ボクが二人を連れて学校から脱出すると、修が他の学生に詰め寄られていた。対して遊真は修が倒したとするモールモッドについて身振り手振りで説明していた。
それを見て修は大袈裟すぎると言ったけど、謙虚で素晴らしいと回りの評価を高めただけだった。
まずは被害の確認だったかな
「先生、負傷者はいますか?」
「え、あ、ぜ、全員無事です。あの、貴女はボーダー隊員なんですか?」
「うん?………あ、はいこれ」
「ほ、本当にボーダー隊員…失礼しました。駆けつけてくれて感謝します」
前に小南に言われたことを思い出せて良かった。ボクは小さくてボーダー隊員に見えないから疑われたらボーダー隊員証明書を見せれば良いって。
「嵐山隊現着した!ハクちゃん状況は!?」
ボクが状況確認をしていると学校の屋上から飛び降りてきた。
それを見ていた生徒達は盛り上がり、それぞれ感想を言い始めた。
「モールモッド2体、被害者ゼロ、全員無事」
「そうか……良かった……」
簡潔に報告すると嵐山さんは安堵した表情になった。そう言えば一体は修が倒したことにするんだった。
「ボクが駆けつけた時にはあのC級隊員が一体倒していたよ」
「え?そうなのか?」
「…C級隊員の三雲修です。他の隊員を待っていたら間に合わないと思い自分の判断でやりました」
ボクが修を指を指すとこちらに寄ってきて自分で説明をしてくれた。何故か表情が暗いけど。
「そうだったのか!良くやってくれた!君が居てくれなかったら犠牲者がでてたかもしれない。うちの弟と妹もこの学校だったんだ」
「え?」
嵐山さんはそう言うと自分の弟たちに飛び掛かっていった。抱きつかれた弟たちは嫌がってるけど何でだろう?
「誉められたじゃん良かったな修」
「……」
いつの間にか近くに来ていた遊真が修を慰めるがまだ顔は暗いままだ。もしかして怪我を?
「修、怪我でもした?」
「む?そうなのか?なら早く手当てを」
「いや、違うんです。……緊急時とは言え僕は訓練生です。訓練生は許可無くトリガーを使ってはいけないので……おそらく僕はボーダーから処罰されると思います」
「……そう」
くだらない……修と遊真があそこで時間を稼いでいなかったら間違いなく犠牲者が出ていた。なのに規定違反といって処罰するのは…
そんなことを考えていると木虎がいきなりモールモッドをバラバラにしてた。
「私にも出来ますけど何か?」
……止まってるモールモッドを細切れにするくらい訓練生でもできると思うんだけどな……
「私は訓練用トリガーでネイバーと戦うような馬鹿なことはしません。そもそも訓練生は訓練以外でのトリガー使用は許可されていません。嵐山先輩は規定違反をした隊員を誉めるようなことをしないで下さい。ボーダーの規律を守るため、彼はルールにしたがって処罰されるべきです」
「たしかに規定違反だが…結果的には市民の命を救った訳だし…」
「そうだ!」
「三雲は俺たちを助けてくれたんだぞ!」
木虎が言ったことに嵐山さんも含めて生徒たちが抗議を始めた。
確かに修はルールを破ったけど……破らざる終えない状況だったんだから不問にしても良いと思うんだけど…
「確かに人命を救ったのは評価に値します。けれどここで彼を許せば他のC級隊員にも同じような違反をするものが現れます。そんなことが起きないように彼は処罰されるべきなのです!」
「なぁ、ハクちゃんよ」
「なに?」
「なんでコイツ遅れてきたのにこんなに偉そうなんだ?」
遊真がそう言うと木虎が一瞬驚いてから厳しい顔に変わった。
「…誰よあんた」
「修とハクちゃんに助けられた人間だよ。て言うかお前、修が誉められるのが気にくわなくて突っかかってきてるんだろ?」
「なッ!?そ、そんなわけ無いでしょ!?A級の私がC級に嫉妬なんてするわけ無いじゃない!」
「ふぅん……お前」
「つまんない嘘つくね?」
遊真がそう言うと木虎は更に言い返そうとするが、時枝さんに止められた。
「修君の処罰を決めるのは僕たちじゃなくて本部、ほら現場検証も終わったんだから撤収するよ」
「それもそうだ!今回のことはうちの隊から報告しておこう。修君は今日中に本部に出頭するように!!」
「は、はい!」
嵐山さんはそう言うとすぐに優しい目になって修と握手をした。
「処罰が重くならないようにやってみるよ。君には弟と妹を守って貰った恩があるからね……ハクちゃんもお願いできるかな……?」
「……正直、修が足止めをしていなかったら犠牲者が出ていました。今回犠牲者が出なかったのは修のおかげです。ボクもできる限りの事はしますよ」
まぁやったのは遊真だけど……でも絶対に修と遊真が動いてなかったらボクだって間に合って無かった。木虎は真似をする隊員が出ると言ったけど、C級は一般人と変わらない素人……立ち向かうなんてことは絶対に出来ない。
「あ、ありがとうございます?」
「……あ、どら焼……」
おばちゃんのとこに取りに行かなきゃ……
ーーーー
「おい遅いぞ白堊一体なにをしていたと言うんだ!」
「ん……」⊃どら焼き
玉狛に帰るとよーたろうが少しご機嫌斜めで迎えてくれた。相変わらず移動は雷神丸に任せきりだけれど。
ボクはこれから報告書を書かなきゃいけないし……今は構っている暇は無いかな。
「ボクは少しやらなきゃいけないことが出来たから」
「ひょーひゃい」モグモグ
部屋に戻り、机に置いてあったiPadを操作して学校での出来事を簡潔に書き込む。
『報告書 三門第三中学校ネイバー襲撃
玉狛所属 白夢白亜
本日三門第三中学校にてイレギュラーゲートが発生。発生時付近にいたため現場に急行。
現場に到着時C級隊員 三雲修がモールモッド一体と交戦し撃破。
私は学校窓際に潜伏していたモールモッド一体を撃破し、後に嵐山隊も交流し、事態を収集しました。
三雲修が交戦していなければ間違いなく生徒や職員に犠牲者が出ていました。彼は違反をしたとは言え緊急時であり、三雲修が動いたことで救われた人命は多く、咄嗟に動ける判断力、行動力が高くそれに加えてモールモッド一体の撃破、この功績を踏まえて彼をボーダーから除隊することは理不尽かと思われます。
どうか寛大な処置をお願い申し上げます。
報告終了 』
「ふぅ……こんなものでいいか……」
作った報告書をボーダー本部に送ってiPadの電源を落とす。
"空閑遊真〟
ボクが駆けつけた時に修のトリガーでモールモッドを倒していた男子生徒。
けれどあのレプリカという自立トリオン兵や訓練用トリガーで正確にコアを破壊する技術。間違いなく一般人ではない。
それに、わざわざ修がモールモッドを倒したことにするならボーダー隊員でもない。なら
「ネイバー」
ネイバーならトリトン兵を連れていること、ボーダーに目をつけられたくないこと。これらに納得がいく。
まぁそうだとしてもボクは遊真をどうこうしようと言う気は無い。遊真は大丈夫。危険なら、ボクのサイドエフェクトが反応する筈だからね。
「ふぁ……」
ベットの上でそんなことを考えていると程よく意識が睡魔に飲まれていく感覚が襲ってきた。時計を確認すると3時過ぎでお昼寝にはちょうど良い時間帯だった。抵抗をする気がないボクはどんどん睡魔に飲まれて行き意識を完全に手放した。