今回は大地母蜘蛛の真実解明回。戦慄せよ。楽しんでいただければ幸いです。
「いいかい、猛き炎の三人。大穴の下は淵劫の奈落と呼ばれている未知の領域だ。落ちたら最後だと思った方がいい」
そう言うのは船の上でなにやら準備をしているバハリ。俺は同乗しているナギとヒビキに目を向け、頷く。
「ああ、わかってる」
「確認するだけだからね」
「戦力が足りないのは重々承知している」
「それならいいけど…十分に注意してくれ。あれが大穴……『サン』大地に穿たれた漆黒の太陽さ」
訪れたのは城塞高地のすぐ傍にある大穴だ。監視されているエルガド近くの大穴に異変はなし、なにかあるとすればこちららしい。配備されているベースキャンプで支給品のモドリ玉や応急薬グレートを受け取り、淵劫の奈落とやらを覗き込むためにギリギリまで歩いて行く。バハリも気になっているのかついてきた。
「鬼が出るか蛇が出るか…」
「この場合蜘蛛なんだけどね」
「
端っこまでたどり着いたので覗きこむ。真っ暗で何も見えないが、なにかが蠢いている影が見える。なにかが、いる。それを見たバハリは「こんなこともあろうかと」と弾丸を取り出した。
「それは?」
「船の上で準備してたものさ、ヘビィボウガン専用に閃光玉を改造した閃光弾だ。最大まで溜めて発射すればこの大穴の下を照らすことができる光源になる」
「助かる」
左腕のヘビィボウガンの特殊弾を装填する弾倉に渡された弾丸を装填。最大までチャージし、真っ暗で何も見えないそこへ撃ち出す。結構な距離を下降し、太陽の様な閃光が放たれる。そして姿を見せたのは、地獄だった。
「うげっ…おいおい、マジか」
「蜘蛛の巣だとは思ってたけど…」
「ここまでとは…!」
「こいつは俺でも予想外だ!」
光に照らされたのは、超巨大な蜘蛛の巣。遥か下、大穴の中腹で蓋をする様に展開された、ところどころが紅く淡く輝いている巨大な銀色の蜘蛛の糸で隙間なく敷き詰められていて、まるで釜の底にも見え、蓋の様に網の様に穴が開いた天幕が大地母蜘蛛を中心に広がっている。あれは大地母蜘蛛がすっぽり埋まるようにできているな、まるで人間の建築だ。
その中央で陣取る大地母蜘蛛の周りを無数のヤツカダキとヤツカダキ亜種、ツケヒバキやハゼヒバキが忙しなく動き回り自身の糸で壁との繋がりを補強していて、岩肌がやはり紅い淡い光がところどころで輝く糸に覆われて要塞の様になっている。双眼鏡で見る限り、恐らく色が違うヤツカダキ亜種の糸も計算されて張り巡らされており、侵入者がいれば即導火線として発揮される他、巣自体には影響がないようだ。
ここまではいい、大地母蜘蛛がここに巣を作っているのは想像ついていた。問題はその数だ。十数体いればいいと思っていたその数は、どう数えても100を優に超えている。原種も亜種もその幼体も大地母蜘蛛の周りでワラワラしている光景は見る人が見れば絶叫モノだろう。閲覧注意って奴だ。しかもその周りを大地母蜘蛛が集めたであろう奇しき赫耀のバルファルクやテオ・テスカトル、クシャルダオラにオオナズチ、マガイマガドにリオレウスと言った強力なモンスターの死骸が糸に絡まって幼体たちに貪られているのだから目にも当てられない。それはまさに、ヤツカダキの王国だった。
「こいつは提督に報告しないとねえ…この数が一斉に王国を襲えば、簡単に壊滅する。…まさか、大地母蜘蛛が深淵の悪魔…?」
「バハリ、深淵の悪魔はお伽話じゃないのか?」
「いや、実は実在するのは提督から………いや、なんでもない。とにかく俺は報告してくる、何か動きがあったら教えてくれ!」
ヒビキの問いをはぐらかし、ばたばたと駆けて行くバハリ。…やっぱり、提督は深淵の悪魔の実在を知っていたのか。あるとすれば五十年前か?
「…バレット!あの紅い光、よく見たらあの小型生物だ!」
「なんだって!?」
怖気づくことなく双眼鏡を手に見ていたナギの言葉に、俺は双眼鏡の倍率を上げて確認する。紅く輝いていた光源の正体は、羽の生えた蛭の様な小型生物。あのとき、俺が猛き炎に入ることを決めた時に見たあいつだ。それが無数も糸に囚われて蠢いている。
「大地母蜘蛛とあの生物は共生関係じゃない、むしろ捕らえてなにかに利用している様に見えるな」
「それって…毒を取り込むため?」
「…いいや」
観察していると、大地母蜘蛛の口から糸が伸びて、見るからに弱っている小型生物の一匹を絡め取り捕食した。今まで、大地母蜘蛛は奇しき赫耀のバルファルクやアンジャナフといった獲物を亡骸にして糸で絡め取り運んでいたが、捕食はしていなかった。恐らく子供たちのための餌なんだろう。あの小型生物が大地母蜘蛛の主食か…?
