実は、家族の女性陣はみんなウマ娘
トレーナーの名前ですが、とりあえず『トレーナー』表記にします。
役職のトレーナーと混ざるかもしれませんが、どうかご了承ください。
今更ながら、名前考えてなかったとは言えない…
それでは、お楽しみください。
「うっへぇ…今日も暑いなぁ……」
あれから時は流れ6月、梅雨の時期だが今日は天気が良くて絶好のトレーニング日和だ。
あれから、色々なウマ娘と出会うことができた。
機会があったらお話しよう。
65式作業服に身を包みながら、同期のトレーナー室へ向かっていた。
「おはよう!」
元気よく挨拶をしてトレーナー室の扉を開ける。そこには、1人の女性自衛官がいた。彼女は、僕の自衛隊同期である女性自衛官(24)だった。
彼女はスーツを着ており、黒色の髪をポニーテールにして纏めている。ちなみに彼女はウマ娘だ。
「おっす〜、起こしてくれてありがとね〜。」
「またこんな時間まで寝ていたの?」
「まあね……最近、仕事が多くてさぁ。まだこの生活に慣れてないし…。」
『URAファイナルズ』と『担当契約書』と書かれた紙を、ヒラヒラさせながら愚痴をこぼしている。彼女もある先輩のもとでサブトレーナーとして活動してたが、その先輩がある日音信不通、そのまま退職となってしまった。
「そっか。大変だなぁ…。」
「そうなのよ。あ、今日は合同トレーニングに誘ってくれてありがとね!」
「良いってことよ。じゃ、僕はこれにて。」
「あいよ〜。」
こうして僕は彼女のトレーナー室を出た。
彼女と対照的に僕は何もすることがないので、ランニングすることに決めた。
「ホンット、いい天気だなぁ……」
太陽にソフトモヒカンの頭を照らされながら、学園内をランニングしていた。
「しかし、大丈夫かな、アレ…。」
ふと、先ほど見た同期の顔を思い出す。相当仕事に追われていたのだろうか、少し疲れたような顔をしていた。先輩トレーナーがいなくなった結果、彼女は早くも5人と担当契約し、チームを作っている。
その上で、理事長が提案した、URAファイナルズ創設にも従事している。いくら優秀な彼女でも、その心労は計り知れないだろう。
しばらく走っていると、ぐぎゅるるるる…。と腹の虫が鳴る。
お腹空いたな。腕時計を見て現在時刻を確認する。1155。もうすぐ昼休みの時間だ。
食堂に行こう。そう思い、速度を上げた。
「おや?トレーナー君じゃないか!」
聞き慣れた声に呼ばれ振り返るとそこには担当の1人、シンボリルドルフがいた。
「やあ、珍しいね。こんな時間にここで会うなんて。」
「ああ、少し諸用があってね。そういう君はどうしたんだい?」
「僕はこれから食堂に行くところなんだ。」
「ほう、そうなのか。良かったら、一緒に食べないか?」
「うん、良いよ」
「よし、決まりだ。では、行くぞ!」
僕たちは並んで歩き出した。
しばらくすると後ろから足音が聞こえてきた。振り向くと、そこにいたのは、同じく担当のトウカイテイオーだった。彼女は、ボクもカイチョーと一緒に頑張りたいと契約を申し出てくれたのだ。
「あっれぇ? トレーナーとカイチョーじゃん! 何してんのぉ?」
「おお、テイオーか。私はこれから彼と昼食を食べようと思っていてね。」
「え!?︎ トレーナーとご飯食べるの!?︎ ずるぅーい!!ボクもトレーナーと一緒に食べたいなぁー!」
「ハハハ…。テイオー、そんなに怒らないでくれ。」
「むぅー!」
トウカイテイオーは頬を膨らませている。
僕はそれを横目に苦笑いしながら、2人に言った。
「あのさ、せっかくだし3人で食べない?」
「いいの!?トレーナー?ヤッター!!早く行こ!!」
「フフッ。良かったな、テイオー。」
3人は仲良く食堂に向かっていった。
それからしばらくして……。
「ねえ、トレーナー。」
「ん?」
「トレーナーってさ、自衛隊ではどんな仕事をしていたの?」
「急になんだい?」
「だって気になるんだもん。」
「そうだなぁ……自衛隊にいた時か……。」
少し考えた。実のところ、現場の経験はまだ浅い。ほとんどは教育を受けるばかりで語れることはあまりない。
もちろん、幹候学校や水機団での日々は濃密ではあった。
「教育ばかりだったかな。」
「そうなの?」
「うん。でも、ウマ娘達のために何かしたいとは思っていたかな」
「へー、例えば?」
「それは秘密だよ。」
「ちぇー、ケチぃ。」
トウカイテイオーは口を尖らせた。そんな彼女に僕は笑って言う。
「ははは、ごめんごめん。まあ、トレーナーになった以上、頑張るつもりだから応援よろしくね!」
