奴隷兵の帰還   作:メヴィ

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嵐山

 嵐山隊との模擬戦の後、ブースから出ると歓声が聞こえてきた。何事かと回りを見渡すが、全員がボクの上に視線を向けていることに気づいた。

 上には大きなディスプレイがあり、ボクが時枝さんを釣り上げたシーンや、エクスパイルで爆破するシーンなど、ボクが嵐山隊を撃破する場面が繰り返し流されていた。

 

 「ーーいやぁ~スッゴい威力だったよ~凄いね君」

 

 ディスプレイを見上げているとブースから出てきていた佐鳥さんが話しかけてきた。

 

 「白堊ちゃんだっけ?俺は佐鳥!よろしく!」

 「白夢白堊、よろしく………?」

 

 佐鳥さんと挨拶を交わしていると視線を感じた。視線を感じた先にはボクを見つめるメガネのC級隊員と、女の人が四人ほどいた。ボクと目が合うと、目をそらし、どこかへ行ってしまった。

 ずっとメガネ隊員と四人を見ていて佐鳥さんをほったらかしにしてしまった為、佐鳥さんが声をかけた。

 

 「白堊ちゃん?どうしたの?」

 「………メガネ」

 「め、メガネ?白堊ちゃんはメガネ付けてるの?」

 「?付けてない」

 「えぇ……?」

 「いやぁ~!良くやったよハクちゃん!

 「うさみ」

 

 佐鳥さんと噛み合わない話をしているとうさみが駆け寄ってきた。そしてボクのことを抱きしめ、頭を撫で始めた。

 

 「ほとんど私必要なかったねぇ~いやぁ~すごいすごい!それに!よく時枝君を釣り上げたね!それで首ちょんぱ!いやぁ~!すっごい興奮しちゃったよ!!」

 「あれは反則だよ、どうやって僕の場所がわかったの?」

 「お!噂をすれば魚が来た!」

 

 ボクを抱きしめているうさみの横にいつの間にか時枝さんが立っていた。

 

 「嵐山さんに返事をした時に場所を把握した」

 

 そういうと時枝さんは呆れたような顔をした。なぜ?

 

 「それで………それでも狙いが的確過ぎるよ、まぁ迂闊に返事をしたのはこちらのミスだね。ね、嵐山さん」

 「そうだな、通信ではなく大声を出したのは俺のミスだ。ほら、そう落ち込むな木虎」

 

 更に嵐山さんと木虎がブースから出てきていた。嵐山さんはガックリと落ち込んでいる木虎を励ましていた。

 

 「………だからといって、私は何も出来ませんでした………佐鳥先輩みたいに………」

 「木虎ちゃん俺の事もディスってるからね!?」

 

 そして佐鳥さん木虎は軽く口喧嘩を初めてしまった。言い争っている二人を放置して、嵐山さんはボクに近づいてきた。

 

 「白夢白堊さんだったね、すごいね、まだ13か14位だろう?どうやってそんなに強くなったんだい?」

 

 嵐山さんはどうやって強くなったかを聞いてきた。以前なら素直を答えていたけど、リンドウからはシナリオを貰っていた。それとボクは17だ。

 

 「……小南と一緒に遊んでたら強くなってた。あと、ボクは17歳だよ」

 「なるほど桐絵とかぁ……ん?17?桐絵と同い年………君……君まさか!は、ハクちゃんなの……か……?」

 

 ボクが17だと言うと何かを思い出したように肩を掴んできた。ボクの呼び方と言い、もしかして過去のボクを知っているの?

 うさみがボクの肩を掴む嵐山さんを引き剥がし、真剣な表情で嵐山さんを落ち着かせる。

 

 「嵐山君、待って」

 「うさみ!この娘は……!」

 「今日、玉狛に来て」

 「………ここでは、言えないのか?」

 

 察してくれたのか嵐山さんはボクを離してくれた。うさみはボクの手を取り、その場を離れた。うさみに手を引かれている時、嵐山さんを横目で見ると、やるせない顔をしていた。

 

 「…………ごめんハクちゃん。とりあえず玉狛に帰ろう。小南と林藤さんにも相談しなきゃいけないから」

 「わかった。でもうさみ、ボクは嵐山さんが過去の白夢白堊を知っているなら、真実を言うべきだと思う。嵐山さんは、知る権利がある」

 「………」

 

 ボクとうさみはリンドウを捕まえ、うさみがリンドウに事情を話した。リンドウと車に乗り、玉狛に戻った。戻っている最中はうさみも、リンドウも喋らなかった。でも、うさみはずっとボクの手を握っていた。玉狛に帰ると、小南が出迎えてくれた。

 

