若手の陸自幹部さん、トレセンに行く   作:Ο(オミクロン)

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トレーナーのヒミツ⑬
実は、同僚の頼みはなかなか断れない。

あらすじ
川原との闘いで入院生活を送るトレーナー。そんな彼のもとにライスシャワーとカレンチャンが訪れる。用件は担当契約の申し入れ。トレーナーはこれを即答し契約を結ぶ。
その次の日にトウカイテイオー達もデビュー戦を突破し、彼のトレーナー生活も軌道に乗り始めるが、教育隊長から手紙に加え、電話がかかってくる。その話は幹部レンジャーについてだった。


14話 精鋭への招待状

『君には、今年、幹部レンジャーの資格を取ってもらいたい。』

「「幹部…レンジャー…!?」」

隣にいる同期とともにその言葉をオウム返しする。

『ん?同期君もそこにいるのか。ならちょうど良い。』

教育隊長は説明を始めた。

『平成に入って自衛隊は、ウマ娘達にも門戸を開き、彼女達も戦力として運用してきた。だが現在、本当にウマ娘が活躍できる自衛隊になっていないのでは?という意見が出たんだ。それを受けて陸上自衛隊ではウマ娘だけの部隊を配備しようとしているんだ。』

「それと私の幹部レンジャー取得に何か関係性があるのですか?」

「幹部レンジャー…幹部レンジャー…。」

幹部レンジャーの話そっちのけで陸自の展望を話されたので問い質す。

隣で明後日の方を向いている同期は今はそっとしておこう。

『まあ、そう急くな。もちろんあるとも!それはね……。』

 

そこから小一時間ほど話をされた。

まとめるとこうだ。

現在、陸上自衛隊は、色々な職種から選抜したウマ娘だけの部隊の設置を計画している。現時点では細かく言えないが、特殊な任務を担わせる予定とのこと。そのため、精鋭を統率する指揮官とウマ娘への正しい理解がある指導者が必要となったが、この両者がある隊員、特に幹部は非常に少ない。

そこで、ウマ娘トレーナーとレンジャーの資格を持った隊員を養成しようという話になった。そうすれば、隊員達に適切な訓練を施すことができると考えているそうだ。

僕と同期の名前があがったのは、教育隊長たっての希望らしい。ウマ娘部隊の指揮官になり、ウマ娘のさらなる活躍に貢献してほしいとのこと。

『どうだろうか?』

こんな新米幹部がそんな大役を担うとは思いもしなかった。しかし、これが上手く行けば、きっとウマ娘たちが活躍する社会に近づけるだろう。そして、国民の平和で安全な暮らしにさらに貢献できるはずだ。それに、いつしか幹部レンジャーは取りたいとも思っていた。

だがしかし、重大な懸念がある。回答によっては断らなければならない。

「僕が幹部レンジャーを受けている間、担当の子達はどうすれば良いのですか?」

『あ、やべ。考えてなかった。』

考えてなかったんかい!

教育隊長は融通が効く人であるが、破天荒な人だ。振り回されるこっちの身にもなってほしいと各中隊長や運用訓練幹部がよく愚痴っていた。さすがにこれは論外だが…。

『担当の子達については…同期君にみてもらうしかないか…。……あ、そうだ!君の先輩にあたる者を派遣しようか。腕は確かだと聞く。』

そう来たか。

こちらとしては、同期にみてもらえるなら大助かりだが、見知らぬ人に任せるのは気が引ける。正直、申し送りがめんどいのもある。

 

幹部レンジャー課程は約3ヶ月の期間とはいえ、その期間はジャパンカップに出走予定のシンボリルドルフを徹底して見たかった。

実のところ、今年の宝塚記念の出走を考えていたが、足に違和感があるといった理由で見送ったのだ。ある日を境に回復していっているが、心配なものは心配だ。

さらに言えば、来年のクラシック期に向けてデビューしたみんなのトレーニングも見たい。

『改めて聞こう、どうだろうか?』

今回は縁がなかったと考え、また機会がある時に受けさせてもらおう。

「申し訳ありません。担当している子達が心配なので、可能ならこのトレーナー教育課程が終わってから履修させてもらえませんか?」

うん、我ながら完璧な文句だと思う。

…だが、現実は非情であった。

『そうか…それは仕方な…ん?あ、やべっ。これ言うの忘れてた。今回の幹部レンジャーの参加は上からの命令である。よって、拒否はできないと思われ。ドンマイ!…まあ、君なら絶対にやり遂げてくれると思う。うん。期待しているよ。うん。じゃっ!』

