若手の陸自幹部さん、トレセンに行く   作:Ο(オミクロン)

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主人公のヒミツ⑤
実は、ファッションセンスも壊滅的。

〜あらすじ〜
ウマ娘達にパワハラ三昧を働く川原に裁きをなすべく、主人公トレーナー3尉は画策する。一方で、アイルランドの王女ファインモーションと破天荒ゴールドシップを仲間にし、任務達成にも邁進していく。
そんな中、ライスシャワーとカレンチャンからお出かけのお誘いがあり…。



お久しぶりです。時間が空いてしまいましたが、投稿再開です。

意外にも本職の方に読まれていることに驚きと喜びを隠せません。
秘のこともあるので、あまり詳しく正確には書けないです。ご了承ください。

また、力不足のところもありますが、面白いと言っていただけるだけで、モチベーションが上がります。

では、6話目です。お楽しみください!


6話 兄と妹

「お兄ちゃんって自衛官になりたいの?トレーナーになりたいの?」

高校2年生の妹にそう尋ねられる。

「そうだなぁ…。実は、迷ってるんだよね。」

大学2年生の秋、僕は自衛官になるかウマ娘のトレーナーになるか悩んでいた。

どちらもやりがいが多そうで、実際にやりたいこともたくさんある。

 

「う〜ん。だったら、お兄ちゃんは何でトレーナーライセンスの勉強をしてるの?何で公務員試験の勉強してるの?迷ってるのに努力できるの?」

妹は何で何で?と不思議そうな顔をしながら僕を見つめた。

 

「……なりたいからやっている。かな?」

「なんで疑問文なの?」

妹とそんなやり取りしていると、ガチャりとドアが開く。

 

「やっほー!」

元気よく入ってきたのは、姉だった。

「姉ちゃん、どうしたの?」

「いや~暇だから来ただけ!それより、お困りのようだねぇ弟君。」

尻尾をバタバタとはためかせながら姉ちゃんは僕の隣に座ってくる。

「いやね、僕は結局どうなりたいかがわからないんだ。」

「なるほど、確かにそれは悩ましい問題ですねぇ。」

姉ちゃんは腕を組みうんうんと悩み始める。

 

「自分の好きなことを貫くべきだと思う!っていうのが模範解答なんだろうけど、弟君の悩みはそうはいかないよねぇ…。」

「どっちも好きなことだからね…。」

姉ちゃんの言葉に僕は苦笑いをするしかなかった。

 

転機が訪れたのは、大学3年生になる前の春、自衛隊のインターンシップに参加した時だった。

自衛隊にもウマ娘のトレーナーが存在していると聞いた。

 

それが『自衛隊ウマ娘トレーナー』だ。

 

自衛隊所属のウマ娘の教官あるいは指揮官として活躍する自衛官。

その教育のために、各地のトレセン学園に3年間研修するとのこと。

 

トレーナーの資格は要るらしいが、資格取得のために自衛隊でサポートしてくれるそうだ。

もちろん、既に持っていればそれで良い。

 

僕の進むべき道は決まった。

 

「それで、お兄ちゃんは自衛官になると。」

「そうそう。」

妹の質問に僕は答える。

すると、彼女は何か思い立ったように耳をピンと立てた。

「じゃあ私も自衛官になる!!」

「えぇ!?」

唐突な宣言に驚く。

 

「実は、私も高校卒業した後の進路に迷ってたんだ。でも、お兄ちゃんの話を聴いて、自衛隊良いかなって思った。」

「そっか……。」

 

「私も自衛官として誰かのために頑張りたい!だから、一緒に自衛官になろうよ!」

 

兄妹で同じ道を進もうという提案に、少し嬉しくなる。

「もちろん!じゃあ、一緒に頑張ろうか。」

こうして、僕達は揃って自衛官の道を目指すことになった。

 

そして、大学3年生の1月。

高3の妹は防衛大学校に合格した。

これには驚いたが、1番驚いたのは彼女自身だろう。

「いや〜、まさか防大に行けるなんて思わなかったよ。」

合格通知を手にしながら、妹は言う。

「すごいじゃないか!おめでとう!」

「ありがとう。お兄ちゃん。」

妹は満面の笑みを浮かべていた。

 

「次はお兄ちゃんの番だね。」

 

翌年7月。僕も陸上自衛隊一般幹部候補生の採用が決まった。

さらに嬉しいことに、中央トレーナーのライセンスも取得できた。

 

そこからは、幹部候補生として教育訓練を受け、憧れだった水陸機動団で部隊勤務し、今に至る。

 