「…よくわからないがあの小型生物は栄養もしくはエネルギーが多分に含まれていて、それを巣で絡め取り捕食し続けた結果があの大地母蜘蛛、ということか…?」
「いやでも、こんなところで巣に捕まる生物って何…?」
「この大穴の下があの蛭みたいな奴等の住処なんだろうな。捕食ついでに毒を溜めこんでそれを狩猟に利用していると見た」
ナギの問いかけにヒビキがそう答える。大地母蜘蛛の正体も見えて来た。もう少しなにかわからないかと見ていたが閃光弾の効果が消えたようでまた真っ暗になってなにもわからなくなる。…この暗闇のせいであの生物たちもまんまと巣に捕まったのか、なるほどな。
「でも、エルガドが監視している大穴に異変は見られないって…大穴下が住処ならこっちじゃなくあっちからいくんじゃない?」
「忘れたのかナギ。恐らくこの小型生物は知性がある。監視されているんだ、人間に見られることを恐れて
「そっか……さすがヒビキ」
「とにかく大地母蜘蛛の住処もカラクリもわかった。俺達も戻って……って、バレット!?」
「え?」
ヒビキの推察に納得していると、ナギとヒビキが何かに気付いて武器を構えた。穴に背を向けていた俺も嫌な予感がしながらも左腕のヘビィボウガンを振り向きざまに突き付ける。そこには、ヤツカダキ亜種の顔があった。
「何時の間に…!?ヘビィナックル!」
恐らく死角の真下の壁を登って来たんだろうが…!勢いよく振りかぶりヘビィボウガンで殴りつける。同時にヒビキのスイングとナギの突きも炸裂、体勢を崩したヤツカダキ亜種はそのまま落ちようとして。
「な、ん、だ、とぉおおおおお!?」
落ちる直前、糸を俺の胸にくっ付けて引っ張って道連れにしてきた。やばいやばいやばい!マップが書き換わる。表示されたヤツカダキの数が100もあってバグっている様にしか見えない。ボフンと柔らかいものに落ちて助かったが、恐らくは奴等の寝床なのだろう糸のハンモックで横にはさっきのヤツカダキ亜種がひっくり返っていた。無数の複眼が俺を捉え、大地母蜘蛛が咆哮を上げた。
「キシャアァアアアアアッ!!」
「うわぁあああああっ!?」
次々と糸を伸ばし、炎を放射してくるヤツカダキの群れ。地獄も地獄過ぎるだろ!?グラッと地面…いや、糸の足場が揺れる。それはあの巨体が動き出したということで。侵入者の俺を許す気はないらしい。
「キシャアアッ!」
「旋廻跳躍!?」
鉄蟲糸技を駆使して、大地母蜘蛛の横に振るわれた長い首による噛み付きを回避。しかし空中に逃れた俺に向けて次々と糸が伸びてきて、咄嗟にライトボウガンで斬裂弾を撃ち込み雁字搦めになったところを斬撃で解放。ヤツカダキに囲まれた糸の足場を駆け回る。まずいまずいまずいまずい!なんとかモドリ玉を使う隙を見つけないと…!
「いっけえええええええ!」
すると情報からナギの声が聞こえてきて、なにかが落ちてきた。大タル?とそれを認識した途端、糸の足場に激突してその中身が見える。それは、鉄蟲糸でできた玉だった。ダイミョウザザミの時の戦いがフラッシュバックして俺はモドリ玉を取り出す。
「観客も大勢いるな、俺の曲を聞いて逝きな!共鳴音珠…!」
瞬間、大音量の音撃が放たれてヤツカダキ達を怯ませる。大地母蜘蛛は怯まず近づいてこようとするが、足元のヤツカダキたちを踏まないようにしていて慎重になってて間に合わない。俺はモドリ玉を使ってキャンプベースまで帰還した。
「し、死ぬかと思った……」
「バレット!よかったよお!」
「咄嗟に思いついた手段としては上手く行ったな。こんな静かなところにいるんだ、大音量は応えたはずだ」
「報告してきたけど…あれ、どうしたの?」
三人でゼーゼーと息を吐いていると、バハリがやってきて首を傾げるのでその肩を掴んで船に直行する。
「話は後だ!とりあえず…逃げるんだよぉおおおおおっ!」
なんかいつも逃げてばかりの気がするが三十六計逃げるにしかずだろう。
というわけで大地母蜘蛛の正体は「偶然大穴に巣を作ったヤツカダキが、偶然捕まった小型生物を餌にしてそのエネルギーを栄養に肥大化した突然変異個体」となります。つまり「奴」に渡る筈だったエネルギーのほとんどを横取りして吸収してます。強いはずである。
この地獄を相手にしないといけないバレットたち。お先真っ暗とはこのこと。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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