今回は今まで謎に満ちていた大地母蜘蛛視点の話。どんな悪にだって理由はあるのだ。楽しんでいただければ幸いです。
私は、弱かった。悔しかった。憤慨した。日夜縄張り争いを行う竜や凶暴な猿どもが我がもの顔で支配する砂原で私は生まれた。当時は人間どもからツケヒバキと呼ばれていた時代、母親が餌を集めに離れた隙を突いて姉妹がみな、人間どもに駆逐された。私は運よく駆除を免れた。
「ツケヒバキを駆除する依頼の数はこれで合ってるよね?兄者」
「そうだな。倒し過ぎると環境に影響を与えるからこれ以上やるのは駄目だ。帰るぞ弟者」
その理由は、依頼された数の駆除を終えたからなのだと人間たちは言っていた。その後、帰還して私しか子供が残ってないことに怒り狂った母親が暴れたが、それを理由として母親も残りの姉妹ごと人間どもに殺された。
「暴れなければ殺す必要はなかったんだがな」
「安らかに眠ってくれヤツカダキ」
ふざけるなと思った。お前たちのせいなのに、お前たちが殺すのか。だが私は弱かった。母親に加勢せず、糸で作った繭に土を被せてその中に隠れていた私は弱かった。必死に隠れながら糸で罠を作って狩りをして餌を確保して捕食し、長い年月をかけて成長していった。母と同じ体躯…人間から言わせればヤツカダキとなり、子供も得て砂原で大人しく過ごしていたところ、奇跡的に生き延びていた姉と出会った。
「そうか、母は…人間どもに……」
「私はなにもできなかった、すまぬ…」
「いや、お前が生きていただけでも私は嬉しい。これからは共に生きよう」
嬉しかった。孤独で寂しかった心が埋まって行く感覚がした。だがそれは、長くは続かなかった。塵魔帝ディアブロスと古き龍クシャルダオラがどちらが砂原を制するかで縄張り争いを始めたのだ。それは苛烈だった。奴らの激突と重なるように砂嵐と竜巻が吹き荒れて、それに巻き上げられた巨岩の直撃を受けて姉は死んだ。力ある者にとって我等は視界にも入らぬ虫けらだと言わんばかりに、無惨に、無意味に殺された。それを機に、あんな奴等の支配を受けてなるものかと私は子供たちと共に砂原を出て旅することにした。
住み心地のいい溶岩洞や、体質に合わない水没林や寒冷群島、大社跡に城塞高地。人間たちにそう呼ばれていた地を転々とし、どこもかしこも飛竜を中心に縄張り争いを行っていて弱い者は淘汰され、安寧の地はないのだと悟った。ならば作るしかない、そのための場所を探そう。
そして私は赤い光に誘われるように、城塞高地近くの穴に潜り込んだ。巨大な穴を壁伝いに移動していくうちに、ここは静かで外敵がいないと悟って巣を作ることにした。下に何かいる気配はしたが、特に気にならなかった。できるだけ広く、快適に、狭く暗くとも我が子も過ごせる住処を。
「母、母。変なものを見つけた!」
「どうした、我が子よ?」
そんな思いでせっせと巣を作っていたところ、なにかが引っかかっていたのを子供の一人が見つけた。それは赤い光だと思っていた小さな生物だった。体は小さいが大きな力を感じる不思議な生物だ。世は弱肉強食、一思いに食ってみると凄まじい力が体に漲った。見れば、何匹も馬鹿正直にその生物は巣に引っかかってくる。私はあることを思いついた。この力を集めれば、飛竜どもすら駆逐してあの大地を我らのものにできるのじゃなかろうかと。
私は早速外に出て、強くなった力を行使して次々と獲物を狩って巣に持ち帰った。子供たちには飛竜や獣竜の死骸を与え、私はひたすら赤い光の生物を喰らう。そうしていくうちに我が肉体は巨大に、強靭に育っていき、かつて怯えていた塵魔帝など話にもならない肉体と、かつての繭がそのまま進化したかのような景色を映して擬態できる銀の糸、赤い光の生物らが宿していた毒を溜めこみ行使する力をを手にした。
子供たちもヤツカダキへと育ち、せっかくなので故郷を見せてやろうと腹部にくっ付かせて砂原に向かうと、ちょうどよく古き龍であるバルファルクを仕留めた人間たちを見つけた。それを横取りしてやろうと忍び寄ると、嫌な物を見た。同族で作った、武器を持った人間。姉妹たちが、母が殺されていく光景を思い出す。怒りが込み上がった。こいつだけは許してなるものかと襲いかかった。人間達の様に子供たちを散開させて取り囲み嬲り殺していたが、塵魔帝に邪魔されたので腹いせにボコボコにした。かつて恐れた相手はそこにはいなかった。
