若手の陸自幹部さん、トレセンに行く   作:Ο(オミクロン)

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主人公のヒミツ⑥
実は、迷彩服を勝負服とみなしている節がある。


コメディ・リリーフ〜シリアスシーンの中に面白おかしいキャラやシーンを挿入し、緊張を和らげやる描写。これによりシリアスが一層際立つとのこと。コミック・リリーフともいう。



7話 コメディ・リリーフ

川原とのバトルから1週間後の昼、当面の間、警察官が学園の警備をしてくれることになった。

警察の巡回とは別に、僕も独自でトレセン学園を巡回している。他のトレーナーの皆さんも自主的に巡回してくれている。

ちなみに、僕はみんなが寝静まった夜も巡回している。

理事長達に心配されるが、そこは当直幹部としての経験もあるので心配なし。

 

なお、格好がいつものOD作業服なので、事情を知らない警察の人からすると、不審者に思われるだろう。

なので、

「誰だ!」

「はい!陸上自衛隊のトレーナー3尉です!」

「あ、ウワサの…。」

と最初の方はよく誰何されたものだ。

焦っているせいか、自衛隊生活のクセのせいか、所属を自衛隊のままにして応える始末だ。

 

しかし、今では…。

「お疲れ様ですっ!トレーナーさん!」

「お疲れ様です!今日も見回り、ありがとうございます!」

とこのように、敬礼を受ける身である。

ちなみに、今現在、授業が行われている教室の近くの廊下にいる。

大きな声でこんなやり取りをしていると…。

「あの…。隊長さん、おまわりさん…。授業中なので、もう少し声を抑えてくれませんか?」

と教師の方から注意されてしまった。

隊長とは僕のあだ名である。

いつの間にか、教職員の方やトレーナーの皆さんからはそう呼ばれるようになった。

「「申し訳ありません。」」

僕たちは謝まる。

クラスから笑いが起きる。

そこには、メジロマックイーンやトウカイテイオーもいた。

ヤダ、担当に見られちゃった。

非常に恥ずかしい。顔が真っ赤になるのを自覚する。

 

そんなこともありながら、川原の魔の手が学園の生徒に迫らないように警戒しているのであった。

 

 

放課後。

しばらくは安全確保のために合同トレーニングを実施せよと学園の方針が示された。

その方針に従い、合同トレーニングを実施している。

チーム『フォース』のみんなの他に、同期のチームや桐生院さんとハッピーミークもいる。

 

他にも、至る所で合同トレーニングをしている様子が見受けられる。

そんなトレーニングもそろそろ解散と言う時間、

「それで、トレーナーったらおまわりさんと一緒に先生に怒られちゃってね!その時の顔が耳まで赤くてね!ボク、面白すぎて笑い止まらなかったんだ〜!」

「授業中、ずっと笑っていましたわね。かく言う私も、堪えるのに必死でしたわ。」

 

トウカイテイオーとメジロマックイーンが今日の出来事をみんなの前で話している。

もうホントに恥ずかしいのでやめていただきたい。

しかし、悲しいかな、みんな大爆笑していらっしゃる。

 

「それで言ったら、トレーナー君、幹部候補生学校の時もそうだったよね〜。座学の時、トレーナー君居眠りしててね、いきなり、『前方15、中堆土の線まで、早駆け!』って言うもんだから、みんなびっくりしちゃって!それでその寝言でトレーナー君が起きてね、状況を把握したのか、顔を真っ赤にして慌ててたのよ。もう、みんな大爆笑だよ〜。」

追い打ちをかけるように、同期は僕の黒歴史をみんなにお話していらっしゃる。

「教官に『そんなに戦闘訓練が好きなら、これから高良台に行くか?』って言われて、顔真っ青になってたよね〜。赤くなったり青くなったりでまたみんな大爆笑!後は、幹部候補生学校卒業の時にボロ泣きしてたねぇ。」

僕は頭を抱えて悶絶する。

もちろん、座学の後はこってり絞られたし、卒業式はみんな泣いていた。僕だけ異常だったが。

 