「もちろんだよ!」
「当たり前だろう?」
2人とも口々に言う。それを聞いて嬉しく思う。
「ありがとう。じゃ、午後からも頑張っていこうか!」
「「おー!!!」
⏰
その日の夜……。
「はぁ〜……疲れた〜……」
寮にある自室のベッドで大の字になって寝転んでいた。
トレーナーの仕事はハードだがやりがいもある。
今日は金曜日なので、土日は休日となる。そのため、2人のトレーニングは休みにしている。
ただ、自主トレとして走り込みや筋トレなどをしても構わないと伝えている。
それに付き合うのも良いかもしれない。しかし、何かイベントがあったような気がする。
「……寝るか。」
そんなことは気にせず、明日は何もしないことに決めた。
そして、次の日。
時刻は0600になる。いつものように目を覚ます。
「あー…。いつものクセで起きてしまった…。」
今日一日は寝て過ごそうと考えていたので、もう一度タオルケットを被る。
おやすみ。
2度寝していると、ドアをノックする音とともに声が聞こえる。
「おはようございます!朝ですよ!」
「んー…騒々しいなぁ…。」
大声で叫ぶ訪問客に文句を言いながら起き上がり、玄関のドアを開ける。
訪ねてきたのはトレーナー同期の桐生院葵さんだ。彼女とは意見交換や合同トレーニングと何かとお世話になっている。担当のハッピーミークにも併走でお世話になっている。同期の女性自衛官とは大変仲が良い。
「早くしないと遅刻しますよ?」
「ん~?もうそんな時間ですか?」
「もう8時ですけど!?」
8時と言われてもまだ眠い。僕は三度寝しようとベッドに向かうも、再び彼女の声で邪魔される。
「早く支度して下さい!今日は大事な日でしょう!?」
「何かあったかな・・・。」
今日は確か・・・。ああそうだ。今日は土曜日だったね。休みなのに起きちゃってどうすんだろ。
「何を言ってるんですか!今日は選抜レースがあるじゃないですか!!」
「ああっ!!」
そういえば選抜レースのある日だった。忘れていた。すっかり1日中寝るつもりでいた。
「今からでも遅くないんで、一緒に行きましょう!」
「行かなきゃダメ?」
「ダメです!!行かないと困るのは貴方ですよ!?」
この人は僕の母親か何かだろうか。まあいいや。着替えるか。
少し待ってくださいと桐生院さんに伝え、着替えに部屋に戻る。
作業服を着て、玄関へ向かう。
「あのぉ・・・。」
「どうしました?」
「その格好は何なんでしょうか?」
「これ?これは自衛隊のOD作業服ですよ。」
「それはわかりますけど…。どうしてそんな格好をしているんですか?」
彼女の目にこれは奇抜に映るのだろう。
「だってこれ、動きやすいですし。」
「そういう問題じゃありません!ウマ娘に対しては服装から真摯に向き合うべきです!」
彼女はそう熱論する。真面目な方だ。
別にいいではないか。楽なんだし。
「せめてスーツとかにしませんか?」
「持ってないです。」
持ってたやつは燃えてお亡くなりになられた。
「だったら買ってください!」
さっきから彼女が言うことはもっともなのだが、それはさすがに面倒だ。
何とか彼女を説得し、学園のレース場へと向かう。
しばらく歩くと、集合場所である学園のレース場に到着した。すでに多くのトレーナーが集まっており、今か今かと待機していた。
そして、しばらくすると一人の女性が歩いてくる。
「全員揃っていますね。それではこれより選抜レースを始めます。」
いよいよ始まるようだ。さっきまで騒いでいた人も静かになり、みんな真剣な表情になる。
⏰
選抜レースが終わり、トレーナー達は各々気になったウマ娘に声をかけている。そんな中、僕はというと特に誰とも契約できずにいた。
いや、声をかけようとはしたが、避けられてしまった。
気になるウマ娘もいたが、見当たらない。
いつの間にか、桐生院さんの姿もない。僕をここまで送り届けて帰ったのだろう。
「運がなかったか…。」
そう落ち込んでいると、ある女性に話しかけられる。
「トレーナーさん。お疲れ様です。」
理事長秘書の駿川たづなさんだ。
「お疲れ様です。たづなさん。こんなところで何をされているんですか?」
「私もレースを見に来たのですよ。」
「そうなんですね。それにしても凄かったですね。どの子も速かった。」
「はい。皆さん、とても素晴らしい素質をお持ちの娘ばかりです。」
確かにどれも良い走りをするウマ娘ばかりだった。
「それで、あなたはどの娘と契約するつもりだったんですか?」
「僕はですね…。」