狩りを続けるうちに赤い光の生物の毒を用いれば飛竜どもを始めとした我ら以外の種は勝手に弱って狩りやすくなることを知ったので、飛竜や古き龍相手にいろいろ試しながら餌集めをしつつ、その死骸で巣を補強することを続けていたところ、巣に帰還していたタイミングであの人間が巣に入ってきた。我が家族をまた殺すのかと怒りのままに追い詰めたが逃げられてしまった。奴だけは許さん、いずれくびり殺してやる。
城塞高地にて戦闘の音を聞きつけたので死骸の回収にくると件の人間がいた。隠れているがわかる、お前の匂いは覚えた。ここで殺すべく子供たちを差し向けると、ネグレマガラと人間に呼ばれていた古き龍が割り込んできた。迎え撃つが我が子らを殺され、怒りのままに猛攻を仕掛けるも、奴の大技を前に我が子らを殺され、悲しみのままに撤退した。奴も許さん。何時か殺して見せる。
海を渡る術を身に着けたので密林と呼ばれる場所に行ってみると、異様に強い稲妻の飛竜に出くわし始めてまた何の成果も無く撤退させられた。あのままでは我が子たちが皆殺しにされるところだった。奴をどうにかするのも目標の一つとなった。
ただでさえ強力な古き龍だと言うのに私と同じ赤い光の生物から力を得ているメル・ゼナとかいう奴が現れたと言う報告を孫から聞いたので当分の間は大人しくおくことにした。そのうち、メル・ゼナは例の稲妻の飛竜に倒されたが稲妻の飛竜がその力を得たという情報も得て、一匹たりとも殺されてたまるかと溜め込んだ食料で子供を増やすことを続けた。
もう十何層にも広がった巣には数えきれない数の我が子、我が孫たちでひしめき合っている。我が力を受け継いだ子供たちもいる。壮観だ。だがこんな窮屈なところにいさせるのは忍びない。必ずや地上を我が種族のものとして、太陽の下に出させてやる。我等を底辺だと侮っていた他種どもめ。今に目に物見せてくれる…!
それぞれの地で見張らせていた子供たちや孫たちから、強力な飛竜どもやあの稲妻の飛竜が弱っていることを知った。好機だ。人間どもも古き龍も、飛竜も海竜も、獣竜も牙獣もなにもかも滅ぼして、地上を支配し、我が種族の手に……!
「――――滅ぼせ。悉くを踏みにじれ。いらぬ、我ら以外の命はいらぬ。満たせ、我等で満たせ。我が子らよ、我が孫らよ、地上を支配すべき至高なる種は我等だと知らしめるのだ……!!」
我が号令に、次々と巣から出て行く我が一族。地を這い、海を渡り、蹂躙しつくしてくれるだろう。次々と送り出していく。その間にも新たな子供を産み、急速に栄養を与えて成長させて送り出していく。たしかに我等は弱いかもしれぬ、だが数なら負けぬ。どんな生物だろうが数には勝てぬ。それが道理だ。
「決着を付けるぞ大地母蜘蛛ッッッ!!」
すると上から騒いでいる声が聞こえていたかと思えば、あの人間が仲間を引き連れて飛び降りてきた。いい度胸だ。ここで殺してやる。私は鎌首をもたげて迎え撃つ、仇敵を。まずはお前から八つ裂きにして、ネグレマガラや稲妻の飛竜をも殺して我らが天に立つ…!
自分たちを踏みにじる人間や飛竜種、多種族への怨み嫉み僻みと太陽の下を自由に歩ける憧れ。「サンブレイク」にふさわしい敵となります。
要注意モンスターだった塵魔帝とネグレマガラと現メル・ゼクス。やはり外天種はそれ以外からすると別格なのだ。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
好きな外天種及び特殊個体、転生モンスターは誰?
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淵虎竜マガイマガド
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雪夜叉ゴシャハギ
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極断刀ショウグンギザミ
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