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!?あ、切りやがった!ああっクソ!」

折り返し電話しようと思ったが、無駄だろう。半ば強制的に幹部レンジャーを受けさせられることになってしまった。携帯電話をベッドに叩きつける。

「え、なになに!?どうしたの!?衝撃的すぎてほとんど聴き逃した!どんな話だったの?」

こちらの世界に戻ってきた同期が心配そうに聞いてくる。

「ハァ…そうだね…。」

教育隊長の話を一から説明する。

 

「あ、お疲れ様です…。」

同期は憐れみの目を向けてきた。

「というか、レンジャー教育の前に素養試験があるでしょ?その身体で大丈夫なの?」

「そうだね。1ヶ月くらいは準備期間はあるからそこで何とかするしかないんだろうね。まあ、幹部レンジャーは取りたかったところだから頑張るよ。」

「う〜ん…ムリはしないでほしいんだけど。でも、幹部レンジャーの資格が必ずしも要るのかな?無くても精強な部隊は作れると思うけど…。」

確かにおっしゃる通りではある。

『精鋭を統率する指揮官とウマ娘への正しい理解がある指導者』とあったが、それこそ、同期のようなウマ娘の幹部は当てはまるだろう。それにヒトだってレンジャー隊員でなくても優秀な人はいる。

上の考えてることはわからん。

ただ、レンジャー隊員はすごい人が多いのも事実なので、白羽の矢が立つのはおかしくはない話ではある。その辺は納得できる。

「まあ、受けることになった以上、頑張ってね。応援してるからさ。」

彼女は僕の両手を握り、おまじないをかけるように額をくっつけた。

「君がいない間のルドルフちゃん達は私と葵ちゃんに任せてよ。」

心強い言葉をいただいた。

面会終了時間も近づき、名残惜しそうに同期は帰っていった。

やることもないので、寝よう。お見舞いに来てくれる人が帰るとどうしても暇だ。

 

 

川原の件で、検察から取り調べをされたりもしたが、そんなこんなで退院の日を迎えた。毎日毎日、担当の子達をはじめとした知り合いが見舞いに来てくれ、なんだかんだ退屈しなかった入院生活だった。久しぶりに姉や両親とも会えた。

いつの間にか新品になっている65式作業服に着替え、荷物をまとめて、病院を出る。

「お疲れ様です。トレーナーさん。」

出迎えてくれたのは、メジロマックイーンだった。彼女がこの病院を手配してくれたのは言うまでもない。

「やあ、マックイーン。迎えに来てくれたのか?」

「ええ、もちろんですわ。どうぞ、こちらへ。」

「助かるよ。よろしくお願いします。…うおおおお!すっげえ!リムジンだ!え?これに乗るの?乗っていいの?」

初めて乗るリムジンに子供のように興奮する。

「ふふっ。もちろんですわよ。では参りましょうか。」

エンジンがかかり、車は静かに発進した。

「しばらくはこうさせてください。」

彼女は僕に密着するように座ると身体を預けてきた。

事件の影響かはわからないが、最近、みんなとの距離感が近くなった気がする。喜ばしいことだ。

 

車の中でメジロマックイーンが最近の学園の様子を教えてくれる。

川原のことでメディアが連日押しかけていること、学園も建物の修復や生徒やその担当トレーナーのメンタルケア等、事件の後処理に追われていること、その甲斐虚しく、学園を去った者がいること…。

最悪のシナリオは避けられたが川原の思惑通りなところもあるのだろうか。

 

