転生ウマ娘が夢に向かって頑張る話   作:トレセン学園生徒会書記

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私には難産という感覚がありません
なぜなら書くヤツ全部難産に見えるからどの話が難産だったかなんて比べる必要がないから


5 駆り立てるもの

 目が覚めると真っ白い天井が私の目に広がる。

 おかしいな、私はさっきまであの坂でトレーニングしていたはずなのに。

 

 寝起きのような鈍い思考をしながら、息を吸うと独特なに匂いがした。

 ここがどこなのか考える前にわかった。ここは病院か。

 

 ここが病院であると思い至った私は覚えている最後の記憶をおぼろげながら思い出す。

 ああ、そう言えば倒れたんだっけ? 確か、誰かが支えてくれたような…

 ということはその人が私を運んでくれたのか。救急車を手配してくれたのか。

 

 そんなことをボーっと考えていると横から声が聞こえた。

 

「おや、目が覚めたようだね」

 

 どこかで聞いたことあるような声がした。そこに目を向けると居たのは椅子に座って本を開いている女性。白い三日月のようなメッシュが特徴的な茶髪の眼鏡をかけたウマ娘だった。

 彼女は本を閉じて、眼鏡を外すとまとめて足元のバックに仕舞っている。

 

 見たことはあるが、会ったことはないあまりにも有名な人が私の横に座って居た。

 

「……皇、帝?」

 

「そうとも呼ばれているね。初めましてシンボリルドルフだ」

 

「あ、ど、どうも。マイノスワローです」

 

 目の前にいたそのウマ娘に開口一番そんなことをつぶやいた私。

 いきなり名前を呼んだ私に、目の前の彼女は薄く微笑み名乗ってくれた。

 それに、私も反射的にどもりながら名乗り返した。

 

「マイノスワローだね。唐突で申し訳ないが、ここは病院だ。君がは倒れてしまってここに運ばれたんだが、その時のこと覚えているかい?」

 

「え、あ、はい。うっすらと……あ、ありがとうございます。えと、あの」

 

「ふふ、そう緊張しなくてもいい。君は今は病人扱いなんだ。そう気を張らないでくれ」

 

 皇帝。シンボリルドルフさんの口ぶりからして私は彼女にここに運ばれてきたようだ。

 反射的にお礼を言うが、なんという光栄とでもいえばいいのだろうか、それとも不敬を働いたとでも思うべきなのか。

 駄目だ、目の前に皇帝がいるという事実で思考が埋め尽くされてまともな思考ができない。

 緊張するなと言われても無理でしょ。

 

 私がしどろもどろしていると、シンボリルドルフさんは後ろを振り返った。

 

「2人とも、彼女が起きた」

 

「あら、本当に? ちょっとお邪魔するわね」

 

 今度は知らない人の返事が聞こえると、返事をしたであろうウマ娘と、携帯を片手にスーツを着こなした人間の女性がカーテンを開け入ってきた。

 

「大丈夫? ルドルフたちがあなたを抱えて運んできてびっくり仰天したわ。体調は平気?」

 

「は、はい……え、まさかマルゼンスキー、さん?」

 

 シンボリルドルフさんと同じ長髪の茶髪だが、パーマがかかりボリュームの増した髪形にお茶目な雰囲気の彼女もひどく見覚えのあるウマ娘だった。

 

「あら、知ってるの? そうよ、私がマルゼンスキーよ」

 

 私が呟いた名前に同意する彼女は紛れもなく、怪物と称されたスーパーカーマルゼンスキーだった。

 中央トレセンに在籍している数多くのウマ娘の中で間違いなく頂点にいる2人が私の目の前にいる。

 一体どうなっているのだろう。私の病室に酷く場違いな2人、いや私がこの場にいるのが場違いに思えてくる。私の病室のなのに実に不思議だ。

 

 私はもう一人のスーツの女性に目を向ける。もしかしたらこの人は。

 

「えっと、あなたはトレーナーさんですか?」

 

「ええ、そうね。トレーナーではあるけど。この二人のトレーナーじゃなくて、同行してるだけのサブトレーナーの桐生院よ」

 

「……どうも、マイノスワローです」

 

「スワロー……もしかして、小鳥ってこの子が?」

 

 桐生院といえば、GⅠ戴冠ウマ娘を数多く育てているトレーナーを排出している超名門の苗字だ。

 皇帝とスーパーカーの2人ほどではなくても。トレセンを目指すものなら知らないとおかしいトレーナーの名門。

 いや、本当に場違いに思えてくるな私が。

 

 もしかしなくても、目の前の3人が私を病院に連れて来てくれたのは明白だった。

 私は彼女らに向けて深く頭を下げた。

 

「倒れてしまったところ、こんなところまで運んでいただきありがとうございます」

 

「気にしないでほしい。君が倒れたのを運ぶのは通りがかった私が行うべき当然のことだ」

 

「ええそうよ。救急車呼ぶにも場所が場所だったしね。あの場で一番身軽だったのは私たちだったしね」

 

「気にしないでというのは些か無理があるだろ。お前たち2人が目の前に居ては畏まるのも当然だ」

 

 桐生院さんの言うとおりだ。親交もないのに2人を目の前に緊張しないウマ娘と人なんていない。

 私は桐生院さんの言葉にうんうんと頷く。

それを見てシンボリルドルフさんとマルゼンスキーさんの二人はそれもそうかと笑った。

 

「改めてありがとうございます。私の所為で迷惑をかけてしまったようで、本当にありがとうございました」

 

 そして、私は3人へのお礼を済ませたところで自分に打たれている点滴を見た。

 

「体力がある程度回復したら、マルゼンスキーの車で君の家まで送ろうと思ってる」

 

