気づいたら1ヶ月……大変お待たせしました
放送で緊急の召集がかけられて鬼怒田さんと共に会議室に行くと、すでにボーダーの幹部が集まっていた。
リンドウはヨッとボクに片手を上げて挨拶をした。前にリンドウから教えて貰った通りに真似をして返すとリンドウ以外の面々がポカーンとしていた。
それにしても、何故ボクも呼ばれたのだろうか?
そんな事を考えていると、どうやらまだ時間があるようで鬼怒田さんが召集がかけられる前の説明途中だったトリガー回路について聞いてきたため、それに答えていると会議室の扉が開いた。
入ってきたのは迅さんと修で、迅さんはボクを見てニヤッとしていて、反対に修はとても驚いた顔をしていた。
待ち人は迅さんと修だったようで鬼怒田さんは自分の席に戻り、リンドウはボクに迅さんの隣にたっているように言った。
「揃ったようだな。では迅、報告を」
「はい、では先ほど三輪隊と交戦したネイバーは三輪隊と交戦してネイバーが勝利しました。彼は~…まぁ俺よりこっちのメガネ君のほうが長く付き合ってて詳しいから、後はよろしくメガネ君!」
「は、はい!?わ、わかりました!」
どうやら修がいる理由は遊真についての事らしい。ネイバーってことがばれて、みわ隊?の隊員と交戦して勝ってしまったということだった。しかも、遊真はブラックトリガーを持っているらしい。
それの報告を聞いて鬼怒田さんは怒りの混じったため息を吐いた。
「前回に続きまたお前か!いちいち面倒な事を持ってくる奴だな?」
「しかしブラックトリガーとは…そんな重要な事をなぜ黙っていたのかね?ボーダーの信用に関わる事態だよ?」
根津さんがそういうと忍田さんが「三雲君にも考えがあっての事だろう。現にブラックトリガーを現在まで押さえている」と庇っていた。しかし鬼怒田さんと根付さんは腑に落ちないらしく食い下がっている。
「報告をしていたらより面倒なことになっていたでしょう?「あ"ぁ"!?」嗚呼、いえなんでも」
「まぁまぁ!少し考え方を変えてみましょうよ!___その
迅さんの言葉で会議室は一瞬だけ空気が止まった。
どうやら迅さんは遊真をボーダーに入れたいみたいだ。
確かに遊真がボーダーに所属すればボーダーの戦力は一段階上がるだろうね。でも、そんなうまくいくものかな?
「メガネ君はそのネイバーの信頼を得ています。彼を通じて説得できれば争わずして大きな戦力が手に入りますよ?」
「それは、まぁそうだが…」
「そんなうまく行きますかねぇ?」
実際、修がボーダーに所属していることは遊真も知っているから、ありえなくはない話だ。
そして、今まで黙っていた城戸司令が口を開いた。
「__確かにブラックトリガーは戦力になる。ならばそのネイバーを始末してブラックトリガーを回収しろ」
「なッ!?」
「まぁ、A級1~3位の部隊は遠征中だが、正隊員全員を使えばやれんことはないだろう」
「何を馬鹿なことを!それでは強盗と同じだ!!それにその間の防衛任務はどうするつもりだ!」
「部隊を動かす必要は無いだろう。ブラックトリガーには、それ相応のトリガーぶつけるまでだ___迅、白堊、お前達に
【ブラックトリガーの捕獲を命じる】
上からの、命令
その言葉が頭の中で反響する。
「……りょうkモゴモゴ??」
命令を受諾しようとすると隣にいた迅さんがボクの口を塞いで後ろから抱き締めていた。
?どうしたんだろう??
