無職転移 -魔王も一緒に転移しちゃった件- 作:かまぼこポテト
かなり佳境に差し掛かってきました。
今後も楽しんでいただければ幸いです。
魔王城外壁を囲むようにシンやエールドメード達は布陣していた。
正門、裏門、東門、西門から突入したメンバー以外は魔王城から出てきた敵兵の掃討に当たっていた。
シンはアノスが突入した東門の入口付近にて敵兵を刈り取っていた。
『魔王の右腕』と呼ばれ、剣技の達人であるシンは雑兵が束になっても敵わない。シンは剣呑な表情を崩さず、敵兵を斬り伏せていた。
「雑兵がいくら来ようと、問題ではありませんね」
シンは魔剣『略奪剣ギリオノジェス』を構えたまま敵兵団を見据える。敵兵は攻撃を躊躇している、シンの周囲に積まれた〝味方だったナニか〟を見て委縮し切っていた。
その敵兵団の後方から大きな足音が聞こえる。
シンにもその足音の正体が見えた。
人1人分以上あるであろう大木槌を肩に背負った巨漢、ガガロルドが城壁内部から出てきた。
「なにしてるん?」
ガガロルドは兵士たちに目を向ける。兵士たちはビクつき、下を向いてしまう。
近くの兵士の1人をガガロルドは掴んで持ち上げた。持ち上げられた兵士は恐怖で顔を歪ませる。
「ガガロルド様、お止めください! これより攻撃を仕掛けようとしていたところなのです」
別の兵士がガガロルドに懇願する。
「なら早くアレを殺してこいよ」
そう言うとガガロルドは掴んでいた兵士をシン目掛けて投げた。投球するように真っすぐである。
シンは飛来する敵兵をギリオノジェスで斬り伏せると、真っすぐガガロルドの方を向く。
その表情は僅かに怒りに染まっていた。
「部下を投げ殺すとは、何を考えているのですか?」
「殺したのはお前だろう? 戦わない奴はいらない」
ガガロルドの言葉を聞き、シンは殺気を放つ。
「あなたは私が斬ります、あなたの存在を我が君は許さないでしょう」
「やってみろよ」
シンはギリオノジェスを魔法陣に収納すると、魔法陣から別の魔剣『流崩剣アルトコルアスタ』を抜き放つ。
陽の光を受け、アルトコルアスタの刃紋が美しく輝く。
シンはアルトコルアスタを構えてガガロルドへと突撃する。
「お前ら、行けよ」
ガガロルドの命令を受け、敵兵がシンへ襲い掛かる。
しかしシンは敵兵を悉く斬り伏せ、ガガロルドに肉薄する。アルトコルアスタをガガロルドは振り下ろすが、ガガロルドは大木槌で受け止める。
シンはそのまま何度も斬撃を繰り出す。
ガガロルドは大木槌を振り回してシンの攻撃を防ぐ。
シンが一度距離を取り、再び斬りかかる。
アルトコルアスタが振り下ろされる。しかしガガロルドは受け止める。
「こんなもんなのか?」
ガガロルドが歯をだして笑う。
その挑発に乗ることなく冷静にシンは斬撃を繰り出していく。
「これからです」
そう言うとシンは攻撃を止めてアルトコルアスタを構える。
「なんだ、諦めたのか?」
「………」
シンは答えない。
「もういい、死ね」
ガガロルドが大木槌を振りかぶった。
「…流崩剣、秘奥が弐」
大木槌がシン目掛けて振り下ろされる。
ガガロルドは勝利を確信したように笑みを浮かべている。
「『風紋』!」
一閃。
一撃、たった一撃である。
その一撃は根源を斬ると言われている秘奥『風紋』。
その秘奥をもって、シンはガガロルドの魂を切断した。
ガガロルドの体が音を立てて崩れ落ちた。
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西門から城壁内部に突入したベニマル、ソウエイ、ハクロウの3人も敵軍と交戦していた。
「リムル様が敵四天王の1人を倒したそうだ」
リムルからオウェルポス撃破の報を思念伝達で知らされたソウエイが他の2人を見る。
ベニマルとハクロウの表情が少し和らいだ。
「ここを突破してリムル様と合流するぞ!」
ベニマルが敵軍へ向けてヘルフレアを放つ。
黒炎が炸裂して敵を飲み込むとドーム状の結界を形成する。結界内を黒炎が荒れ狂い、敵を1人残らず焼き尽くした。
黒炎から逃れた敵兵がベニマルに矢を放とうとするが、ソウエイとハクロウが1人残らず倒していく。
しかし増援が現れる。倒しても際限なく現れる敵兵に向けてベニマルは再びヘルフレアを放とうと構える。
「もう一発いくぞ!」
ベニマルがヘルフレアを放つ。
しかし黒炎は炸裂する前に凍結して砕ける。
敵増援からの干渉だとベニマルは判断すると2人に告げる。
「手練れがいるぞ、気を付けろ!」
ベニマルの言葉を聞いた2人の表情が少し険しくなる。
敵の一団が左右に分かれると中央に1人の青年が立っていた。
中性的な顔立ちをした柔和な笑顔の青年だ。純白のスーツのような服を身に纏い、手を後ろで組んでいる。
「ようこそ、異世界のみなさん!」
青年がベニマル達を視界に捉えたまま言う。
「私は魔王軍幹部の1人、ポユテロです。ローズバルト様からあなた方の相手をするように仰せつかりました」
ベニマルがソウエイに目配せをすると、ソウエイはポユテロ目掛けて斬りかかった。