確認したところ、もうほとんど終えているようだった。今の時間はそこまで遅くない。

 

「そうね、あと親御さんにもお話をしておきたいから電話番号を教えてもらいたいんだけど」

 

 寝たことで体力も回復している。

 

「じゃあ、私は病院に退院の手続きをしてこようか」

 

 私は滴る点滴を止め、腕の針を引き抜いた。

 

「っ!? 一体何をしているんだ!?」

 

「そ、そうよ。どうしたの!?」

 

 針を引き抜き、ベッドから降りようとした私を皇帝とマルゼンスキーさんの2人は慌てて抑えにかかった。ナースステーションに向かおうとし出遅れた桐生院さんが加勢するかとこちらに向き直っている。

 

 出来れば止めてほしくなかったが、自分の取った行動は理解している。止められて当然だが私は行かないといけない。

 そのために私はこの行動の理由を簡潔に告げた。

 

「戻ります」

 

 この言葉だけで理由は伝わったようで。私を抑える2人の手にさらに力が入った。やはり放してくれない。

 

「ダメに決まっているだろう! 君は病み上がりだ、トレセン学園の生徒会長として、ウマ娘個人として認めない!」

 

「トレーナーとしての私からも言わせていただきます。安静にしていないさい。今日と明日は必ず。大事をとってもう2,3日は練習を見合わせなさい」

 

 トレセンは今の私には関係ないのだが。多数のウマ娘を預かる学園の者としてということなのだろう。

 そして、本職のトレーナーの言葉は確実に正しいことなのだろう。

 

「すみません。運んでくれたことには感謝しています。その善意を無下にしてしまうことも承知です。でも、私は戻りたいんです。戻らせてください。すぐにでもトレーニングに戻らないと」

 

 そうしないと、才能のない私なんかがあなた方の足元にも及ばないどころか、その姿にすら見えない位置にいる。そんなところから追いかけるには決して間に合わない。

 幸いダンスをしていた私の体は柔軟性もあり、体幹もしっかりいているので故障もよほどのことがない限り起こらないみたく、多少の無理でも問題ない。

 

 大丈夫だから、私をどうか行かせてほしい。

 

 それなのに行かせてくれない。むしろ、抑える手の力は増すばかりで、桐生院さんも加勢にいつのまにか入っている。

 

「お願いします。一時も私は無駄にしたくない。トレセンに入る実力もない私夢をかなえるためにはあの坂を上らないと、っ!?」

 

「ダメに決まっている。私の目が黒いうちは自らを省みない行動はさせない」

 

 一瞬、何か圧のようなものを感じた直後、私はベッドに押し倒された。

 

 押し倒したであろうシンボリルドルフさんが私の上に乗るような形になり、その顔が目の前に来る。

 

 感じた圧のようなものは気のせいではなかった。目のまえのシンボリルドルフさんから感じるのは圧迫するような形容しがたい凄み。先ほどまでの親しみやすい雰囲気とは真逆の正真正銘皇帝が目の前にいた。

 

 私を抑えるためにこうなるのは、それだけ彼女が本気であるということだ。

 

 全く動かせないことを理解した私は抜け出そうと込めていた体の力を抜いた。

 

弛緩させたことで私の目から涙があふれ出る。さっきまで表に出さないように抑制していた感情が耐え切れずに出てきてしまう。

 

「…ッ、ヒグ、グスッ…グスッ……」

 

「泣かないでくれ。泣いても私は君を放すことはできない。君を運んだものとして、ウマ娘の幸福を願うものとして行かせたくない」

 

 目の前にいるのがシンボリルドルフということもあるのだろう。憧れの彼女に抑えられているという事実から私の涙は止まらない。

 何せ目指す彼女に来るなと言われているように感じてしまうから。

 

 力を抜いて抜け出そうとする意志を感じなくなったのだろうシンボリルドルフさんの表情は和らいだ。

 そして、優しく問いかけてきた。

 

「どうして君は急ぐ。君の言った理由からその焦燥感はわかったつもりだ。しかし、わからない。目が覚めて自分の状態を確認したはずだ。それなのに何がそこまで君を駆り立てる」

 

「シンボリルドルフさん。あなたです」

 

「え?」

 

「理由です。私を駆り立ててる理由。それがシンボリルドルフさん、あなたなんです」

 

「私が、か?」

 

 私が告げると彼女の顔は困り果てた顔になった。何故だ、という言葉がありありと表情に表れている。

 

「シンボリルドルフさんに追いつく。いや、それはたぶん私にはできません。でも、3冠を達成した菊花のライブで、一番前にいた私の目の前で威風堂々たるあなたを見て、あの舞台が私の夢になった。あの舞台のあなたが私をにどうしようもなく刻み込まれたんです。

 同じあの舞台で

 あのライブをして

 見てくれた全ての人に私の最高の姿を

 あなたが私にしたように刻み付けることが私の今の果たすべき夢なんです!

 

 私はいまだ止まらない涙を流しながら訴えるように、強く、はっきりと。目のまえの私の夢を作った張本人に向け夢を告げた。

 

 それを聞いたシンボリルドルフのその瞳が大きく揺れた。

 

「……思い出した、君はあの時の」

 

 

【マイノスワローの情報開示により、シンボリルドルフの過去の記憶が呼び起こされました。

シンボリルドルフの主要人物への登録を申請します……失敗しました。

シンボリルドルフからマイノスワローへの感情が設定されていません。

これにより、シンボリルドルフからマイノスワローへ感情を結びます。

感情を選定中……失敗しました。

 

 現在、シンボリルドルフの精神が不安定のためマイノスワローへの感情の設定を保留します。

 シンボリルドルフの精神が安定次第。感情の再設定を行います】

 




さて
どうやって続ければいいんだろうか
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