若手の陸自幹部さん、トレセンに行く   作:Ο(オミクロン)

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ご無沙汰しております。
本編投稿の前に少しだけ番外編にお付き合いください。

前半はこの作品の設定的な何か。後半はトレーナー3尉の日常的なものになっています(多分)


番外編③ 自衛隊とウマ娘のあゆみ

自衛隊ウマ娘トレーナー教育課程。

自衛隊所属のウマ娘を指導するトレーナーを養成することを目的に、平成初期に設立された。

 

昭和後期までウマ娘が自衛官になることは認められていなかった。それが平成に入り、ウマ娘にも門戸が開かれることとなった。

ちなみに、ウマ娘が自衛官になることを禁止されていた第一の理由は先の大戦にある。

諸説あるが、連合軍は日本軍のウマ娘に何度も何度も煮え湯を飲まされたそうだ。そのトラウマから、日本のウマ娘を軍事利用することを忌避したかったとか。

自衛隊発足後、ウマ娘にも自衛官の門戸を開くべきという論調はあった。もちろん、当時の政府も国会も検討はしたが結論は出なかった。

しかし、冷戦もあり、キューバ危機以降、議論が急ピッチで進み、あれよあれよとウマ娘への門戸開放の流れになった。まあ、彼女達の教育が始まってすぐに冷戦は終結したわけだが。

 

話を戻そう。

ウマ娘が自衛官として活躍してもらうには、それ相応の教育訓練が必要だ。

その教育訓練が開始される前夜の話をしよう。

1982年。彼女達にヒトと同じ訓練をしても意味がないという課題が生じた。彼女達の身体能力の高さを活用するには、ヒトと同じそれではダメだ。そして、効率よく訓練するには、彼女達の身体やヒトにはない特徴を理解する必要がある。

当然、ウマ娘を指導する教官も必要となる。加えて、部隊で彼女達を統率する指揮官も必要になってくる。

自衛隊はまずその教官と指揮官の養成に着手した。

まずは中央のトレーナーライセンスを保有する自衛官を集めた。ご存知だろうが、中央のトレーナーライセンスは資格取得の難易度が高く、そもそも、そのライセンスがあるならトレセン学園のトレーナーになっているだろうといったところで、その結果は芳しくなかった。後に、地方のトレーナーライセンスも対象にすべきだったと反省することになるが、省略する。

この結果を受け、自衛隊は組織内でトレーナーを養成しようと企図した。だが、前例のないことである。ノウハウはどこで培えばいいのかという課題が立ちはだかった。

そこで自衛隊が目を向けたのが、日本ウマ娘トレーニングセンター学園である。

とりわけ、そこに所属するトレーナーという職に注目した。

トレーナーとしての経験を積むことで、ウマ娘を指導するノウハウを取得できるのではないかと考えたのだ。

自衛隊はURAに交渉し、その結果、1年間、トレセン学園に30名の自衛官を派遣することとなる。これは1985年のことである。

これが自衛隊ウマ娘トレーナー教育課程の先駆けとなる。当時はウマ娘指導官研究課程と呼ばれていた。

 

1期生の1人、巽在明1尉は所感として、この研修は非常に有用であるが、期間が1年間ではノウハウを習得するには不十分であり、少なくとも3年の期間は必要と述べている。

それを受け、2期生以降は3年の期間でカリキュラムが組まれた。また、2期生の隊員は全員、トレーナーライセンスを取得している状態で研修に臨んだ。そのため、人数は10名と少なくなったが、持ち前の知識と現場の経験も合わさって、質の高い成果を持ち帰ることができた。サブトレーナーとして学園のトレーナーを補佐した隊員が多数いたという。

3期生は前年に引き続き、トレーナーライセンス保有者15名が研修に行った。この時から、隊員はトレセン学園において、トレーナーとして学園の生徒と担当契約を結んで共にトゥインクル・シリーズを駆け抜けるようになる。

当然、自衛官に学園の生徒達を任せるのは如何なものかという声もあった。

しかし、それはとある自衛官の担当ウマ娘がG1を制覇したことにより、払拭される。他の隊員も重賞勝利等、優秀な成績を修めることができた。

4期生の隊員達は複数の生徒達と担当契約を結びチームを結成した。これにより、本格的に多数のウマ娘を指導する識能を身につけることができた。

5期生では、URAからの希望もあり、各地方のトレセン学園にも研修に行くことになる。幸いにも、地方トレーナーのライセンスを保有する隊員は多かった。結果、履修者数は過去最大の70名となった。この期から曹は地方へ、幹部は中央のトレセン学園へとわかれて研修が行われた。そのため、地方トレーナーのライセンスを持つ幹部が中央のライセンスを取らされるということも起きたが、これも省略。