一方、妹はと言うと、順調に防大生活を送っているようだ。

確か、今は4年生になるのだろうか。

陸上要員として訓練に励んでいる。来年は、幹部候補生だ。

二度とくるめぇな所だが、それを乗り越えて立派な幹部自衛官になってほしい。

 

ちなみに、なぜ今こんな回想をしているのかというと、妹から久しぶりに連絡が着たからだ。

 

『久しぶり!お兄ちゃん!元気にしてますか?』

スマホ越しに聞こえてくる声は前よりも凛としている。

兄として妹の成長が喜ばしい。

 

「元気だよ。そっちはどう?」

妹の成長を目の当たりにし、泣きそうな気持ちを抑え、近況を確認する。

『どうしようもないほど元気!今ね、外泊してて、同期達と一緒!楽しく過ごしているよ!』

楽しそうな声で妹は報告してくれた。

「そっか。それは良いね。」

『うん!それでね、電話した理由なんだけど…。」

妹はそういうと、音声通話からビデオ通話に切り替えた。画面には、妹の他に、3人の少女が映っていた。

3人のうち、1人がウマ娘だ。

 

『え!?この人がアンタのお兄さん?なんか思ったより……普通。』

いきなり失礼なことを言い出した。

『こら!初対面なのにそんなこと言わないの!』

別の女の子が注意する。

「いやいや、大丈夫だよ。」

僕は慌ててフォローを入れる。

 

『お兄さん、本当にごめんなさい。ほら、謝りなさい!』

ウマ娘の子が叱る。

『ごめんなさい…。』

女の子は申し訳なさそうに頭を下げる。

「全然気にして無いから!大丈夫大丈夫。」

『だって事実だもんね。』

オイオイ。それは言っちゃいけないぜ……。

画面の向こうで、妹がケラケラと笑っている。それにつられてみんなで笑う。

 

「あぁ、自己紹介が遅れたね。僕はトレーナー3等陸尉。水陸機動団を経て、今は自衛隊ウマ娘トレーナー教育課程のために日本ウマ娘トレーニングセンター学園にいるよ。」

『3等陸尉!?』

『水陸機動団!?』

『日本ウマ娘トレーニングセンター学園!?』

三者三様で驚くところが違うのは面白い。

『あれ?みんなに言ってなかったっけ?』

妹がそう言うと、3人は口を揃えて言った。

『『『聞いてません!!』』』

『あれ〜?』

妹は首を傾げている。

自衛隊に兄がいることぐらいしか教えていなかったようだ。

 

「それで、今日は何の用事で電話をかけてきたのかな?」

僕の言葉を聞いて、妹は思い出したように手を叩いた。

『そう!お兄ちゃんに電話した理由はね、色々と聞きたいことがあるからなんだ!』

 

妹の言葉を皮切りに、3人から質問攻めにあった。

幹部候補生学校や部隊勤務について、トレセン学園での話等、根掘り葉掘り聞かれた。

なので、答えられる範囲のことは全て話した。

 

3人にとって印象的だったのは、トレセン学園の話らしい。

特に担当の子達の話に興味津々だった。

『え!?お兄さんって、あのシンボリルドルフのトレーナー!?』

『メジロってあのメジロ家?』

『王女様も担当することになったのですか!?』

続々と驚きの声を上げていた。

他にも、はちみーの味や無人島でのサバイバルも楽しそうに聴いてくれた。

 

輝きを放つ目に少しばかりこそばゆい気持ちがある。

「でも、まだまだ未熟者だから頑張らないと。」

照れ隠しにそんなことを言う。

すると、3人とも感心した様子で僕のことを見ていた。

 

反対に、妹はムッとした顔をしていた。

『お兄ちゃんのウマ娘たらし。』

「……今なんて?」

『ウマ娘たらし。』

妹は不満げな顔で言い直してきた。

解せぬ。

「いやいや、そんなつもりはないから。」

『ふーん…。』

妹の目が怖いです……。

現に、妹の同期達は縮こまっている。

 

『あ、あの!お兄さんは今日は何する予定ですか?』

ウマ娘の子が話題を変えようと、僕の予定を尋ねてくる。

「そうだね。担当の子ではないけど、仲の良い子達とお出かけするんだ。」

『へぇ〜!そうなんですね!その子達はどんな子達なんですか?』

「どんな…。まあ、素直な子達だよ。妹のように思ってるよ。」

とりあえず、出てきた言葉がそれだった。

 

しかし、それがまずかった。

 

『……妹のよう?』

その言葉を聴いた我が妹君は、耳を絞り、それはもう凄い形相をしている。その表情を見て、3人は恐怖している。

 

『お兄様は教え子をたらしこんだばかりでなく、妹扱いしていると?そういうことですね?』

妹が淡々と問いかけてくる。

なんか怖い!怖すぎる!!

