にあると思うにゃ」
「お、さすがユキ。じゃあ一回降りてみようか」
ユキの助言を受けて地下洞穴に繋がっている水場にヴァイスを飛び降りさせる。ヨツミワドウとかティガレックスとかがたまに寝ている場所だ。今は何もいないようだが…うん?
「なにかな、あれ?」
「すごくキラキラ輝いている鉱脈塊にゃ!でもこんなところにあったにゃ?」
いつもはティガレックスなどが寝ている場所に、いろんな色で複雑に輝く鉱脈が山の様に存在していたのだ。不思議に思いながらもピッケルを取り出して近づく。鉱石は装備を作るのにも重要だ。レアな鉱石が手に入るかもしれない。そう近づいたその時だった。
「っ!?ユキ、離れて!」
「ご主人様!?」
殺気を感じて咄嗟に大剣を背中から抜いて手にしてガード。ヴァイスがユキを乗せて離れて行くのを横目にガギギギギギン!と硬い何かが連続でぶつかり、大きく弾き飛ばされて水場を転がされ、びしょ濡れになる。そこにあったのは異様な光景。三メートルを優に超える鉱石の山の両端から逆刃の太刀の様な物が天に向かって伸びていた。それは地鳴りと共にググンと伸びて甲殻に包まれた腕が現れ、鉱石の山の下からいくつもの甲殻に包まれた足が現れ、甲殻種のモンスターが姿を現して振り返る。殺意に満ちた黒い目がこちらを睨みつける。
「ダイミョウザザミ…?」
「あれは!なんか微妙に違うけどあのフォルムは、ショウグンギザミにゃ…!」
「ダイミョウザザミと違うの!?」
ティガレックスなどの通常でも強力なモンスターを優に超える大きい体格で触れる者すべてを斬り裂きそうなほど鋭角的な甲殻に包まれ、背中に鉱石を大量に積み上げた甲羅を背負った、逆刃の太刀の様な鎌を持つダイミョウザザミみたいなやつ。ユキが言うにはショウグンギザミというらしい。
「ギシャシャシャッ!」
ジャキンジャキンジャキンッ!
ショウグンギザミは特徴的な鎌をすり合わせてまるで砥石の様に砥ぎ、金色の輝きに包まれた両手の鎌を振り上げてきたので、こちらも大剣と太刀を構える。やばい、こいつはやばい。百竜夜行の時に感じた、外天種と同等の異様な力を感じる。あの砥がれた鎌は、不味い気がする!
「来い…!」
「ギシャア!」
跳躍するショウグンギザミが左腕の鎌を縦に構えて急降下してきたので見切りで回避。大剣を振り上げて弾き、太刀の斬撃を叩き込むが体勢を沈めて低くして鉱石の甲羅で弾かれ、地面を抉り取るように右の鎌を振るってきた。大剣を地面に突き刺して受け止めるも、とんでもない衝撃で痺れる。
「ギシャア!」
そのまま両手の鎌を振り回し、まるで気刃大回転斬りの様な軌道で刃が襲いかかってきたので、大剣を地面に突き刺したまま手放して太刀を両手に握り、防いでいく。なんだろう、これ。まるでたまに特訓に付き合ってくれた里長の様な、太刀だけに全てを捧げた生粋の太刀使いの動き…!
