実は、彼女いない歴=年齢。
あらすじ
ゴルシちゃんスイッチ気持ちよすぎだろ!みんなも元に戻って素敵だね。
作戦本部に戻り、開口一番に事の顛末をみんなに報告する。
「というわけで、生徒達はみんな正気に戻りました。」
ドワッと作戦本部から歓声が上がる。
「ヤッター!これでマヤちゃんとお出かけできるぞー!」
「僕もバクちゃんとデートできるって考えると嬉しくなるんですよね。」
「いや、お前らはケガを治せよ。」
担当の子達が戻って嬉しいのか、トレーナー陣は彼女達に何をしてあげようかと話をしている。
しばらくして、いつの間にか主を呼びに行ってたSP隊長と隔離されてたファインモーションが入ってくる。
ファインモーションは僕の姿を見るとすぐに駆け寄ってきた。
「……ご迷惑おかけしました。本当にごめんなさい。トレーナー…。」
「いいんだファイン。君も辛いだろう。」
ファインモーションにつられて、他の担当の子達も浮かない顔をする。
この騒動が落ち着いたら、みんなのメンタルケアが急務になるだろう。
「トレーナー君。この度は誠にご苦労であった。」
どうメンタルケアをしてあげようか考えていると、理事長が僕の肩に手を置いてねぎらいの言葉をかけてくれた。
「いえいえ、皆さんの協力があったおかげです。私の作戦をみごとに実現してくれたからこそ、最悪なシナリオを回避できました。本当にありがとうございました。」
そう言って頭を下げると、再び作戦本部では歓声が上がった。
「でも、まだ終わりではありません。」
僕の発言に作戦本部は静まり返った。
「今回の騒動の原因である好感度反転薬。それをばらまいた黒幕を確保しなければなりません。」
その言葉に一同は頷く。
「ご存知でしょうが、その黒幕の名は川原です。彼に裁きを与えましょう。そうすれば、大団円です。」
僕の宣言に作戦本部は再三沸いた。
「しかし、トレーナー君。どうやって彼を確保するんだ?」
シンボリルドルフが聞いてくる。
「そこで、君達にお手伝いしてほしい。」
⏰
「こんなところに呼び出して、どうした?」
川原が校舎の屋上にやってくる。
「よく来てくれました、川原さん。さあ、来い!」
同期が声をかけると、ライスシャワーとカレンチャンがずた袋を被った僕を連れ出す。
「トレーナー3尉を連れて来ました。」
「ほう。でかした。」
川原はニヤリと笑う。
「無様だなぁ。トレーナーさんよぉ?どうだ?仲間達に裏切られた気分は?」
刃渡りの長いナイフを2本取り出す。
「今なら土下座すれば許してやるぜ?」
川原はゲスな笑みを浮かべる。
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。川原。」
ずた袋を脱ぎ捨てる。
それと同時に担当のみんなや同期のチーム、『フォース』のメンバー、教職員とトレーナー達が屋上に集結する。
「テメェら!ど、どうしてここに!?」
川原は動揺を隠し切れない様子だ。
「お前に裁きを下すためだ。」
「大人しく捕まってもらうぞ。」
「よくもオレと担当の子の仲を引き裂いてくれたな…!」
「人間のクズがこの野郎…。」
みんな、口々に川原を批難する。
しかし…。
「ククク…。そう簡単に捕まるわけにはいかねぇんだよな!!」
川原はポケットから試験管を取り出した。そして、液体を口に放り込む。
「まさか!?それは身体強化薬!?」
アグネスタキオンが叫ぶ。
「そうだ。お前の研究室から盗ませてもらった。これで俺は…無敵だ!」
いくつか盗まれたと聞いたが、アレもそうなんだろう。
そんなことを考えているうちに、川原の体が筋肉質になる。
「あれはトレーナー君が持ってる薬とは違うのか?」
シンボリルドルフがアグネスタキオンに尋ねる。
