ちなみに、私は自衛官ではないです()
1話 ーStarting GATE-
「申告します!トレーナー3尉、他、4名の者は、ウマ娘教育隊で実施される令和4年自衛隊ウマ娘トレーナー教育課程に参加を命ぜられました!敬礼!」
桜のつぼみが顔を見せる3月頃。
陸上自衛隊朝霞駐屯地のとある施設内にて陸、海、空の自衛官達が敬礼をする。
彼らはウマ娘のトレーナーライセンスを持つ者達だ。これから3年間、地方及び中央のトレセン学園にトレーナーとして勤務する。
陸海空の曹が3名、陸の幹部が2名。中には、ウマ娘の自衛官もいる。
「以上をもって、訓示とする。」
教育隊長の訓示が終わる。
「敬礼!」
代表のトレーナーが号令をかける。
こうして、式は滞りなく行われた。
⏰
突然ですが、皆さんは陸上自衛隊をご存知ですか?災害派遣でよくお目にすると思いますが、陸上自衛隊は我が国の平和と独立を守るべく、日々、訓練や演習、警戒・監視などをして、皆さんが平和に暮らせるように尽力しております。
僕はそんな陸上自衛隊の隊員で、約2年前に、福岡県は久留米市の幹部候補生学校を卒業し、水陸機動団のある相浦に配属、団長の思惑でいきなり洋上活動課程に行き、あれよあれよと幹部初級課程のため富士にGO!終わったと思ったら、訓練、演習、訓練とハードな日々を過ごしていました。
その後、自衛隊ウマ娘トレーナー教育課程のためウマ娘が多数所属する朝霞駐屯地に配属されました。教育のために各地域のトレセンに勤務するのですが、大学の時に中央トレーナーのライセンスを取得したこともあり、府中は日本ウマ娘トレーニングセンター学園に勤務することになりました。
あ、自己紹介を忘れていましたね。改めて、僕の名前はトレーナー。本名略。陸上自衛官で階級は3等陸尉。年齢は24歳。出身は修羅の国。今はそうでもないけどね。多分。
自衛隊入隊前は一般大学生で、予備自衛官も経験しました。
趣味は登山と水泳、サバゲーも多少嗜む。身長178cm。体重65kg。誕生日は1月14日。
好きなことは美味しいものを食べること。嫌いなものはたくさんある。
ちなみに、トレーナー資格を取ろうとした理由は、あるウマ娘がきっかけです。『トキノミノル』というウマ娘です。
さて、前置きが長くなりましたね。これは、ウマ娘と共に最高にロックな日々を過ごす僕のお話になります。
⏰
「期待ッ!今後ともよろしく頼むぞ!!」
時は進んで4月。体育館で行われた辞令書交付式も終わり、理事長室にて理事長に激励の言葉をかけられる。
「ありがとうございます!」
「うむっ!では、行くが良い!重ね重ね、君には期待しているぞ!!」
こうして、理事長室から退室する。
「さてと、次は…。」
案内図を開き、目的地に向かう。次は生徒会室に向かう予定だ。そこで、この学園の生徒会長と面談をする予定だ。
廊下を歩いていると、60代くらいの女性トレーナーに声をかけられる。
「こんにちは。貴方が噂の新人さんね?生徒会室に向かうのかしら?ご一緒しても良いかな?」
「こんにちは。その通りです。…噂?」
「ええ。何でも、久しぶりに自衛隊からトレーナーさんがいらっしゃるというのですから、気になって。」
今は、陸自の制服を着ているから、ひと目でわかるのだろう。
「そうなんですね。あ、僕の名前はトレーナーと申します。」
「これはご丁寧にありがとう!私は新堀と言います。似たような冠名の『シンボリ』ルドルフちゃんの担当をやってるのよ。」
まさかの無敗の三冠ウマ娘のトレーナーさんでしたか…。メディアの露出は少ないのでどんな人かはわからなかったが、大のベテランだったとは。
2人で歩きながら、生徒会室に向かう。
シンボリルドルフ。言わずもがな、トレセン学園の生徒会長にして、無敗の三冠ウマ娘だ。有馬記念も制している。そして、今年の天皇賞・春に出走するため調整中とのこと。
「あの子は本当にすごいのよ!最後にあの子のトレーナーになれて本当に良かったわ!」
「最後…ですか?」
「ん?ああ、そうよ。私、5月末でこの学園を去るの。定年退職ってやつね。」
「そうなんですね…。」
「うん、だから、春天で最後の勇姿を見届けて、それから退職するの。それまでは、出来る限りサポートするつもりだけどね!」
それ以降は誰が彼女のトレーナーを担当するのだろうか?