現実逃避気味に過去を振り返ってみたが、まだ話はやまないようだ。

「そういえば、トレーナーさん。辞令交付式の時に礼をする時、敬礼してましたよね。」

桐生院さんが挙手の敬礼をしながら楽しそうに言う。

「確かに〜。自衛隊の制服も相まって、1人だけ異質だったよね〜。」

「いや、君もつられて敬礼したじゃないか。」

 

なぜか最近、みんなからイジられている。いつからかは忘れた。

「トレーナー様、お顔を見せてください。」

ファインモーションのSP隊長がからかうように声をかける。

「ほっといて。」

僕は顔を背けて答える。

 

「そんなトレーナー様も、私は素敵だと思いますよ?」

「ほんとぉ?」

彼女の言葉に少しだけ元気が出る。

「などと、その気になってた貴方の姿はお笑いでしたよ。」

SP隊長は微笑みながら言う。

コ、コイツ…!上げて落としてきやがった。

「「「「「あははははは!」」」」」

みんなの笑い声がこだまする。

 

「えぇい!もういいでしょ!はい終わりでーす!終わりでぇーす!」

僕は無理やり話を終わらせる。

 

みんなは笑いながらも整列する。

「この後は自由行動ね。自主練するなり、休むなり好きに過ごしてね。」

「「「「「はい!!!」」」」」

「事後の行動にかかれ、わかれッ!!」

「「「「「「別れます!!!!!」」」」」

と礼をする。

自衛隊がよくつかう解散の号令だが、同期と2人で使っていると、みんな真似をし始めた。今では、これが解散の号令となっている。

こうして、今日のトレーニングも終わる。

僕は逃げるように去っていった。

 

 

トレーニングが終わり、教職員室に顔を出す。

「隊長、お疲れ!」

「今日も女子連中にイジられたなぁ!」

「隊長はモテモテでうらやましいなぁ。」

などと言いながら僕の周りに集まってくる人が3人。

見られていたのか。

「お疲れ様です。もう、そんなんじゃありませんから。」

苦笑しながら返す。

「まあ、イジられるってことは、愛されてる証拠だよね。」

この人は、マヤノトップガンのトレーナーの水野さん(33)。

元航空自衛隊の戦闘機パイロットだったらしく、退官してトレーナーとして従事している。

TACネームは『パピルス』だったらしい。

その由来は、当時、提出する紙をたくさんぶちまけてしまったことが上官に見られ、名付けられたそうだ。

「隊長は人気者だからなぁ。」

この人は、用務員の宮崎さん(56)。

草刈りなど施設の整備を行っている。

ちなみに元陸自。定年退職後、再就職でここに来たらしい。

昔は空挺レンジャーとして活躍していた化け物だ。

 

「うーん…教師というのはどうもモテないのよな…。」

この人は、トレセン学園の社会科教師の小林さん(28)。陸自を一任期務めたあと、教師として採用されたらしい。

ここで教鞭をとっている傍ら、現在、即応予備自衛官として活躍している。

これはこれでかなりやりがいがあるという話をよく聞く。

現在、ウマ娘の彼女募集中。いつかは幸せになってほしいものである。

 

3人とはここに来てすぐに仲良くなった。

自衛隊という共通の話題のおかげか、3人とも話が合い、今では飲みに行く仲である。

会話に混ざって4人で話す。

今日の出来事など、世間話をしていると突然、

「さて、隊長。」

水野さんが真剣な表情になる。

「はい。」

僕も釣られて真面目な顔になる。

「お前の本命は誰だ?」

「へっ?」

変な声が出る。

何の話だろうか。

「いやね?あの娘達の中で誰が1番好みなのかなって。やっぱりシンボリルドルフか?いや、でもテイマクコンビもありか。あ〜ファインモーションもいいな〜。」

水野さんは目をキラキラさせながら言う。

途中から個人の感想である。というより、生徒にそんな目を向けていません。

 

「バカ言っちゃあいけないよ、パピルス君。隊長の本命は同期ちゃんだ!なぜなら、幹部候補生学校からずっと一緒にいるからだ。同期の絆はついに夫婦の絆になるだろうよ!いや、その点でいくと桐生院ちゃんも考えられる…。」