「ああ、違うとも。あの薬は服用者の筋力を限界以上に強化する代物だ。もともとは、虚弱体質に悩むウマ娘のために開発したものだが、上手くいかなくてね。……この状況で言いたくはないが、効果は永遠に続く。」
…この事件が終わったら、アグネスタキオンの研究室は差し押さえた方が良いかもしれない。
しかし、そんなものを隠し持っていたとは、捕まえる計画が狂ってしまった。
「オイオイ、クッソやべぇやつじゃねえか!」
ゴールドシップが言う。
「だだだだ、大丈夫なの!?」
「もう捕まえるってレベルじゃねえですわ!」
トウカイテイオーとメジロマックイーンが慌てる。
「退化薬があればあるいは…。研究室から取ってくるよ!」
アグネスタキオンはダッシュで研究室へと向かう。
「殿下、ここはお逃げください。あなただけでも無事でいてくれれば…。」
「ううん。学園の平和のため、ここで逃げるわけにはいかないの。隊長、私のわがまま、聞いてもらえる?」
「……殿下がそうおっしゃるのなら、仕方ありません。ただし、本当にまずいと思ったら逃げてもらいますからね!」
「ひぇぇぇえええ!この展開、非常にまずいのではぁぁぁあああ!?!?」
動揺しながらも、彼女達は戦闘態勢に入る。
確かに、ウマ娘が力を合わせれば余裕で制圧できるだろう。
「おっと!お前らウマ娘は手出しすんなよ!そうしたら、ここにいるヒトの命はないと思え!どっちにしろ、全員殺すがな!!」
そうは問屋が卸してくれないようだ。
川原は、ナイフを理事長達に向ける。
川原の言葉に反応してか、シンボリルドルフは戦闘態勢を解く。
であれば、トレーナーや教職員が束になればいけるだろうか?
こちらには、フィジカルお化けの桐生院さんやウマ娘という正体を隠してるたづなさん、元空挺レンジャーの宮崎さんがいる。
他にも、武道の心得がある人もいるかもしれない。
ちらりとみんなを見る。
「もうダメだ…おしまいだぁ…。みんな…殺される。」
「はい、終わりでーーす!」
「お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください…。スペ、エル、グラス、キング、スカイ、最後まで面倒見切れずごめんな……。」
「グスッ…念願の中央トレーナーになれたのにここで終わりなんて……。うぅ…。」
闘う以前の問題だった。
真面目に考えると、トレセン学園のみんなは戦闘訓練を受けていないのだ。まともに闘えるわけがない。気が動転していた。
「なぁに、そう簡単に殺しはしねぇよ!トレーナーを出せ。そうしたら、お前達は助けてやる……。コイツが死ぬまではな!コイツを殺したら、次はお前達だ!せいぜいつかの間の生を楽しむが良い!」
川原は僕とタイマンを張りたいらしい。ある意味、渡りに船だ。
「本当に、僕が生きている間は誰にも手を出さないんだよな?」
「ん?そう言ってるだろ?まあ、それもすぐに終わるだろうけどな!」
「わかった。」
みんなを庇うように前に出る。
「おい、トレーナー!」
またかよ。という目でゴールドシップに見られる。
本当に申し訳ない。でも、今だけは…。
また1歩、川原に歩み寄ろうとすると。
「トレーナー君!無茶だよ!」
「死ぬような真似はやめてください!」
同期と桐生院さんに腕を抱きとめられる。
「隊長!勝てるのかあんな化け物に!」
「死んじゃうよ!」
水野さんと小林さんからも止められる。
「大丈夫。それより皆さんはここから離れてください!」
「「「「でも!」」」」
「4人とも、止めてくれるな。隊長ならきっとなんとかしてくれるさ。俺達にできるのは、無事を祈ることさ。」
「今、この状況を何とかできるのはトレーナーさんだけです。皆さん、信じてあげましょう。」
宮崎さんとたづなさんは僕の覚悟を汲み取ったのか、4人を説得してくれた。
