奴隷兵の帰還   作:メヴィ

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特訓

 ラッド捕獲作戦終了後、その日の内に修はイレギュラーゲート原因解明の功績を認められてB級になった。

 B級になった修は正式なボーダー隊員となって、訓練用トリガーから正式トリガーを支給された。修のメイントリガーは訓練用のトリガーと同じレイガスト、サブトリガーはアステロイド、バッグワームを選んだ。

 

 「それだけで良いのか?まだトリガーに余裕あるぞ?」

 「僕には迅さんや白堊さんみたいな戦闘のセンスはありません。それにトリオン量も少ないからあまり多くトリガーは使えません。

 B級に上がれたのも空閑のおかけです。僕には戦う力がありません。なら、いざという時()()()ようにしたいんです」

 

 修は使用トリガー入力を終えたトリガーを握りしめて悔しそうに唇を噛んだ。数秒程してボクと迅さんを見て、深く頭を下げた。

 

 「無理を承知でお願いがありますッ!!僕に戦い方を教えてくれませんかッ!!」

 「……へぇ?」

 

 修が大きな声でそう言うと迅さんはニヤリと笑った。

 ボクとしては修に教えることはやぶさかでは無いけど。

 

 「わりぃけど俺はパスだ。実力派エリートだからな。教えたくても時間が無いんだわ」

 

 迅さんはそう言うと頭を下げる修の頭をぽんぽんとしてからボクをニッコリと見た。つまりーーーそう言うことなんだろうね。

 

 「…そう…で「ボクは良いよ」ーーえ?」

 「よっし!じゃメガネ君はハクに任せた!!」

 「い、良いんですか!?白堊さんだって任務とかあるでしょう!?」

 

 修はガバッと下げていた頭を上げてボクと迅さんを交互に見ながら困惑をしていた。

 それを迅さんが更にニヤニヤしながら言葉を続ける。

 

 「実はな~ハクは本当は任務なんてしなくても良いんだよ」

 「……え?」

 「まだ休んでて良いって言ってんのにうちのボスに頼み込んでスケジュールに入れて貰ってるから融通が効く。だから……明日からしっかりとやれよ?」

 「は、はい!!お願いします白堊さん!!」

 「うん。宜しく修」

 

 迅さんに終始ニヤニヤしながら説明された修はとても嬉しそうな顔をしてまたボクに頭を下げた。ボクが握手をしようと右で差し出すと優しくやり返してくれた。

 

 「ん~……お、今なら一部屋空いてる。丁度良いからこのあと一時間だけ借りるから後は頼んだぞ。善は急げ、だメガネ君。ハク、頼んだぞ」

 「了解」

 「は、はい!!ありがとうございます!!」

 

 そして迅さんは用事があると言って別れようとしたけどーー

 

 「あ、良い忘れてたけどハクスッッッゴイ厳しいから。ハクもやり過ぎないように気を付けろよ?」

 「……善処する」

 

 そう言い残して去っていった迅さんは()()()()を思い出したのか苦虫を潰したような顔をしていた。それを見た修は

 

 (じ、迅さん(S級)があんな顔をするなんて一体どんなことをしたんだ……?)

 

 声には出さなかったが内心はビクビクしていた。

 

ーーーー

 

 それから二人で訓練室に行くと迅さんの名前で予約されている部屋見つけてタイマーを1時間に設定して部屋に入った。

 

 「それじゃ最初に修の正式なトリガーを使った時の実力を知りたいからーーーモールモッドを殺れ(倒せ)

 「ーーえ」

 

 ボクが殺れと言った瞬間、修の前にはモールモッドが出現していた。修はそれに対応出来ずにモールモッドに一撃で胸を貫かれてトリオン器官を破壊された。

 修の胸を貫いたモールモッドはすぐに消えた。訓練室だからベイルアウトもせずに貫かれた胸は修復されていく。

 

 『三雲隊員、トリオン器官破損。続行不可』

 

 機械音声が流れた後にボクは尻餅をついて呆けている修の近くに行き、しゃがんで声をかけた。

 

