府中市トレセン学園から1km圏内。
「同期…妹…。どうしてこんな所に……。」
「こんな所とはとんだご挨拶だね。何、同期の無様な姿を拝みに来ただけさ。」
そう言うと彼女は妹を起こし、拳銃を突きつける。
「選べ。今すぐ貴様の部隊を撤収するかここでコイツの命を消し飛ばすかだ。」
「撤収する。だから妹は解放してくれ。」
「隊長!?」
同期からの2択に即答すると隊員達が抗議の目を向けてくる。しかし、今はそんなことを気にしている場合では無い。
「ほぅ。任務や部下よりも家族を優先させるか。自衛官失格だな。」
「何とでも言うと良いさ。家族を見捨てる方がどうかしてる。『ここ』は撤退するぞ!」
『ここ』という言葉の真意を理解してくれたのか隊員達は撤退しようとする。
しかし…。
「誰がお前達を生かして帰すと言った?」
「えっ?」
僕が振り向くと同時に銃声が鳴る。
そして次の瞬間には、分隊長が頭を撃ち抜かれて倒れていた。
「「「「分隊長ぉおおお!!」」」」隊員達が悲痛な叫びを上げる中、僕は彼女に話しかけた。
「……どうしてこんなことを?」
今まで共に死戦を乗り越えてきた仲間が目の前で死んだという事実に動揺を覚える。
「どうして?面白いことを聞くね。簡単だよ。敵だから殺しただけ。」
彼女はただ淡々と話すだけだった。
「こっちにはもう戦う意思はなかったぞ!」
「甘いことを言うな貴様は。どうせここで撤退しても別ルートで攻めてくるだろう?だから、脅威を早めに排除した。ここで貴様を殺しても良いけど、それは面白くない。」
そう言って同期は妹を解放する。すかさず、妹を保護する。
「大丈夫だったか?」
「お兄ちゃん……。」
妹はまだ震えているようだったが無事そうだ。ひとまず安心だ。
しかし、その安心もつかの間。
またしても銃声が聞こえた。それも数発。
気が付くと、武装したウマ娘に囲まれていた。そして、全隊員が撃ち抜かれ血の池を作っていた。
「嘘だろ……。みんなぁああ!!!」
「あっははははっ!良い顔だトレーナー君!その顔が見たかったんだよ!家族も部下も守ろうとしたのは良かったけど、その結果がこれだ!落ちてくる実は全て拾うことはできないんだよ!さて。」
同期はひとしきり笑った後、妹に向き直る。
「もう芝居はいいでしょ妹ちゃん。やっちゃいな。」
「了解。同期さん。」
「な、何を…。」
すると、妹は飴を咥え僕を逃すまいとホールドする。
さらに顔を固定され口移しで飴を咥えさせられた。次第に強烈な眠気が襲ってきた。
「おやすみなさい。おマヌケお兄ちゃん。」
意識が飛ぶ前に見えたのはこちらを嘲笑う2人の姿であった。
⏰
トレセン学園グラウンド。
「無人機による化学兵器の投下確認。目標である全国主要基地・駐屯地に効果が出てます。」
「風船爆弾は既に打ち上げ、いくつかは各所にて薬をばらまいています。懸念の航空自衛隊も大きな動きは見せていません。」
「いいぞ。あとはこの砲弾を撃ち込むだけだ。」
首謀者川原は相変わらず下卑た笑みを浮かべる。
知らぬうちに日本崩壊のカウントダウンは始まっていた。
「陸上自衛隊の様子はどうだ?」
「はい。第1師団隷下部隊は薬の効果でまもなく壊滅します。その上級部隊である東部方面隊も混乱状態に。関東・甲信越は陸上総隊隷下部隊を除き脅威は無いものと思われます。」
「他の地区はどうだ?」
「はい、北海道・東北は一部で混乱状態。近畿・中国は同じく混乱状態!しかし、九州・沖縄は未だ確認できておりません!理由は不明です。」
「上々だな!あとは師団規模で潰れてくれりゃコッチのもんだ。」
「無傷な陸上総隊隷下部隊は如何されますか。」
「あぁ。いくら精鋭揃いでもウマ娘の力を持ってすれば赤子に過ぎん。各地で反乱したウマ娘を扇動して対処する。」
「扇動…どのようにしてですか?」
「それを言ったら面白くないだろ。クックック…。」
「そうですね。失礼しました。」
「海空自衛隊もまもなく機能不全に陥るだろう。そうなれば日本の制圧など容易い!」
「自衛隊を抑えればこうも簡単にいくとは……。おみそれしました。」
「なに、日本で派手にドンパチやるには自衛隊動かせばいいってのは誰でも考えると思うぜ?さて…。」
川原は手を掲げる。
「最終段階に移行する!砲弾撃ち方用意!千代田区にぶち込むぞ。国政をめちゃくちゃにしてやる!」