と、宮崎さんまでノリに乗ってきた。

このセクハラ親父め。2人とはそんな関係ではないのだが…。

「いやいや、お2人さん。どう考えてもゴールドシップですよ。だって、隊長に対するあのスキンシップの多さ!絶対ホの字ですよあれは!俺にはわかる!」

小林さんも便乗する。

「「「それだけはないな。」」」

と、同時に否定する。

「童貞乙。」

「彼女はちょっと違うんじゃないか?」

水野さんと宮崎さんがそれぞれコメントする。

「じゃあ何であんなに密着してるんだよぉ。」

それに納得いかないのか、小林さんが抗議している。

「そりゃ、子供が近所のお兄ちゃんと遊んでるのと同じ感覚でしょう。」

度は過ぎてはいるが。

しばらく沈黙が続く。

そして、

「たしかに……。」

と小林さんは納得してしまったようだ。

 

「え?トレピッピ…ゴルシちゃんとは遊びだったっていうのか…?」

とゴールドシップが泣きそうな声でつぶやく。

「いや、そういうわけじゃないけど……。っていつからいたの!?」

と僕は驚く。

「水野トレーナーが貴方に質問した時からですわ。」

と、後ろからメジロマックイーンが答える。

最悪なタイミングじゃないか。

 

「それで、何をお話していたのか、話していただけませんこと?」

笑顔だが目が笑ってない。

「別に大した話はしてないです…。」

「ほう…。であれば、ここまで白熱していた理由を教えてもらいましょうか。」

「もしかして恋バナ?だったらボクも混ぜてよー!」

シンボリルドルフとトウカイテイオーが続いてやってくる。

「「うぉっ!!」」

水野さん達は驚いて腰を抜かす。

「おいおい、大丈夫か?」

と、宮崎さんが彼らを起こす。

「会長さん。俺達はただ、隊長がどの娘が1番好みかを聞いていただけだよ。」

「……それで?」

シンボリルドルフは興味深そうに耳を傾けた。

「それはもう、隊長の周りは素敵な女性が多くてね。」

「なるほど。で、その結論は?」

「出なかった…。」

と、小林さんは言う。

 

「マックイ〜ン…ゴルシちゃんトレーナーにすてられるよ〜。一夜を過ごした仲なのにおもちゃ扱いされたよ〜。うぇぇえええん。」

と泣くゴールドシップ。

「ちょっと!?話がこんがらがるので泣き真似はやめてくださいまし!え?これ泣き真似ですよね?本気で泣いてません?」

と慌てるメジロマックイーン。

「夜はあんなに熱く激しかったじゃん!アタシのこと愛してるんじゃないのかよ〜。」

「な、ななな何仰ってるんですの!トレーナーさん?これは本当ですか?もしも本当なら、川原の前に貴方を潰す必要がありますわ…。」

と僕を見る。

「違うよ。そんな事実はないよ!! ゴルシもそんな誤解を生む言い方はよせよ!夜中、君に拉致されて、焚き火の火で服が燃えて物理的に熱くなっただけじゃん!」

と弁明する。

「ちぇっ、騙されなかったか。」

と、つまらなさそうにするゴールドシップ。

無理があるだろう。

「というかなんでここにいるのさ。」

と尋ねると、テレビでとあるアナウンスが流れる。

『本日、URA幹部の汚職が発覚しました。』

まさか。と思い、メジロマックイーンを見る。

「えぇ。トレーナーさんが想像している通りですわ。川原の後ろ盾を見つけ出し、その権力を失わせることに成功しましたわ。」

とメジロマックイーンは微笑む。

そして、事の顛末を話してくれる。

 

「川原の後ろ盾はトレーナーさんの予想通り、URAの幹部でした。川原の唯一の親族で育ての親だそうです。人事に口出ししており、川原の懲戒処分についても厳しく罰せられないように根回しをしていたようです。合わせて、隠蔽も行っていたそうです。また、彼自身優秀であるためか、次期URAのトップとしての呼び声も高いそうです。」