しかし、ソウエイの刃は突如現れた氷塊に阻まれた。
ソウエイは攻撃が通らないと判断して距離を取る。
「口上は最後まで聞くものだと思いますよ。戦隊モノのお約束じゃないですか」
「戦隊モの…、なんの事だ?」
ベニマルが太刀を構え直す。
「おや、あなた方の世界にはありませんか?」
「聞いたこと無いな」
「前に征服した世界の娯楽の1つだったのですが、やはり世界によって文化は違うようですね」
ポユテロの言葉に引っかかる単語があったため、ベニマルは問いかける。
「待て、〝前に征服した世界〟とはどういう事だ?」
「言葉通りの意味ですが?」
「お前たちは俺たち以外の世界にも侵攻しているのか?」
「ええ、そうですよ。あなた方の世界はまだですが、時が来れば侵攻します」
「なんの意味があって俺たちの世界に侵攻する。目的はなんだ?」
ベニマルの問いかけを聞いたポユテロは首を傾げる。
「意味はローズバルト様しか知りません。私は楽しいからやっています」
「…楽しい、だと?」
ベニマルの眼光が鋭くなる。
「私は弱者を蹂躙することが大好きなんです。命乞いをする弱者の尊厳と命を踏みにじると興奮します」
柔和な笑顔を1ミリも崩さずポユテロは言った。
「…ソウエイ、ハクロウ」
ベニマルは静かに2人を呼ぶ。
「2人は先にリムル様の元へ。ここは俺1人でいい」
そう言うベニマルの表情は怒りに満ちていた。
「こいつを俺たちの世界に来させる訳にはいかない」
「…分かった」
ソウエイは頷くとハクロウと共に先を目指す。
「行かせると思いますか?」
ポユテロが部下に指示を出す。敵兵は2人に攻撃を仕掛けようとするが、ベニマルが放つヘルフレアに阻まれる。
敵兵が怯んだ隙を突いて、ソウエイ達は敵兵士団を突破する。
「まあ、いいでしょう。どうやらあなたは中枢戦力、ここで倒しておけば後々楽ですし」
「舐めるなよ」
ベニマルが太刀に黒炎を纏わせて斬りかかる。
ポユテロは氷塊を出現させるが、ベニマルはそれを切断する。
切断した氷塊の向こうからポユテロが針状の氷を放つが、ベニマルの炎熱で溶けて水蒸気に変わる。
勢いを殺すことなく突進してくるベニマルの剣戟がポユテロに迫る。
「生半可な氷結では勝てませんね。なら少し方法を変えてみましょうか!」
ポユテロが凍らせた右手を突き出して太刀を受け止める。
いや、正確には掴んでいた。黒炎を纏った太刀を右手で。
黒炎によって瞬く間に右手の氷は溶けていくが、絶え間なく氷を出現させて黒炎を防いでいた。
ポユテロは太刀を掴んだまま体を捻り、回し蹴りでベニマルを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたベニマルは太刀から手を離してしまう。
どうにか受け身を取ろうと身を翻したベニマルの眼前に自身の太刀が迫る。剣先をこちらに向けたまま。
受け身で態勢が崩れたベニマルの腹部に太刀が深々と刺さった。
「ぐぅっ!? がはぁ!」
苦悶の表情を浮かべながらその場に跪くベニマル。対照的にポユテロは満面の笑みで近づいてくる。
「呆気ないですね、この程度ですか?」
ベニマルは太刀を体から引き抜くと傷口を抑えながら立ち上がる。
「まだだ!」
「往生際が悪いですよ。…おい!」
ポユテロは背後の部下に命じる。敵兵、その数約100人がベニマルを取り囲む。
敵兵士がベニマル目掛けて襲い掛かった。
「ジラスド!」
黒き雷が敵兵目掛けて降り注ぐ。
雷鳴を轟かせながら3つの人影がベニマルの元に降り立った。
1人が着地と同時にポユテロへ肉薄する。その手には光り輝く聖剣が握られている。
「霊神人剣、秘奥が弐『断空絶刺』!」
霊神人剣エヴァンスマナを握ったレイの体は神々しい光で包まれている。レイはそのままの勢いでポユテロへ秘奥を放つ。
「くそ!」
ポユテロは躱すが、レイの秘奥はポユテロの左手を翳める。
ポユテロの背後に通り抜けたレイに攻撃しようとポユテロが振り返る。
もう1人の人影、ミサはその隙を見逃さなかった。
普段の姿ではなく、真体『アヴォス・ディルへヴィア』の姿で降り立ったミサは右手の指先を漆黒に染める。
「ベブズド!」
突き出された右手を身を捩ることで躱すが、腹部に右手は突き刺さっていた。
「ごふぅ! くそ、こんなことって」
ミサのベブズドはポユテロの魂を翳めただけだが、致命傷には変わらない。
「ベニマルさん。トドメを!」
右手を引き抜き、ミサが飛び退く。
飛び退いた先にベニマルが立っていた。
先ほど太刀が刺さった腹部は3人目の人影―――ロキシーの治癒魔術『ヒーリング』で治療されていた。
「ヘルフレア!!」
ベニマルの放つ黒炎がポユテロに迫る。
「氷結、ひょうけ。くそ!」
ベブズドが致命傷となり上手く氷塊を出現できない。
先程とは反対に苦悶の表情を浮かべたまま、ポユテロは黒炎に包まれた。
お読みいただきありがとうございました。
次回の投稿ですが、18日ぐらいになりそうです。
今後もよろしくお願いいたします。