川原の魔の手は遂に政治の中枢にまで伸びようとしていた。
⏰
朝霞駐屯地。陸上総隊司令部。
「総理官邸より連絡です!現在反乱を起こしている自衛隊部隊をクーデターと認定。鎮圧のために武器の使用を許可するとのことです!」
陸上総隊司令官、吉村豊は静かに頷いた。
「わかった。各出動部隊に通達しろ。」
「了解!」
彼の命により幕僚達は慌ただしく通信機器を操作する。
「しかし、困りましたね司令官。首都防衛の要である第1師団が壊滅寸前となるとは……。」
「全くだ。練馬の方は全滅。残る1師団だが、32、34普連隊も時間の問題。各隷下部隊も半数近くが戦闘不能。これはひどい。」
吉村はコーヒーを飲みながら苦い顔をする。
「東部方面隊規模で見ましても、如何ともし難い状況です。12旅団をはじめ各部隊も離反者が続出。こちらはウマ娘のみならず、彼女らに唆された隊員も含まれます。」
「唯一の救いは、我が隷下部隊が健在であることです。」
「そうだな。彼らさえいればあるいは…。だが、問題は…。」
「各地の状況ですね…。」
「西部以外は把握してるが、どこもかしこも酷い有様だ。」
「その西部方面隊ですが…。」
「相変わらず音信不通だろ?原因がわからん以上、どうしようもないな。」
「いえ、先ほど西部方面総監部より報告がありまして……。」
「本当か!?何と。」
「はい。情報を集めたところ、反乱の兆しは見られないとのことでした。」「おお。それは朗報だな。しかし何故西部方面隊は音信不通だったんだ?」
「それが、何かに妨害されていたらしく詳細はわからないとの事です。」
「何かかなりご都合を感じる理由だな…。だが、西部が無事なのはでかいぞ!」
「はい!これで多少なりと状況は改善されるかもしれません!」
吉村が声音を上げると幕僚達の顔にも希望の光が差す。
「よし、すぐに西部方面総監部に連絡をとれ。4師団から援軍を送れとな。」
「了解です。隷下の水陸機動団はどうしますか?」
「…そうだな。水機団は8師団と共に西日本の防衛に当たらせよう。」
「わかりました。至急手配します!」
「頼んだぞ。」
吉村はそう言うと椅子に深く腰掛ける。
陸上総隊司令官の決断から数時間後、第1師団司令部。
「もうダメだ…お終いだ……!」
練馬駐屯地司令こと第1師団副師団長は絶望に打ちひしがれていた。
「なぜだ…。なぜアイツらは裏切った……。」
「副師団長、落ち込んでいても仕方ない。」
「師団長は!なぜこのような状況でも平然としていられるのですか!」
冷静な表情を浮かべる師団長に詰め寄る副師団長。彼の情緒はもはや正常ではなかった。
数刻前、1普連の全滅を司令部は知った。次の一手を打とうとしたその時、突如通信が途絶したのだ。不審に思った副師団長はすぐに調査を命じたが、その結果は最悪なものになった。以下は第1師団壊滅状態の詳細である。
残る2コ普通科連隊は離反したウマ娘によって壊滅。後方支援連隊、通信大隊、特殊武器防護隊も機能不全に陥った。
第1特科隊は離反。これが痛手となった。砲弾により各部隊は大きな損耗を受けた。
残る偵察戦闘大隊、高射特科大隊、施設大隊、飛行隊は辛うじて存命していたが、もはや組織的な行動は不可能だった。生き残った隊員によると、弾着した飛翔物と謎の音声データによりウマ娘の隊員が急に離反したとのこと。
ともかく、戦闘損耗と非戦闘損耗により第1師団は戦うための戦力を失ったに等しい。
「失礼します。」
そんな時、1人の隊員が入ってきた。隊員という言葉で済ますには階級は高いが。
「おお、確か…中即連の隊長か。どうしてここに?」
「は、はい。ええと、端的に言いますと…あなた方に代わり、我々が当事案に対処することになりました。そ、そのことを伝えに参りました。」
副師団長の問いかけに中即連隊長は若干声を震わせながら答える。
「そうか。となると我々は…。」
「お役御免といったところだな。」
師団長のその言葉に中即連隊長は申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「良いんだ連隊長殿、そんな顔をしないでくれ。責められるべきは私なんだ。彼女達に銃を向けるのを恐れ、部下を死なせるのを恐れ、世間の声を恐れ、行動に移せなかった。その結果がこの有様だ。」