そう思いながら見上げると迅さんは
「俺もハクもお断りさせていただきます」
____________
「迅、白堊、お前達にブラックトリガーの捕獲を命じる」
城戸司令がそう言った瞬間に隣にいるハクの気配が変わった。
玉狛にいるときとは違う。冷たく、無機質で感情なんて無いようなそんな気配に。
ボスがハクを見て目を見開いて椅子から立ち上がろうとしているのを見て、
ハクは俺を見上げて不思議そうにしている。いつものハクだ。
……小南に見られたら殴られるだろうなぁ…
そんな事を考えながら俺は城戸司令に言う。
「俺もハクもお断りさせていただきます」
俺の腕の中でハクがビクリと震える。抱き締めている腕に力を入れ直してハクを見下ろしてみると両目を見開き、俺をありえないものを見るような目で見ている。
ハクがこの世界に来てから初めて見る、驚愕の表情だった。
_________
「迅、白堊、お前達にブラックトリガーの捕獲を命じる」
城戸司令が言った瞬間ハクの気配が変わった。まるで初めて俺とあったときのような気配に。
目から光が消えていっていた。
ハク見た瞬間俺の体は動き出していて椅子から体を浮かせていた。しかし迅がハクを抱き締めて俺を睨んでいた。……そういうことかよ
俺は迅に任せることにして自然に椅子に座り治した。
またハクを見ると頭にいくつもの?マークを浮かべたハクが迅を見上げていた。そして、迅が命令を断るとハクは目を見開いている。
頼んだぞ迅
________
「ネイバーに拐われた人はネイバーの戦争に使われるって言ってたでしょ?それってどんな風に使われるの?」
こじんまりとした神社でハンバーガーを食べている遊真に千佳が質問した。
遊真は咀嚼していたハンバーガーを飲み込んでから一瞬だけ考える素振りを見せてから話始めた。
「それは
遊真の解答に疑問符を浮かべる千佳に遊真は再びハンバーガーを食べながら続きを話し始める。
「ネイバーにも、
「じ、じゃあ!拐われた人も生きてるかもって事!?」
千佳が遊真の解答に期待を膨らませながら言うと、遊真は一瞬だけ言い淀んだ。
「普通にある……いやどうかな…運が良ければ十分に言えるんだけど、すまん。断言はできない」
「そ、そっか…そうだよね…」
「何?知り合いでも拐われた?」
遊真の質問に千佳は気になっただけ、なんでもないと取り繕って返事をした。
それに遊真は口を尖らせて不満そうにした。
「お前、つまんない嘘つくね」
「_ッふぇ!?」
「こっちにだけ喋らせてそっちは秘密か、まぁいいや後で修に聞く」
「ふぇッ!?待って待って!ごめん!」
千佳は不満そうにしている遊真に謝罪をして、一度仕切り直すために神社の鈴をならして手を合わせる。
「……本当は、そうなの。ネイバーに拐われたの。小学校の時仲良くしてくれた友達と兄さん。二人が拐われたのは私のせいなの。私が相談なんてしたから……」
落ち込んだように顔を伏せながら千佳はそういった。それに遊真は納得が言ったようにしている。
「なるほどねぇ、だからもう他の人を頼りたくないって言ってたのか。ボーダーとかも」
「……うん。だって迷惑かけたくないから」
「ま、気持ちはわからんでも無いけどなぁ」
「え?」
遊真はその場で体を倒し、「俺だって今日修と千佳を巻き込んだ」と神社の天井を見上げながら言った。そんな遊真に対して千佳は笑顔でそれを否定した。
「そんなことないよ!修君はそんなこと気にしてない。
手を目に当てて修のメガネの真似をしながらそう言って、千佳は多分、と付け加えた。
遊真も確かに言いそうと納得した。
「あいつは他人の心配と自分の心配のバランスが可笑しいからな」
「うん!学校にネイバーが出たときも真っ先に皆を守ろうとしたよね。修君っていつも自分以外の誰かを心配してる気がする」
遊真は食べ終わったハンバーガーの包みを袋に入れて千佳の言葉に同意した。
「そもそも俺を心配する必要はなんか無いのに」
「え、でもボーダーの人に遊真君狙われてるんでしょう?」
「俺とレプリカが本気でやれば負けることは無いよ。……いや一人、いや二人いるな」
遊真はぐしゃりと紙袋を潰しながら言った。
「迅さんとハクちゃん」
「迅さんが…おでこにサングラスしてる人で、ハクちゃんってたしか……修君が特訓して貰ってる白堊さん?」
「そうそう、千佳はハクちゃんに会ったこと無かったな。迅さんは多分相当強い。勝てるかどうかはやってみなきゃわからないけど、ハクちゃんには……2割って所かな?勝ったとしても俺は無事じゃないけどね」
「じ、じゃあ!迅さんも白堊さんが追ってになったら!」
「……ま、逃げ切れれば上出来だな~、ま、そんなことにはならないよ」
___________
心臓の音が煩いくらいに大きくなっていく
身体が震える
寒い
命令は、ゼッタイ 逆らうな
めいれいには逆らえない 従え
サカラッテハイケナイ 貴様らは道具だ
メイレイ違反ハ廃棄対象 使えない道具は処分するだけだ
「俺とハクは玉狛支部の人間です。城戸司令に直接の司令権限はありませんよ?俺とハクを使いたいなら、リンドウ支部長を通してください」
「……あ……」
迅さんに強く抱き締められてハッとする。
そうだ、ボクは、リンドウの
『ハク、お前は道具でもなんでもねぇ、嫌なら嫌ってハッキリ言え、それぐらいで
いつの日か、リンドウに言われたことを思い出すと、
ボクの心臓の音は小さくなっていって迅さんの心臓の音が聞こえた。
抱き締められて震えが止まった。
「やれやれ…
「はい」
「了解」
「ただし!やり方は
「了解ボス!必ず命令を遂行します!」
「了解、
ボスの命令は、絶対 『命令じゃねぇお願いだ』
命令は絶対 『嫌ならやらんでいいぞ』
家族は離れない
初めて胸の奥が熱くなった。
初めて命令を受けたいと思った。
「ほら行くぞハク、
「…うん」
迅さんに手を引かれて会議室を出る瞬間ボスと目が合って、応援してくれてるような気がして、どうしようもなく、うれしかった。
やっぱり奴隷って逆らえないですよね。
奴隷が逆らうのはどんな時でしょう?
評価、催促コメントでもモチベーションが上がります
これからもどうぞよろしくお願いします。