このように、年が経つにつれ、教育内容は充実していった。

また、自衛隊はこの課程を希望する隊員で、トレーナーライセンスを持たない隊員に対して資格取得のための支援を実施した。

これは後に、自衛隊ウマ娘トレーナー資格課程として設置される。

 

そして、1989年。ついに、ウマ娘の教育が始まる。とはいえ、当初は3自衛隊合わせてもウマ娘の新入隊員は300人しかいなかった。そして、教官も心許ない人数であった。しかし、それでも教育は行われた。

この年から、自衛隊ウマ娘トレーナー教育課程と名称が改められた。ちなみに別名は、T課程またはトレーナー課程。

平成元年は自衛隊のウマ娘元年になった。

 

時が少し経ち、1995年。阪神淡路大震災が起きる。

この時に、ウマ娘の能力を最大限に活用した災害派遣が行われた。

彼女達は、救助や復興に大きく貢献した。

警備犬と共に、瓦礫に埋もれた要救助者を救出したり、重機を必要とせずに倒木や落石を撤去したり、そして、避難所の支援にあたったウマ娘は被災者にとってアイドル的存在として心の支えになったりと八面六臂の活躍をした。

この災害派遣を期に自衛隊の評価が上がったのは言うまでもないが、あわせて自衛官ウマ娘の注目度も上がった。

 

時は流れ、ウマ娘の教育もその教官の養成も軌道に乗るようになり、自衛隊だけで自己完結できるようになった。

しかし、それでもトレセン学園の派遣が終わることはなかった。

URAたっての希望で自衛官のトレーナーを欲していたのである。

トレセン学園は未曾有のトレーナー不足に陥っていた。結婚、心身の故障等を理由に、退職をしていく者が年々増加しているのが原因だった。そして、難易度の高いライセンス試験を突破する者が減少しており、新人トレーナーをなかなか確保できなかったらしい。

そんな中で、毎年その試験を突破し、3年間しっかりとトレーナーとしてその職を務めあげ、何らかの成果を残している当課程の自衛官は救世主とも言える存在だ。

そんなわけで、URAは自衛隊にトレセン学園へのトレーナー派遣の継続を強く望んだのだった。

これについては内外問わず、やはり批判があった。癒着になるのではないかというのはよく言われた。

しかし、自衛隊としてもURAとの良好な関係を築きたかったことと、質の高い教育を施すにはトレセン学園での経験が必要と判断したため、これを了承した。

そして、今に至る。

 

「『こういった経緯から、自衛官はトレセン学園に派遣されている』と……。」

トレーナー室。

担当の子達のトレーニングも終わり、パソコンでプレゼンテーションを作成している。

以上の語りは全て、トレセン学園の生徒に対する講話の一環として話すものだ。もちろん、内容はもっとソフトで優しい表現にはする予定だが。

これは遡ること、約2週間前…。

 

「要望ッ!この学園の生徒達に対して、講話をお願いしたい!」

秋川理事長に呼び出されたと思えば、急にこんなことを言われた。

びっくりしたね。

隣では、たづなさんが申し訳なさそうな表情を浮かべている。

「あの、急にそんなこと言われても……何を話せば良いんですか?」

「提案ッ!自衛隊について話すのはどうか?我々にとって、自衛隊は近くて遠い存在だ!ぜひとも、君の口からどういった組織か説明してほしい!」

「はあ……。」

「無論、教育隊長殿には話を通しているぞ!自衛官募集に貢献してくれとのことだ。」

少し破天荒なきらいがある教育隊長のことだから、面白そうとか思って承認したのだろう。

…まあ、できないことはないかな。

「わかりました。やってみます。」

こうして、僕は講話に向け準備を進めることになった。後日、生徒の数の関係上、中等部、高等部とに分けて実施すると伝えられた。

準備については、同期や生徒会が協力してくれた。特に、シンボリルドルフには毎日つきっきりで協力してもらった。日々のトレーニングや生徒会の仕事もあるのにも関わらずだ……。

