「お~いハク、ちょいと起きてくれ」
「……なに」
体を揺すられて目を覚ます。すると目の前で迅さんが揚げせんべいを食べていた。
「いや~ちょっと力を貸してほしくてさ?」
迅さんが右手で頭をかきながらおどけるように言う。それにボクのサイドエフェクトが反応した。何かある、と
ボクは体を起こして簡単に身だしなみを整える。
「……わかった」
「サンキューハク!じゃトリオン体になって着いてきてくれ」
「トリガー・オン」
トリオン体に切り替えて迅さんについていき玉狛を出る。
「寝てるところ悪かったな、まぁハクならわかってると思うけど俺のサイド・エフェクトがハクをつれてったほうが良い!っていうもんでな」
「この前の面白いことに関係ある?」
「あるある!ちょーある!っと、あらぁ~……」
迅さんと一緒に移動していると突然ゲートが開いてモールモッドとバムスターが出てくる。
「うっわぁ~多いなぁ~。ま、取り敢えずここは任せたからヨロシク!」
「…は?」
急に言われて一瞬体が固まるけど、すぐに動かして一番近くにいたバムスターに向かって爆裂杭を撃ち込んで爆発させる。回りを見てみると迅さんはいなくて、インカムから迅さんの声が聞こえてきた。
『あとで甘いものあげるから!ヨロシク~!』
それだけ言って通信を切られてしまった。
迅さん……まぁ
ボクは迅さんに貰う物を決めながら淡々とネイバーを仕留め続けた。30分程でゲートから出てきたネイバーは殲滅し終わって仕留めた数を数えていた。多分19体位だ。
数え終わると同時にまたインカムに迅さんから通信が入った。
『よっす~そっち終わった?』
「終わった。そっちは?」
『俺も終わったよ~あそうだ、そのままボーダー本部まで来てくれ。城戸さんが呼んでるんだと』
「了解」
そう思い、ボクはその場を後にした。
本部への直通通路が繋がっている入り口を使おうと思い、入り口に向かう。ただ、この通路を使うためには自分のトリガーを入り口のスキャナーに当てる必要があって、両腕にトリガーを埋め込んでいるボクは一度トリオン体を解除してトリガーを取り出す必要があるため面倒だ。
「…あ」
トリガーを取り出すために腕を開くとまた血が流れてしまった。
……やっぱり久しぶりだと血が出る……寝るときは外したりして開くことを頻繁にしたほうがやっぱり良いかもしれないね。
取り出したトリガーを持ち歩いていたハンカチで拭いてからスキャナーに当てると機械音声が聞こえた。
トリガーを腕に戻している間に通路がちょうど開いた。
そのままハンカチで血を拭きながら扉を閉めようとすると此方に向かってくる人影が見えて閉めるのを止める。
あれは……木虎と……修と遊真?
「あ、白亜さんだったんですね。ありがとうございます」
「良いよ。皆も本部に?」
「いえ、空閑は違います。木虎と僕だけです」
「そんじゃ俺はここまでだな。ハクちゃん、修をヨロシク頼みます」
遊真は何故か修達をヨロシクと言って去っていった。
……どういうこと?
多少疑問は残ったけれど、ボク達は三人で本部に向かうことになった。ボクは端っこで壁に寄りかかりながら到着するのを待っていると、木虎が修と会話を始めた。
「私たちが戦っている間に別のイレギュラーゲートが数ヶ所開いたそうよ。本部が別動隊を動かしたみたいだけどーー白亜先輩はその帰りですか?」
「…うん。バムスターとモールモッド合わせて19体位だった」
「そう、ですか…その、被害は…」
「なるべく被害は出さないようにしたけど、
「………」
ボクが答えると修は少し悔しそうな顔をして俯いた。それを見ていた木虎は何か思うところがあったのか昼間とは違った目で修を見ていた。
それから木虎とは別れてボクと修は一緒に会議室へ向かった。多分修は昼間の事についての処分が言い渡されるんだろう。
「…昼間のことについてだけど、ボクもできる限りの処分が重くならないようにやってみたけど、あまり期待はしすぎないで」
ボクが急に話しかけたことにビックリしたのか、驚いた表情をしていた。
「いえ!……処罰されるとわかっていてやったことです。それに…白亜さんはわかっていますよね?空閑がーーネイバーってことを」
やっぱり、か。まぁだからといって何もしないけど。
「白亜さんが空閑のことを黙っていて貰えるだけで僕は大丈夫です」
「そっか……」
それからは特に会話をすることなく会議室へ向かった。そして会議室に入ると
「あ?なんでハクまでいんだ?」
リンドウに心底不思議そうに言われた。
城戸さんが呼んだんじゃないの??……もしかして迅さんの独断?