そんな話をしているうちに生徒会室にたどり着く。ノックをして入室する。
「入ります!」
「失礼するね。」
そこには生徒会長のシンボリルドルフがいた。彼女は椅子に座って書類作業をしていた。
「やぁ、待っていたよ。新堀トレーナーもご一緒でしたか、どうぞ。」
促されるままソファーに座る。本物のシンボリルドルフはやはり迫力がある。大人の僕でもその貫禄に気圧される。
向かい合う形で、テーブルを挟んで座り、早速本題に入る。
「まずは、初めまして。僕はトレーナー。陸上自衛隊から参りました。今日から3年間、トレセン学園にお世話になります。」
「私は、この学園の生徒会長を務めている、シンボリルドルフだ。よろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
敬語はよしてくれとシンボリルドルフに困った顔をされながら指摘された。いや、だって、ほら、ね?威圧感ハンパないんだもん…。
新堀さんも交えて3人で会話をする。
しばらくすると、新堀さんが、
「そうだ、ルドルフちゃん。この子をサブトレーナーにしても良いかしら?」
「ええ、構いませんよ。是非とも、彼のことをもっと知りたい。」
先ほどの会話で気に入られたのか、あっさり承諾される。
「そういうわけだから、トレーナー君。よろしくね。」
「かしこまりました。」
こうして、僕はしばらくの間、彼女のサブトレーナーとして働くことになった。
⏰
「では、帰ります!」
挨拶をし、部屋を出る。
「ふぅ……。」
緊張した。なんと言っても威厳がすごい。さすがは皇帝だ。
しかし、これで今日の要件は終わり。後は、明日まで完全にフリーだ。何をしようか。昼ご飯まだだったな。
そんなことを考えていると、声をかけられる。
「ねえ君!さっき生徒会室から出てきたね!何してたの?」
快活そうなウマ娘が話しかけてくる。
「あ、はじめまして!ボクはトウカイテイオーだよ!君の名前を教えてくれるかな?あっ!ボクは生徒会じゃないけど、たまに顔を出すんだ!よろしくね!!」
元気いっぱいに自己紹介される。
「ああ、うん。僕、トレーナーていうんだ。よろしくね!」
こちらも負けじと名乗り返す。
「トレーナーかー。いい名前だね!!それで、どうして生徒会室にいたの?」
「ああ、実は僕、自衛隊からここに来た新人トレーナーなんだ。さっきまで、シンボリルドルフ会長とそのトレーナーさんとお話していたんだよ。」
「へぇ〜、そうなんだ。ねえ!これから暇だったら、一緒にカフェテリアでご飯食べない?」
「えっ!?良いの?」
「もちろん!それから、この学園のこと色々案内するよ!」
こうして、彼女と行動を共にすることになった。
トウカイテイオーに学園を案内してもらいながら、食堂に向かう。
途中、様々なウマ娘達に出会った。
トウカイテイオーのクラスメイトの芦毛の娘とクリスマスカラーのメンコの娘、生徒会副会長の2人に同室の子…などなど。
交友関係広いなこの子。
目の前で人参ハンバーグを頬張る彼女を見ながら、感心する。
「おいしい!あれ?トレーナー、食べないの?」
「いや、気にしないで。」
周りを見てみると、山盛りの料理に舌鼓を打っている子達が散見される。それだけでお腹いっぱいになりそうだ。さすがはウマ娘といったところだ。
「ごちそうさま!」
「早ッ!もう食べたの?」
「うん!美味しかったからね!」
僕も食べ物をかき込む。
「急がなくていいのに…。」
「ん?あぁ確かに、ここは自衛隊じゃないからね…。」
とか言いつつ、5分と経たずに腹の中。
「ごちそうさま。」
「食べ終わったね。ゆっくりしたらまた行こうか!」
再び彼女に連れられ、学園内を散策していく。グラウンド、スポーツジム、図書室、プール、大樹のウロetc……
一通り見て回った後、3女神の像の前に着く。
「どうだった?トレセン学園は。」
「すっげぇ広いなぁ……って思うよ。」
「でしょう?なんといっても、日本一のトレセン学園だからね!」
「ここまで広いと迷子になるよね。」
「あ〜それは確かに…。毎年、新入生の子達は、みんな迷子になっちゃうんだ。」
「やっぱりそうなのか……。」
「まあ、だからこそ、ボク達先輩が案内しているんだ!」
