無職転移 -魔王も一緒に転移しちゃった件- 作:かまぼこポテト
今回も楽しんで頂ければ幸いです。
一行は魔道を進んでいた。
岩肌が露出し、平坦とは呼べない道を進む。あまりにも凹凸の激しい場所はルーデウスが土魔術で足場を作る。
ドラゴンやストーンゴーレムが襲い掛かるが、一行の敵ではない。
「今のところ、魔物にしか出くわしませんね」
ロキシーが杖を構えて周囲を警戒しながらルーデウスに言う。
「敵魔族の戦力が計れないと、先頭の見通しも立ちませんね」
「今のところ疲労感などはありません、『無限の魔力』という伝承はあながち間違っていないかもしれませんね」
(魔力が無限にあるなら、コレが使えるか?)
ルーデウスは腰のポーチに手を添える。
ポーチの中身はスクロールだ。
「リムル様」
そこに影が生じてソウエイが姿を現した。魔道に入ってから別行動をしており、情報収集をしていたのだ。
「どうだった、ソウエイ?」
「この先、これまでの比にならない程の魔物の群れが確認できました」
「そうか」
「それと、謎の男が魔物の相手をしております」
「謎の男? どんな奴だ?」
「我々の世界の者ではないように思います」
「1人で戦っているのか?」
「はい」
「わかった。とにかく行ってみよう」
一行は行軍を再開した。
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岩山の上に魔族が3人いた。
3人は山下で魔物と戦っている男を見下ろしている。
「アイツ何者だ? あれだけの魔物を相手にして息一つ乱さねぇぞ」
背に2本の剣を携えた長身の魔族―――シュワルコフが隣の巨漢に尋ねる。
「殺せばいいんじゃないか?」
巨漢―――ガガロルドは首を傾げて言う。
「けっ! 男かよ。1点の曇りのない幼女だと思って来たのに」
顔の細いロリコンメガネ―――ロッソが毒づく。
「ロッソ様ぁ、そう簡単に幼女は見つかりませんって」
「黙れシュワルコフ! 近くの村から攫ってきた女はババアばかりで反吐が出た! 俺は幼女を愛でることで癒しを得たいのだ!」
「そんなに幼女に会いたいなら、攫ってきた女を孕ませればいいじゃないですか。そうしたら幼女の誕生ですよ?」
「ババアを抱けと!? 死んだ方がマシだ! それに自分の娘は、あくまで娘としか思えんからな~」
「ん? ロッソ様、ちょっと」
「なんだガガロルド?」
「人間の集団が近づいてきます」
「人間だとぉう? 幼女はいるか?」
「ここからでは分かりません。『千里眼』で感じただけです」
「やれやれ。じゃあ、あいつは殺すか」
ロッソがつまらなさそうな口調でそう言うと、3人は岩山から眼下の男めがけて降下した。
「死ぃぃぃねぇぇやぁぁ!」
シュワルコフが降下しながら剣を構える。水平にクロスさせるその構えはハサミを彷彿とさせる。
「む!?」
男は数歩後退して躱すが、続いてガガロルドが大木槌を振り下ろす。男はそれも躱す。
「まだまだだぁぜぇぇぇ!」
最後にロッソが上空から火球を打ち込む。一発ではなく何発も。
男の周囲に土煙と火柱が上がる。
轟轟と燃えている。
「…死んだかぁ?」
シュワルコフが剣を構えて火柱に近づく。
「まあ、生きててもオレが斬り刻むけどなぁ」
そう言ってシュワルコフが剣を舌なめずりした時だった。
火柱の内部からシュワルコフ目掛けて銃弾のようなナニかが高速で飛来した。
それは銃弾というにはあまりにも大きすぎた。
大きく、丸く、重く、そしてゴツゴツしすぎていた。
それはまさに―――
「岩ぁ!?」
岩だった。
岩はシュワルコフの顔面に勢いよく激突し、シュワルコフを後方へ大きく吹き飛ばした。
「やはり、なかなかいいな。ヤツが好んで使うのも頷ける」
火柱の中から声がした次の瞬間、炎が一瞬で消し飛んだ。
男―――オルステッドは無傷だった。
「テ、テメエ! 舌が切れたじゃねえか!」
「知ったことか」
オルステッドは猛禽類のような鋭い眼光で睨みつける。
「貴様、何者だ? まあ私は幼女にしか興味がないから貴様が何者でも殺すがな」
「お前たちが知らない存在だ。それで十分だろう」
「答えになっていないな。いいか、幼女にしか興味が無い私がわざわざ貴様なんぞに声をかけてやっているんだ、これはとてもめい―――」
「話が長いな。簡潔に話せ」
言葉を遮られて顔を真っ赤にして怒るロッソ。
今にも仕掛けそうな雰囲気を感じ取りオルステッドも構える。
「テメエの相手はオレだぁ!」
横からシュワルコフが剣を構えて突っ込んでくるが、オルステッドは剣戟を難なく躱す。
型にはまらない剣戟だが怒りで冷静さを欠いているため躱すのは容易だ。
縦、横、突きと繰り出される剣を最小限の動きで躱しつつオルステッドは構える。
シュワルコフが繰り出した剣戟をを受け流し横方向に吹き飛ばした。
水神流のカウンター技『流―ナガレ―』である。
「がはぁ!」
シュワルコフは岩壁に叩きつけられ苦悶の声を上げる。
「これでどうだぁぁぁ!」
ロッソが両掌をオルステッドに向ける。両掌に先ほどの火球の比ではない炎が渦巻き、収束する。
「ボア・ゴロア!」
魔法名を叫び放とうとするロッソ。
しかし次の瞬間、炎は弱まり霧散した。