「……迅さんに言われて来た」
「はぁ?迅………なるほどなぁ……城戸司令」
「………構わん…白堊、最近体調はどうだ?」
「とても快調ですよ。大丈夫です」
「そうか……無理はするな」
短い言葉だったけれど、城戸さんなりに心配してくれたのだろう。城戸さんは顔は固いけど不器用なだけで優しい人だ。
「おい~す!迅悠一!参上いたしました!お、ちゃんとハクもいるな~ん?君は?」
「み、三雲」
「三雲君ね、俺は迅、ヨロシク~」
迅さんは修の隣に座って適当に挨拶をした。それから城戸さんが話を始めた。最初はイレギュラーゲートについてだったがすぐに修についての話に切り替わった。どうやらボクがネイバーを倒しているときにまた規定違反をしたらしい。
「けどネイバーを倒したのは木虎君でしょう?」
「その木虎が!三雲君の救助活動の貢献が大きいと報告している!」
「へぇ…木虎が…」
それにはボクも驚いた。だって昼間の木虎は修を陥れようとしていたんだから。どういう心境の変化かはしらないけれど。
「それに、嵐山隊や白堊君の報告によれば三門第三中学校をおそったネイバーの2体のうち一体は三雲君が単独で撃退している。規定違反とはいえ、ここまで咄嗟に動ける隊員は貴重だ。除隊ではなくB級に昇格させて能力を発揮させるのが有用かと思われる!」
忍田さんが修を擁護してくれた。どうやらしっかりと嵐山さんとボクの報告書を呼んでくれたみたいだ。
「ーーボクも同意見です。修がトリガーを使っていなければ確実に死人が出ていました」
ボクも続けて修を擁護するけど、城戸さんの表情は固いままだった。
「……確かに白堊隊員や本部長の意見も一理ある。が、ボーダーのルールを守れない人間は私の組織には必要ない。三雲君、もしまた同じような状況になったら君はどうする?」
城戸さんがそういうとその場にいた全員が修に注目した。しん、と空気が貼り積めたような気がした。
修はしばらく考え込んでから答えを話し出した。
「それは…………目の前で人が襲われていたら、やっぱり助けに行くと思います」
「ほぅら見ろ。クビで決まりだ」
「三雲君の話しはもう良いでしょう。それよりもイレギュラーゲートの被害についてです」
それから修の処遇が決まったと言わんばかりに話を進め始めた。
今回のイレギュラーゲートの被害者、被害額、鬼怒田さんによればイレギュラーゲートをトリオン障壁で押さえているが、48時間しか持たないらしい。
そのあいだ迅さんはずっと端末を弄っていた。
多分修のことも含めて、迅さんの予知通りに進んでいるんだろうね。
「んで、お前が呼ばれた訳だ……ハクもつれてきたってことはどうにかなるんだろ?」
「もちろんです!実力派エリートですから!原因を見つければ良いんでしょう?」
「あぁ」
「?迅さん?」
迅さんはボクを引き寄せながら修の後ろへと引っ張った。
「その変わりといっちゃなんですが、彼の処分は俺とハクに任せてくれませんか?」
「?」
ボクも?何で?
ボクが疑問に思っていると城戸さんが迅さんを睨んでいた。
「……彼が関わっているのか」
「はい、俺のサイド・エフェクトがそういってます」
「……白堊もか?」
「………」
城戸さんに言われて関わっているかどうかを思考する。すると、
「ーーはい、ボクのサイド・エフェクトも反応しました」
「………そうか。なら好きにやれ。解散だ」
「城戸司令!」
「次回の会議は21時からとする」
城戸さんがそういうと今まで暗かった会議室が一気に明るくなった。それから迅さんが修に応援の言葉をかけると修はとても嬉そうに返事をした。
「あ、ハクはメガネ君を家まで送ってってやってな」
「……了解」
迅さんはそういって鬼怒田さん達と一緒に出ていった。ボクが修に目配せをして一緒に会議室から出ようとすると三輪さんが話しかけてきた。
「ちょっといいかな、昨日警戒区域でバラバラになっていたネイバー、あれも君がやったのかな?あの付近で保護した中学生は君の同級生だった。君がやったというならーー府に落ちる」
嘘だね。ボクの6感が反応したし、それを報告したのはボクだ。……けど何でこのタイミングで?それを報告書したのはボクだというのに……
そんなことを考えているうちに修は自分がやったといって会議室から出ていった。それに続いてボクも会議室を出ようとした時にチラりと三輪さんを見てみたけど、明らかに何かを狙っている目だった。
ーーーーー三雲 修
ボーダー本部から戻った僕はベッドの上で今日起きたことを思い出していた。
ボーダー本部で僕の処分が決まった後、白堊さんに家まで送って貰った。僕は大丈夫だと言ったけど、白堊さんは「迅さんに言われたから」と頑なに折れてはくれなかった。
白堊さんと初めて会ったのは僕が入隊した入隊式でだった。
その日の入隊式は異様だった。本来入隊式では新人隊員しか集まらない筈なのに、何故か正隊員も多く集まっていたからだ。正隊員の話に聞き耳を立てると、どうやら急に集められたみたいだった。
入隊式が始まって終わりかけた時、急に裏から少女が出てきた。そこで白堊さんが復帰するという事を知らされた。白堊さんは第一次侵攻の時に大怪我をして今まで治療を続けていて、やっと復帰できたのだとか。
その事実に僕はこれ以上ないくらいに驚いた。白堊さんはとても小さくて、"美少女〟という言葉が当てはまるような容姿だったからだ。けどそれに似合わない両腕のソレがあった。ソレは白堊さん専用のトリガーらしい。それから嵐山隊との模擬戦をその場にいた全隊員が見せて貰った。
そして白堊さんは嵐山隊を一人で全滅した。白堊さんは片腕を切り落とされていたけど、それ以外は無傷だった。一人でA級四人を倒す程の実力だったんだ。シミュレーション室から出てきた白堊さんを見ていると不意に目が合った。目が合った瞬間、僕は目を剃らしてその場を後にした。あの人は普通の人とはナニかが違う。そう感じたからだ。
そして今日、迅さんと白堊さんが言っていたことを思い出した。
『俺のサイド・エフェクトがそういってます』
『ーーはい、ボクのサイド・エフェクトも反応しました』
「サイド…エフェクト…」
《高いトリオン能力を持つ人間はトリトンが脳や感覚器官に作用して、希に超感覚を発現することがある。それがサイド・エフェクト。意味は"副作用〟だ》
「副作用……」
僕はすぐに布団をかぶって声が漏れないようにする。というかレプリカはいつからいたんだ?