学園に着くと、たづなさんが出迎えてくれた。幸いにも、メディア関係者は今日は帰って行ったとのこと。

退院の報告をしに、たづなさんの案内で理事長室に向かう。

コンコンとノックをして入っていく。中には待ちわびた様子の秋川理事長がいた。

「歓迎ッ!よく来てくれた!そして、退院おめでとう!」

普段と変わらない元気な姿で心なしか安心する。しかし、事後処理やメディア対応で多忙なのは想像にかたくない。

「ありがとうございます。そして、ご心配おかけして申し訳ありません。」

「謝罪など不要ッ!むしろ、この学園を救ってくれてありがとう。そして、そのためにケガを負ってしまって、こちらこそ申し訳ない!」

お詫びと感謝の気持ちとして、トレセン学園の校章があしらわれた帽子をいただいた。購買で売ってあり、部隊帽みたいだから実は買おうと思っていた。

「君が幹部レンジャーを受ける件は教育隊長殿から聞いている。ぜひ励んでほしい。」

「はい。頑張ります。」

「うむ。もっと話したいことがあるが、また別の時間にしよう。君を待ち望んでいる者達もいるはずだ。では、行くが良い!」

「はい。それでは、帰ります!」

理事長とたづなさんに見送られながらドアを開け退室する。

トレーナー室に向け前進していると、後ろから声をかけられた。

「トレーナー!」

ファインモーションが走ってきた。

「ごきげんよう、ファイン。わざわざ迎えに来てくれたの?」

「だって、主役がいないと始まらないじゃん!それに、私、早くトレーナーに会いたかったんだ〜♪」

「主役…?何はともあれ、それは嬉しいよ。ありがとう。」

主役の意味はわからないが、帰りを待ってくれている人がいるのはありがたいことだ。

「じゃあ、早速行きましょ〜!えいっ☆」

いきなり抱きつかれた。そして、腕を組んできた。

「よし!行くよ〜!レッツゴー!!」

ファインモーションに半ば強引に引きずられたため、体勢を崩した。それをお構いなしに彼女はトレーナー室とは別方向に歩いていく。どうやら空き教室に行くらしい。

 

ファインモーションに引きずられて入った部屋でまず最初に目に入ってきたのは派手に装飾された室内だった。

「退院おめでとう!!トレーナー君!!!」

シンボリルドルフ達がクラッカーを鳴らす。担当のみんなや同期とそのチームのみんな、桐生院さんとハッピーミーク、アグネスデジタルにSP隊長さんがいた。

「ありがとう。でも、これ全部用意してくれたのかい?」

「ああ、みんなに手伝ってもらってね。」

慌ただしく動いているって、パーティの準備だったのか。そして、主役というのもきっと僕のことだろう

「トレーナー、もう大丈夫なの?」

トウカイテイオーが心配そうに声をかける。

「うん。問題無いよ。心配かけてごめんね。」

「気にしないでよ。その…ボク達がつけたキズのせいでもあるし…。」

彼女の顔が暗くなる。

 

想像通り、好感度反転薬の効果で僕に暴力を振るったことをみんなは気にしていた。最初の方は僕の顔を直接見て泣き出した子もいる。

そんな彼女達と向き合って何とか落ち着きはしたが、このキズはきっと一生癒えないのかもしれない。

「まあ、気にしないでよ。みんなが元に戻って何よりだよ。僕も傷は回復していっているしね。それでいいじゃないか。」

トウカイテイオーの頭を撫でると、彼女の顔は次第に明るくなっていた。

「ボク、今日はトレーナーに甘えちゃうもんね!」

そういうと否や、彼女は僕の膝の上に座る。

瞬間、メジロマックイーンの目付きが険しくなった。

「テイオーさん、抜け駆けは良くないですわよ?」

「そう言うマックイーンこそ、トレーナーを迎えに行った時、僕達を出し抜こうとしたんじゃないの?まあ、どーせ失敗したんだろうけどね!」

「あら?そうでもありませんわよ?高級車を見て子供のように喜ぶトレーナーさんなんて見たことないでしょう?貴方。」

「「むむむむむむ………。」」

「2人とも、喧嘩はよせ。」

シンボリルドルフにたしなめられて、トウカイテイオーは僕の膝からしぶしぶ降りた。しかし、2人はドス黒いオーラを放ったままだ。怖っ……。

「コホン、それでは改めて……トレーナー君の退院を祝して、乾杯!」

乾杯!とみんなが復唱する。先ほどの空気とは一転して、にぎやかな雰囲気となった。こうして、ささやかなパーティが始まった。

 