 「あ~!!ハク!何で置いてったのよ!宇佐美もボスも!って、どうしたの?そんな顔して……」

 「……小南、少し話がある」

 「ぅえ?ど、どうしたの本当に、もしかして何かあったの?」

 「………」

 「???」

 

 小南は?マークを頭に浮かべながらリンドウと共にリビングに向かった。ボクも行こうとすると、ずっとうさみに手を握られていて動けなかった。

 

 「うさみ?」

 「………ハクちゃん、ハクちゃんが嵐山君に正直に話したいのは尊重したい、けどね、真実だけを伝えるのが正しいことじゃないの………」

 

 うさみはそういうとボクの手を離して先にリビングへ向かった。

ボクはうさみの背中を見ながら、うさみに言われたことを考えていた。

 

 ーー真実だけを伝えるのが正しいことじゃないのーー

 

 うさみの言葉が頭の中で繰り返されていた。

 

 

 

 

 

 

 リビングへ行くとリンドウ達はソファーに座っていた。ボクはいつも通り、小南の隣に座っていた。小南はまだ何も話されていないのか、まだ?マークを浮かべていた。そして、いつも通りボクを抱き抱えた。すると、リンドウがやっと口を開いた。

 

 「……小南、今日、嵐山が玉狛にくる。ハクについてだ」

 「え…そ、それって!」

 「嵐山君はハクちゃんを思い出して、気づいたみたい」

 「そっか……准も、一緒に探してたからね……」

 

 小南は上を向き、しみじみと言い放った。

 

 「小南、俺は、ハクの過去を嵐山に伝えるかは、小南とハクに任せたいと思っている」

 「……………私も、そう思うよ。私は、部外者だから、でもハクちゃん、さっき言ったこと、忘れないでね」

 「え?ちょ、ちょっと!」

 

 リンドウとうさみはそれだけ言ってリビングから出ていってしまった。小南は困ったような声をあげてリンドウ達を引き留めようとしたが駄目だった。

 

 「はぁ……ハク、ハクはどうしたいの?」

 「ボク?ボクは………」

 ー真実だけを伝えるのが正しいことじゃないのーー

 「……ボクは……わからない…」

 「わからない?」

 

 うさみの言葉がぐるぐるぐるぐる回って、よくわからない……ボクは、嵐山さんが前の白夢白堊を知っているなら、伝えるべきだと思う…でも、うさみは………

 

 「…ハク、うさみに何を言われたの?」

 「……うさみは、真実だけを伝えるのが正しいことじゃないのって、ボクは伝えるべきだと思ってた。でも、正しいのか、わからなくなって……」

 「そう、ならあたしの考えを言うわ。わたしは准に伝えるべきだと思うわ」

 「……え?」

 

 ボクが迷っていると、小南は当たり前のように伝えるべきだと言った。

 

 「確かにうさみの言うことも正しいわ。でもね、准は12年前の白堊しか知らないの。今のハクのことは全く知らない」

 「だから、あたしは、今のハクを准に知ってほしいの」

 

 小南の言葉を聞いて、ストン、と何かが落ちた音がした気がした。

 あぁ……そっか、ボクは、今のボクを、嵐山さんに伝えたかったんだ。

 

 「……ありがと、小南、ボク、わかったよ。ボクも、嵐山さんにボクを知ってほしい。だから、全部、伝えたい」

 

 ボクが伝えると、小南はニコッと笑って強く抱きしめてくれた。

 

 「ーーーわかったわ。それがハクの答えなら、あたしも手伝うわ」

 

 そして、答えが決まったボクと小南は答えを伝えるためにリンドウの部屋に向かった。リンドウの部屋にはうさみもいた。うさみ

は何か紙を整えていた。

 

 「あ~あ、やっぱそうだよなぁ宇佐美」

 「まぁ、ハクちゃんと小南だからねぇ」

 「へ?どういうこと?」

 「リンドウ?」

 

 結構な覚悟を決めて来たボクと小南はいつも通りのリンドウとうさみのいつも通りな態度に拍子抜けしてしまった。

 

 「わかってたよ。お前らの答えなんて」

 「はい、これハクちゃんの資料だよ。嵐山君がきたらこれを渡してね」

 「え、あ、うん」

 「………うさみ、その、」

 「良いんだよハクちゃん。それがハクちゃんの答えなんだから」

 「………うん、ボクは、今のボクを嵐山さんに知ってほしいから」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 嵐山さん用の資料が渡されてからはリンドウとうさみはいつも通りになった。そしていつも通りに夕暮れまで過ごしていた。

 

