「あー……」
ケトの出した声に合わせて、少し離れた検電器の鏡に反射された光がかなり大きく震えた。
「確かに機能しているね」
「こんな簡単なもんでできるんですね、意外でした」
「それは私もだよ……」
職人の言葉に私は苦笑いしながら返す。手先が器用なのもあって試作品がほいほい作られていく。まあ、バックに商会があるので色々と気兼ねなく試せるのがいいのだろう。追い込まれてできるものもあるが、自由にやるのも大切なのだ。選択と集中というのは方針決定後にやるべきものである。基礎研究でそんなことをしては土台を勝手に制限しているようなものだ。そんな縛りプレイは二周目でもしたくない。
「あとはこれを使えばっと」
私は準備していた
「はい、これに耳をつけて」
私はそう言って手元の装置を職人に渡す。
『……聞こえますか』
ケトの小さな声が、多少歪んではいるものの
「……これは本当にすごいものなのではないでしょうか?さらりと作りましたけれども」
「これを無線でできないといけないからな……」
方法は知っているのだ。
特定の周波数を持った交流を作り出す方法として
こいつは機械屋にとっては厄介な代物だ。有名なところではタコマ橋の崩壊がある。橋が少し揺れると乱流が起き、それが橋を少しだけ強く揺らす。この作用が続くのに十分なエネルギーが強風によって与えられれば、振動は橋が壊れるのに十分なほど大きくなるというわけだ。まあこの振動の発生メカニズムは色々と意見があるらしいので門外漢は黙っておこう。あるいはモーターのような回転軸のある部品でもいい。軸が少し歪むと生まれる振動が更に軸を曲げるような振動を生む場合、本来壊れるような力がかからない部品でも破壊されることがある。
これを利用して大きな交流を得ることができそうではあるが、実際は難しい。適当にその場にあった変圧器を使ってみたが、発電機で作れる程度の周波数であれば影響を与えることができるもののうまく一般化できそうにない。後藤英一のパラメトロンの励振周波数はメガヘルツ程度だったが、あれは確かフェライトコアが使われていた。酸化鉄ベースの磁石を今から作ると年単位で時間がかかる。
どれもこれも難しい。便利な方法というのはそうないのだ。そんなものがあればラジオの発展は一瞬で終わっている。まあ火花放電で最低限はできるからいいものの、その先に手を出したい。一応今できる可能性があるのは真空管。マグネシウムゲッターに使うマグネシウムを電気分解で手に入れて、スプレンゲル・ポンプで排気を行えば……、できなくはないはずだ。手元に材料は揃っている。しかし実験室レベルでは行けても、それ以降はかなり難しそうなんだよな。