無職転移 -魔王も一緒に転移しちゃった件- 作:かまぼこポテト
投稿期間が空いてしまいました。
申し訳ありません。
第一部も佳境に差し掛かろうとしています。
今後もお読みいただければ幸いです。
翌日、ルーデウスは早くに目を覚ました。
体の節々が痛むが我慢して上体を起こす。
起きなかった。
理由は簡単、拘束されていた。
右腕にシルフィ、左腕にエリスが抱きついてガッチリとホールドされている。ダメ押しとばかりにロキシーがルーデウス自身の上から抱きついている。前と左右をホールドされ、背後はベッド。抜け出せるわけもない。
特にエリスの握力は凄まじく、左腕からミシミシと音が聞こえそうである。
ちなみに「昨晩はお楽しみでしたね」なんてことはしていない。なのでルーデウスも疲労感は残っていないのだが、寝返り一つ打てずに夜が明けた為に寝た気がしないのだった。
(困ったな、起きれない)
シルフィ達は三者三様の寝息をたて、起きる様子がない。
(日の入り方から察するに、まだ早いな。もう少し寝よう)
そしてルーデウスは、考えるのをやめた。
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「よし、じゃあ出発だ!」
リムルの掛け声で全員が歩き出す。
目指すは魔道の北、魔族の国である。
「村長さん、お世話になりました」
ルーデウスが見送りに来てくれた老婆に頭を下げる。
「皆様が元の世界に帰ることが出来るよう祈っておりますじゃ」
「ありがとうございます」
そう言うとルーデウスは老婆に背を向ける。
「おぉ、そうじゃ。忘れるところじゃった。しばしお待ちくだされい」
そう言うと老婆は自宅へ入って、しばらくして戻ってきた。その手には本を持っている。
老婆は本をルーデウスに渡した。
「これは?」
「この村に伝わる歴史と伝承が書かれておりますじゃ」
「歴史と伝承?」
「この村は魔道に最も近い為、魔族に襲われてきましたのじゃ」
「家屋の数に対して人口が少ないのは、そのせいか?」
先頭からアノスが歩いてくる。
「そうですじゃ。この村は長年、魔族に搾取されてきました。この本にはその歴史が書かれておりますのじゃ」
「なぜこれを俺たちに?」
ルーデウスが本を掲げて尋ねる。
「その本の一節にこう書かれておりますじゃ。『いつの日か世界を救う英雄が舞い降りるだろう』と」
「俺たちが、その英雄だと?」
「私たちはそう信じておりますのじゃ」
「何も問題はあるまい」
アノスが薄く笑う。
「元の世界に帰る方法を聞き出すついでに、その魔王を倒せばよいのだろう?」
「お願いします! この村の住人も魔族に攫われております。叶うならどうか、助けてくだされ!」
「いいだろう。目的が増えたところで、俺が臆すると思ったか?」
「暴虐の魔王様。どうかお願いしますじゃ!」
老婆が頭を下げる。
「お前たちは。住人の帰りを待っていろ」
そう言うとアノスは老婆に背を向けて歩き出す。ルーデウス達もそれに続いてコンラの村を後にした。
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魔道へ向けて行軍するルーデウス一行。
ルーデウスは老婆に渡された本に目を通していた。
「ルディ。本を読みながら歩くと危ないですよ」
「大丈夫ですよロキシー。それにこの本、なぜか読めるんです。不思議ですが。」
「不思議? どういう意味ですかルディ」
「この世界の人と俺たちは会話が出来ていますよね?」
「そうですね」
「この世界は俺たちの世界とは違うのに言語が同じ、貨幣もです。おかしいと思いませんか?」
「どういうことよルーデウス!」
「だからねエリス。この世界に来る時、この世界は俺たちに『適応』したってことかなって思うんだ」
「適応ですか?」
「はい。俺たちの言語、文化が通用するように適応したんだと思います」
「俺達にも適応したと思うか?」
ルーデウスの前を歩いていたリムルが振り返って尋ねる。
「あくまで可能性ですが、高いと思います。それぞれの世界の言語や文化にそれぞれ適応したのではないかと思います」
「そう考えると、俺たちの言葉が通じたのも頷け―――ちょっと待って。それなら、俺たちもルーデウス達に適応したってことにならないか?」
そう言われてルーデウスは「はっ!?」とした。ルーデウス達の言語はこの世界だけではなくリムル達にも通じた。
つまり
「お互いに適応し合っている、と?」
「それならこの状況も説明出来るだろう?」
「そうですね…」
「なに、全てはその魔王とやらに聞けばよい」
先頭のアノスが振り返る。それに皆が頷く。
「それにしてもこの本、いろいろな事が書いてありますよ?」
「どんな?」
リムルがルーデウスに並び本を覗いてくる。
「これです」
ルーデウスが指さした文章にはこう書いてあった。
〝この世界に舞い降りたる勇者、無限の魔力により魔族を討伐せり〟
〝終末の炎が魔王城を焼き、神の怒りが魔族を滅し。魔族の国は地の底へ飲まれて消えるだろう〟
「無限の魔力ってなんだ、魔法か?」
「もしかしたら、この世界では魔力が無限とか?」
「そんな都合のいいことがあるでしょうか」
リムルに定位置を取られたロキシーがムスッとして言う。
「しかしロキシー、この世界に来てから魔力が消耗する感覚が無い気がします」
「ルディの魔力は元から凄いけどね」
とはシルフィの談。
「もし魔力が無限にあるなら、戦いも有利になると思います。敵はあまり魔法に長けた様子では無いようですし」
「そうですねルディ。私もいいところを見せられそうです」
「その次の一節はなんだ? 終末の炎、神の怒り?」
リムルが顎に手をあてて唸る。
「敵魔王軍が敗北する未来を示唆しているのでは?」
ベニマルがリムルに振り向く。
「それにしては随分と具体的じゃないか?」
「伝承なんてそんなものでは?」
相変わらず適当なシオンである。
「考察はそこまでにしておけ。見えたぞ」
一行の前には広大な渓谷が広がっている。魔道である。
「行きましょう」
ルーデウスはアクアハーティアを握る手に力を入れた。
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