「負託ッ!トレーナー君、頼むぞ。」
理事長の言葉に頷く。
たづなさんの誘導のもと、全員が避難していく。
「お兄さま…。どうか無事で…。」
「お兄ちゃん…。負けないで!」
「トレーナーさんがあの人に勝つ可能性は2%。しかし、不可能ではありません。応援しましょう。そして、信じましょう。彼を。」
「「「「「どうか、勝ってください!!!!!」」」」」
みんなの声を受ける。
みんなが避難したのを確認すると、改めて、川原を見据える。
必成目標、川原を倒す。ただそれだけ。
戦闘服装を正し、息を整える。
ー事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もってみんなの負託にこたえるー
心の中で一文を変えた服務の宣誓の一節を唱える。
「この力があれば俺は負けない!お前はここで俺に殺される!お前の最期を鮮やかに彩ってやろう!ありがたく思え!」
そう叫ぶと、川原は両手にナイフを携え襲いかかってくる。
ついに闘いの火蓋が切られた。
川原の初動は、連続しての切りつけだった。
その一つ一つを捌いていく。
「オラオラ!」
攻撃の手は止まない。
ついには、捌ききれずにナイフの刺突が左胸を襲う。
「しまっ…。」
しかし、左胸に痛みは感じなかった。
「チッ、悪運の良いヤツめ。」
左胸ポケットに入れていた弾倉が身代わりになってくれたようだ。
弾倉を取り出し、川原の鼻めがけて叩きつける。
「フガッ!」
クリーンヒット!
すかさず、川原の腹に膝を入れる。
川原はよろけるが、すぐに体勢を立て直そうとする。
「はっ!効いてねぇな!俺はまだ動けるぜ!」
川原は僕に向かって飛びかかってくる。
掴まれる前に顔面に拳を見舞い、腕を掴み背負い投げをする。川原は地面に叩きつけられる。
右足を大きく上げ、踵落としの構えをとる。その足を川原は掴む。
「バカが!隙だらけだ!!」
そのまま壁に向けて投げ飛ばす。
「ふんっ!」
壁に激突する前に受け身を取れたため、ダメージはあまりない。
「クソが!」
川原は距離を詰め、僕の胸ぐらを掴む。
「調子に乗ってんじゃねえぞ!ザコが!」
川原は僕を地面に叩きつける。
「カハッ…。」
背中に強い衝撃が走る。
「死ね!」
川原にウマ乗りされ、拳が振り下ろされる。
しかし、拳は顔に当たることなく、空を切る。
顔を逸らして避けることができた。
川原の顎に掌底をかます。
彼の腰が浮き、拘束から抜け出す。
川原は倒れそうになるが、なんとか堪える。
「ふざけんなよ……!この俺が……!」
川原はまた襲い掛かってきた。
僕は川原の攻撃を全て見切り、捌く。
大振りな中段回し蹴りがとんでくる。
チャンスだ。
直撃しないよう避けつつ、空かしたところを掴み、地面に叩きつける。
決定打とはならず、川原は立ち上がり、ナイフを取り出す。
「死ねぇえ!!!」
そして、ナイフを構え突進してきた。
その手を蹴り飛ばした。
「学習しないな、お前は。こうなることはわかっていただろ?」
相手を煽り、集中を途切れさせる。
精神攻撃は基本。
「ふぅ…。うるせぇ!黙れ!黙りやがれ!」
うまく乗ってくれたようだ。
川原はナイフを拾い、切りつけてくる。
僕はそれを避ける。
「無駄だと分からないのか?諦めの悪い奴だな。」
「はあっ…はあっ…。黙れ!俺はお前を殺すまでやめねぇ!」
さて、先ほど脚部を触ってわかることがある。
薬のためか、持ち前の力の強さは確かに跳ね上がっている。
まともに喰らえば骨折、いや、死亡は免れない。
ただ、言ってしまえばそれだけだ。
スピード、スタミナはそこまで強化されているわけではないだろう。
現に、息を切らし始めてる。アグネスタキオンが上手くいかなかったと言った点はこのことだろう。
