番外編2話目、お楽しみください。
時系列的には、1話目の後〜3話目の前になります。
私の名はシンボリルドルフ。
トレセン学園の生徒会長をしている。
巷では、皇帝と呼ばれているらしい。
そんな私の担当トレーナーは、少々特殊な人だ。なんでも、陸上自衛隊から研修のためにこのトレセン学園にやってきたという。
トレーナーとしては新人も同然である。しかし、彼は良いトレーナーになると思う。
その根拠はわからないが、そう思わせるだけの何かがある。
質実剛健。それが初対面での印象だ。
ただ、少しだけ問題があるとすれば責任感が強すぎることだ。
いつか心を壊さないか心配だ。
私は今、そんな彼と初めて二人でお出かけしている。
今日は、トレーニングのない休日。
「ルドルフ、どこか行きたいところはある?」
「トレーナー君が行きたい所ならどこでも。」
私がそう答えると、トレーナー君は困ったような表情を浮かべ、
「じゃあ、適当に街を散策してみよう。」
と提案してくれる。
「ああ、わかった。」
私は彼の隣で微笑む。
彼と出会って早1ヶ月。
打ち解けたのは早かったし、色々と話をする機会はあったが、それでも私は彼のことをもっと知りたい。彼と一緒に居たい。
きっと私は彼に一目惚れしたのだろう。
「……ん?どうしたのルドルフ?」
私がじっと見つめていることに気づいたのか、彼が尋ねてくる。
「ふふっ、何でもないよ。さぁ行こうか。」
⏰
街の散策もほどほどに私達は昼食を摂ろうと、ファミリーレストランを探す。
すると、見知った人物が目に入った。
「あー!カイチョーとトレーナーだ!」
トウカイテイオーだった。
彼女は私達を見つけるなり駆け寄ってくる。
「偶然だね〜!2人でお出かけしてたんだ!」
「まぁね。」
「うむ、そうだな。」
私達は二人揃って返答する。
「ねぇねぇ、ボクも一緒に行っていいかな!?」
テイオーが目を輝かせながら聞いてくる。
断る理由はない。むしろ歓迎すべき事態だ。
「もちろんだとも。是非おいで。」
「わーい!ヤッターー!ありがとう!!」
こうして私達は3人で食事をすることになった。
行きたい店があるんだというテイオーの言葉に従って、案内されたのはありふれたファミリーレストランだった。
「いらっしゃいませー。3名様ですか?空いてる席にどうぞー。」
店員さんの案内に従い、席に着く。
「ただいま、ファミリーキャンペーンを開催中です。御家族1組に無料でドリンクバーを提供してます。」
どうやら家族と間違えられたようだ。
「あ…。家族じゃないんです…。」
すぐにトレーナー君は否定する。
「も、申し訳ございません!ご注文が決まりましたらお呼びください!」
店員さんが厨房に戻る。
「…ボク達なんで家族に間違えられたの?」
「「さあ?」」
気を取り直して、メニュー表を見る。
「これこれ!この期間限定メニューを食べて見たかったんだ〜。」
テイオーはメニュー表を指さしながら満面の笑みで言う。
メニュー表には、『はちみーフェア』と書いてあった。
「ボクはオムライスとこれにする!」
テイオーは『はちみーたっぷりパフェ』を指さした。
「これはまた随分と甘そうな…。」
トレーナー君は笑みを浮かべている、心無しか嬉しそうだ。
なるほど、甘い物が好きなのか。
覚えておかなければ。
「2人は何にするのー?」
「僕は日替わり定食にしようかな。」
「では、私も同じものにしよう。」
「えー?2人は期間限定メニュー頼まないのー?」
「私は遠慮しておくよ。」
「僕はどうしようかな…。」
隣にいるトレーナー君は悩んでいるようだ。
「期間限定だよー?今食べないと後悔するよー?大丈夫なのー?」
テイオーは、どうしようかと独りごちるトレーナー君を煽るように言う。
「…よし、頼もう。」
トレーナー君は決意を固めたようだ。
店員さんを呼び、注文をする。
「オムライスと日替わり定食を2つ、はちみーたっぷりパフェと…。」
トレーナー君はメニュー表を指さしながら注文していく。
「それと、特大はちみースペシャルケーキを一つください。以上です。」
「「え?」」
並大抵のヒトでは食べ切れないくらいの大きいケーキをトレーナー君は注文した。
しかも、それを躊躇なく注文したので、テイオーと共に驚いてしまった。
「かしこまりましたー。」
店員さんが笑顔で去っていく。
「トレーナー…正気なの?病気になっちゃうよ?」
「うん、僕もそう思うけど…。でも美味しそうじゃないか!」
それはそれは満面の笑みで彼は言った。
「そっか……。もっと身体は大切にしてよ。」
テイオーは呆れたようにそう呟いた。私も全く同じ気持ちである。
本当に自分の身体を大切にしてほしいものだ。
⏰
先に出された食事を食べ、デザートが来るのを待つ。
そして数分後、注文したデザートが運ばれてきた。
「お待たせしましたー。こちら、特大はちみースペシャルケーキになります。」
「……すごいねこれ。」
「想像以上だ…。」
メニュー表の写真よりも大きいのではないかと思うほどのケーキが目の前に置かれた。
「それでは、ごゆっくりどうぞー。」
そう言って、店員さんは去っていった。
「……トレーナー、ほんとに食べるの?」
「……うん、勿論だよ。」