しばらくすると、ノックの音が聞こえる。

「失礼ッ!お楽しみのところ申し訳ない!」

「お邪魔します。」

理事長とたづなさんがやってきた。

「よく来てくださいました。」

シンボリルドルフが出迎える。一緒に入口に向かう。

「うむ!君達を労うために駆けつけたのだッ!」

「そうだったんですね。ありがとうございます。」

部屋もいっぱいいっぱいになりそうだ。そして、食べる物も少なくなったため、何名かが買い出しに出掛けた。

談笑の最中、みんなは川原との闘いの話をし始めた。

「トレーナーって、やっぱりすごいよね〜。あのパワーアップした川原をボコボコに倒しちゃうなんて!カッコよかったよ〜!」

かしこくもファインモーション殿下からお褒めの言葉をいただいた。実はかなり危うかったのは黙っておこう。

あわせて、どこで見てたのかはつっこまないでおこう。

「私もそれ思います!特にトレーナーさんの蹴り技!本当にすごかったですよ!」

桐生院さんが興奮気味で言う。身体能力がウマ娘と同じになった以上、その脚力を活かさないわけにはいかないよね。

「アッパーもキレイだったねえ。ところで、トレーナー君の格闘スタイルはシステマ?それともクラヴ・マガ?」

実は格闘技大好きな同期が聞いてきた。

「そこは意識してないな。強いていうなら自衛隊格闘術かな。…合気道の要素もいれたかな?」

「合気道はカレン直伝なんだよ!」

カレンチャンが胸を張る。

「トレーナー様は徒手格闘もご堪能なんですね。今度、我々と手合わせをお願いしても?」

「あっ!それ良いかも。全然ありよね、トレーナー君?」

SP隊長はイタズラな笑みを浮かべて言い、同期が便乗する。

「なし。殺す気か。」

訓練を受けたウマ娘相手にスパーリングは自殺行為に等しい。

「…冗談ですよ。半分くらい。」

もう半分は本気なのか。

 

「トレーナー君、少し聞きたいことがあるのだが、いいだろうか?」

声の主はアグネスタキオン。

「どうぞ。」

「君の強さの秘訣は一体なんだい?私の薬をここまで活用できる人は初めてだよ。」

「ああ、それは……。」

僕は考えうる自分の強さの秘訣について説明した。主に精神論的なことが多いが。

「ふぅン…、なるほどねぇ……。なかなか興味深いよ。健全な精神に健全な肉体が宿る、か……。」

「…不思議ですね。あなたが精神論を支持するなんて……。」

マンハッタンカフェがアグネスタキオンに話しかける。

「ん?私は別に、精神論は嫌いではないよ。」

そう言って、アグネスタキオンはニヤリと笑みを浮かべる。

「まあ、私としても、被検体は強い方がいいからねぇ。これからも頑張ってくれたまえ、モルモット君。」

「うん、ありが……今なんて言った?」

「モルモット君と言ったが?」

「なにゆえ?」

「何、これから君には私の実験に付き合ってもらいたくてね。如何せん、同期君はウマ娘。薬剤に対する耐性が強くてね。効果がハッキリとわからないんだ。例外は好感度反転薬だが、あれは偶然の産物だ。それに対して君はヒトだ。私の薬の効果を検証するにはちょうどいい!ウマ娘の限界…、そして可能性…。ぜひとも突き詰めていきたいものだ。あぁ…楽しみだ!」

と饒舌に説明してくれた。

どうやら、彼女のマッドな研究に付き合わされるようだ。先が思いやられる…。それにしても、いつか彼女はどこかで痛い目を見た方が良いだろう。偶然の産物で危うく学園崩壊の危機だ。逆に彼女の発明品で助けられた場面もあったが。

「トレーナーさんも…大変ですね…。何かあったら……私に教えてくださいね。お話を聴きます。その時は美味しいコーヒーを淹れますので…。お友だちにも協力してもらいます…。」