それに動きは相変わらず素人のものだ。少なからず勝機はあるだろう。
油断をせずにかつ、一撃も喰らわないようにしなければならない。
「くたばれぇ!!!」
川原はまたナイフを構えながら突進してくる。
横に飛び退く。すると、川原は速度を落としきれなかったのか、壁にぶつかりそうになった。
その分、間合いが取れたが、その間合いを縮めるために、川原は再度突進する。攻撃に備え、身体をリラックスさせ、呼吸を整える。
「やっと観念したか!いいぜ、俺に殺されろぉおおお!!!」
川原はナイフを振り下ろす。
その横をすり抜け、ナイフを持っている手を掴んだまま川原を背負い投げる。
川原は床に叩きつけられた。そのまま顔面に拳を叩き込む。
すると、川原の手からナイフがこぼれ落ちる。それを遠くに蹴飛ばした。
「はあ……はぁ……くそっ!」
川原は立ち上がり、もう一本のナイフを構える。
「まだやる気なのか?」
「当たり前だ!殺す!殺してやる!」
「さっきから殺す殺すと物騒だな。」
川原はまたまたナイフを構えながら突っ込んでくる。それを紙一重で避ける。
川原はそのまま壁にぶつかる。
攻撃がワンパターンすぎる。
「ぐっ!」
川原はフラつきながらも向き直る。
「はぁっ…はあっ…。俺はまだ負けてない!俺は、俺はまだ!」
川原はナイフを持ち直し、再度向かってきた。
「遊びはここまでだ!」
川原は再びナイフを突き出してくる。避けようとするが、切っ先が頬を掠めてしまった。
頬から血が垂れる。
痛いが、呼吸を整え平常心を保つ。
「ちっ!」
川原は連続で斬りつけてきた。
バックステップで距離を取る。対して、川原は追いかけるように距離を詰めてくる。
「どうした!?避けてるだけか!」
川原はナイフを振るってくる。
隙を見て腕を掴み、そのまま遠くに投げ飛ばすが、川原は受け身をとり、すぐに立ち上がった。
「なんだそりゃ!それで終わりか!」
川原はまた僕に向かって走ってきた。
右の蹴り足に力を込め、川原の鼻を目掛け、半長靴の鉄板部分で回し蹴りを放った。
ガツンと鈍い音がする。
川原は後ろに吹き飛び、仰向けに倒れた。2本目のナイフも手放したところで、それをまた遠くに蹴飛ばす。
「これでもう武器はないぞ。」
僕はそう言い、川原に歩み寄る。
「ふざけるな……。」
川原は起き上がり、僕を睨みつける。
「ふざけるな!ふざけるなふざけるな!ふざけるな!!なんでだよ!こんなハズじゃ…!」
「ふざけているのはお前の方だ。お前はこれまで一体何人を不幸にしてきた?」
「知るか!そんなことどうでもいいんだよ!」
川原はまたポケットからさっきと同じ薬を取り出す。
「もう、容赦しねぇ!」
それを飲み込んだ。瞬間、川原の体が膨れ上がる。
「ふぅー!ふぅー!殺してやる!ぶっ殺してやる!!」
某伝説の超サ○ヤ人のような姿になる。
「ハーハッハッハッ!!素晴らしいパワーだ!もはや誰にも止められん!」
川原は雄叫びを上げながら、屋上の床を破壊していく。
「さあ、第2ラウンドといこうか?」
⏰
「小隊長、ここは敵の守りが堅いです。正面突破は厳しいと判断します。」
2分隊長である上級格闘指導官の2等陸曹が地図のとある地点を指差し、僕に伝える。
「そうですね。ただ、ここを奪取しないことには、全ての作戦に支障をきたします。何としてでも、ここは取らなければなりません。」
とある演習中、水陸機動団第1水陸機動連隊第1中隊の第2小隊長として僕は作戦に従事していた。
A地点を奪取することが僕達の小隊に課せられた任務だった。
しかし、防御を崩すことはできず、作戦は難航していた。
「奪取は不可能…か?」
つい、口に出てしまった。それを聞いた小隊陸曹である陸曹長がん?と声に出す。
