ガランゴルムの死骸の回収班を待っている間にダメージを負ったらしいバレットとその護衛にヒビキをその場に残して私とフィオレーネさんで周囲を探索していると、ガランゴルムが付けたであろう傷跡がついている木や苔むしている足跡を見つけた。こんな狭い所にあるなんて、かなり暴れていたらしい。
「フィオレーネさん、これもそうかな?」
「ああ、恐らくな。多少なりとも手がかりが残っているのはありがたい。縄張りがどれぐらい変化したのかのヒントになる。他のモンスターへの影響も調査しなければ…」
「なるほどなあ。縄張りなんて考えたことなかったな」
「王域では顕著なだけだ。特にこの城塞高地ではな」
なるほどなー。勉強になる。一応G級にはなったけどそういう知識は全然だ。一応過去作はやってるんだけど基本的に古龍がもたらす災害でしかないし。そうだ、古龍といえば。
「えーと、ネグレト……」
「ネグレマガラのことか?」
「ネグレマガラがいたのは偶然なんですかね?」
「偶然じゃないさ。ここにはゴア・マガラもよく訪れるからな。ネグレマガラもその中の一体が進化を果たしたものだ。人を襲ったことがない温厚な古龍なのだが、その力はあまりにも絶大で警戒せざるを得ない」
「どんな力があるの?見た所凄い爆発していたけど」
「濃厚な狂竜ウイルスをまるで粘膜の様に全身を覆っていて刃が通らず、それを攻撃に転用しているのが最大の特徴だ。ただし触れても感染はせず、完全に攻撃と防御に転用しているようだ。逆に言えば手を出さなければ害はない」
「なるほど?」
よく考えたらヒビキが乗ったの危なかったじゃん。あぶなっ。ネグレマガラでよかった。
「バレットが気付かなければあの攻撃に巻き込まれて浸食されていただろうな。あの直感はすごいな」
「わかる。欲しいよね、あれ」
健康な肉体と言う特典の私には結構羨ましい特典だ。ゲーム画面。今回はそのせいで怪我したっぽいけど。
「あの予知とも言える直感はリーダーとして実に頼もしい。いいチームにいるな、ナギは」
「うん、自慢のチームだよ!今はフィオレーネさんもその一員だよ!」
「ふっ。嬉しいことを言ってくれるな」
「っ!?危ない!」
咄嗟にランスに取りつけている盾を構えると、凄まじい突風が炸裂してフィオレーネさんを押しのけてゴロゴロと転がり、そのまま嵐の様な暴風が吹きつけて背後の木が砕け散って残骸が私にのしかかってきた。痛い、けどすぐ治る。私の特典は「健康な肉体」いかなる病魔も外傷も私には通じない。生前の私が渇望した肉体だ。でも押し潰されるのはちょっと非力すぎて出れないね!
「ナギ、無事か!?今、出すからな!」
「ありがとー…」
フィオレーネさんが倒木を持ち上げてくれて脱出する。足が潰れてたけどすぐ治るのを見てちょっと引いたけど便利だし気にしないことにした。
「今の風は一体…」
「なにか強い憎悪の様な物を感じるけど……また、極断刀かな!?」
「いや、奴も縄張り争いで疲弊していた。ううむ……」
「あ、あれ!」
それを見つけて指差すとフィオレーネさんもそれを視界に入れた。上空に浮かんでいたのは一見蟲の様な、でもよく見たら金魚か蝙蝠みたいなヒラヒラした、羽の生えた淡く緋色に輝く小型の生物だった。もしかして、バレットが以前淵虎竜を討伐した後に見たって言う蟲…?それは城塞跡の方角へと飛び去って行った。
「今のは一体……?」
ガランゴルムを討伐して剥ぎ取ってから、フィオレーネとナギが周辺を探索した後に、俺達はエルガドに帰還した。すると出迎えてくれたのは提督とバハリだった。
「……よくぞ無事に戻った。ネグレマガラだけでなく極断刀までいたとは…本当に、よくぞ任務を果たした」
「いいや。今回は運がよかった。ガランゴルムを倒せたのはその二体の乱入が大きい」
「提督にも見せたかったです、ヒビキの操竜捌き」
俺に続いてフィオレーネがそう言うと、提督の傍に立ったバハリが拍手を送る。
「いやぁ、フィオレーネに猛き炎、お見事でした!俺の計算外なことばかりだったのによくもまあ、無事にすんだものだ!」
そう言うバハリの視線が俺の肋骨…多分折れてるところに向く。隠してたのに見ただけで気付いたのか。
「…約一名無事とは言い難いみたいだけどね?」
「そうなの、バレット?」
「名誉の負傷だから気にするな」
ナギが問いかけてくるが、まさかヒビキに殴り飛ばされた傷が一番重症とは言えない。
「バレット、バハリが鬱陶しくてすまない。鬱陶しいがモンスターの研究に置いて右に出る者はない研究主任でもある。エルガドにある数々の設備もこの男が造り出した。それで、なにかわかったのか?」
なんでもエルガドができる前から大穴とメル・ゼナについても調べているらしい多忙なバハリにそう問いかけるフィオレーネ。