 「トリオン兵は合図なんかしてくれないし、待つこともしてくれない。ーー守りたい人がいるんだろ?」

 「ッ!!もう一度お願いします!!」

 

 次にモールモッドを出現させると今度はすぐに反応してシールド状態のレイガストを展開させるが防御を仕切れずに吹き飛ばはれてしまった。

 

 「時間が無いから次に移る。次はボクが防御をするから攻撃しろ」

 「わ、わかりました!」

 

 そしてスラスターを使って攻撃をする修をボクは動かずにシールドで受け流したり弾き返したりした。

 3分程続けてから弾かれてよろけた修に足払いをかけて馬乗りになって押さえつけると、苦しそうな声を出した。

 

 「アステロイドは飾りか?ボクは動いていないしシールドも一枚しか出してない」

 「ッ!!」

 「アステロイドを使ってもう一度。今度は動く」  

 「はいッ!!」

 

 

 修の動きはさっきとは違ってマシになった。レイガストをシールドで受け止めれば、アステロイドでシールドを張っていない場所に撃ち込んでくる。それを体を捻り、避ける。

 それも3分程続けてレイガストで切りかかってきたのを避け、代わりに腕を掴んで重心を崩して押し倒してそのまま話を始める。

 

 「終わり。修、スラスターはブレード状態なら速度も上げることができるしレイガスト自体も飛ばすこともできる。

 スラスターはシールド状態でも使える。シールド状態の耐久性はとても高いから至近距離で発動されば相手を吹き飛ばしたり攻撃を押し返せる。

 アステロイドは範囲も特殊な性質もない。けど威力が高くて連射ができる。一点の集中砲火、弾幕での行動制限ができる。至近距離から広範囲に飛ばそうとすればショットガンに似た使い方ができる」

 

 ボクが修のトリガーの使い方の例を言うと修はハッとした表情になる。

 

 「はい」

 「スラスターは重くて小回りが効かない。ならサブトリガーの組み合わせを前提に攻撃しろ」

 「次は防御。反応速度は悪くないけど体がついていけてない。これはこれからの訓練や実戦で慣れるしかない。

 防御をするなら攻撃に対して角度をつけて」

 「角度を、ですか?」

 「角度をつければシールドにかかる威力は空中に逃げる。弾いて、受け流す。正面から受け止めて耐えるよりも、威力を逃がして、弾いて、受け流した方が確実に出来ることが広がる、シールドを長持ちさせれる。修のトリガーなら、欲張れば防御をして体制を崩させて近距離でのアステロイドの集中砲火、なんてこともできる」

 

 そこまで言って修の上から降りて修を引き起こす。

 修の目を見てみるとやる気に満ちていた。

 

 「残りの時間は最初と同じモールモッドとの戦闘。今度はボクが声を出しながらやって貰う」

 「ハイッ!お願いします!!」

 

 

 

 

 「あ、あり、がとうござい…ました………」

 「お疲れ様」

 

 残り時間30分間は休み無しで修はモールモッドと戦い続けた。ボクが指示や修正点を言いながら戦闘をしていたおかげか、一時間前(最初と)は比べ物にならないほど良い動きになっていた。ーー倒せたモールモッドが一体だけなのを覗けば。

 ……まぁあとは、これからの訓練で地道にやっていこう……けど、

 

 「修、ごめんなさい」

 「……え?」

 「ボクはこんなやり方しか教えることが出来ない。もっとうまくやれれば」

 「そんなこと無いです!白堊さんの教え方はとても分かりやすくて覚えやすいです。だから、これからも指導おねがいします!!」

 「……うん。これからも」

 

 そしてまたボクと修は握手をした。それから訓練室を出ると外では何処からか持ってきた椅子に座ってカフェオレを片手にバリバリと揚げせんべいを食べている迅さんがいた。

 

 「お疲れさ~ん、よくがんばったなメガネ君。あ、揚げせん食う?」

 「……頂きます」バリボリ

 「……」バリボリ

 

 ボクと修が迅さんから袋ごと揚げせんべいを貰って食べていると、迅さんが珍しく気を利かせてお茶を買ってきてくれた。ボクと修はそれを受け取って飲み、一息つけた。

 