「いえ、小隊長、そうでもありませんよ。」
陸曹長がある地点を指をさす。
「ここは?」
「偵察の報告も踏まえると、2分隊長が示した所は特に防御が硬いエリアになります。おそらく、敵はここに火力を集中させていると考えられます。反対に…。」
さっき示した所からやや右後ろの所を指さす。現在地から10キロ離れた所にある。
「ここは比較的、防御が薄いところになります。迂回してここから攻め入れば、奪取は不可能ではありません。」
陸曹長は地図を見ながら説明をする。
「なるほど……。わかりました。それなら…。」
突破するポイントがある。そう思った瞬間、不可能だという考えは棄てた。
僕は部下達に指示をだす。
「「「「「了解!」」」」」
その後、相手の意表をつくことができ、予定より早く目標を奪取できた。
僕は無線機で中隊に連絡を入れる。
『こちら、2小隊。目標の奪取に成功。おくれ。』
無線の相手は中隊長である。
『よくやった。ご苦労。しばらくその場で待機せよ。』
その後、順調に演習は進み。無事に状況終了となった。
訓練後、打ち上げで陸曹長から話を伺う機会があった。
「お疲れ様です!」
「小隊長、お疲れ様です。」
打ち上げに集まった陸自の隊員達はビールを飲んでいる。みんな、だいぶ酔っているようだ。
「しかし、あの時の攻撃は大成功でしたね。」
隣に座っていた陸曹長に話しかける。
「そうですなぁ。しかし、なかなか手強かったですよ。」
陸曹長はジョッキに入ったハイボールを飲み干した。
「演習と言えばですが、陸曹長はなぜ、あの場で奪取は不可能じゃないと気づけたのですか?」
僕はずっと疑問に思っていたことを質問した。
「簡単なことですよ。」
彼は僕の方を向き、答えてくれた。
「それはですね、弱点があったからです。」
さらに続ける。
「どれだけ強いものでも、それには必ず弱点がある。その弱点をつければ、勝ちにつながる。」
「なるほど……。」
「これは色んなことにも言えるんです。」
陸曹長はさらに話を続ける。
「小隊長は自衛隊ウマ娘トレーナーを目指していましたね?ならば、ウマ娘という生き物について考えてみましょうか。」
陸曹長は腕を組み、考え込むような仕草をした。
「まず、ヒトと比べて、はるかに身体能力が高いことはご存知ですね?」
「はい。そうですね。」
「それがために、武器を使わない限り、我々はウマ娘に勝つことはできない。ですが反面、ウマ娘は我々よりも大きなハンデを背負っています。」
「ハンデ…。」
「はい。生物的なハンデです。ウマ娘はオスが存在しないので、子孫を残すにはヒトのオスが欠かせない。これは、明らかにウマ娘の弱点といえるでしょう。」
「確かに、そうかもしれませんね。」
「しかし、不思議な話です。我々、ヒトと似たような存在がヒトよりも強いのです。普通なら、脅威でしかなく、排除しにかかるのが本能とも言えます。しかし…。」
「それをしなかったんですね?」
「そうです。我々の先祖はウマ娘を害さなかった。何故だと思いますか?」
「それはきっと、ウマ娘達は我々を脅かす存在ではないと気づいたからでしょうか。」
「確かにそれもあるでしょう。しかし、結論としてはウマ娘の生殖の弱点を利用し、共存する道を選んだからです。排除するよりも仲間として歓迎した方が諍いを生まずに済む。それが形を変え、いつしかヒトとウマ娘が協力する世界になった。まあ、エジプトなんかではウマ娘を崇拝していたりとしてたので、諸説はありますが…。」
「なるほど……。」
「まあ、何が言いたいかって言いますと、どれだけ強かろうが人や物には必ず弱点があるから、それを利用しようって話ですね!」
⏰
どんな相手にも必ず弱点がある。それを見つけ、利用すれば勝利につながる。
では、目の前の川原の弱点は何だ?