そのことである日、ごめんねと伝えたところ。

「トレーナー君、私は君から謝罪の言葉を聞くために手伝ってるわけじゃないんだよ。それに、君はいつも私達生徒会の仕事を手伝ってくれたり、見えないところで生徒の学園生活の安全を守ってくれたりもしてくれている。感謝してもしきれないよ。報恩謝徳、これくらい手伝わせてくれ。」

と、至近距離でそれはたいそうなイケメンスマイルで言われてしまった。危うく惚れそうになったのはここだけの話。

 

 

体育館。

何度も推敲や発表練習を積み重ね、ついに講話の日を迎える。今回は中等部が対象だ。しかし、何と生徒数の多いことやら。これをあと高等部にもやるのか……。久しぶりに着た制服にも頑張ってもらわなければならない。

「ただ今から、トレーナー3尉による講話を行う。彼は陸上自衛隊から研修のためここに派遣され、現在、私の担当を務めてくれている。ここに来る前は水陸機動団という精鋭部隊で小隊長を務めていた新進気鋭の若手幹部だ。…では、トレーナー君。こちらに。」

シンボリルドルフに誘導され壇上に上がる。そこから辺りを見回す。

うん、やっぱ多い。だが、人前で話すことは慣れている。なんなら得意ともいえる。

「ご紹介に与りましたトレーナー3尉です。まずは自己紹介から……。」

そこからは自衛隊の概要、先述のトレーナー教育課程について、僕自身の経験談を話していった。

最後は質疑応答の時間となる。

「では、質疑応答に入ります。なにか質問ある子はいるかな?」

まあそんなに質問はこないだろうと高を括っていると。

「ハイ!ハイハイ!!」

と手が挙がっているではありませんか。

真っ先に元気良く手を挙げてくれたのは、僕の担当の1人、トウカイテイオーだった。

彼女は、勢いよく起立し、飛び跳ねながら手を挙げている。

「トレーナーの家族は何をしてるの?」

おっと、いきなり僕のことを質問してきたか。プライバシーに関わらない範囲で答えるとしよう。

「父は小倉レース場の警備員、母はトイレで有名な会社の社員、姉は地元の市役所職員、妹は防大生だよ。」

「そっか…なんて言うか…。お堅い仕事が多いね…。」

そうは言ってくれるなテイオー。僕達3きょうだいが公務員になったことを両親は気にしてるんだ。

「…ほ、他に質問がある子はいるかな?」

「はい。」

次に手を挙げてくれたのは、これまた僕の担当のメジロマックイーンだった。

「トレーナーさんの好みの女性は一体どんな方でしょうか…?」

やや控えめな声音と共にまたまた僕に関する質問がきた。

しかし、答えにくい質問だ。思ったことを素直に言っていくか。

「カッコイイ女性、元気な子、お淑やかな子、好奇心旺盛な子、一緒にいて面白い子、庇護欲が掻き立てられる子、魔性な子、好きなものに一直線な子…。」

身近にいる女性の性格を羅列してみた。でも、何よりも。

「夢や目標に向かって努力する人が1番だよね。」

おおーという歓声が上がる。

「ありがとうございます。」

メジロマックイーンは礼儀正しくあいさつし、着席した。

2人の質問を皮切りに生徒達は色々な質問をしてくれた。

「胸元で輝いてるのはなんですか?」

「このバッジのことかな?洋上活動徽章っていって、水陸機動団のある教育を受けたらもらえるんだ。」

「この学園に来て印象に残っていることはありますか?」

「新入生の子達と迷子になったこと、某芦毛のウマ娘に無人島に拉致されたこと、何よりも皇帝シンボリルドルフと契約を結んだことが印象深いね。」

舞台袖にいるシンボリルドルフが嬉しそうに耳を動かしているのが目に入った。

「いつも変な服着てるのはなんで?」

「変な服って言わないで。あれは陸自が昔着てた作業服なんだ。スーツやこの制服より動きやすいから着ているかな。本当は、迷彩の戦闘服もあるんだけど、アレはまあ、ここでは逆に目立つから着てないね。もしかしたら、着る機会はあるのかな?」