 「いや本当によくやったよメガネ君。一時間前とは大違いだな!」

 「み、見てたんですか!?用事があったんじゃ!」

 「あ~あれ?嘘だよ?」

 「嘘!?」

 

 …嘘だったのか……ボクもてっきり帰ったのかと思ってた…

 

 「まぁでも本当に見違えたよこれからもがんばれよ」

 「!!はい!!」

 「お~しじゃ帰るぞハク、今日はカレーらしいからな」

 「……うん」

 

 

 

ーーーーー

 白堊さんと迅さんが帰った後、僕もすぐに帰って疲れた体を休ませようとベッドに横たわった。

 今日は本当にたくさんのことがあった。ラッドの捕獲も完了させられたし、なにより白堊さんのサイド・エフェクトを知れて指導をつけて貰えることになった。

 

 「第6感覚……か。迅さんとの相性が良い筈だ」

 

ーー俺とハクのサイド・エフェクトが合わされば探し物なんてすぐに見つかるさ。まぁ相性が良すぎるのも問題あるんだけどなーー

 ふと迅さんが言っていたことを思い出して記憶を遡る。

 

 最初は何で迅さんが白堊さんの後ろをついて回っているのかわからなかった。僕と空閑が合流してからもそれは変わらなくて、でもすぐに異変に気づいた。ラッドの捕獲ペースが異常な程に早かったんだ。これには流石の空閑も不思議に思ったらしかった。

 

 『なぁ、もしかしてハクちゃんってトリオン兵の場所がわかるサイド・エフェクトもってるの?』

 『違うよ』

 『ならなんでこんなにラッドの場所がわかったみたいに動けんの?』

 『僕のサイド・エフェクトは第6感覚。簡単に言えば勘だよ』

 『………なるほど。迅が白堊を呼んだのは白堊の未来を先読みする為か』

 『お、レプリカ正解』

 

 聞いてみても僕は理解が出来なかった。それからレプリカが説明をしてくれてようやく理解が出来た。

 

ーー最良の未来を手繰り寄せるサイド・エフェクトと

ーー未来を予知して最良の未来に導くサイド・エフェクト

 

 理解した瞬間にもうこの二人だけで良いのではと思ってしまうほどに相性がよかった。ピコン

 

 「ん?迅さん?」

 

 突然点滅した携帯には迅さんからメッセージが届いていた。

 

 『おつかれさんメガネ君!

  率直に聞くけど、訓練中のハクをどう感じた?』

 

 「訓練中は……」

 

 僕は訓練中の白堊さんを思い出しながら文字を打ち込んでいった。

  

 『正直、とても怖かったです。普段とは少し違う口調で、白堊さんの表情がいつもよりも感情が無いような感じがして。でも、

 ーアドバイスや修正点はとても的確で僕の目をしっかりと見ながら話してくれて僕なんかの為に本気でやってくれてるんだって。そう思うとすごく安心できて……変なこと言っちゃってすみません』

 

 僕がメッセージを送ると暫くしてから迅さんから返信が来た。

 

 『そっか。だいたいそれがわかってんなら安心したよ。ほいこれ、

ーーーハクの連絡先だ。それとハクのスケジュールが入っているから確認しといてな。ハクから「修は学校もあるだろうから修が出来る日に予定を入れて欲しい」だと。うちのボスがもうスケジュールを変更してあるから心配するな。

 因みにもうハクは寝てるから連絡しても無駄だぞ?じゃ良い夢を見ろよ。

 PSハクは結構お前のこと気に入ってるぞ』

 

 

 「えぇ……」

 

 迅さんの返信を見た僕は最後の一文で困惑した。

 いや、嫌われるよりはまったく良いんだけど……まず白堊さんのスケジュールを確認しよう

  

 僕は一度考えを置いておいて白堊さんのスケジュールを確認していくと、白堊さんの予定は一週間に2回になっていた。とりあえず僕は明日の午前中に予定を入れて明日直接話すことにしてその日は眠った。

 

  

 

 

 

 

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