「まず聞きたいんだけど。前提として猛き炎の三人とフィオレーネ。今回のガランゴルムの一件、率直にどう思った?」
「どうって……異様に強かったな」
「話には聞いてなかった石柱攻撃もしてきたし」
「理性は完全に飛んでいたな」
「大地母蜘蛛に毒を流されたとはいえ、臆病な性質で温厚なガランゴルムらしくはなかったな」
「そう、フィオレーネの言う通り王域三公に数えられているが本来は大人しく俺達に害を与えないモンスターだ。大地母蜘蛛に縄張りを荒されたから追いかけてきた、と推理していたがそもそもが間違いだと思う。ガランゴルムは大地母蜘蛛を追いかけてくる前から好戦的になっていた原因があると思うんだ」
なるほど。確かに、あんな明らかに別格な奴を温厚な奴が追いかけるってのも妙な話だ。
「そこでガランゴルムの死骸を調べたが、あちこちに小さな傷がついているのを発見した。大地母蜘蛛に噛まれた跡とは別にね」
「モンスターは活発だ。小さな傷ぐらいは珍しくないだろう」
「そうだよ、傷なんてハンターでも日常茶飯事だよ?」
「フィオレーネとナギ、落ち着いて。前のめりになるとコケちゃうよ?急かずに聞いてくれ。その傷は、小動物に噛みつかれたかのような傷だった。だけど妙なことに、潤沢なサンプルを揃えているのだけど傷の形に一致するサンプルがない。だけど成分はあるものと一致した。それが問題でねえ、頭を悩ませている」
「あるもの…?」
「大地母蜘蛛の糸から摂取された神経毒と思われる成分さ」
妙な話だ。同じ毒を、謎の小動物と大地母蜘蛛それぞれから二度も流し込まれたっていうことか。
「それでその小動物の正体だけど……ナギ、フィオレーネ。その顔、心当たりがあるんじゃないかな?」
バハリがそう言ったので振り向くとフィオレーネとナギはそんなまさかと口を押えていて。探索した時になにか、見たのか?
「…バレットたちには言っていなかったが、ガランゴルムを討伐した後に探索中に突風が発生した直後に上空で妙な生物を見つけた」
「多分、バレットが以前見たって言う紅い蟲みたいなやつ。それが噛み付いたってこと?」
「恐らくそうだ。大地母蜘蛛に毒を打ち込まれる前からその小動物に毒が流し込まれて狂暴化していたんだろう、あくまで仮説だけど。もしかしたら大地母蜘蛛が母体でその配下かもしれないけど…そうなると別々に毒を入れるのもおかしい話だよねって」
「…その毒はガランゴルムから見つかったのか?」
「それなんですけどね提督。おかしいことにガランゴルムの死骸からは傷口以外から毒が検出されなかった。恐らく完全に血液中に溶け込んでしまう性質があると思われる。傷口から採取できたのもわずかな成分だけでまるで参考にならない。これじゃ研究は難しいね。もっと量が欲しい所なんだけど」
そうお手上げのポーズをとるバハリ。しかしモンスターに打ち込まれたら溶け込む毒の現物をどうやって手に入れろと。
「…そうか。大地母蜘蛛の糸の方はどうだ?心眼でも斬るのは難しいと言っていたが、突破口は見えたか?」
「そっちも無理ですね。武具屋に協力を頼んで青切れ味、白切れ味、紫切れ味の武器を用意して試したが駄目だ、まるで歯が立たない。一撃で即赤切れ味って言うとんでもな硬度だ。古龍のそれよりはるかに硬い。この世界で最高の硬度と言っていい。今んところモンスター並の怪力で引っ張ってちぎるぐらいしか対抗策がない。仮に無限に切れ味を保ち続けているなんていう武器があれば別ですけどねえ」
つまりあの糸を攻略するのは現状無理ってことか。…無限に切れ味を保ち続ける、か。なんだろう、なんか頭の隅っこで引っかかった様な。
「…とにかく、ガランゴルムの討伐ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ」
とりあえず、お言葉に甘えて休むことにしよう。とりあえず回復薬を飲んで肋骨の回復を急がないとな。
ネグレマガラは粘菌による防御力と攻撃力特化型というシンプルな性能です。極断刀の刃が通じてなかったのもこのせい。
地味に判明、ナギの特典の効果。常時「健康な肉体」っていう地味チート。毒にもかからなければ狂竜ウイルスも通じません。以前マガイマガド戦で重傷を負ってたのにピンピンしてた理由がこれです。即死じゃなければなんとかなるからタンク役に最適。
そして謎の小動物と大地母蜘蛛の関係。使っている毒は全く同じ物なんだそう。つまり…?
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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