「いや、違う!断じて違う!!」

『何が違うのですか?』

「えぇっと…。」

『答えられないのでしょう?昔からお兄様はウマ娘をたらしこむ才能がありましたものね。』

「だからそんなつもりはないって…。」

 

たらしだのそうじゃないだのやり取りを繰り返していると、次第に妹の同期達は落ち着きを取り戻し、微笑ましく兄妹喧嘩を眺めていた。

 

しばらくしたところで、

『お兄さんのこと好きすぎでしょ。』

『嫉妬しちゃって〜。』

『お2人は本当に仲が良いですね。』

とそれはたいそう笑顔でコメントした。

妹は3人の言葉でハッとし、バツの悪い顔をして黙ってしまった。

 

妹が冷静になったのを見計い、

「ごめんね。見苦しいものを見せて……。」

『少し熱くなっちゃった…。ごめんなさい。』

兄妹で3人に謝る。

 

『謝る対象が違うでしょ?』

『仲直り、仲直り。』

『ほら、自分に素直になって。』

3人は優しい声で妹に言う。

すると、妹は僕に向かってこう言った。

『ごめんなさい。お兄ちゃん。お兄ちゃんと一緒に居れるトレセン学園の皆さんが、ちょっとだけ羨ましくなっちゃった。』

妹は申し訳なさそうに言う。

この様子だと兄離れはできていないようだ。当分先だろう。

 

そんな妹に僕は優しく声をかける。

「大丈夫だよ。次の帰省の時は一緒にどこか行こう!」

『うん!』

僕の言葉を聴いて、妹は嬉しそうに笑っていた。

 

3人も妹の様子をみて、安心したようだ。

その後は、世間話や自衛隊の話をした。

そして、時間がきたので電話を切ることにした。

「じゃあ、またね。みんなで力を合わせて、頑張ってね。」

『うん!』

『『『はい!』』』

元気のいい返事を聞くことができ、電話を切った。

時刻は0830。

良い時間だ。そろそろ正門前に行こう。

 

 

時刻は1030。僕はライスシャワーとカレンチャンと共に遊園地に来ていた。

 

「お兄さま…。今日は本当にありがとう。」

「気にしないで。僕も息抜きがしたかったからね。」

「カレンもお兄ちゃんと一緒に遊ぶの楽しみにしてたんだ!」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあ行こうか。」

「うんっ! わーい!」

2人とも本当に嬉しそうだ。

つられて笑顔になる。

 

「ははっ。まずは何に乗る?」

「えっとね…。」

 

こうして僕らはアトラクションを楽しんだ。定番のジェットコースターや立ち乗りコースター、ウォータースライダー、何か360度回るヤツ、空中ブランコ…色々乗った。いや、絶叫系多いな。

他にも、ワークショップでグッズを作ったり、食べ歩きをした。

気がつくと、もう帰る時間だ。

 

「楽しかったぁ〜♪」

「そうだな。少し疲れちゃったけど……。」

「ふふっ。お兄さま、大丈夫?」

「ん? ああ、これくらい平気だよ。」

「でも、顔真っ青だけど…。」

「……ちょっと休めば治るさ。それより、そろそろ帰らないと門限に間に合わないぞ?」

「あっ本当だ。急がないと!」

こうして、トレセン学園へと足を進めるのであった。

 

電車の中、2人は遊び疲れたのか、寝てしまった。まあ、あれだけ遊べばそうなるか。

すると、僕の肩にもたれかかってくる子がいた。

「くぅ……。」

「……カレン?」

なんだろうこの感覚。まるでずっと前から知っているような。

そんな感じだった。

なんてことを考えているうちに自分も眠ってしまった。

 

 

ふと目が覚めるとトレセン学園の最寄り駅に近づいていた。

2人を起こす。

「2人とも、そろそろ着くよ。」

「んぇ……?……ハッ!?︎ ごめんなさいお兄さま!」

「ん〜?……うにゃ? もう着くのぉ?」

「とりあえず降りる準備しようか。」

「「うん!」」

 

駅を降り、学園に着く。

そのまま2人を見送りにトレセン学園の寮へと向かう途中のことだった。

「おいおい、練習もしないで遊びに行くとはいいご身分だな。」

目下、悩みの種の川原が絡んできた。

せっかく良い気分だったのに。最悪だ。

 