「まるでハンターみたい…!?」
今度は二連抜刀の様な動きでガギィン!と、太刀が弾かれ宙を舞う。そのまま私の腹部を狙って横に振るわれた鎌に、咄嗟に太刀の鞘を手に取り上から刃の腹に叩きつけることで防御。そのまま走って地面に突き刺した大剣を手に取り、突進してきたショウグンギザミに対して引き抜いた勢いで叩き付けた。
「大地納刀・抜打激昂斬!」
「ギシャア!?」
顔面を大きく斬り裂かれたショウグンギザミは怯んで後退。ブクブクと泡に包まれ再生されていく傷に目を向けて怒ったかのようにジャキンジャキンジャキン!と鎌同士をぶつけ合って砥いでいったショウグンギザミは甲羅の隙間から水流を噴き出して私を怯ませると、鎌で地面を掘り進んで地中に潜航、大地を隆起させて私の足元まで移動してきたので翔蟲で飛び退いて回避、同時に地面を突き破って回転しながら現れ、そのまま回転斬り。斬り裂かれた空気が刃の雨となって私に襲いかかり、全身を切り刻まれる。
「ああっ!?」
「ご主人!?こいつぅ!」
水場に叩きつけられ、血が流れて行く。それを見たユキがヴァイスを駆って駆けつけ、ヴァイスにショウグンギザミの鎌を噛み付かせて自身はマガド製の槍を手に取り鉱石の甲羅に飛び乗り引っ付いて、下の甲殻を突き刺して爆発させていく。ショウグンギザミは鬱陶しがって身体を振るい、ヴァイスを水場に叩き付け、ユキを吹っ飛ばし、手にかけようと歩み寄って行く。
「させるかぁああああ!」
大剣を右手に握り、走りながら太刀を回収。跳躍してグルングルンと振り回して何度も何度も鉱石の甲羅に後ろから叩きつける。金剛大車輪斬りだ。するとショウグンギザミは振り返るのと同時に鎌の刃じゃない方を頬に叩きつけてきた。殴り飛ばされて水切りの様に水場を転がって行き、岩肌に背中から激突してようやく止まった。手放してしまった大剣と太刀がその場を転がって行く。
「い、痛い…」
今のが刃だったら死んでいた。そう確信するほどの衝撃だった。大剣と太刀を握りよろよろと立ち上がると、ショウグンギザミは天高く跳躍していて。
「っ!?」
咄嗟に横に転がって避ける。その瞬間、太刀の兜割を彷彿とさせる斬撃が岩肌を叩き斬る。とんでもない切れ味だ。さっきから切れ味が一切落ちてない…まさか、剛刃研磨?
「こ、のおお!」
全身から血が流れていつもの怪力が使えない。太刀を腰に納めて大剣を両手で握り、引き摺って疾走し、勢いよく振り上げようとする。しかしショウグンギザミは甲羅から水流を噴射して水場を滑走。鎌を振るいながらすれ違い、壁に激突しながら振り返る。掠った、だけ?一瞬のこと過ぎて振り上げられなかった、と思った瞬間。
「うあぁああああっ!?」
掠った4か所に連続で斬撃が発生。装備ごと全身が切り刻まれ、さらには通常マガイマガドで作った大剣が同じように連続で斬撃が入って真っ二つに叩き斬られてしまい、私はその場に倒れ伏す。全身の鈍痛が凄い。急所を避けて、血が大量に流れるところだけを斬ってる…人体を理解しているんだ。それに今の技は……。
「桜花鉄蟲気刃斬…?」
なんで、鉄蟲糸技の動きを完璧に……。ジャキンジャキンと鎌を擦り合わせて砥ぎながら、余裕の動きで歩み寄ってくるショウグンギザミ。私は何とか立ち上がり、回復薬をかけた右腕で一度抜いた太刀を特殊納刀する。もう体力がない、血を流し過ぎた。カウンターで奴の刃を叩き折るしか、ない!
「ギシャシャアッ!」
「うおぉおおおっ!」
奴の斬撃に合わせて引き抜く、がしかし直前で奴の刃が止まる。フェイント!?と思った瞬間、既に振り抜いてしまった太刀に鎌を叩きつけられ、刀身を粉砕されてしまった。
「そんなっ…がっ!?」
「ご主人!?」
そして、呆然としていた私の腹部に突き立てられる鎌。突き刺されたまま持ち上げられ、こちらに駆け寄ってくるユキが今にも閉じそうな視界に入る。駄目、こっちに来たら……。そう、手を伸ばした瞬間振り回されて鎌が引き抜かれ、私は投げ出されて水場に叩きつけられる。どくどくと腹部から流れる血が現実を嫌でも実感させる。ああ、私、死ぬんだ。
「…太刀を失った、私には…もう興味がない、ってこと…?気に入らない、なあ……」
そのまま私には興味もくれず背を向けて去っていくショウグンギザミに言いようもない怒りを感じながら、私は意識を手放した。
殺意が高い極断刀君。大体の方がお察しであろう通り転生者です。
・極断刀ショウグンギザミ
鉱石を食べて生み出した唯一無二の虹色の鉱石の甲羅を背負った、逆刃刀みたいな鎌が特徴のショウグンギザミの外天種。転生者であり、「永続剛刃研磨」という特典を持って転生したギザミと太刀が大好きな男。ひたすら生きるため斬り裂き続けたらテリトリーに入った物を見境なく斬り裂く凶暴な性格となった。たいていの相手は一刀両断できる。
こうしてマシロが一時離脱。次回から王域三公編です。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。