若手の陸自幹部さん、トレセンに行く   作:Ο(オミクロン)

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トレーナーのヒミツ⑭
実は、家族とは血が繋がっていない。

教育隊長のムチャぶりにより、急遽、幹部レンジャー課程に行くことが決まったトレーナー3尉。川原の件は片付いていないものの、ケガは治り快気祝いが行われた。新たな仲間も加わり、チームを結成しようとするなか、シンボリルドルフがチーム名を決めようと提案し…。


15話 編成完結!-前段-

『トレーナー。小隊長を上番するにあたりまず何をしないといけないかわかるか?』

長崎県佐世保市陸上自衛隊相浦駐屯地。当時、水陸機動団にいた僕はある日、中隊長に呼び出されていた。

中隊長、相良3佐。陸士から一般幹部候補生の試験を受け、指揮幕僚課程を一発で合格したエリート中のエリートだ。

…女性関係に問題を抱えているらしいが。

「はい。…え〜っと、小隊員の身上把握ですかね?」

『お、いいぞ。隊員の掌握は上番後の急務だな。だが、まだその前にやることがあるんだぜ。…他には何があると思う?』

「他にですか…。職務分析ですかね?」

『良い線いったな!…答えを言うと、編成完結式だ。』

良い線行ってるんですかね?そんな考えをお構い無しに中隊長は続ける。

『検閲前の隊容検査とか部隊が新しくなったときにやる儀式みたいなヤツだな。コイツをお前は小隊長に上番する時にやらなきゃならない。』

「上番時にですか。」

『おう。そこで各隊員の役割や指揮官の要望事項とかを認識させるんだ。そして、団結して任務達成に邁進できるように士気を高めなきゃならない。そのためにやる。』

その言葉になかなか難しいなと考えてしまう。しかし、中隊長は僕のその心情を察してか、なにも難しく考える必要はないぜ。と付け加える。

『小隊長はどうしたいのか、どうなりたいのかを示してやれば良い。そう、方針を示してやるんだ。その方針に向かって組織ってのは動いていくからな。』

頑張れよ小隊長。中隊長はそう言いながら僕の肩を優しく叩いた。

 

 

トレーナー室。

チームの名前を決める会議が行われている。

「…であるからして、チーム名は『ターフクイーンズ』が良いだろう。」

「何言ってんのカイチョー。ここは『ジ・エンペラーズ』でしょ?」

「いいえ!『シリウス』も捨て難いですわよ!」

「『ノーブルズ』なんかピッタリかも!」

はい、このようにちっとも進んでおりません。

しかし、みんな活発に意見を出し合っていて良い流れだと感じる。

1つだけ、どこからか怒られそうなのがあったが口をはさむのは野暮だろう。

「オマエら全然わかってねーな!アタシ達にふさわしい名は…『ジャパン・マリタイム・セルフディフェンス・フォース』だろ!!」

先程の独白は訂正。

「いや長いし、それ海上自衛隊の英名でしょ。」

「なんだよ、いいじゃねぇか。トレピッピも海に繰り出そうぜ!アラバの海がアタシを呼んでるぜ!」

「死海は海じゃなくて湖だろ。」

 

「ライス、『ブルームス』がいいかなって…。」

「カレンは『フラワープリンセス』がいいと思うなぁ〜♪」

と、妹's2人は可愛らしい提案をする。

「あたしは『ウマ娘ちゃん愛好会』を提案しますぅ!!!」

「大学のサークルじゃないんだよ。」

みんなお気に入りの名前を言っていくのだが、なかなか決まらない。

「トレーナーも何か提案してよ〜!」

トウカイテイオーがこっちに話を振ってくる。

「あまり僕が口を出すのもなって思うんだけど。」

「そういうの良いからさ!ほらっ!」

「あ、はい。じゃあ…。『トレセンガンバルンズ』。」

「うわっ、ダサっ!」

「トレーナー君…それは少し…。」

「センスねぇな。」

「デジたん的にもナシです。」

「え?ダメ?」

この始末☆

大ブーイングを食らい大変ショックでございます。

 