マンハッタンカフェに同情される。

「ありがとう。その時は頼むよ。」

 

 

小一時間経つと、買い出しに行った子達が帰ってくる。

「「「「ただいま戻りました。」」」」

同期のチーム(一部)+ゴールドシップとライスシャワーが帰ってきた。

そうだ、同期のチームメンバーを紹介しよう。

先程の、アグネスタキオンとマンハッタンカフェ、そして…。

「会長。頼まれていたケーキを買ってまいりました。」

エアグルーヴ。

同期のチームリーダーで、トレセン学園の生徒会副会長を務めるウマ娘だ。

「やっぱり肉だな。これがないと始まらない。」

高そうな肉を机に置いたのは、ナリタブライアン。

彼女も生徒会の副会長であり、その実力はかなり高いらしい。現在、2冠目。

「わぁ〜すご〜い。」

「ご苦労だった。2人とも。」

ファインモーションがケーキと高級肉に興奮し、シンボリルドルフが2人を労る。

「ついでに、商店街の人達からおすそ分け、もらっちゃいましたよ〜。」

「やるじゃん!ネイチャ!」

トウカイテイオーに褒められた彼女の名は、ナイスネイチャ。

「私も張り切って荷物を持ちましたよ!前腕筋が喜んでます!」

メジロライアンだ。

「えっ?私の紹介それだけ!?」

「貴女は何を言ってるんですの?」

メジロマックイーンがツッコミを入れる。

メジロライアンは、メジロマックイーンと同じ、メジロ家の令嬢だ。

彼女とはライバル関係にあるが、2人は仲が良い。

「最初からそうしてくださいよぉ!」

「だから貴女は何を言っておりますの?」

思考が読まれていたのだろうか。

「皆さん。食後のデザートが5分もすればできます。自信作です。」

「私とフラッシュさんの合作です。」

そう言って現れるのは、エイシンフラッシュとミホノブルボン。どちらもクールで正確無比な娘達だ。

「うおおお!スゲェな!」

「ブルボンさん!すごい!」

買い出しから戻ったゴールドシップとライスシャワーが歓声をあげる。

以上8名が同期のチームである。

ちなみに、現在、エアシャカールとアドマイヤベガをスカウト中とのこと。

チーム名は『ローリエ』だ。

月桂樹のことで、勝利の象徴だ。似たような名前を持つウマ娘がこの学園にいるのはここだけの話。

「では、またみんなが集まったところで、仕切り直しといこう。」

シンボリルドルフが提案する。その声に全員が賛同する。

「それじゃあ、カンパーイ!!」

「「「「かんぱーい!」」」」

また会場は賑やかになった。

「せっかくケーキも買ってきたのだし、景気良くいこう!」

皇帝陛下のダジャレですぐに沈黙してしまったが。…約1名を除き。

 

 

気づけば時刻は午後10時を回っていた。外泊届けを出しているのだろうか、みんなはまだ残るとのことだ。女子会ですって。

「じゃあ、みんな、僕はここでお暇させてもらうよ。」

そういうことで、寮に帰ることにした。

「わかった。トレーナー君。おやすみ。」

「おやすみなさい!」

「おやすみ、お兄さま。」

「お兄ちゃん!ゆっくり休んでね。」

「ありがとう。君達も夜更かししないようにね。生徒会の3人と大人達もいるから大丈夫だろうけど。」

みんなに見送られながらその場を後にした。

 