「なに!? ッゴフ!」
驚愕するロッソの顔面に岩球が激突する。
「オルステッド様!」
オルステッドは声のした方を見た。そこにはアクアハーティアを構えザリフの篭手をこちらに向けたルーデウスが立っていた。
「ルーデウス!?」
オルステッドはルーデウスを視界に捉え、その後ろにエリス達と見知らぬ服装の一団がいることに気づいた。
「大丈夫ですか?」
ルーデウスが『岩砲弾―ストーンキャノン―』を放ちながら近づいてくる。
「ああ」
「余計な心配でしたかね?」
「そうだな」
ルーデウスは苦笑しながら敵に向けてアクアハーティアを向ける。
「き、貴様ぁ! よくも俺の顔にぃ!」
ロッソが顔を抑えながらルーデウスを指さす。
「こっちの方が数が多いけど、それでもやるか?」
リムルがロッソに言い放つ。
ロッソはリムルを睨むが逆に睨み返されて委縮する。
「ひぅ!」
と、委縮したロッソだったが。リムルの近くにいたロキシーを見て目を輝かせる。
「よ、よよよよ幼女! そこの青髪! 俺の元へ来いぃ、たぁっぷり愛でてやるぞぉ」
「ひっ!」
ロキシーは震えてルーデウスの背後に隠れる。
「何故隠れるぅ。さぁ、その小柄な体を余すことなく俺に見せてくれ!」
舌を出し、涎を垂らしながら「ハァ、ハァ」と鼻息を荒くして近づいてくるロッソ目掛けてルーデウスがストーンキャノンを放つ。
岩球はロッソの顔面に直撃し後方に吹き飛ばした。
「ロッソ様、一旦引きましょう」
吹き飛ばされたロッソをガガロルドがキャッチして進言する。
「むぅ。幼女がすぐそこにいるのにぃ」
「数で不利です。引きましょう」
「仕方ない。シュワルコフ、引くぞ!」
そう言われシュワルコフはロッソの元へ駆けつける。
3人は集まると光りだして消えた。
「引いたか」
構えを解いたオルステッドの元にリムル達が集まる。
「俺はリムル=テンペスト、リムルって呼んでくれ」
「オルステッドだ」
「よろしく」
そう言って差し出された手を握るオルステッドだったが、リムルがまっすぐこちらと目を合わせているのに気付くと目を細める。
「お前、目を逸らさないな。なぜだ?」
「目を逸らして話すのは失礼だろ?」
「オルステッド様、リムルさんは俺達の世界とは別の世界の住人です。それが自然だと思います」
「…そうか。変なことを聞いた」
「いいって。気にしてないよ」
「オルステッド様もこちらに来ていたんですね」
「ああ。突然身体が光りだして、気が付いたら港町にいた」
「そうでしたか。オルステッド様、俺たちと共に来てくれませんか?」
「なにか目的があるのか?」
「俺たちと、リムルさん達。あとアノスさん達は元の世界に帰る手掛かりを知っているであろう存在の元へ向かっています」
「それなら、共に行こう」
「ありがとうございます。説明は歩きながらします」
そうして一行は魔道の深奥へ向かうのだった。
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『魔族の国』魔王城―――玉座の間
ロッソ達3人が玉座に向かって跪いている。
「申し訳ありません、魔王様。『適応者』の首を持ち帰ることが出来ませんでした」
ロッソが玉座に向かって頭を垂れる。
隣のシュワルコフとガガロルドもそれに倣う。
「次は軍団を率いて必ずや、奴らの首を持ち帰ります」
シュワルコフが口上を述べる。ガガロルドは黙ったままだ。彼は考えることが苦手なため、こういう場でどのように発言すればいいか分からないのだ。
それでもガガロルドが魔王軍〝幹部〟に名を連ねるのには理由がある。彼が純粋に強いからだ。
魔王軍兵士の中でも抜きん出た怪力と耐久力を持つガガロルド。上官であったロッソの目に留まり、推薦を得て幹部となった。
しかしガガロルドにも敵わない相手はいる。それは魔王軍四天王、ロッソもその1人である。
そして、ロッソを含む四天王ですら敵わない相手が今、目の前にいる。
魔族の国の絶対者。
〝魔王〟ローズバルト
2メートルを超える巨体。肉体は引き締まり、身体のいたるところに血管が浮かんでいる。
腹部が露出するような鎧を身に纏い、玉座にて頬杖を突いている。
「…次は。無いぞ」
静かにローズバルトが告げる。
ロッソ達にとっては僥倖か、死の宣告か。
「適応者を殺し、奴らの世界に進軍する。そして我等は、全ての可能性を得る」
ロッソたちは頭を垂れたまま黙って聞いている。
「全ての世界を手中に収め。我が存在を絶対のものとする」
「必ずや、世界を魔王様の手に!」
ロッソが顔を上げて決意を述べる。
「では行け、命を賭して遂行しろ」
「ははぁ!」
3人は立ち上がり、玉座の間から退室した。
ローズバルトは1人虚空を見つめていた。
「デモンスライムに暴虐の魔王。龍神に武神に死神、ワーストワン。SORD、鬼神に撃墜王…」
ローズバルトは拳に力を込めて虚空を突く。
「全ての世界を、手に入れる」
その瞳には執念の炎が燃えていた。
お読みいただきありがとうございました。
仕事の都合で次回の投稿は5日後ぐらいになりそうです。
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