「なるほど……。」
その後、僕はトウカイテイオーと他愛のないお話をして時間をつぶす。
「よし、そろそろ時間だね。ボクは寮に戻るよ!」
「わかった。今日はありがとう。テイオー。」
「にししっ。良いってことよ、トレーナー!また会おうねー!!」
そう言って、彼女は走り去っていった。
僕も寮に戻ろう。
⏰
次の日、今日は入学式が行われる。暇を持て余していたので、体育館にて、シンボリルドルフ達生徒会を手伝っている。
高校、大学と生徒会や学生会に入っていたので、こういうのは慣れっこだ。
「トレーナー君。おはよう。手伝ってくれてありがとね。」
「おはようございます。新堀さん。みんなが頑張っているので、ぜひとも、力になりたいんです。」
「ふふっ。君は本当に頼れるトレーナーだ。」
シンボリルドルフに褒められる。
「いや、そんなことはないよ。」
ダイレクトに褒められると照れる。
「君のおかげで準備が早く終わったよ。トレーナー君、学園内の見回りに行ってくれないか?この学園は複雑多岐、非常に迷いやすいんだ。毎年、迷子になる子達が多い。だから、そんな子達を助けてやってほしい。」
なるほど。昨日、トウカイテイオーが言った通りだ。
「わかった!行ってきまーーす!」
直後にトラックにはね飛ばされそうな少女のテンションで僕は校内を見回りに行く。
⏰
学園のとある歩道。
「ねえ、キタちゃん。」
「どうしたの?サトちゃん?」
「あんまり考えたくないんだけど……。私達、迷子になった?」
「そ、そんなことないよ!…多分。」
新入生のキタサンブラックとサトノダイヤモンドは絶賛迷子の真っ最中であった。
「どうしよう…このままだと式に間に合わないよぉ…。」
サトノダイヤモンドの瞳からは、今にも涙がこぼれそうだ。キタサンブラックも不安そうな表情でキョロキョロ周りを見渡している。
「あっ、あそこにいる人、警備員さんっぽいし……声かけてみる?」
キタサンブラックがそう提案する。その警備員とは、陸自の制服を着たトレーナーである。
「でも、仕事で忙しいかもしれないよ……。」
サトノダイヤモンドは遠慮しているようだ。
「大丈夫だよ!ほら、こっち来てる!」
キタサンブラックの言う通り、トレーナーはこちらに向かってくる。
「あの……すみません。」
「ん?どうしたの?」
「道に迷ってしまって……。」
「ああ、そうか。じゃあ、一緒に行くよ。」
そう言って、トレーナーは二人を先導する。
「いやぁ、助かりました!ありがとうございます!」
「いやいや、いいんだよ。ほら、こっちこっち。」
そうやって歩いていくと、だんだん校舎が見えてきた。
そして、また同じ所に着く。
あれれ?おかしいぞ……。
二人も不思議に思いながらも、そのままついていく。
「ここさっきも通ったな…。」
「えぇ!?じゃあ、私達ずっと迷っていたって事ですか……?」
「いや……そんなはずは……。」
そう言っているうちに、また元の場所に戻ってくる。
「どういうことだ?……まさか……!」
トレーナーはある事に気づく。
「僕も迷子になっちゃった…。」
「「えええええええ〜〜〜!?」」
⏰
あの後、偶然手元にあった案内図を見ながら、無事?に2人を送り出した僕は、体育館にて入学式に参列する。
時折、新入生達から好奇の目を向けられながらも、式は終わり、今は教職員室にいる。ここでも好奇の目を向けられている。スーツ着よ…。
「トレーナー君。明日はぜひともルドルフちゃんのトレーニングをみてほしいの。私もできる限り教えられることは君に教えたいし。」
書類仕事をしていると、新堀さんに声をかけられる。
「新堀さん。ありがとうございます。」
「じゃあ、私はここで失礼するわ。また明日ね、トレーナー君。」
「はい。お疲れ様です。」
そう言って、彼女は部屋を出て行った。
その数時間後、僕も仕事を終わらせ退室する。
一旦、寮に戻り、スーツに着替える。そして、また学園に向かう。ウマ娘達が新入生をチームに勧誘している光景が見受けられる。
アップだろうか?ランニングをしている生徒を見ると、自分が幹部候補生だった頃を思い出す。
しみじみとしながら歩いていると、急に視界が塞がる。
「よっしゃあ!野生のトレーナー、ゲットだぜ!!」
…はい?
