続きません!!
申し訳ありませんが、それでもよろしいというお心の広い方のみご覧下さい。
もったいない精神だけで投げ捨てていきます。雪宮春夏です。
どうぞ読み終わったらそのまま忘れてくれたら嬉しいです。
苦情等々はご遠慮下さいますようお願いいたします。
「お願いします! 僕に剣を教えて下さい!!」
深々と下げられた頭は旋毛が見えるほど下にあった。
「…………ん?」
思わず、傍らに立つ男を見るが、彼もどこか困惑したように笑うのみ。
仕方がないので再び視線を前方に移すと、さっきの姿勢のまままんじりとも動かない見事な体躯がある。デ・ジャビュ……既視感と呼ばれる何かをそこに感じ、何だろうと記憶を掘り起こして、俺はもう随分と昔、遙か遠くとも言える一つの仮想世界で出会った、既に亡い相棒の姿をそこに幻視した。
まぁ最も彼の場合は俺と同い年であったし、既に友好関係に有り……何より俺も、俺自身の目的の為に教えようとした打算的な側面もあったと今なら思う。
だから目の前の彼のように、縋るような空気をあの相棒から感じたことは殆ど無かった。
「だめ……でしょうか?」
無言の俺達に不安を抱いたのか、恐る恐ると顔を上げたのはやはり俺や、その横に立つ現在の暫定的な相棒と比べて、明らかに幼い少年だった。
かの始まりの地とも呼べる、あの鋼鉄の城にいた頃の俺……いや、もしかしたら同時期の、ビーストテイマーの少女に近い年齢なのかもしれない。
「えっとまず……どちらにむけての言葉なんだ?」
「いや、流石に君だと思いますよ?」
恐る恐ると言う少年につられて、思わずこちらも恐る恐ると問いかけた俺にそのゆっくりすぎるやりとりに見かねたのかそれまで傍観体勢だった相棒殿が口を開いた。
「え?……いや、でも年上なのは明らかにあんたの方で……」
「先ほど戦ったのは殆ど君でしたし、何より彼が手にしているのは細身の片手剣。私の獲物は両手剣。あなたは片手剣でしょう? それでもまだ違うと?」
弾丸のように容赦ない根拠の列挙に、俺は確認を込めて少年に視線を投げる。
ちゃんと理解したであろう彼は……迷うことなく、こちらに目を向けて……頷いた。
「ええっ……………」
零れたのは間違いなく、困惑混じりの途方に暮れたような声音だった。
そもそもの始まりは、少年のいた町を襲った魔物を通りがかった俺が退治した事から始まった。
相棒殿が町で聞き込んだ情報によると、悪魔の王と呼ばれる「魔神」が放った存在なのだそうだ。
単なるアクティブ・モンスターとどこが違うのか、是非とも説明してほしい。
「……いやしかし剣って……本当に俺は剣しか使えないぞ? 剣だって魔石を仕込んでいる訳じゃないし、本当に剣一本で戦っているだけだし」
わざわざ習うほどの価値はないと思うのだが、目の前の少年は一心不乱に否定している。
「剣一本で、魔物に勝てている時点で凄いことです! 相手は魔法を放っているのに、ズバンって……ズバンっ……!!……って!!!」
「確かに、普通剣一本で魔法は切れませんよねぇ?」
感極まって擬音語でしか話せなくなった少年に変わり、呆れ混じりで注釈を入れる相棒に、俺は恨めしげな視線を向ける。
そうは言われても、俺からしたら単に発動して術者の制御下から外れた魔法を打ち消しているだけだ。炎なら剣圧で打ち消せばいいし、強風や水流ならば剣を伝って受け流し、電流とて同様である。
制御下にある魔法なら物理的に避けるしかないのだから、俺としては本当にたいしたことは出来ないのだ。
「だいたい俺が対処できるのは直接攻撃型……ようするに幻惑とか魅了とか、搦み手は本当に打つ手無しなんだよ。だから本当に強くなりたいなら、ちゃんとした師を見つけて」
「それでも! いいですっ!僕は……僕は、あなたに剣を習いたいです!ちゃんとした師なんて、町にはいないんです……」
ぎゅっと剣を握る手が拳を作る。
ブルブルと震える体にどうすれば良いのか分からずに、相棒の方へ振り向くことしか出来ない。
人に教えられるほど、俺は立派なものじゃない。
それは俺自身が一番よく知っていた。
「……良いんじゃないですか? 基礎だけでも教えてあげれば」
「けどなぁ」
その基礎が馬鹿に出来ないのだ。
俺が無言で訴えるも、分かっていないのか否か、私も手伝いますよと、軽い口調で続けられた。
「一時的な師だと思えば良いんです。全てを背負おうとするのが間違ってますよ。たとえ技術としては役に立たなくても、多くの技に触れた経験は決して無駄にはなりませんから」
「……根拠は?」
「私の体験談です」
にっこりと、擬態語がつきそうな良い笑顔の相棒に、俺は白旗を揚げるしかなかった。
年も経験も彼の方がずっと上なのだから。
「じゃあ改めて、自己紹介しようか。俺はキリト。ご覧の黒一色の装備から同業者からはよく「黒の剣士」と呼ばれているよ」
そのまま視線を向けると、相棒が心得たようにクスッと微笑んで言葉を繋いだ。
「彼の同行者で暫定的な相棒を務めております。たっち・みーと申します。周りからは「純銀の騎士」と……私としては「たっちさん」と呼んで貰いたいところです」
これが「黒の剣士」と「純銀の騎士」。そして、後の歴史において「十三英雄」と呼ばれる一団の「リーダー」となる少年の初めての出会いだった。