四方を海に囲まれた小さな島。
島の中心部にある教室程度の広さを持つ建物が目立つだけで、それ以外は自然豊かな島である。
その島の存在は、一人の少女と共に記録から抹消されている。
少女の名前は紅井梨衣名。
少女の十歳の誕生日に、両親、友達、教師、近所の人々、その他大勢。――計百人を殺した、最年少かつ最狂の殺人鬼である。
様々な謎を残しつつ、少女は既に死んだものとされ、今も尚、この島に拘束され続けている。
黒い布で目を塞がれ、開口具によって発言権も持ち合わせていない。
椅子に座らされ、後ろ手に手錠。足も椅子に縛り付けられ、更に拘束ベルトで身動きを完全に封じられている。
本来、どれだけ酷い殺人犯であれども、最期まで人権は保持されるものである。
しかし、梨衣名はそれを放棄している。
唯一、完璧な拘束が緩くなる時間。それが、朝晩二回の食事の時間である。
と言っても、首から上が解放されるだけなのだが。
「何か希望とかないの? 五年間もこんな狭い場所に、何も出来ずにいて、よく狂わないわね」
看守長兼食事係の倉井美依奈が、ぶっきらぼうに尋ねる。
「……別に」
差し出された食物を咀嚼しつつ、美依奈も同じように答える。鉄面皮。そんな表現が似合う表情だ。
他にも看守は大勢――具体的には百人ほどおり、現在もその三分の一以上が梨衣名を監視している。
しかしながら、美依奈以外、看守達は梨衣名と一切話すことをしない。
殺人鬼と会話など、『命令』で無い限りは絶対にしたくない。それが普通の考えだ。
そして勿論、美依奈もごく普通の考えの持ち主である。
美依奈は、食事時に梨衣名とそれなりのコミュニケーションを――世間話をするという『命令』に従っているだけなのだ。
だが、五年という月日は美依奈に慣れを植え付けてしまう。相手が身動きが取れないこと、そして梨衣名が
その二つを確認した途端、美依奈はやけに饒舌になり、梨衣名が聞いてもいない愚痴を延々と垂れ流す日々を送り続けている。
「……あ」
食事の時間が終わり、梨衣名の視界が再び封じられる。開口具を付ける寸前、梨衣名はそう声を漏らした。
「……何?」
「一つ。たった一つだけ希望があった」
「そう。……なるべく配慮してあげるわ。何でも言って頂戴」
梨衣名に耳を貸す美依奈。ほんの一瞬だけ、梨衣名の表情に狂気すら感じる、純粋な笑みがあった。
「実は――」
――梨衣名の最期の計画が、今、始まろうとしていた。
でぃ、厨二小説です。とある小説の設定に影響されて、パクリと言われない程度に改変しました。主に性別などを。
似たような設定から、どこまでオリジナリティを出せるかが、センスかなと思ってます。頑張ります。