『マッチ売りの不思議な少女』
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寒い、寒い日の夜。小さな少女が一人、道端でマッチを売っていました。
「マッチ、マッチはいかがですか?」
全てを売り切らなければ少女は家に帰れません。なぜなら、もしマッチを売り切らずに家に帰れば、恐ろしいことが待っているからです。
しかし、人々は少女には目もくれずせわしそうに目の前を素通りしていくばかりです。全く売れる気配がありません。
「寒い」
今日の夜は特別寒く、しばらくして空から白い雪がふわふわと舞い落ちてきました。
売り物です。勝手に使えば、それはそれは恐ろしいことになるでしょう。でも、少女は我慢できませんでした。
マッチを擦り、炎をともしました。
「わぁ」
それはそれはきれいで、暖かい炎でした。そして、不思議なことに少女の前に美味しそうな御馳走が並んでいるではありませんか。
少女は手を伸ばし、マッチの炎が消えるとともにふっとその御馳走も消えてしまいました。
「あ、……」
少女はもう一度マッチに炎をともしました。すると今度はクリスマスツリーとプレゼントが見え、そしてまたすぐに消えてしまいました。
もっと、もっと、
少女は夢中でマッチを擦ろうとし、
「その火は……」
声をかけられ、ビクリと体を大きくゆらしました。
少女は今、売り物を燃やすという自分の中での大罪を犯していたのだから当然です。
スーツを着た男性でした。どうやら少女に声をかけたわけではなく、ただの独り言だったのでしょう。
少女は少し男性を気にしながらも、マッチを擦り炎をともします。
スーツを着た男性はただ炎をじっと眺めていました。そして、炎が消えるとただ寂しそうな顔をしました。
少女はふと思い出しました。
「マッチはいかがですか?」
少女はマッチを燃やすためにここにいるわけではなく、マッチを売るためにここにいるのです。
「一つもらおうかな」
そう言って男は少女に小銭を渡しマッチを受け取りました。そして、すっと慣れた手つきで火をつけ、肩を落としました。
「君じゃなきゃダメみたいだ」
少女は男が買ったマッチを受け取り、炎をともして見せます。男はそれをただ眺め、炎が消えると
「ありがとう」
そう礼を言い、一枚の紙を渡しました。
「?」
少女には、その紙の意味がよく分かりませんでした。
不思議そうな顔をした少女を見て、男は
「何か欲しいものはあるかい?」
そう聞きました。
少女は、
「クリスマスパーティー!!」
そう言いました。
「おいしそうなごはんにクリスマスツリーにプレゼントのある、たのしいクリスマスパーティーがしたい」
と。
「そうか、そうか。クリスマスパーティーか」
男は楽しそうに笑いました。
「もう遅いからお家にお帰り、明日は迎えに行こう。約束通り、とびっきりのクリスマスパーティーの準備をして」
そんなパーティー、想像するだけでも楽しそうです。早く明日になってほしいと少女は思いました。
でも、
「帰れない」
少女はまだ家に帰るわけにはいきません。マッチが、まだまだ残ってしまっているのですから。
「帰れない?」
男は首をかしげました。しかしそれは不思議そうな顔ではなく、どこか真剣そうな目をしていました。
「マッチをうらずにかえったら、きっとおこられる」
少女がそういうと、男は顔をしかめ、
「……そうか」
ぼそりとつぶやきました。
そして少女の前でしゃがみ込み、
「疲れただろう、乗るといい」
少女におんぶされるように言いました。
「いいの?」
おんぶしてもらえるのなんて、どれぐらいぶりでしょう。少女は少しテンションを上げて男の背中に飛びつきました。
今日一日無理をし、男の背中で安心したからでしょう。少女はあっという間に夢の中に旅立ちました。
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「え? ここは、どこ?」
目が覚めると、そこは知らない場所でした。天井も、ベットも、壁も、何もかも見覚えのない場所で、少女の家よりもずっときれいな場所でした。
そして、枕元にはきれいにラッピングされたプレゼントが置いてありました。
「これ、わたしあてなのかな?」
少女の枕元にこのプレゼントは置いてありました。しかしこの部屋は少女の部屋ではありません。
少女にとっては難問でした。全く溶けない難問でしたが、できればプレゼントが欲しいので自分の物でもいいんじゃないかと気持ちが揺れていました。
「起きたのかい?」
そう言いながら、昨日の男性が部屋に入ってきました。
少女がプレゼントを開けるか開けないか迷っていたのを見て、
「それは君へのプレゼントだよ」
そう優しく微笑みました。
「ありがとう」
少女は心から笑顔を浮かべ、プレゼントを抱きしめました。
「約束通り、素敵なクリスマスパーティーを用意したんだ」
少女は男に手を引かれ部屋を出ました。
少し歩いて扉を開けると、そこには少女と同じぐらいの年からもっと大きい子供たち。そして、きれいに飾り付けられたクリスマスツリーと、おいしそうなご飯が並んでいました。
「「「メリークリスマス!!」」」
子供たちは大きな声でそう言い、少女を笑顔で迎え入れてくれました。
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少女はたくさんの友達とともに、最高のクリスマスパーティーを過ごしました。今日は今までの中で一番楽しい日でした。
大騒ぎして、楽しいクリスマスパーティーがお開きになった後、少女は男にこっそりと呼ばれ外に出ました。昨日はただ辛いだけでしかなかった寒さが、今は少し心地よさすら感じます。
「最後に一度だけお願いしてもいいかな」
少女は男からマッチを受け取りました。昨日少女が男に売ったマッチです。
少女はマッチに火をともします。
「あれ?」
しかし、美味しそうな御馳走もクリスマスツリーもプレゼントも何も見えません。ただ、ゆらゆらと揺れる火のみが少女の目に映りました。
しかし、悲しくなんてありません。
なぜなら、少女は美味しい御馳走もクリスマスツリーもプレゼントも全部今日堪能したのですから。今でも脳裏には先ほどの楽しい思い出が焼き付いているのですから。
でも……少女は男の顔を覗き見ました。
男は少し悲しそうに微笑むと、
「これでよかったんだ」
それだけ言い、空を仰ぎ見ました。
少女が空を見上げると、きれいな流れ星がすーっと流れて消えていきました。
ー完ー