明くる日の朝。

担当契約書を提出しに理事長室へ向かう。

契約相手は何を隠そう、アグネスデジタル。彼女の中に眠る才能的な何かを見出した。

きっと前人未到の成績を残すだろう。そう思うといてもたってもいられなくなった。

入院中、彼女と契約することを伝えた。

「ひょえええ〜〜!!デジたんもとうとうトレーナーしゃんがががガガガ!!!しかもウマ娘ちゃん達に囲まれてぇ……あぁ^〜……。」

と、気絶してしまった。

一緒に見舞いに来てくれたアグネスタキオン曰く。

「幸福と申し訳なさでショートしたんだろうねぇ。まったく、つくづく面白い子だねぇ。アグネスのやべー方と呼ばれるだけあるよ。」

それは多分君もだろう。

さておき、気絶してしまったのではっきりとOKかどうか聞けなかったが、反応的には了承したとみなしてよろしいだろう。

そうこうしているうちに、理事長室にたどり着く。

ノックをして、返事が聞こえたので入っていく。

そこには、やはり秋川理事長の姿があった。たづなさんは不在のようだ。

早速、契約書を提出する。

「承認ッ!これからアグネスデジタル君と共に頑張ってくれたまえ!今後の活躍をますます期待しているぞ!」

「ありがとうございます!」

そう言って、理事長室をあとにする。

「さてと…。」

次はトレーナー室に向かう。

近づくにつれ、室内の賑わいが聞こえてくる。ノックしてドアを開ける。

「おはよう。」

「トレーナーさん!おはようございましゅ!」

「あっ、トレーナーだ!」

「おはようございます。」

「おはよう。」

「おはよ〜。」

中に入ると、既に全員揃っていた。同期と桐生院さん、たづなさんもここにいた。

「トレーナーさん!あたしとの契約はどうなりましたか!」

アグネスデジタルが聞いてくる。

「ああ、承諾されたよ。」

「よかったですぅ〜……。」

アグネスデジタルはほっとした様子だった。逆に反対される理由はないと思うが。

「デジタル。これからは私達と一致団結して、歩んでいこう。」

「よろしくね〜。デジタル!」

「私もよろしくお願いしますわ。」

「うん!みんなで一緒にがんばろ〜!」

「アタシ達も最高にロックな顔ぶれになってきたな。」

「デジタルさん、よろしくお願いします!」

「一緒に頑張りましょう!!」

「はい!みなしゃま!デジたん、精一杯お仕えさせていただきます!」

こうして、僕は8人目の担当バを持ったのであった。

「ところで、トレーナー君。幹部レンジャーについてはみんなに教えたの?」

同期に質問される。

「あっやべっ、まだだった。そうだ。それについて話しておかないとね。」

彼女の呆れてそうな視線を浴びながらみんなに説明を始める。

「僕は8月下旬から約13週間、静岡県の富士学校というところで、陸上自衛隊の幹部レンジャー課程を履修することになったんだ。その間、僕はここにいない。そして、教育がある間は君達のトレーニングをまともに見ることができない。もちろん、その間のトレーニング内容やレースプランは考えてある。」

「私と桐生院ちゃんで君達のことはしっかり見るから安心してね!」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

「伝えることは以上かな、何か質問はある?」

みんなは首を横に振る。

「よし、じゃあ、この話は終わり。」

話を切り、書類を机の上に置く。

「トレーナー君。その紙はなんだ?」

シンボリルドルフが目ざとくとある書類を見つける。

「これ?チームの結成届けの書類だよ。」

「「「「チーム!?」」」」

見事なハモりだ。

「そう。今は、それぞれと担当契約している形だけど、チームにすることで、ひとまとめに管理することができるんだよ。それに、色々と特典があるしね。えーと、詳細は……。」

「トレーナー室が広くなったり、トレーニング機器もグレードアップしたりします。あと、諸経費の負担とか金銭的な補助もあります。」

僕の代わりにたづなさんが説明してくれる。

「たづなさん。ありがとうございます。そんなわけでチームを作ろうと思うんだ。」

ワーワーと歓声が上がる。

「ならば、チーム名を決めようではないかトレーナー君。」

シンボリルドルフが提案する。うんうんと、チームのみんなもそれに首肯する。

「そうだね。じゃあ、せっかくだし、チームの名前はみんなで話し合って決めよう。では、会議にかかれ!」




幹部レンジャーを(半ば強制的に)受けることになったトレーナー3尉。ケガから復帰してすぐに素養試験の準備はなかなかエグい。

さておき、数ヶ月ぶりに投稿です。ご無沙汰してます。
続きを書き溜めたデータが消えて泣きました。加えて、F県の某市で剛健な日々を送っいてるのでなかなか更新できませんでした。
久しぶりみたら更新されてる!みたいな気持ちで待ってもらえると幸いです。

評価・コメント、大変励みになりますのでよろしくお願いします!
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