圧倒的なパワーを得た川原の攻撃に防戦一方である。昨日の打ち身や、ナイフの切り傷が痛む。
「ハッハッ!ボロボロじゃねぇかよ!」
川原が攻撃の手を止めずに言葉をかける。
「ふぅ…ふぅ…。どうした!?もう終わりか?」
「まだだ……!」
「なら、終わりにしてやる。」
川原の蹴りが入る。
直撃は避けられたが、吹き飛び、倒れこむ。
なかなかの衝撃だ。だが、諦めるわけにはいかない。僕がここで倒れたら、次はみんながやられる。残りの力を振り絞り、立ち上がる。
「はぁ…はぁ…しぶてぇ奴だ。」
川原が近づいてくる。
「オラァッ!!」
そして、殴りかかってくる。
避けれない!
腕を交差させ、防御の構えをとる。
しかし、想像よりも弱い衝撃を感じた。
「え?」
不思議に思い、顔を上げると、息を切らし、立ち尽くす川原の姿があった。
「はぁ……はぁ……。どうだ……。」
無言で川原の股間を蹴り上げる。
「うぉおおお!!!」
痛みに耐えかねたのか、川原は悶絶している。
僕、わかっちゃった。
スタミナ不足。
これが川原の弱点だ。
先程から息が上がっていることから、スタミナは無尽蔵ではないことがわかる。
ならば、やることは1つ。
相手が動けない程のスタミナ切れを狙う。
僕は右胸ポケットから錠剤を取り出す。
最後の身体能力をウマ娘並にする薬だ。速度で翻弄し、早期のスタミナ切れを狙う。
薬を飲みこむ。
「さあ、行くぞ。」
「くそがっ!!舐めんじゃねえぞ!!!」
川原も向かって来る。
「俺は最強の力を手に入れたんだ!負けるはずがないんだ!!!」
川原が拳を振るってくる。
それをジャンプして避ける。そのまま頭に蹴りを見舞う。
川原は盛大に吹っ飛び、壁にめり込んだ。
ウマ娘の力、恐るべし。
「うおおおおっ!!!」
川原は叫びながら起き上がる。その表情からは悔しさが滲み出ていた。
「クソが……。なんでだよ……。俺の方が強いはずだろ……。」
川原は頭を押さえ、苦しんでいる。
ヒトがウマ娘に適うわけがないのだ。
「そうだ!俺は強い!お前は俺に殺されるべきなんだ!」
川原の瞳孔は大きく開き、口元には笑みを浮かべている。狂気を感じさせるような笑顔だった。
「死ね!!」
川原が襲いかかる。しかし、先ほどまでのスピードはない。
川原の攻撃を難なくかわす。
「なっ……。」
何度も何度も、川原は殴ってくる。
それをことごとくかわしてみせる。
「はぁ……はぁ……はぁ……。」
川原の呼吸が荒くなる。スタミナ切れが近い証拠だろう。
「なぜだ!?どうして当たらねぇんだ!?」
川原が叫ぶ。遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
誰かが呼んでくれたのだろう。
「もう、終わりにしよう。」
僕はそう言って川原に近づく。
「ふざけんなよ……。俺はこんなところで終わるわけにはいかない……。俺は、トレセン学園のトップになり、ゆくゆくはURAのトップになり、ウマ娘を支配するんだ!!」
「ウマ娘の支配?」
「そうだ!世界中のウマ娘を服従させ、俺だけの楽園を作る!そのために、金を稼ぐために嫌々自衛隊に入り、コネを使ってトレーナーになった!バカにするやつや楯突くやつは全員、排除してきた!」
そんなことのために、今回の騒動を起こしたのか。
未だかつてないほど、腸が煮えくり返っている。
川原はフラつきながらも、声を張り上げる。
「トレセン学園を混乱に陥れ、それに乗じて乗っ取ろうとした!学園のウマ娘達を支配するためにな!権力でチームの奴らを力づくで従わせたりもした!最初は順調だった!…だが!」