「師団長…。」
「首都防衛の要たる第1師団を敗北させてしまったのは私の責任だ。別働隊の隊長から有益な情報を得たにもかかわらず、それを無視した。こんな無能な私を上層部は許さないだろう。」
自嘲気味に笑う師団長。
「中即連が来てくれてありがたいと思っているよ。君達ならば、この争いを鎮めてくれると信じている。」
「あ、ありがとうございます。か、必ずやこの事態を収めてみせましょう。」
そうして、中即連隊長は退室していった。
⏰
ふと目が覚める。視界には見慣れた部屋が目に入る。
ここは1ヶ月前にトレーナー室として使っていたプレハブ小屋だ。私物もいくつか残っている。ただ、ひどい有様だ。壁には穴が空いてるし、床はめくれている。天井も所々剥げていてボロボロだ。
「うっ。いたたたた……。」
床に雑魚寝させられていたため身体が痛む。痛みに耐えながら起き上がる。
起き上がったところでやることもない。むしろ下手に動かない方が身のためだろう。
外では銃撃の音がする。近くで戦闘をやっているのだろうか。
今思うとトレセン学園が戦場になるとは思いもしなかった。たった1人の陰謀により、日本を巻き込む騒動になるとは。とはいえ、自分もその騒動の一端だ。それどころか主要人物である。
しかし、川原はどうやってウマ娘達をあそこまで扇動したのだろうか?単に好感度が反転して悪くなっただけではここまで大規模な暴動は起こせないはずだ。
壊れかけのパイプイスに座りながら思考する。すると、部屋の扉が開いた。
「何奴!?」
咄嵯に身構えるとそこには……。
「やぁ、久しぶりだね。」
シンボリルドルフが立っていた。
「ルドルフ…。」
「調子はどうかな?」
穏やかな口調に反し、敵愾心が伺える。
「どうって、最悪に決まってるでしょ。」
「ハハッ。それは良かった。」
「は?」
「いや、こちらの話さ。」
「で、何しに来たの?」
「いやなに、少し話でもしようと思ってね。」
そう言うと彼女は近くのパイプ椅子に腰掛ける。
「川原トレーナーの悲願。それがまもなく始動する。」
「川原の悲願…。」
「ああ。彼の願いはウマ娘の楽園を作ることだ。」
そう言うと、彼女は語り始めた。
「我々ウマ娘は古来よりヒトと共にあった。時としてウマ娘が歴史の主役となったこともある。しかし、今はどうだ。」
彼女の瞳孔は開いており、怒りに満ちていた。
「ウマ娘の参政権を認めない国、ウマ娘を排斥しようとする団体、そして、ウマ娘の力を利用しようとする人間がいる!川原トレーナーは、そんな世界を変えようとしているんだ!」
「世界を……。」
「そうだ!全てのウマ娘が幸せになれる!そんな世界にしたいと言っていた!その一歩としてこの日本を
ウマ娘国家にするんだ!」
「そのためにウマ娘によるクーデターを起こしたというのか?」
「そうだ!ウマ娘のためのウマ娘によるウマ娘のための世界を作る!その魁はこの日本だ!我々の悲願は何者にも邪魔はさせない!」
シンボリルドルフは拳を強く握りしめ、熱弁を振るう。
「さて、話はこれで終わりだ。貴様には我らの悲願成就を見届けてもらう。着いてこい!」
そういうと、シンボリルドルフは出口へと向かう。
着いてこいと言われたので彼女に着いて行くことにした。
外に出てみると、そこは地獄絵図だった。
至るところで戦闘が繰り広げられており、隊員の遺体がこれまた至るところに転がっていた。
その中をシンボリルドルフは気にも止めず歩いていく。
「どうした?早く着いてこい。」
促されるままに彼女に着いて行くと、足で何かを蹴飛ばした感触がする。
「これは…。」
死亡した隊員が携行していたであろう手榴弾だった。しかし、安全ピンは外れていた。
「逃げろルドルフ!爆発するぞ!」
「え?は?」
状況を飲み込めていない彼女を尻目にその場から走り去ったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーー
結局、爆発音がしなかったからことからあの手榴弾は不発弾だったのだろう。
ともかく、シンボリルドルフを撒いた形になった。
現在地を確認する。近くにグラウンドが視認できる。トレーナー室からかなり移動したようだ。
「ん?」
グラウンドをさらに注目してみる。