「お、おい!何するんだ!離せコラ!」
抵抗するも虚しく連れ去られてしまった。
⏰
「よっし、ついたぞ。」
そうして、地面に降ろされる。
「ここはどこだ?」
「ようこそ、ゴルゴル島へ!」
目を塞いでいたものが外される。見上げると、ウマ娘と海が目に入る。
「はい?」
「ゴルゴル島は、ゴルシ様のゴルシ様によるゴルシ様のためのアイランドだ!そこに呼ばれるとはお前、さては惑星ゴルシの国賓であらせられるな?」
最高に意味がわからん。だがしかし、目の前にいるウマ娘はそんなことお構い無しに話を続ける。
「ちなみにここは、学園から1番近い無人島らしいぜ!」
知るかボケェ。というツッコミを飲み込みながら周りを見渡す。
孤島である事は確かみたいだ。
あたりはすっかり日が落ちている。
「こんな所に僕を連れてきてどうするつもりだ?」
「こんな所とはお言葉だな。まあでも、教えてやるぜ。」
ゴルゴル島のウマ娘はニヤつきながら決めポーズを取る。
「どうするつもりと聞かれたら。答えてあげるが世の情け。世界の破壊を防ぐため。世界の平和を守るため。愛と真実の正義を貫く、ラブリーチャーミーなゴルシちゃん。ターフを駆けるこのアタシの未来には!ホワイトホール、面白い明日が待ってるぜ!」
答えになってないし、どっかで聞いたことある口上だ。
「なーんてな!」
なんとも言えない空気が流れる。シラケるのもアレだし、ここであったのも何かの縁、少し乗ってやるか。
「現れたな!ド○ンボー!!」
「おっ?なかなかやるじゃねーか。褒美に世界の半分をやろう。代わりに、お前の半分をよこせ!」
「いいえ。」
「ボロ?」
「いいえ。」
「ボロい家?」
「いいえ。」
「……それじゃあ、何が欲しいんだよ!」
「僕の命。」
「やれるもんならやってみろよ!」
そう言って、彼女は木の杖を取り出す。
「黒より黒く、闇より暗き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理…ああもう、めんどくせぇ!エクスプロージョン!!」
その瞬間、地面から炎が上がる。そして、爆発する。
「うわぁ!?」
爆風に吹き飛ばされる。どういう原理だこれ。
「ふぅ〜。最高だぜ。」
ウマ娘は地面に倒れ込む。
「もう、身動き1つ取れません…。ってことで、起こしてくれねぇか?」
そう言って手を差し出してくる。仕方ないので、その手を掴んで引き起こす。
「サンキューな!そう言えば名乗っていなかったな。アタシの名前はゴールドシップだ。田中なり佐々木なり好きに呼んでくれよな。よろしくな!」
「トレーナーだ。なら、ゴルシと呼ばせてもらおうかな。よろしくねゴルシ。」
掴んだ手のまま握手を交わす。
「じゃあ、いきなり!黄金伝説。の始まりだぜ!」
「はい?」
「とりあえず、この島を探検しようぜ!トレーナーもついてこいよ。」
そう言って、僕の手を引いて走り出す。
「ちょ、ちょっと待って。」
こうして、僕と彼女の冒険が始まったのだった。
⏰
「オメェ…このゴルシ様以上にサバイバルに長けてるとは……見上げたやつだな。」
「それはどうも。」
火を起こし、ゴールドシップから拝借したナイフでヘビと魚を調理しながらそう返す。
「アタシ、普段からこんなんだからよ、着いてこれるヤツがいないんだ。」
「そりゃそうでしょ。」
「でもオメーなら大丈夫かもしれねえ。一緒に7つの海を制覇できるかもな!」
なんか話が壮大になっている。
ちなみに今は深夜1時だ。島を探索したり、食料を採ったり、漂着物と植物で寝床を作っていたらこんな時間になっていた。
「よし、できた!。」
「おお!スゲーな!さっそく焼いて食おうぜ!」
捌いた食材を枝に刺し、焚火の回りに突き刺していく。しばらくすると、こんがりと焼き目がつく。とても良い匂いが漂ってくる。
ゴールドシップがキラキラした目で眺めてくる。
「「いただきま〜す!!」」
非常に淡白だが、悪くない。
「うまぁ〜!!」
彼女を見ると、目を細めて美味しそうにしている。釣られて笑顔になってしまう。そんな感じの食事を終える。
お腹がいっぱいになり、急に眠気が襲ってくる。