 今日はレイジさんが料理当番だったから沢山の餃子を作っていた。あまりにも多くて、焼き肉みたいに焼きながら食べた。

 レイジさんは焼くのが上手で、別のプレートで羽根つき餃子を作っていた。小南は羽根つきの方が好きなのか羽根つきばかりを食べていた。まぁボクも羽根のパリパリ感が好きでそっちを食べていた。それをみた烏丸さんが

 

 「小南先輩、餃子の羽って実は癌の元になるらしいですよ」

 「うぇ!?そうなの?!は、ハク!羽根たべちゃだめぇッ!!」

 

 といつも通り嘘をついて遊んでいた。それを聞いた小南は信じて驚いていた。

 烏丸さん。小南で遊ぶのは良いよ?だけどさ……

 

 「もう羽根食べないで~!!」

 

 小南は羽根つき餃子を食べるボクの肩を掴んでガックンガックン揺らしてきた。

 ボクにまで被害くるんだよね………あ、ちょっも気持ち悪くなってきた……

 

 「う……おぇ………」

 「ちょちょ!?小南!?ハクちゃん離して!?」

 「だって癌に!!」

 

 ボクがえずくとうさみ気づいて小南を引き剥がしてくれた。ありがとうさみ……もうちょっとで吐きそうだった……小南はまだ信じてるのかうさみと言いあっていた。うさみもちょっと楽しんでるよね?ちょっとニヤついてるもんね?

 ボクが烏丸さんをジロッと睨むと烏丸さんは肩を竦めた。やっとバラす気になったらしい。

 

 「小南先輩、嘘ですよ」

 「……え?」

 「だから嘘です」

 「だ、だましたなぁぁあ!?栞もわかってたでしょ!?………ハッ!ハク!ごめん!大丈夫!?」

 

 小南はさっきボクが揺すられて吐きそうになったことを思い出したのか、ボクに手を合わせて謝ってきた。……すこしからかってみようかな?

 

 「………ゆるさない」

 「えぇ!?」(;゚;Д;゚;; )

 「嘘だよ」

 「(|| ゜Д゜)」

 

 ゆるさないと言ったらこの世の終わりみたいな顔をして固まってしまった。すぐに嘘だと言ってもおかしな顔をしていた。それを見て皆で笑いながら餃子を食べ終えて小南とリビングでくつろいでいた。すると扉が急に開き迅さんが帰ってきた。

 

 「ただいま~いやぁ~遅くなっちゃった~」

 「おかえり、迅さん。ご飯食べる?」

 「いんや、食べてきたよ。それより、お客さんだ」

 「やぁ、こんばんは」

 

 そして迅さんに連れられてきたのは嵐山さんだった。嵐山さんは小南に抱かれてるボクを見ると、安心したような顔をした。嵐山さんが来たことに気づいたうさみが台所から出てきた。

 

 「お、いらっしゃい嵐山君。コーヒーでいい?」

 「あぁ、頼む」

 「りょーかい。座って待っててね~」

 「准、こっちきなさいよ」

 

 嵐山さんは小南に誘われてボクたちの対面のソファーに座った。嵐山さんは小南の腕の中にいるボクをジッと見つめてきた。

 どうしたんだろう?

 ボクが首を傾げるとそれに気づいた小南は部屋から嵐山さん用のボクの資料を持ってくるように言ったからボクは小南から抜け出して部屋から持ってきた。

 

 戻ってくると嵐山さんはすこし元気が無かったような気がした。とりあえずボクは小南に渡して小南の膝に座り直した。

 小南は資料を握りしめ、真剣な表情で嵐山さんは見つめた。

 

 「ん、ありがとハク………准、本当に良いのね?」

 「……あぁ」

 

 そして嵐山さんは資料を読み始めた。時折目を見開いたりしていた。一方ボクはお腹いっぱいで、小南の体温と心音がとても気持ちよくてウトウトしてしまっていた。

 

 「ハク、ハク!ハク!准もう帰るわよ!見送りしなきゃ」

 

 ウトウトしていると小南が起こしてくれた。そっか……ボクは結局寝ちゃってたのか……嵐山さんの見送りしないと……でもまだ眠い……

 ボクがまだウトウトしてると嵐山さんに頭を撫でられた。

 

 「ははは……良いよ桐絵、俺も結構長居しちゃったからな。なぁハクちゃん」

 「……んぅ?」

 

 急に話しかけられて気の抜けた返事をして、眠い目をどうにか開けて嵐山さんの方を見ると、嵐山さんは優しい顔をして

 

 「また、きて良いかい?」

 「……うん、こんどは、おはなし、しよ……?」

 「あぁ!いっぱい話そう!じゃ桐絵、俺は帰るよ」

 「えぇ、近いうちに来なさいよ?あたしもハクも待ってるから」

 

 そして嵐山さんは帰っていった。どうにか嵐山さんを見送った後、ボクは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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