「何しに来たんですか?」

「決まってんだろうが! テメエらに文句を言いに来てやったんだよ!」

「文句ですか? それはわざわざどうも。」

「おう。それでだな……。」

「では、これで失礼します。」

僕はその場を離れようとした。

 

しかしその時、後ろから蹴り飛ばされた。

「うぉわっ!?︎……な、何をするんですか!」

「お前のことは調べさせてもらったぞ。」

川原はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「なんでも、陸上自衛隊の幹部様ではないですか。これはこれは大層なお方ですねぇ?」

皮肉のつもりだろうか。

「それがなにか?」

「ふん! 自衛隊には借りがあるからな! ここでその借りを返してやるよ!」

そう言って、彼はナイフを取り出してきた。

「ひっ!」

それを見たカレンチャンが悲鳴をあげた。

 

ライスシャワーは庇うように僕達の前に出る。

「お兄さま達に手を出すなら容赦しない。」

「ははっ! 俺に歯向かうとはな!いい度胸じゃねえか。だが、俺の目的はコイツじゃねえ。お前らだ!」

川原はハナからライスシャワー達に危害を加えようとしたわけだ。

とんでもないドクズだ。

 

「ライス、カレンと一緒にここから逃げろ。」

ウマ娘なら、川原程度何とかなるかもしれない。

だが、大切な生徒を危険な目に遭わせるわけにはいかない。

「でも……。」

「行くんだ! 頼む……。」

「……わかった。」

良い子だ。

 

「カレンさん!こっち!」

「お兄ちゃん! 死んじゃダメだからね!」

コクリと頷く。

さて、これで心配はいらないな。

 

「ちっ、まあいい…。アイツらはまた今度痛めつけてやる。泣いて喚こうが絶対に許さねぇ。」

「させると思うのか?」

「邪魔するのか?ならば、まずはお前からだ!覚悟しろ!」

 

そう言って切りかかってくる。

しかし、

「ぐはぁっ!」

刺突をかわし、膝蹴りを見舞う。

上手く腹部を捉えたようだ。

 

川原の手からナイフが落ちる。それを人気がないところまで蹴飛ばす。

「この野郎……ふざけやがって!」

まだやる気なのか。

「はあ!」

中段回し蹴りがとんでくる。その蹴り足を掴み、もう片方の膝小僧に前蹴りをかます。

 

ここで言うのも何だが、僕は相手の脚部を触ることでその人の能力やコンディションをある程度読み取ることができる。

つまり、川原の実力が少しわかった。

力が強いだけで、動きは素人そのものだ。

「ぐうおっ!」

川原は倒れる。

「クッ、クソっ!こんなザコにぃ!!」

「もう終わりか?」

「舐めるなぁ!」

突っ込んできて殴ってくる。その手を掴んで小手を返す。

 

川原の顔が歪んでいく。

「クソっ…手がぁ……。」

「……まだやるか?」

「ちくしょう……。覚えてろよぉ……!」

捨て台詞を残してどこかへ行ってしまった。

 

パトカーのサイレン音がする。

逃がすべきではなかったかもしれない。

「大丈夫でしたか?」

たづなさんに話しかけられる。

 

「大丈夫です。たづなさん。特にケガはありません。」

「それなら良かったです…。それにしても、あの身のこなしは一体…。」

「ただの徒手格闘ですよ。」

「ナイフを持ってる相手によく立ち向かえましたね。私なら怖くて動けないですよ…。」

確かに、ナイフなどの凶器を持った人間は脅威に値する。

 

しかし、守るべきものがある以上はそうは言ってられない。

 

守るべきものを自分の身を賭して守る。

それが僕ら自衛官の使命だ。

 

「ところで、先程のナイフはどうしたんですか?」

「あ、それはですね…。」

遠くに蹴飛ばしてそのままだった。

当たりを見渡し、ナイフを探す。

すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

「トレーナー君。」

「ん?この声は…。」

「少し話を聞かせてもらおう。」

いつの間にかシンボリルドルフがいた。2人ほど警察の人もいる。

「ルドルフ!どうしてここに!?︎」

「君を探していたんだ。無事でよかった。」

「探していた? 」

「実は、ライスシャワーが教えてくれてね。」

ライスシャワーが警察に通報し、シンボリルドルフに僕の危険を知らせてくれたらしい。そして、警察の2人を学園内に案内し、途中でシンボリルドルフに引き継いだとのことだ。