以降、チーム名を提案してはそれはないを繰り返す一方だった。

「チーム名決めるのって大変よね〜。私達もなかなか決まらなかったのよね〜。」

「チーム名には皆さんの想いが宿ってますからね。それで悩んじゃうのは仕方ないです。」

同期と桐生院さんは微笑みながら見守っている。しかし、こうも決まらないとじ後の行動に支障をきたす。そして、肝心なところをハッキリさせてなかった気がする。

「よしわかった、みんな。」

そう思い、声をかけると皆静まり返り、僕を注目する。

「そもそもなんだけど、チームの方針を決めよう。僕達はどうなりたいかってことね。そのために、君達はこのチームでどんな事をしていきたい?君達の夢は何だ?そこをつきつめていくと、良いチーム名が思い浮かぶかもしれないね。」

みんな考え込んでしまったが、しばらくすると、手を挙げた者がいた。

「私の夢はメジロ家の悲願、天皇賞制覇ですわ。」

力強く、凛として、そう言ったのはメジロマックイーンだった。

「そうだね。君はこの前そう語ってくれたね。…みんなは?」

「ボクはカイチョーみたいに無敗の三冠ウマ娘になるんだ!」

トウカイテイオーが続いた。他の子たちも続く。

「私は楽しくレースを走りたいな!そのうえで、勝って故郷のみんなを喜ばせたい!」

「アタシだって、勝ちてぇ!でも、何よりも心躍るレースがしてえ!」

「ライスはレースに勝って、みんなを幸せにできたら嬉しいかな…。」

「カレンは走りでカワイイを届けたい!カワイイを届けるために勝ちたい!」

「デジたんはウマ娘ちゃんを愛でるためにどんなレースでも走りますぅぅぅううう!!!」

「トレーナー君。皆、十人十色、それぞれ違った目標がある。ただ一つ言えることは、全員が勝利を望んでいるということだ。」

シンボリルドルフの言葉にみんな賛同している。

勝ちたいという気持ち、勝利への欲、それはウマ娘の本能とも言えるだろう。

「それなら、勝利を求める僕達にふさわしいチーム名にしようか。」

方針は決まった。こうしてまたチーム名を決めるべく会議が行われた。

 

 

時刻は昼ご飯の時間を迎える頃になった。みんなの話し合いを聞きながらトレーニング計画を作成しているものの…。

「だからこそ、『ターフクイーンズ』を提案する。」

「いや!『ジ・エンペラーズ』でいいでしょ!」

「それこそ一等星を意味する『シリウス』ですわ!」

「だったら『ブルーインパルス』じゃねぇか…?」

はい、またしても進んでおりません。あの後、勝利を求めるのであればその名前は強そうなのが良いという意見が出てきた。カワいくなーいという声もあったが、最終的にみんなはそれに賛同した。

…そこまではいいものの、なかなか決まらずにいる。

「あーもう!全然まとまらないよぉ!トレェェエエナァァァアアア!!!」

トウカイテイオーが泣きついてきたので彼女の頭を撫でて落ち着かせる。瞬間、部屋の湿度が上がった気がするが、多分、梅雨の時期だからだろう。

「それほどみんなが熱意を持って取り組んでくれてるってことだよね。でも、そろそろ決めないと昼飯の時間が来ちゃうね。」

このまま長引くようであればこの会議はトレーニング後でも良いだろう。少しリフレッシュして思考をクリアにする時間を設けるべきだった。

 

「トレーナー君、君にとって『強い』とは一体何だ?」

自省していると、シンボリルドルフから回答に窮する質問がきた。

「そうだね…。ちょっと考える時間ちょうだい。」

 

『強い』。か…。

 

「精強っていうのかな?向かうところ敵無しっていうか。」

「そうか…。では、もう1つ質問させてくれ、精強な人ってどんな人だ?」

捻り出したは良いもののまた回答に窮する質問をされる。

「そうだね。エリートっていうのかな?すごい人だって思うよね。」

とりあえず出た答えはこれだった。

「ハハ…。えらく抽象的だね。」

我が皇帝陛下は苦笑を浮かべた。

「ごめんごめん。端的に言いすぎたかな?僕の中では…原隊の人達だね。レンジャーの隊員ばっかりだし、1人1人の能力もピカイチだよ。この学園もそうだ。トレーナーも生徒も本当にすごい人達ばかりだと思う。」

