無職転移 -魔王も一緒に転移しちゃった件- 作:かまぼこポテト
今回から転移後の世界の話になります。
主人公達の状況など、なるべくわかりやすく書いていこうと思います。
今後もあたたかい目で見ていただければと思います。
ルーデウスは砂漠地帯を歩いていた。
ここがどこかも、ましてや方角も分らぬまま歩いていた。
(見知らぬ土地か。〝あの時〟に似ているな)
ルーデウスの言う〝あの時〟とは、『フィットア領転移事件』のことである。
『フィットア領転移事件』とはルーデウスの世界のアスラ王国で起こった出来事である。
アスラ王国北東にあるフィットア領の中心都市ロアを中心に広範囲に人や物が光に包まれて消失し、世界各地にバラバラに出現した事件である。
かつてルーデウスもそれに巻き込まれて『魔大陸』と呼ばれる土地に飛ばされた。
当時10歳だったルーデウスはフィットア領を治めていたボレアス家の令嬢にして現在の妻の1人であるエリスと転移事件に巻き込まれ、魔大陸を旅した。
(あれから12年か)
現在ルーデウスは22歳。
3人の妻と3人の子供を守る立場になったルーデウスだが、この事態はまったく想定していなかった。
(あそこで転移が起こったということは、シルフィ達は!?)
かつての転移事件がロアを中心に広範囲だったことを考えると、自宅にいた妻や娘はどうなったのか?
ルーデウスの自宅は『魔法都市シャリーア』にある。
オルステッドコーポレーションの事務所はシャリーア郊外にある。
不安がルーデウスを襲う。
「探さないと」
かつての転移事件では生き抜くのに精一杯で、そのせいで大切な人を失った。
(同じ轍は踏まない)
ルーデウスは杖『傲慢なる水竜王―アクアハーティア―』を持ち直すと歩き出した。
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アノスの眼前には海が広がっていた。
崖の上に立ち、水平線の向こうを見ていた。
「ふむ、ディルへイドでもアゼシオンでもない場所か」
魔王学院のある魔族の国ディルへイドと人族の国アゼシオン。
現在アノスがいるのはそのどちらでもない。
いや、正確には3人だが。
「別の世界?」
アノスと並んで海を見ていたミーシャが訊ねる。
「今のところは分からぬ」
「もし別の世界だったとしたら、どうやって帰るのよ」
ミーシャの隣でサーシャが肩を竦める。
「あの場にいたレイ達も来ているかもしれぬ。まずは合流だな」
「そうね」
アノス達は海に背を向け歩き出した。
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「どこだここ!?」
リムルは人間形態で森の中にいた。
〈主よ、近くに魔物等の気配はありません〉
リムルの影の中にいる嵐牙狼ランガと思念伝達しながら森の中を歩く。
(光に飲み込まれた時、周りにはベニマル達もいた。どこかにいるのか?)
思念伝達も届かない、どうしたものかと考えていると。
《告。何らかの魔法により思念伝達が阻害されています、よって長距離の思念伝達は行えません》
リムルの究極能力―アルティメットスキル―である智慧之王―ラファエル―が答える。
(結界か、あるいはここは〝そういう場所〟なのか?)
歩いていると森を抜けた。
目の前に海が広がっている。
(きれいな海だな~。シュナがいたらフリフリの水着を出してきただろうな)
以前みんなで海に行ったのを思い出す。
(ランガ、周囲に生物は居ないか見てきてくれ。人でも魔物でも、何か居たら教えてくれ)
〈心得ました、我が主〉
リムルの影からランガが飛び出していく。
「少し休もう」
リムルは砂浜に座った。
10分ほど経っただろうか、ランガから思念伝達が届いた。
〈主よ、森を反対に抜けた所に人間がいます〉
〈何人だ?〉
〈2人です。1人は剣士でもう1人は魔法使いと思われます〉
〈わかった、俺もそっちに行くからその2人を見張っておいてくれ〉
〈了解しました、主〉
リムルは羽を生やすと森を低空飛行で抜けていった。
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「どこよここ!」
「ちょっとエリス、声が大きいよ」
エリスと呼ばれた女性は赤髪を風に揺らしながら歩いていた。
その後ろを白髪の女性が歩いている。
名前はシルフィエット・グレイラット。ルーデウスの妻の1人である。
「なんだか転移事件を思い出すな~」
シルフィエットも元の世界で転移事件に巻き込まれた1人である。
「ルーデウスはいないけど、私がいるから大丈夫よ!」
「頼りにしてるよ、エリス」
「それと…」
エリスが腰の剣に手を掛けて振り向く。
「そこのあんた。いつまで隠れているの、出てきなさい!」
森の茂みを睨むエリス。シルフィエットも杖を構える。
「僕は悪いスライムじゃないよ?」
茂みから人間形態のリムルが姿を現す。ちなみにランガは影の中に隠れている。
「スライム?なによそれ!」
エリスが腰を落として攻撃姿勢をとる。
(凄い気迫だな、ハクロウとどっちが強いかな)
リムルは両手を上げる。
「争う気は無いんだ、俺はここがどこか分からず歩いてただけなんだ」
本当はランガに探索させていたが。嘘も方便である。
「ボク達を見張っていたのはなぜ?」
シルフィエットが杖を向けたまま問う。
「敵かどうか見定めてたんだ、敵対する気はないよ」
「さっき〝ここがどこか分からず歩いてた〟って言ってたのはどういうこと」
「信じられないだろうけど、俺はさっきこの世界に来たばかりなんだ」
「え、君も?」
「〝君も〟ってことは、そっちも?」
「ボクたちは突然光に包まれて、気が付いたらここにいたんだ」
「俺と一緒だな」
「とりあえず、争う気はないんだね?」
「ああ、俺の目的は他に来ている仲間と合流して帰ることだ」
「なら、ボク達と目的は同じだね」
そう言うとシルフィエットは杖を下ろした。
「いいの、シルフィ?」
「大丈夫だよエリス、敵ではないみたいだし」
「…分かったわ」
エリスも攻撃姿勢を解く。
「まずはよろしく頼むよ。俺はリムル=テンペスト、リムルって呼んでくれ」
「シルフィエット・グレイラットです。シルフィでいいよ」
「エリス・グレイラットよ。エリスでいいわ!」
3人がそれぞれ握手する。
「ん? グレイラットって苗字が同じだな。姉妹?」
「違うよ。夫が同じの家族だよ」
握手を解きながらシルフィエットが説明する。
「ボク達の夫、ルーデウス・グレイラットはボク達を含めて3人の妻がいるんだ」
シルフィエットが頬を赤くしながら言う。
(一夫多妻か。シルフィ達の世界では普通なのかな)
ちょっと羨ましいと感じるリムルであった。
お読みいただきありがとうございました。
これから多くの〝絡み〟がありますので、今後もお読みいただければ幸いです。