言い終わる前に彼女は続ける。
「あら、あの芦毛の子がこちらを見てますね。あの娘は確か…。」
「えっ?」
彼女は僕の後ろを指差した。振り返るとそこには一際目を引くウマ娘がいた。優雅な佇まいが印象的だ。
そして、その娘こそ、僕が気になるウマ娘だった。トウカイテイオーのクラスメイトで、かなりの実力を秘めていることがひと目でわかる。
ただ、今回は調子が悪かったのか、あまり良い順位ではなかった。
「名門メジロ家の令嬢にして、最強のステイヤーとなる可能性を秘めたウマ娘、メジロマックイーンさんですね。」
「ウソっ。メジロ家!?」
その娘は、誰もが1度は聞いたことある名門中の名門出身だった。
僕が声をかけるよりも先に、彼女は真っ直ぐ僕の方に向かってきた。
「ご無沙汰しております。改めて、私の名前はメジロマックイーンと申します。突然ですが、どうか、私のトレーナーになって下さい!」
「えっ?僕が君の?」
突然すぎて理解が追いつかない。
「はい!」
彼女は力強く返事をした。
「でも僕なんかで本当に大丈夫なの?」
「はい!貴方とならきっと、天皇賞をとることができると考えております。」
彼女はじっと僕の顔を見つめてくる。
面食らったが、願ったり叶ったりではある。
「わかった。君と契約するよ。」
「ありがとうございます!」
こうして僕は、3人目の担当を持つことになった。
⏰
月曜日のトレーニングの時間。
「ハイ、というわけで新しい仲間が増えました〜。今日からトレーニングに参加することになりま〜す。」
メジロマックイーンをシンボリルドルフとトウカイテイオーに紹介する。
「メジロ家より参りました。メジロマックイーンと申します。よろしくお願いします。」
「ああ、シンボリルドルフだ。これからよろしく頼む。」
「マックイーン!これからトレーニングも一緒だね!ボク、負けないよ!」
「ええ、もちろんです。私もテイオーさんに遅れをとるつもりはありませんわ。」
二人共やる気満々といった感じだ。お互いに切磋琢磨し合えるというのは良いことだ。
「では、早速トレーニングを始めよう。今日はスピードトレーニングを行う。君達の最高速度を高めていきたい。」
「はい!よろしくお願いします!」
「うんっ!頑張るぞー!!」
2人はやる気まんまんといったところだ。
シンボリルドルフはそんな2人を微笑ましく見つめていた。
最高速度を高めるためには、ピッチとストライドが大切だと言われている。ピッチとは1歩踏み出すときの速さのこと、ストライドとは1歩踏み出すときの歩幅のことである。
この組み合わせがキモになってくる。
歩幅を長めにとり、ピッチを早くすれば速度が上がるということだ。
しかし、ただそうすれば良いとは言えない。
ピッチを上げれば、その分速く進めるようになるのだが、ストライドが短くなってしまう。つまり、足をはやく動かしてるだけでそんなに進まないのである。
反対に、ストライドを長くすると、ピッチが遅くなってしまう。これは減速にもつながる。
したがって、この二つを上手く調整しながら走らなければならない。
それを体得させるのが目標である。
以上のことを3人に伝える。
「まずは、私がやってみせよう。」
やってみせということで、シンボリルドルフは走り出した。
さすがは三冠ウマ娘というべきか。
圧倒的なスピードだ。しかも無駄がない。
まるで風のように走る姿はとても美しかった。
「こんなものかな。お手本になったかい?」
「すごいですわ……!」
「かっこいい……!」
メジロマックイーンとトウカイテイオーが思わず感嘆の声をあげる。
「このように、ピッチとストライドが噛み合うと速く走れるんだ。じゃあ、君達もやってみようか。」
二人に指示して走ってもらった。
「こんなものかな!」
「いかがでしょうか?」
2人とも悪くはなかったが、多分に伸びしろがある。さらに回数を積めば、もっと速くなるだろう。
そのことをそのまま2人に伝える。
「ありがとうございます!まだまだ頑張りますわ!」
「ボクだって負けないもんね!よーし、もう一度だ!」
「私も、もう一度やってみます。」
2人は何度も繰り返し走った。その度に上達しているのを感じる。要領が良いというのか、飲み込みが早い。
日が落ちてきた。今日のトレーニングはここで終わりとする。
「よし、今日はここでおしまい。各自、ストレッチを忘れないようにね。」
「ああ、わかった。」
「オーケー!」
「かしこまりましたわ。」
3人が返事をする。
ストレッチが終わり、トレーナー室へ戻る。