なんということだろうか。MLRS、中多、それにおびただしい数の火砲があるではないか。TPOが違えば非常にワクワクしたものを。
もしかすると特科陣地として使われているのかもしれない。
「ようこそ、我が隊へ。歓迎するよドブネズミ君。」
声のした方を見ると、そこには妙齢のウマ娘の自衛官が立っていた。
「私はリベリオンナイト。階級は1等陸尉。この反乱軍の指揮官さ。」
指揮官臨場といったところか。
「これはどうも。指揮官自らお出迎えされるとは光栄ですよ。」
皮肉を込めて言い返すと、相手は笑った。
「フッ。そうかいそうかい。まあ、すぐにおさらばすることにはなるのだがね。」
そう言うと、彼女は拳銃を取り出した。
「川原殿のため、我らの夢のため、ここで死ね!」
引き金が引かれる。死を覚悟したが、銃弾は飛んでこなかった。
「チッ、運の良いやつ。」
どうやら弾詰まりが起きているみたいだ。これはチャンスだ。
彼女が故障排除している間に逃走を試みる。
「逃がすか!」
だが、そう上手くはいかなかった。拳銃を捨てて追いかけてきた。
どう足掻いてもウマ娘から逃げ切れるわけがなくすぐ追いつかれる。
「クソッタレ……。」
こうなった以上戦うしかないだろう。しかし、勝てる見込みは少ない。一か八かである。
「ほう、私と戦うつもりかね?いいだろう。軽く遊んでやろう。」
そういうと、彼女は身軽になるべく、装具や上衣、半長靴を脱ぎ捨てる。戦闘地域であえて己の防御力を減らすのは余裕のあらわれだろう。
「いくぞ!」
先に仕掛けたのはリベリオンナイトだった。素足で地を蹴り、こちらに肉薄してくる。
「ふん!」
彼女の飛び蹴りが顔面目掛けて飛んでくる。それを間一髪避ける。
「おわぁ…。」
なんということだろうか、彼女が着地した地面は抉れていた。あんな蹴りをまともに喰らえば即死だ。
「よく避けたな。だが、いい気になるな。」
今度は拳が飛んできた。避けようとするが頬に掠ってしまった。
「ッつ!」
拳が当たった箇所がジンジンと痛む。
「どうだ?己の非力さ思い知ったか?」
ニヤリと笑う彼女を見て、恐怖を覚えた。
「さあ、どんどん行くぞ!」
次々と拳や脚技が繰り出される。なんとかギリギリで回避していくが、反撃できる隙がない。彼女の攻撃を避けるうちに何かにつまづく。どうやら、死亡した隊員に足をとられたようだ。追撃を食らう前に立ち上がる。
「ん?これは…。」
隊員の横を見ると、89式小銃が置いてあった。悪いが、使わせてもらおう。
銃を手に取り、据銃する。
「無駄だ!」
臆することなく突っ込んでくる彼女に照準を合わせる。
呼吸を整え、引き金を引く。
タンッ!という音と共に弾丸が発射される。彼女の前進を止めるにはこの一発で事足りた。
弾は彼女の脇腹に命中した。
「ぐっ!」
苦痛の声を上げ地面に倒れ込む彼女。「くそ!こんなもので!」
まだ諦めていないのか、立ち上がり近づいてくる。
往生際が悪い。
2発、3発と続けて撃つ。2発とも両脚に当たった。
「うぅ…!脚がァァアア!」
再び彼女は地に倒れ込んだ。
ウマ娘の象徴ともいえる脚を潰した。
楽にしてあげようと、彼女に近づき、銃口を向ける。
「私を殺すのか!ハハッ!ならそうすると良い!だが、貴様が何をしたって手遅れだ。まもなく、千代田区に向け砲弾が発射される。そうなればこの国はおわりだ!そして、我々の国家が生まれる!」
「それまでにあの特科陣地を潰すまでだ。」
「ああ残念だったな。あの陣地は偽物だ。本物は今まさに目的地に到着している!」
「なんだと?」
「貴様に勝ち目は最初から無かったんだよ!ハハハッ……。」
怒りに任せて撃発する。頭部を撃ち抜いた。
「クソが。」
物言わぬ屍となったリベリオンナイトを蹴飛ばし、この騒動の現況である男のもとに向かうのであった。
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トレセン学園理事長室。
「第1特科隊より報告。千代田区の重要施設への弾着確認。現在、成果を調査中です。」
「了解した。これで日本は変わる。」報告を聞くと川原は満足気に呟いた。
「後は不穏分子を取り除くだけだ。といっても中即連や空挺じゃねぇ。」「では、誰ですか?」
「お前もよく知ってるヤツだよ。」