「無理しないでね?」
「心配してくれてありがとね。じゃあ、いただきます!」
そう言って彼はスプーンを手に取り、はちみつのかかった生クリームを一口食べた。
「うん、おいしい!」
トレーナー君はパクパクと美味しそうにケーキを口に入れていく。
その姿を見て、思わず、
「トレーナー君、1口くれないか?」
と言ってしまった。
「もちろん。」
「ありがとう。」
私は彼の差し出したケーキを一口に切り、頬張った。
「……確かに、これは美味しいな。」
とても濃厚なはちみーの味がする。
「ぴ、ぴぇぇぇ……。」
前を見ると、テイオーが顔を真っ赤にして固まっていた。
「ん?どうしたんだテイオー。」
「ふ、二人ってそんな関係だったんだ……。」
一体、何のことだろうか。
「こんな堂々とあーんするなんて……流石に恥ずかしいよぉ〜。」
「「あ。」」
2人で声を合わせる。
そして、お互いに顔を見合わせ、笑い合う。
「これはつい…。」
「テイオー、僕達はそういう関係ではないからね。」
「なぁ〜んだ。」
テイオーは少し安堵したかのように息をつく。
「そうだ、テイオーも1口いかが?」
「え!?いいの?やったー!」
トレーナー君はフォークでケーキをすくい、テイオーに差し出す。
「待った。」
私は咄嵯にトレーナー君の手首を掴み、動きを止める。
「ルドルフ?」
「カイチョー?」
「それは私だけの特権だ。」
「え?」
「何言ってんのカイチョー?」
「そうだろ?トレーナー君。」
「……え?」
「ちょっ、ちょっと!どういうことなのさ!」
「そのままの意味だよ。」
「ワケワカンナイヨー!」
テイオーは頭を抱えながら叫ぶ。
「トレーナーも黙ってないで何か言ってよ!」
テイオーはトレーナー君に向かって叫ぶ。
「え?あ、うん。」
しかし、トレーナー君は、私とテイオーのやりとりを気にすることなく、再びケーキを食べ始めていた。
既に半分はなくなっている。
「何で何事もなかったかのように食べてるの!?」
「だって……。」
「だってじゃないよ!ボクを放置しないでー!」
「ははは、ごめんテイオー。」
「もう…。ってそうじゃない!ズルいよカイチョーだけ!僕もトレーナーにケーキ食べさせてもらいたい!」
ズルいズルいとテイオーは駄々をこねる。
すると、今までのやり取りを見ていたサングラスをかけたおばあさんから、突然声を掛けられた。
「あらあら、仲の良い親子ねぇ。」
「いえ、僕達は決して……。」
本日2度目の誤解に対して、またしてもトレーナー君は否定する。
「そうなの?」
「……はい。」
「まあ、これは失礼しました。随分と可愛らしい娘さんと思ってね。」
「ぷふっ。くっふふふ…。」
おばあさんの言葉を聞いて、トレーナー君は吹き出してしまった。
「何笑ってんのー!?」
テイオーはそんなトレーナー君に抗議の声をあげる。
ごめんあそばせとおばあさんは去っていった。
未だにトレーナー君は笑っている。
「親子に間違えられたのはテイオーのせいなのかって納得してね。あはは。」
「ひどい!むぅー!」
テイオーは顔を膨らませてそっぽを向いてしまった。
そういうところだぞ、テイオー。
「ほら、機嫌直してくれよテイオー。」
そう言って彼はテイオーの頭を撫でる。
「……うん。」
彼女は素直に受け入れた。
「……ずるい。」
「え?」
「なんでもないよ。」
思わず口から漏れてしまった言葉に、慌てて口を塞ぐ。
……本当に、羨ましい限りである。
⏰
昼食も終わり、レストランを出る。
「美味しかったねー!」
「うん、そうだね。」
「また来よう!」
「うん、そうしようか。」
そう話していると、先程のおばあさんが再び現れた。
「あらあら、やっぱり親子だったのね。」
「だから違いますってば……。」
「でも、あなた達からはそれくらい強い絆を感じるわ。」
「……そうですか?」
トレーナー君は首を傾げる。
「えぇ、とても。それじゃあ、これからも頑張ってね。陰ながら見守ってるわ。」
そう言っておばあさんは再び去っていった。
その後ろ姿に既視感を感じた。
もしかすると…。
「次はどこに行こうかなー?」
テイオーの朗らかな声にその考えは打ち消される。
「僕は君達に着いていくよ。」
「わかった!じゃあ、次はここ!ほら、カイチョーも行こ!」
テイオーが私達の服の袖を引っ張り催促する。
「わかったわかった。そう焦るな。」
私達の足はそれぞれ同じ方向へ向かう。
その姿はもはや、家族と言っても否定できないだろうな。
でも、それも悪くない。
⏰
所離れて、某所。
「良かった。何とか上手くやっていけてるみたいね。」
広大な草原を見ながら、老婆-というには少々若いか-はつぶやく。
久々に会った青年と少女を想う。
「一目見て、この人ならルドルフちゃんを任せられると思ったけど、この目に狂いはなかったみたいね。…皇帝の理想、全てのウマ娘の幸せ、それは果てない道だけど、あなたなら、あなた達ならできる。これから先に何が待ち受けていようとも、必ず…。」
サングラスを外し、地平線の先を見つめる。
「この大地を駆けて抜けて、どこまでも走り続けて…。全ての人に希望を……。」
現在、本編の方も執筆中です。
相変わらず、亀投稿になりますが、お待ちくださいませ。