「超能力、みたいなものか?」
《炎を出したり、空を飛んだりといった超常的な物ではない。あくまでも人間の能力の延長みたいな物だ》
【目を閉じてる間だけめちゃくちゃ耳が良くなる奴とかいたな。何百メートル先の会話をまで聞き取れるんだと】
「なるほど……迅さんがあれだけ余裕な感じなのはよっぽど強力なサイド・エフェクトを持っているんだな」
【そんな凄いサイド・エフェクトなんてあるのかなぁ?】
「……空閑、お前今どこにいるんだ?」
ずっと気になっていたけど空閑からずっとカチャカチャと音が鳴っていた。レンガを打ち付けたりするような音が……
【学校】
「学校!?お前、ボーダーに任せるんじゃなかったのか?」
【なんか見つかったら教えてやるよ…っとそうだ、ハクちゃんいるじゃん?ハクちゃんのトリガーって誰か他に使ってる人いるの?】
「え?いやいないと思うけど……確か、特製トリガーだった筈だ」
【ほ~ん…さんきゅ、じゃおやすみ】
「え、ちょーー切れた…なんだったんだ一体」
急に白堊さんのこと聞いてきたと思ったら切って……一体なんだったんだ?
ーーーーーーー空閑 遊真
『え?いやいないと思うけど…確か、特製トリガーだった筈だ』
「ほ~ん……さんきゅ、じゃおやすみ」
俺は修の返事を待たずに通信を切った。
まぁ修だから嘘じゃないだろうな。
「レプリカ、やっぱりハクちゃんって」
「あぁ、"白杭〟で間違い無いだろう。彼女の体からはトリオン体以外にトリオン製金属の反応も感知していた。ーーあんな非人道的な処置は玄界ーー日本のボーダーにはそんな技術は無い」
白杭、俺がまだ近界にいる頃から仲間や親父から聞いていた名前だ。
なんでも白杭は真っ白な姿で倒された敵は
とにかく白杭は強かったらしい。戦場で小さくて白い奴を見たら簡単には手を出すな、これが親父や仲間が口癖のように言っていた言葉だ。
親父曰くまだ俺と変わらない年だって言ってたけどーーその時の親父はひどい顔をしていた。
白杭が所属しているのは【奴隷国家イクセル】
イクセルは他の近界から捕まえてきた人間を使って戦争をする国。これならまだ他の国もやってるけど、イクセルの奴隷制度は特段酷かった。
ーー奴隷は使い捨て
ーー奴隷は人ではないモノだ
ーー奴隷は我が国の資源である
こんな言葉を豪語している国だった。トリオンが多かろうが少なかろうが使い捨て、おまけに人体実験、人体改造……上げたらキリがない。本当に馬鹿で糞みたいな国だった。まぁもう無いけど。
「遊真、今日はこのくらいにしておこう」
「はいよ~っと]
白杭ーーハクちゃんといつか戦ってみたいな。
白堊のサイド・エフェクトが万能すぎる気がしますがこれがご都合主義です(◞≼◉ื≽◟ ;益; ◞≼◉ื≽◟)
簡単に詳しく説明すれば、勘って結構複雑ですよね?
勝手に感じ取ったり思ったり、それに加えて選択問題を出されたら勘で選んだら当たったとか。
白堊は直面した問題に対して自分でYESかNOとかの選択をさせて、それで判別させたりしてます。そういう設定です。
追記
実はこの時点で白堊が日本に来てからだいたい6ヶ月位経ってます。
白堊日本来日&3ヶ月眠る
↓
目を覚まして1月病院で過ごす
↓
以下、ボーダー入隊から嵐山玉狛来日、まで含めて2ヶ月程
って感じですね。
あとお気づきの方もいるかもしれませんが話し方が若干変わってるのは小南と栞ちゃんのおかげです。
追記
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