なるほど、身内が問題行動を起こせば自分の出世が危うくなるからもみ消した。ということだろう。

メジロマックイーンは続ける。

「そこで、私はメジロ家の探偵を使い、彼の調査を行いました。その結果、彼と繋がりがありそうな人間を見つけることができましたわ。」

と写真を見せる。

それには、とある大物政治家の顔写真が映っている。

「こいつは……。」

「ええ、この男はURAとつながりのある国会議員です。」

以前から、ウマ娘のレースを公営競技化するべきだと主張している男だった。

これについては賛否あるが、ウマ娘の努力を金稼ぎに利用するのかと否定意見が多数だ。また、コイツは競艇で八百長をした前歴がある。

 

「その男が関係あると?」

「はい、間違いなく関わっていますわ。」

さらに、メジロマックイーンは続ける。

「探偵は、URA幹部とその政治家が居酒屋に入ったところを追跡し、『もう時期、URAを牛耳ることができます。そうなれば、先生はウマ娘のレースを意のままに…。』

『ついにここまで来たな。そうなれば、俺の力でお前をさらに偉くしてやろう。』と話しているのを聞いたとのこと。」

「なるほど……。」

 

自分がURAの実権を握り、政治家と癒着することで甘い蜜をすすろうとしたのだろう。

政治家も自分の傀儡がトップになれば、ウマ娘のレースをかねてからの主張通り、ギャンブル化できるわけだ。

最悪、競艇のように八百長し、自分好みのレースを作り出すだろう。

 

考えただけで胸クソ悪い。

でも、そんな計画もここで終わりだ。

 

「フフッ、ハッハッハッ。」

「どうしましたの?トレーナーさん?」

自然と笑みがこぼれてしまった。それをメジロマックイーンに心配された。

「笑わずにはいられないよ。なんて滑稽なヤツらなんだろうな。」

まさか川原を潰す計画がこうも大きくなるとは。

川原と政治家に直接の関係はないだろうが、どちらにせよ、障害となるので潰すだけだ。

「これで、川原の後ろ盾はいなくなった。後は、川原を捕まえるだけだ…。やっとだ。やっとライス達を救える…。それと、マックイーン。」

「はい。」

「ついでにこの政治家も潰してくれ。レースを自分の意のままにしてウマ娘達の努力を無駄にするなどあってはならない。」

「既に抜かりなく。まもなくマスコミにリークされるでしょう。」

とメジロマックイーンは微笑む。

流石メジロ家。仕事が早い。

あとは、川原を捕まえるだけだ。

非常に良い気分だ。

 

「さて、皆さん。僕はここで失礼いたします。」

と、教職員室を後にする。

寮に戻り、シャワーと食事を済ませ、巡回する予定だ。

「何かいろいろあったけど、お疲れ!隊長。また話そうな。」

「またな。」

「お疲れ。」

3人からそれぞれ挨拶を返してもらい、退出する。

 

「じゃあ、俺達も帰るか。」

水野さんがそう言うと、

「いえ、皆さんにはまだお話があります。少しばかりお付き合い願います。」

とシンボリルドルフが止める。

「な、なんですか。」

「トレーナー君と何を話していたのか洗いざらい聴かせてもらう所存です。」

「ボクもトレーナーがみんなと何しゃべったか気になるな〜。」

「はいはい。わかったよ。」

 

そうして3人は、生徒達に質問責めされるのであった。解放されたのは寮の門限近くになってからだったそうな。

 

 

数日経ったある日の夜、

『URA幹部と大物政治家の癒着。闇取引の実態!』という報道がワイドショーを騒がしている。

URA幹部と政治家はこれで終わりだろう。

 

しかし、相変わらず川原の行方はわからない。今、どこにいるのだろうか。

明日には、警察の巡回も終わるとのこと。それまでには見つかってほしいものだ。

そんなことを思いながら、僕は一眠りする。何事も起こらないことを祈って。

 

しかし、それを嘲るかのように事件は起きてしまう。




今回は少し短めです。

次回からしばらく、本編はひとまず置いて、番外編を投稿します。
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