 

「この学園の生徒を手にかけようとした川原トレーナーをもはや野放しにはしておけない。」

怒り心頭のようだ。まあ、当然だろう。僕もそうだ。

 

「トレーナーさん。私は警視庁の田代と申します。お隣は守山。事情聴取のため、少しお時間をいただきます。」

2人は警察手帳を僕に見せながら自己紹介する。

「今回の件は、理事長にも報告せねばなるまい。」

「そうですね。皆さん、御手数ですが、理事長室へ参りましょう。」

シンボリルドルフの意見にたづなさんが賛同する。

こうして、僕は彼女達と一緒に理事長の元へ向かった。

 

 

「入ります。」

「歓迎ッ!待っていたぞ!トレーナーくん!」

秋川やよい理事長が出迎えてくれる。

「陳謝ッ!まずは、トレーナーくんが無用な暴力を振るわれたことについて謝罪しよう。すまなかった。」

「いえ、お気になさらないでください。理事長のせいではありませんので。」

「そして、ありがとう。この学園の生徒を守ってくれたこと、感謝する。」

「いえ、ウマ娘を守るのもトレーナーの仕事なので。」

「立派ッ!ますます気に入った。」

そう言われるとすこしくすぐったい。

 

「では、今回何があったか教えていただけませんか?」

「はい。」

田代さんに促され僕は話し始める。

「生徒2人と学園内の寮に向かう途中、川原トレーナーに会いました。彼は因縁をつけてきましたが、私はそれを無視して彼の横を通り過ぎました。そしたら、蹴り飛ばされました。」

「ふむ。それで。」

「その後、彼はナイフを取り出し、2人に危害を加えようとしたので、私は彼を制圧しました。」

「その時の様子を詳しくお願いします。」

僕はなるべく丁寧に今回のことを話す。

 

「ちなみに、トレーナーさん。川原はどこへ行きましたか?」

「分かりません。」

「そうですか。」

田代さんは僕が話したことをまとめると、こう言った。

「秋川さん。明日からは学園周辺の警備を強化します。」

「了解ッ!よろしくお願いする!」

「今、我々ができることはこれくらいです。明日からは生徒も多数いると思うので、安全を確保してください。」

「うむ!」

「それでは、我々は失礼します。」

こうして、警察の2人は帰って行った。

 

「解散ッ!今日はもう疲れただろうから休みたまえ。」

「理事長。川原のこれまでの問題行動についてこちらで調べた資料があります。それを明日、提出いたします。」

「了解ッ!よろしく頼むぞ!」

「はい、それでは。用件終わり、帰ります。」

理事長室から出て寮に帰ろうとすると。

「トレーナーさん。」

たづなさんに声をかけられた。

「なんでしょうか?」

「ちょっといいですか?」

「はい。」

「私達はあなたに感謝しています。」

「え?」

「あの時、貴方がいなければ、最悪なことになっていたかもしれません。本当にありがとうございます。」

深々と頭を下げられる。

 

「やめてくださいよ。僕は当たり前のことしかしていませんから。」

「それでも、ですよ。」

「ありがとうございます……。」

なんか照れる。

「トレーナー君。顔が赤いぞ。」

シンボリルドルフにそう指摘される。顔がカッカッしているのを自覚する。

恥ずかしいので、逃げるようにその場を去る。

「待ってください〜!トレーナーさーん!!」

後ろで何か言っているような気がするが、聞かなかったことにしよう。

 

 

トレーナー寮。

ライスシャワーとカレンチャンからの連絡に気づく。

『お兄さま。ルドルフ会長から聞きました。ご無事で何よりです。』

『お兄ちゃん、カレン達を助けてくれてありがとう。ケガはない?』

心配してくれているようだ。本当に良い子達だ。

それぞれに無事を伝える。

2人から安堵の返事がくる。

 

「ふぅ…。」

やっと一息つけた。しかし、安心してはいられない。

川原があの状態では、ライスシャワーやカレンチャンだけでなく、ミホノブルボンをはじめとしたチーム『フォース』の皆にも危険が及ぶ。

警察のパトロールもあるが、それでも不安は残る。

 

とりあえず、明日は学園周辺を巡回し、しばらくはトレーニングも合同で行おう。

後で同期と桐生院さんにも相談しよう。

そう考えながら、眠りについた。




今回も読んでいただき、ありがとうございます!

久しぶりに執筆しました。
リハビリのため、短編の番外編でも書こうかなと思っております。

ものすごく更新は遅くなりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。
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