「『レンジャー』か…。」

「ルドルフ?」

「いや、以前、君の話を聴き、気になって調べたことがある。『レンジャー』の隊員さんは確かに精鋭だ。そして、トレーナー君もその1人となるに違いない。」

「ちなみにだけど、レンジャーを象徴するあのマークはダイヤモンドと月桂樹からなるよ。私達のチームは月桂樹から取った名前なんだ。」

と、今まで居眠りこいてた同期がみんなに説明してくれる。

ダイヤモンドね…。そういや、入学式にあった彼女達は元気にしているだろうか。さておき。

「ダイヤモンドって何か他の呼び方はあったっけ?」

「えーと、金剛石、ディアマンテ、ディアマン…そもそもの由来がギリシア語の『アダマス』からきているみたい。」

「へぇ。」

手持ちのスマホを操作しながら同期は解説してくれた。僕もスマホを取り出し調べてみる。

「『アダマス』…。無敵、征服されない、不屈…か。そこからダイヤモンドの名前になったのね。」

「良いね!特に無敵という響きに何かを感じるよ!」

「はい。とても良い名前だと思いますわ。」

琴線に触れたのか、みんなは続々と賛同する。

「これは満場一致とみて良いのかな。」

シンボリルドルフの問いかけに一同が頷く。

「トレーナー君、我々のチーム名は『アダマス』で決まりだ。」

みんなの視線が僕に向く。

1人1人の顔をしっかり見つめながら、僕は静かに頷いた。

チーム結成の書類にチーム名を記入する。

 

「トレーナーさん。ついに決まりましたね。おめでとうございます!」

一部始終を見ていてくれたたづなさんが祝福してくれた。

「ありがとうございます。」

残りの必要事項を記入し、書類を完成させ、たづなさんに手渡す。

「では、私の方から理事長に提出しておきますね。」

たづなさんは微笑みながら言った。

「お願いします!」

「はい♪任せてください。」

そうして、たづなさんは退出する。

ぐぎゅるるる〜と、腹の虫の合唱が聞こえる。

「よし、みんな!昼飯にしよう!」

「「「「「はーい!!」」」」」

みんな元気よく返事をする。

 

 

夕方。

今日のトレーニングも終わり、担当の子達と談笑しているとコンコンッとドアがノックされる音が聞こえる。

「どうぞ。」

入室を許可すると、2人の生徒が入ってきた。

「おや、君達は…。」

「あ、キタちゃんだ!いらっしゃい!」

「ダイヤさんもようこそおいでくださいました。」

トウカイテイオーとメジロマックイーンに出迎えられ、入室したのは、キタサンブラックとサトノダイヤモンドだ。

彼女達とは入学式の際に出会ってから久しい。共に広いトレセン学園で迷子になった仲である。それこそ昼頃に近況が気になってた2人である。

「入学式以来だね2人とも。どうしたの?」

そんな2人がこうしてここにやってきた。何の用があるのだろうか?

とりあえず、2人を椅子に座らせる。

「はい!単刀直入に言います!あたし達を貴方のチームに入れてください!!」

ある種バクシン味を感じるキタサンブラックの発言に、おどろく間もなく、サトノダイヤモンドが私もお願します!と言ってきた。

「ダメですか…?」

返答に躊躇しているとキタサンブラックが不安そうにこちらを見上げる。

「いやいや、そんなことないよ。むしろ大歓迎。でも、どうして?」

気を取り直して、率直な疑問を彼女達に投げかける。

 