「トレーナーさん。少し、よろしいでしょうか?」
「どうした?マックイーン。」
「トレーナーさんは今年初めてここで働くのですよね?」
「そうだね。それがどうかしたの?」
「いえ、3人も担当がいて大丈夫なのですか?」
「どういうこと?」
質問の意図がわからず聞き返す。
「えっとですね……。いきなり3人の面倒を見切れるのかという不安があります。能力的にではなく、負担が大きすぎるのではと心配しています。」
確かに、彼女の心配はもっとものことだ。
新人がいきなり3人も担当することはあまりない。
それに、仕事にまだ慣れない中で多人数と契約するのは無茶ともいえる。
しかし、そうは言ってられない。
「マックイーン。」
僕は真剣に答えようとする。
「確かに君の言う通り、負担はある。でもね、それは同時にやりがいでもあるんだよ。」
「やりがいですか。」
「うん。僕はトレーナーとして、ウマ娘の夢のお手伝いがしたい。ウマ娘のために全力を尽くすことが僕のやりたいことなんだ。だから、例え大変であっても、やり遂げてみたいんだ。」
「トレーナーさん……。」
「まぁ、そんな感じだよ。」
言ってて非常に照れくさい。
しかし、マックイーンは納得してくれたようだ。
「私の考えすぎだったようです。申し訳ございません。」
「大丈夫だよマックイーン。これから天皇賞制覇に向けて共に頑張ろうね。」
「はい!改めて、よろしくお願いしますわ!」
⏰
3人がトレーナー室を退出し、書類仕事も終わったので、学園を散歩してみる。
敷地の広さにいまだに圧倒されるものの、概ねどこがどこだかがわかってきた。
ある場所へ足を運ぶ。
そこは校舎内にある理科室みたいな所だ。
窓から怪しい液体が見える。
何の部屋なんだろうか気になる。
すると、突然扉が開いた。
「うわっ!びっくりした〜。」
「おや、トレーナー君じゃないか、どうしたんだい?こんな所で。」
そこには、白衣を着たウマ娘がいた。
「あれ?タキオンじゃないか。」
アグネスタキオン。彼女は同期のチームの一員で、よく実験をしているらしい。
なるほど、ここは彼女の研究室なのか。
「ここで話すのも何だから、中に入ると良い。歓迎するよ。」
彼女の言葉に甘えて研究室に入れてもらう。
「……あ、こんにちは……トレーナーさん。」
先客がいたようだ。
彼女はマンハッタンカフェ。アグネスタキオンと同じく、同期のチームの一員である。ミステリアスな子である。
そして、初めて見るピンクの髪の子。
彼女は…。
「彼女はアグネスデジタル。今は寝てしまっているが、面白い子だよ。」
寝てるのか?死んでるように見える。
「アグネスデジタルです!よろしくお願いしましゅ!」
起きた。いや、生き返った?
「トレーナーだ。よろしくね。」
挨拶を返す。
「ああ、そういえば、用事があるんだった。私はこれで失礼するよ。」
「……私もです。トレーナーさん…デジタルさん…失礼致します……。」
そう言い残して、2人は部屋を出ていった。
待て待て、急に初対面の人と2人きりですか!?
「あの…トレーナーしゃん……。」
アグネスデジタルに話しかけられる。
「どうしたんだい?」
「少し、お話をしませんか?」
アグネスデジタルの話を聴くことにした。
その話とは、ウマ娘についてのことだった。
どんなところが好きだとか、推しが尊すぎて辛いとか、己のウマ娘愛存分に語ってくれた。
彼女の言っていることは大変理解できるものだった。
自然に自分も語ってしまった。
彼女はそれを否定せずにうなづいてくれる。
「あなたからはあたしと同じ仲間の匂いがします。 」
「仲間?」
「はい!ウマ娘を愛している者!」
「そっか、じゃあ僕達は同志だね。」
「同志…。はいっ!」
同志との語り合いは夜の帳が降りるまで続いた。
「やはり2人はお似合いのようだねぇ…。」
「トレーナーさんには少し気の毒だと思いましたが…なによりです……。」
⏰
トレーナー寮の自室。
僕は今日あったことを思い返しながら、自衛隊に提出する所感分を書いている。
「気づけば2ヶ月経ってるけど、何とかやっていけそうだな。」
そんなことを考えているとノック音がした。
「トレーナー君。少し、いいかな?」
来訪者は同期だった。
彼女の来訪と共に、メールの通知が来た。
2話目も読んでいただき、ありがとうございます!そして、感想、誤字報告、お気に入り、ありがとうございます!励みになります。
そんなこんなにしているうちに、本日、大学を卒業しました。しばらくは無職です。