どうでもいい話だが、外に出る時はウマ娘教育隊の部隊帽を被っている。最近は、トレセン学園の校章があしらわれた帽子を被るのもアリかなと思っている。

「北九州出身ってことなんですけど、小倉でオススメのデートスポットはありますか?また、彼女をデートに連れて行くならどこに行きますか?」

「うーん…小倉でか…思い浮かばないな。彼女いたことないし。駅周辺かな…?他の街ならあるんだけどね。門司港とかいいかな。」

「ルドルフ会長とはどんな関係ですか?なんか距離近くないですか?付き合ってるんですか?」

「問い詰め方が新聞記者なんよ。彼女とは、担当とトレーナーの関係だよ。距離感については適切だと思います。はい。」

「今、お付き合いされてる方はいますか。」

「なし。」

「そもそもですが、彼女ほしいですか?」

「ほしいです。」

「正直、結婚願望はありますか?」

「ありま……す。」

「奥さんにするならどのような人が良いですか?やっぱ、ルドルフ会長?」

「なんでルドルフがでてくるの!?まあ、そうだね。お互いのことを理解し合えるんならそれで良いかな。」

等々、それはそれは多くの質問をいただいた。ほとんどは僕の恋愛事情に関することだが。この時間は放課後になるギリギリまで続くのだった……。

 

 

「ぬわああああん疲れたもおおおおん。」

トレーナー室。中等部への講話を終えた僕は机に突っ伏していた。

「トレーナー君。今日はお疲れ様。」

そんな僕を労わってか、シンボリルドルフはコーヒーを淹れてくれた。

ありがとう。と顔を上げ、お礼を言う。皇帝にコーヒーを淹れてもらえるとは、なんと贅沢なのだろうか。

「事後のアンケートの結果、とても有意義な時間だったという声が多数だよ。」

見てご覧。と紙束が机に置かれる。手に取って読んでみると、確かに、その意見がたくさん見られた。何が有意義だったかって、質疑応答が有意義だったらしい。

「そんな面白いこと話してないんだよなぁ…。」

「そうとも限らないぞ?多感な皆にとって、君の恋愛事情は刺激的なんだろう。私も君がどういう異性が好みなのか知れて満足だよ。」

「さいですか……。」

改めて、講話の内容を振り返る。

そこから、内容はわかりやすかったか、無駄なところはないか、もう少し話すべきところはあるかを考える。

「質問があるんだ、トレーナー君。」

改善点を考えているとシンボリルドルフから声をかけられる。

「どうした?」

「君の先輩にあたる自衛官トレーナーがここ数年、少なくとも私が在学している間は派遣されていないんだ。その理由は一体何故だい?」

「…あー、上官から聞いた話によると、希望者がいなかったかららしいよ。他にも色々と理由があるっぽいけど。」

それはトレセン学園に来る前に教育隊長や運用訓練幹部から聞いた話だ。

そもそも幹部がライセンス試験をパスできなかったとか、履修者が曹だけだったからだとか。前の教育隊長とトレセン学園理事長の関係が悪すぎたからという話を聞いた。

「でも、来年には何名か来てくれるんじゃないかな?」

あくまでも希望的観測ではある。

今、自衛隊トレーナーは若手幹部が少ない。その確保が課題となっている。それはともかく。

「多分、今年のどこかでこのトレセン学園に見学に来るかもしれないね。恒例なんだ。」

先述のトレーナー資格課程の学生達は、毎年、モチベーション維持・向上のために、レース場とトレセン学園を見学する。そこで将来の自分を思い描いてもらうのである。

「となると、1年後に君にも後輩ができるわけだ。」

「そうなるわけさ。」

色々と教えることはあるだろう。もしも、僕がチームを結成したら未来の後輩はそのサブトレーナーになるのかもしれない。ひょっとすると、ライバルとして立ちはだかるかもしれない。

どちらにせよ楽しみではある。

「さて、高等部への講話の準備もほどほどにしてトレーニングの用意をしますかね。」

グーっと背伸びをして席を立つ。ハンガーに引っ掛けていた65式作業服を手に取る。

「おっと、もうそんな時間なのか。騏驥過隙、君といると時間が経つのが早く感じるよ。」

「そういうものだよ。さあ、ルドルフもトレーニングの準備をしておいで。」

シンボリルドルフに準備を促すと途端にバタンッとドアが開く。

「ヤッホーー!トレーナー!カイチョー!さっきぶりーー!!」

「失礼いたします、お二方。先ほどの講話は大変興味深いものでしたわ。」

片や元気に、方やお淑やかに入室したのはテイマクコンビである。走って来たのか少しだけ息が上がっている。

「お、2人とも思ったより早いね。講話の時間が思ったより長引いたものだからトレーニングに遅れるんじゃないかと心配したよ。そうなると、他のトレーナーのみなさんにも迷惑がかかるからね。」