キタサンブラックは、その質問に少しの逡巡もなくこう答えた。

「実は、あたし、テイオーさんに憧れてるんです!それで、同じチームに入りたいなって。」

「え?ボクに?」

トウカイテイオーの驚きに対し、彼女は、はい!と元気よく返事をした。

「先日のデビュー戦、見させていただきました!すごかったです!あたし、その時に何かを感じちゃいました!」

キタサンブラックは興奮気味に話す。

確かに、あのデビュー戦で彼女の走りには目を見張るものがあった。身内びいき抜きにしても、無敵の三冠ウマ娘も夢ではないと思わせる走りだった。

そしてサトノダイヤモンドも口を開く。

「私は、かねてよりお世話になっておりましたマックイーンさんと共に頑張りたいと思っていました。マックイーンさんがトレーナーと契約したとお聞きし、練習風景を拝見させていただきましたが、ここでならきっとと感じたんです。しかも、担当のトレーナーが貴方だったと知り、ぜひともこのチームに入りたいと考えた次第です!」

「なるほど。」

彼女達の言い分はわかった。

「さて、先ほど言った通り、僕は君達2人を大歓迎する。これからよろしくね。」

もとより、断るつもりはないし、ぜひとも憧れの人と切磋琢磨していってほしい。

「はい!」

「ありがとうございます!!」

キタサンブラックとサトノダイヤモンドの2人がチームに加入することが決定した。

チーム結成の届けを出してすぐに2名の加入。これは、実に喜ばしいことだ。これでメンバーは10人、与えられた任務を1つ達成したことになる。

 

「失礼します。」

新メンバー加入に喜んでいると、トレーナー室のドアが開く。

入ってきたのはたづなさんだった。

「あ、たづなさん。お疲れ様です。」

「お疲れ様です。トレーナーさん。チーム結成の届けが正式に受理されましたことをお伝えに参りました。」

「あ、それは…。ありがとうございます。」

これにて僕も正式にチームトレーナーとなる。といっても、やることは今までと変わらなかったり。

「改めまして、チーム結成おめでとうございます。トレーナーさん。」

「ありがとうございます。たづなさん。」

それから、たづなさんからチームトレーナーになるにあたり与えられる権限であったり、規則だったりを教えられた。

トレーナー室も今のようなプレハブ小屋ではなく、空き教室の一室を与えられるとのこと。新堀さんから受け継いだこのトレーナー室を手放すのは名残惜しいが、人数的にキャパオーバーを感じていたので僥倖ではある。

 

「それでトレーナーさん。」

「はい。トレーナーです。」

「理事長より、『ぜひとも君達の練習風景を見たいッ!』とのことで…。」

「え?見に来るんですか?」

「はい…。」

「いつ頃来られるんですか?」

「はい、それが明日の放課後を希望していまして…。予定通りのメニューでかまわないから見てみたいとのことです。」

はえー。それまた急な。

「確認します。」

明日か…。手帳を取り出し、明日の行動を確認する。ついで、机上のトレーニング計画表を引っ張り出し、明日のトレーニング内容も確認する。

欠席者なし、軽めトレーニングで終わりの予定だ。

「わかりました。明日の放課後で承ります。」

「急なお願いでご迷惑おかけします。明日はよろしくお願いします。それでは失礼します。」

たづなさんは一礼してトレーナー室を後にした。ついでにキタサンブラック達の契約書も持っていってもらった。

 

「てなわけで、理事長が明日の放課後に来られるらしいので、みんなもその認識でいてね。せっかくならちょっとサプライズしてあげよう。」

「わかった。」

「はーい!」

「はい!」

みんなからの返事を受け、連絡事項とちょっとした打ち合わせをしたのち、今日は解散となった。




正月気分抜けない時に投稿して読者のみなさんを怖がらせましょう!

大変お待たせしました。機種変に書きためていた小説の消失、仕事に肝心要のアイデアと文章力·構成力の無さに悩まされつつ、やっと更新することができました。ですが、今回は短めです。
引き続き、亀投稿でお届けします。

ちな、別の課程に行ってて他の課程にぶちこまれることはないでしょう。この世界がおかしいだけです。

Xやってます。執筆状況の他、他愛もないことを1:9でつぶやく予定ですので、よろしければフォローお願いします。
リンク:https://x.com/JGoTraDF?t=vhrT-YKhwktcQ6Z-271NPQ&s=09

今後も生暖かい目で見守っていただけると幸いです!
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