川原は熱弁を続ける。
「その計画も全てパーだ!学園中にクスリをバラ撒いてウマ娘の好意を俺に向けさせた!嫌われているとわかっているからこそ、あのトチ狂ったウマ娘の好感度反転薬を利用した!お前達が築き上げた信頼関係を壊し、学園を絶望に陥れた!とてもいい気味だった!だが、俺が思っていた以上に効果は薄かった!そして、お前達は最後までウマ娘を信じ、希望を棄てなかった!終いにゃ、実力行使でお前達を手にかけることも指示した!だけどよ!」
川原は僕を指し、絶叫した。
「お前だ!お前がことごとく俺の邪魔をしやがった!お前がいなければ、計画通りだった!部外者のお前が邪魔しなければ!!だからこそ、俺はお前を許さねぇ!お前をこの手で殺し、今一度、俺の悲願を叶えてやる!」
悪あがきのつもりか、川原は床の瓦礫を手に取る。
「おらぁあああっ!!」
川原は僕に向かって瓦礫を投げた。
それを蹴り落とす。
「クソッタレ!!」
川原はまた、瓦礫を拾って投げる。
今度はそれをキャッチしてみせる。
「クソがぁあああ!」
川原が突進してくる。
「うおおおお!」
「無駄なことを…今、楽にしてやる。」
川原のパンチをいなし、前蹴りを見舞う。
「これは、自衛隊の先輩方の分!」
「ぐふぅ……。」
川原がお腹を抱え込む。
続いて、顔に膝蹴りをかます。
「これは、泣き寝入りした先輩トレーナー達の分!」
よろめいたところで足を払う。倒れる直前に横蹴り。川原は地面を転がる。
「これは、理事長やたづなさん、教職員達の分!」
「グゥ……。ガハッ……!」
川原が口から血を吐き、倒れこむ。
「ぐぅ……!この……野郎……。」
川原はゆっくりと立ち上がる。
「これは、トレーナーの皆さんとそのウマ娘達の分!」
追い討ちをかけるように右ストレートを繰り出す。川原の顔面を正確に捉えた。
「ぐへぇえっ!」
「これは同期の分!」
僕はさらに追撃を加えるため、アッパーを喰らわす。
川原は後ろに倒れ、地面に叩きつけられた。
しかし、川原はしぶとくもまた立ち上がる。
「うおおおっ!!」
川原は雄叫びを上げながら突っ込んでくる。僕はそれを避ける。川原はそのまま壁に激突した。
「くそっ……。」
川原は壁伝いに立ち上がろうとする。僕はその隙を突き、川原の顔目掛けてドロップキックをかました。
「これは僕の担当の子達の分!」
「ぶげぇっ!!」
そのまま投げ飛ばす。
川原はヨロヨロと立ち上がった。しかし、それ以上動くことはなかった。もう、スタミナは尽きたのだろう。
「これで最後だ。」
僕は高く跳躍し、空中回転しながら、右足を振り上げる。
「そしてこれが、チーム『フォース』の…、ライスとカレン達の受けた痛みだ!!」
回し蹴りが川原の脳天に炸裂した。
ついに川原は動かなくなった。
「全てに対して、詰めが甘かったな、川原…。それがお前の敗因……。」
そう呟くと、地面に倒れた。
終わった……。
安堵のため息が出た。しかし、身体中が痛い。
「お兄さま!」
「お兄ちゃん!」
ライスシャワーとカレンチャンの声だ。
声の方を見ると、そこには涙目の2人がいた。
他にも、みんなが駆け寄るのが見える。警視庁の田代さんと守山さんの姿もある。
「これにて、任務完了……。」
そう言って、僕は意識を手放した。
字数が多くなりつつあることに気づいた自分に驚いたんだよね。
といったところで、ついに川原に誅することができました。
1章はもう少しだけ続きます。