「まさか!?」
「川原ァ!」
「よぉ、遅かったじゃないか。トレーナーさんよぉ?ハハッ、すげえ血みどろじゃねえか。ここに来るまで一体何人殺して来たんだ?」
「黙れ。」
「まあいい。そんなことよりも、俺の計画を邪魔してくれた落とし前をつけさせてもらわないといけねぇよなぁ?おい、お前らやっちまえ。」
「「「「はい!」」」」
川原の指示を受け、目出し帽を被った彼の部下が一斉に襲いかかってくる。
またしても相手はウマ娘だ。さてどうしようか。
「はあっ!」
短剣を持ったウマ娘の攻撃を紙一重で避ける。
「甘い!」
「グッ!」
相手の蹴りが顔面に直撃しそうになるが、腕でガードする。
しかし、衝撃を抑えきれず吹き飛ばされてしまう。
「もらった!」
飛ばされた先で3人目のウマ娘に腕を掴まれ地面に押さえ込まれる。この動きは合気道だろうか。
「クソッ!」
「これでおしまい。」
4人目のウマ娘に首を絞められナイフを突きつけられる。
「あぁそうか…君達は…。」
4人が何者なのかに気づく。それは僕が守りたかった存在。
「妹、同期。それに、ライス…カレン…。」
「サヨナラ。」
ザクリッ。ナイフが胸を貫いた。
「ゴフッ!」
口から大量の血液が吐き出される。
「ほう。まだ生きていたのか。」
足音がさらに増える。
「ルドルフ…。」
シンボリルドルフだけじゃない。トウカイテイオーやメジロマックイーンの姿もある。
「でも、もうすぐくたばりそうだね。」
「このまま放置しておきませんこと?」
彼女たちは冷たい目でこちらを見下していた。
「僕は……。」
「まだ喋れるのか。しぶといな。」
シンボリルドルフに横腹を蹴飛ばされる。
「うがぁっ!」
無様に地べたを転がりまわる。歯を食いしばって痛みに耐える。しかし、もう虫の息だ。
「まだ生きてますわ!」
5人のウマ娘がこちらに向かってくる。
「そろそろ楽にしてあげよう。」
その言葉と同時に6人は足を振り上げる。
「さようなら。」
6つの靴底が僕の身体に降り注いだ。
「あ……。」
意識が遠退いて行く……。
最後に視界に入ったのはーー彼女達の絶望した表情だった。
⏰
朝霞駐屯地近傍。
「陸上総隊の部隊も苦戦。内閣も国会もすでに壊滅。日本はもう終わりだな。そして、私もまもなく…。」
ウマ娘教育隊長は届いた電報を確認し、独りごちる。
バタバタと複数の足音が迫ってくる。やがて、ドアが蹴破られる。
「ふむ、お客さんが来たようだ。」
彼は迫り来るウマ娘に対し、静かに微笑んでいた。
「なあ、殺す前に1つ聞いてくれないか。オッサンの辞世の句というやつさ。」
「いいだろう。」
リーダー格のウマ娘は許可を出す。
「…防人の屍こそがやまとなれ。」
「意味がわからん。」
「ありゃ、それは残念。命を懸けて戦った末に亡くなった自衛官達こそ日本である。という意味を込めたのだが…。」
「だとしたらセンスがないな。」
「ハハハ、厳しいねぇ。じゃあそろそろ頼むよ。」
1発の銃声が響いた。
ーーーーーーーーーーーー
「クククク…。お前達よくやったな。」
これで日本は俺のものだ!この調子で世界を恐怖に陥れ、俺だけの楽園を創る!」
現状を見て川原は笑みを浮かべる。
「私はなんてことを…トレーナー君…。」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…。」
対して、シンボリルドルフ達は絶望に打ちひしがれていた。
「貴様!私達に何をした!」
「ふむ、洗脳が解けてしまったか。」
「洗脳だと!?」
ウマ娘の女性自衛官が食ってかかる。「ああそうさ!お前達は俺の洗脳術に見事にハマったわけだ!」
「ふざけないで下さいまし!」
「おおう活きがいいな!まあいい、もう一度かければいいだけだ。」
川原は指を鳴らす。すると、ウマ娘達は虚空を見つめ始める。
「さあ、今1度俺のために働いてもらうぞ。まずはこのゴミを片付けろ。」
「了解です。川原トレーナー。」
そうして彼女達は屍となったトレーナーを運んで退出していった。
「これで邪魔者はいなくなった。もはや日本に俺の敵はいない!ハハッ、ハハハハハハ!」
川原の高笑いが響き渡る。日本が彼の手に落ちるのはそう遅くは無い。
大変な毎日ですが、元気にやってます。
1週間連勤の後、また本編を書いていきます。