「大丈夫だよトレーナー!その分ホームルームは短かったし!」

「他のクラスもホームルームが終わっておりましたわ。」

メジロマックイーンの言う通り、外はトレーニングに向かう生徒達が多数見受けられた。高等部の生徒も散見される。

「これだとファインもそろそろ来るだろう。ゴルシは知らん。テイオー、マックイーン、来て直ぐに悪いけど、着替えてトレーニングの準備をしてくれ。」

「「了解!!」」

2人の返事の後、またしてもバタンッとドアが開く。

「ごきげんよう♪わあ!みんなはや〜い!」

ファインモーションのお出ましだ。

「ごきげんよう、ファイン。これからトレーニングだから着替えて…なんだもう着替えているのか。」

「えへへっ。」

ファインモーションはその場でクルリと回ってみせる。

「じゃあ、トレーニングの準備ができたら連絡頼むよ。僕も着替えて準備してくるよ。」

再びハンガーにかかっていた作業服を手に取り退室する。

早いところ動きやすい格好になりたいと考えていたところ、急激に視界が暗くなる。

「ヨッシャア!!野生のトレーナー、ゲットだぜぇ!!!ニックネームは何にしようかなぁ!?」

この声の主は言うまでもなく、ゴールドシップだ。

背後からセミのように張り付いている。腕でヘッドロックされてかなり痛い。

「痛い痛い!いきなり何すんだよ!!」

「いきなり何すんだよと聞かれたら!答えて……待てよ、このくだり前にもやったな。まあいいや。ポ○モンを捕まえるには弱らせてからっていうのはトレーナーの常識だぜ!」

それはトレーナー違いだし、トレーナーを捕まえてどうするのかとツッコミたいことは山ほどある。しかし、そんなことを言っている暇はない。

「とりあえず離してくれ。みんなを待たせる訳にはいかない。」

「おう、そうだな。」

お、意外とあっさり解放してくれるんだな。そう思った瞬間。

「などと、その気になってたお前の姿はお笑いだったぜ。」

「ちょ、ちょっと待って……うわああああっ!!!」

僕は彼女に抱えられて連れ去られていった。

「何事ですの?」

偶然にもトレーナー室からメジロマックイーンが出てくる。

「ゴルシさんがまた何かやってるみたいだねー。」

「懲りないよねー。」

続いて、ファインモーション、トウカイテイオーも出てくる。

「また茶番からの拉致ですか。トレーナーさんもお気の毒に。」

メジロマックイーンは同情するように呟く。

「言ってる場合かー!助けてくれーー!!」

やれやれと言った感じで3人はゴールドシップを追いかけはじめた。

「いや、待てよ。ゴルシ、このままトレセン学園を走り回ってくれないか?今日はこれをトレーニングとしよう。」

「ほう。鬼ごっこがトレーニングか…トレーナー君は奇想天外な考えをする。」

いつの間にかシンボリルドルフに追いつかれていた。獲物を狙うライオンのような目をしている。

「クソっ。さすがはカイチョーさんだぜ!だが、捕まる訳にはいかねえ!トレーナー、スピード上げるぜ!第1戦速!」

君たちは第1戦速以上出せるだろというツッコミは野暮だろう。

「ふむ、ならば私も本気で行くぞ。」

シンボリルドルフも負けじとスピードを上げる。

「あっ!ボクもトレーナー背負って走ってみたい!」

「そういえば、わたくしもヒトを背負って走った経験はありませんわね。なぜでしょうか…興味が湧いてきましたわ!」

「私も!よーし!みんなでゴルシさんを捕まえよう!」

こうして、鬼ごっこという名のトレーニングが始まった。しばらくすると、参加者が増えていた。

「面白そうなことしてるじゃん!トレーナー君。よし、私達のチームも加わるぞ!」

「お兄さま、ライス達も参加するよ!」

「あらあら、みなさん。今日も精一杯トレーニングに励んでますね。くれぐれもケガには気をつけてくださいね。……やっぱり私も混ぜてください。」

ちなみに、この鬼ごっこはたづなさんのワンサイドゲームになるまで続いた。




本編は1章完結分だけ書きだめております。
あとは、見直しをして皆さまにお届けします。
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