「おい、何寝ようとしてんだよ。夜はこれからだぞ!」
そんなこと言われても、眠いものは眠い。演習じゃないんだから、寝かせてほしい。
「ったく。しょーがねえな…。気付けにまたかましてやるか!」
ゴールドシップはまた杖を取り出し、詠唱を始める。
「紅き黒炎、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理。崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!エクスプロージョン!」
またもや地面から炎が上がる。しかも規模が大きい。
「あ、やべっ。」
「熱っ!!あつつつつつつ!!!!!」
炎は焚木と寝床を巻き込んで燃え上がる。
「服が!服が燃えてるぅ!!」
僕は近くの海に急いで飛び込む。せっかくのスーツがお亡くなりになられた。
幸い水場があったから良かったが、なければ焼け死んでいただろう。
「ゴルシィィィィイ!!」
「アッハハハハハハ!悪ぃって!!」
ゴールドシップはとても愉快そうに笑う。
僕はため息をつきながら、陸に上がる。そして、ゴールドシップに近づき、彼女をお姫様抱っこする。
「へ?」
と間抜けな声を上げるゴールドシップを無視し、海に近づく。
「ヤダ。トレピッピったら…熱にあてられちゃったの?ダ・イ・タ・ン♡」
「そぉぉおおおおおい!!!!!」
ゴールドシップを海に放り投げる。バシャン!という音が響く。
「何すんだオメーー!!」
と言って海から顔を出すゴールドシップ。
「仕返しだ。いいから、火を消すぞ!」
燃え広がる前に何とか消火できた。
その後、ゴールドシップは満足したのか、船を出してトレセン学園まで送り届けてくれるのだった。
「また遊ぼーな!」
彼女は無邪気に笑うのだった。勘弁してくれ…。
⏰
あの日から月日が経ち、天皇賞・春当日。シンボリルドルフの走りを観客席から見ている。
『ゴールまであと、200!シンボリルドルフ先頭!さあ、ゴールまで100mに入った!…ゴールイン!!』
皇帝の圧倒的な走りは会場を沸かせた。
「カッコよかったよ〜!カイチョー!!」
隣のトウカイテイオーが興奮気味に声をかける。僕も鳥肌が立っている。
『やはり皇帝は強かった!5冠ウマ娘、ここに誕生です!!』
実況の声と共に歓声が巻き起こる。
「ルドルフちゃん。また貴女の夢に1歩ちかづいたのね…。」
新堀さんはうっすらと涙をうかべる。
「さあ、トレーナー君、テイオーちゃん、あの子のところに行くわよ。」
そうして連れて行かれたのは、控え室。そこには、シンボリルドルフがいた。
「カイチョ〜〜!今日もいいレースだったよぉ!!」
「おめでとう、ルドルフ。感動しちゃったよ。」
「やっぱすごいねぇ!ルドルフちゃん。」
3人で祝福の言葉を送る。シンボリルドルフは微笑みながら感謝の言葉を述べる。
「これで私も後腐れなく退職できるわ。そうだ。」
新堀トレーナーは2枚の紙を取り出す。
「何ですかそれ?」
僕は新堀トレーナーに質問する。
「契約解除書と、担当契約書よ。」
「ということは…。」
「これからルドルフちゃんを君に任せようと思うの。」
「えっ。」
突然のことに驚く。いや、確かに、彼女とは生徒会の仕事を手伝ったりだとかで親交は深めてきた訳だが。
それにしても急すぎる。そして、皇帝のトレーナーは新人の僕には荷が重すぎる。
答えに逡巡していると、シンボリルドルフが口を開く。
「我々の活躍にトレーナーは欠かせない。しかしそれは、ただトレーナーがウマ娘のトレーニングを見るだけではダメだ。公私共に支えあってこそだと私は考える。それに気づかせてくれたのは、他でもない君だよ、トレーナー君。ぜひ、戮力協心、これから共に歩んでほしい。」
彼女の目は真剣そのもの。嘘偽りはないようだ。
そこまで言うならそれを無下にするわけにはいかない。
「わかりました。」
「よし、決まりね!」
この日、僕は皇帝と契りを交わし、トレーナーとして本格的に活動することとなる。
幹部自衛官が送る、ウマ娘トレーナーライフ、開幕である。